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新しい狩場は海のようです

 

 異世界知識チートノートからの情報に基づき、里の研究班によって開発された代物はすっかり里の新産物とての位置取りになっていて、うちに対しての優先配布になったらしく、久しぶりに魚を焼いて醤油で食べてみたのでした。


「このほうが美味しいね」


 どうやら奥さんは醤油は気に入ったらしく、ご飯のおかずとしては成立しなかったものの、単品としての献立に入れても良さそうです。

 ちなみに味噌は漬物にするらしく、そのうち味噌漬けが食べられそうです。


 でも味噌と言えば味噌汁、となれば豆腐ですな。


 はい、にがりですね。


 里の農家のうち、大豆生産農家から生産班へと大豆が送られて、そこで味噌やら醤油やらになっており、そのついでに豆腐の生産にも成功し、にがりは大量に渡す事になったのでした。


 梅雨時の床下製法がノートに書かれていたものの、梅雨の無い異世界ではその製法は使えないが理屈は分かるので、塩を作った時に出た不純物がそのままにがりとして使える事が分かり、そのまま豆腐の開発に到ったのでした。


 今では精霊産の塩は精霊塩と呼ばれ、味がまろやかな事から周辺種族でも人気が高く、その継続は必須とまで言われている。


 どうやら甘塩らしい。


 味噌を漉して味噌の汁を作り、それに刻んだ豆腐を入れて、ネギみたいなのを入れると味噌汁の完成である。


「お茶も良いけどこれも美味しいね」


 基本はパン食な奥さんだけど、趣味が漬物なせいか味噌汁にも理解があるようで、あとは米食に慣れてくれれば良いだけなのだけど、まだまだ慣れないようで残念である。


 こうなったら丼で勝負だ、とばかりに色々準備していたんだけど、手慰みにいなり寿司を作っていたのが気に入ったのか、それで米に慣れたみたいだ。

 豆腐からいなりにする過程は親戚のばあちゃんに教わっていたのを活用して、懐かしさから拵えておいたんだけど、その黄色くて三角な物体を興味から食べてみたところ、程好い酢の具合と甘いいなり、それと酢飯に混ぜておいた具材が気に入ったらしく、美味しかったと言われたら追加で作るよな。


 そんな訳で丼は次の機会になったのでした。


 ◇


 部分精霊化にも熟練した奥さんを連れて、今日は海水浴……のような事をやりに行くのだ。


 どのみち精霊化中だと海底散歩が余裕なので、奥さんはそれを楽しんでもらい、オレは泳いでいる生物の獲得、つまりは魚の捕獲が目的なのだ。

 米にかなり慣れた奥さんは、白米はまだ慣れないものの、混ぜご飯には慣れており、特に聖樹茶漬けでサラサラと食べるのは好きなようなので、そのうち白米にも慣れてくれるだろうと思っている。


 やはりいなり寿司が良かったみたいだ。


 そんな訳で次の段階として、生の魚の切り身を乗せたご飯、つまりは握り寿司に挑戦してみようと思っている。

 さすがに握り寿司の造詣は無いけどやり方は何となく分かるので、某マンガのようなトンチンカンな寿司にはならないと思う。


 手だけ戻して掴む。


 そのまま改造財布の中の樽に入れる。


 樽には海水を少し入れてあるのでしばらくの間なら生きているだろうし、いくらか捕まえたら陸で捌いてバッグに入れようと思っている。


(捕まえたよ)


 うおお、それはさすがにちょっと。


(それはパス)


(食べられないの? )


(いや、食べられるけど毒があるからな)


(それは残念)


 素人調理師にふぐは難易度が高過ぎます。


 ビリッと来たら即精霊化して間に合うかどうか怪しいので、間違って死んだら洒落にならないので、その魚は諦めます。


 テトロドトキシンは怖いです。


 そりゃふぐ刺しは食いたいけどさ。


 お、底のほうに魚発見……そーっと近付いて……くっ、暴れるぅぅ。


 しまった、樽に入らないぞ。


 折角のヒラメっぽい魚なのに……まあいいや、そのまま財布に入れてやれ。


(解体してくるよ)


(いってらっしゃーい)


 楽しんでいるようでなによりだ。


 ヒラメの刺身は奥さんにも好評で、里の連中も珍しい海の魚の変わった食べ方に興味を持ち、里生産の醤油がよく合うので馴染んだ結果、部分精霊化に馴染んだ連中が海での狩りをやるようになったのでした。


 だけど部分精霊化のまま掴んで戻るものだから、空中を飛ぶ魚って怪しい噂が出るようになったんだけど、そんなの知らないよな。


 ◇


 今日は魔素関連の補填日和。


 水晶採掘場の奥の魔力溜まりは、使っても少しずつ溜まってるようで、これからの魔素の回収はそちらでもやれるようになったと思っていた矢先、封印洞窟の異変を発見した。


 いつものように濃縮魔素水の交換をやろうとしたところ、濃度があんまり濃くないと精霊さんは不服そう。

 おかしいなと思って奥に行ったところ、居たはずの化け物の姿が無い。


 遂に消滅したのかな?


 しかも大量にあったはずの薬草も殆ど無くなっていて、魔素の濃度もかなり薄くなっている。

 仕方が無いので残っている薬草を回収して財布の中での栽培として、これからはこれを絶やさないようにしないとな。


 それにしても何処に行ったんだろう。


 封印が解けて出たにしては周辺の様子はそんな雰囲気じゃないし、消えるにしてもあんな存在感な化け物が急にとは考えられない。

 とりあえず、もうこの場所は使えないのが分かったので、今後は水晶鉱脈の奥の魔力溜まりだけになりそうだ。


 ◇


「あの化け物消えてたよ」


「それはおかしいの。おぬしが怖がる程の化け物が、急に消えるなど考えられぬ」


「いや、オレ、怖がりだからさ」


「あれ程の精霊と共におって、それはあり得ぬぞ」


 そうなのかな。


 確かに心強さはあるんだけど、それでも尚あの存在感は半端無かったんだよな。


「ほんに消滅なれば、その寸前は殆どそのような物は感じぬはずじゃ」


「でも封印が解けて暴れた風にも無かったんだよ」


「なれば何処かに隠れているのやも知れぬの」


「里の害が無ければ問題無いんだけどね」


「そうじゃの」


 はっきり言って今のオレには人族の国の被害とかどうでも良いと感じている。

 確かに弟弟子の住まう町がどうにかなるのは困るけど、それとて防衛構想に必要だからに過ぎないので、被害が出たら仕方が無いと思うだけだ。


 ともかく、今は何も分からないので、被害が出るようなら検討するってので構わないよな。

 確か魔竜とかだし、山脈の竜なら何か知っているかも知れないし、事によると彼が何とかしてくれるかも知れないと。


 里に来るようなら全力で排除するけどな。


 ◇


 封印洞窟が使えなくなったので、魔力溜まりに注水する事になった。


 それと言うのも水の精霊さんが薄い濃度の水を放流したいと言い出して、全て流し込んだからだ。

 もっとも、土の精霊さんに話を通してあったらしく、漏れる心配は無いらしい。

 土の精霊さんが保管を承ってくれるらしく、その見返りとして少し渡すようになるって話だ。


 彼らにも水が必要らしく、そのついでに保管をしてくれるのなら言う事は無い。


 以前のような全て濃縮魔素水にすると水が使えなくなるので、2割だけは淡水として確保して欲しいとお願いして、現在では濃縮6割、淡水2割、濃縮魔素空気2割になっている。

 パーティションは2分割だけど、濃縮魔素水のほうに濃縮魔素空気も入れるので、魔素の領分が8割で、魔法で使える水が2割となっている。


 オレの空間魔法なのに、精霊さんの住処に間借りしているみたいだな。


 まあその分、魔力が使い放題になっているので、見返りとしてはかなりこちらのほうの恩恵が大きくてありがたいんだけどね。


 ◇


 醤油の試作品の味を、指摘しながら改良の果て、何とか使用に耐える醤油が完成した。


 料理に使われる薄口や、刺身なんかに使われる濃口など、用法に合わせて種類も増やしていく。

 ちなみに減塩醤油にもチャレンジしたようで、精霊さんに完成した醤油から塩化ナトリウムを抜く試みをやっていた。

 液体から物質を抜くのはうちの精霊さんが得意なので、お願いしてみたら一発成功。


 さすがだ。


 かくして減塩濃口刺身醤油が出来たのでした。


「これは外には出せんぞ」


「外じゃ生の魚を食べたりしないからな」


「それもそうだのぅ」


 里の連中に流行ったのが刺身料理。


 直接海から獲って来るので新鮮なのと、動物の肉よりあっさりしていると言われ、専用の醤油も出来た今となっては、山での猟よりも望まれる有様であり、水の精霊に馴染んだ連中は、毎日のように海での漁に勤しんでいる。

 最近では獲れたらその場で活け締めにして氷入りの樽に放り込み、一杯になったら両手だけ具現の精霊化で持ち帰るようになったんだ。


 なので最近では空飛ぶ樽と、また変な噂が飛びかうようになる。


 うちの連中の為の漁場に良かろうと、沖合いの岩礁を土の精霊さんに頼んで平坦にしてもらったので、魚取りの連中はそこに氷入りの樽を置いて漁に勤しみ、獲れた魚をグループのひとりが専門で活け締めにして樽に仕舞うので、効率の良い漁になっていると聞く。


 なんせ人族と違い、海の魔物を見かけても心配は無い。


 精霊化中は物理の干渉が無いので、魔法が使える魔物以外は問題無いうえに、下手に攻撃しようものなら同化中の精霊さんの怒りを買うので、すぐさま駆逐される羽目になるからだ。

 そんな訳で、外道としての獲物の中には魔物も存在する。


 そういうのは素材を取ってオレが売りに行くのだ。


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