魔力溜まりの発見と巨大魔石
どうやらお茶としての販売のつもりが、魔力回復薬の材料としての出荷になるらしく、折角開発したお茶の道具が無駄になりそうだと言ってました。
それでも道具屋のあるじの役得として味わっているらしく、通の連中への小分けはやるみたいなので、それは好きにすれば良いと思っています。
どのみち2割の利益はお茶での受け取りにして、その分からは好きに出来るので売るなり飲むなりすれば良いだけだし。
毎年10キロなら2キロが手数料になるんだし、半分も売ればかなりの儲けだろうし、その中から薬師ギルドに流せば良いだけだろう。
そういうのは慣れているようなので、好きにやってもらうだけだ。
シリカゲルの生成に成功し、お茶の容器の底に入れるようになってから、活性炭は周辺の種族への交換品目に足され、ついでに里の水の浄化にも利用されるようになりました。
スラ紙は薄い割りには丈夫な紙として里の書類に利用されるらしく、今まで用いていた羊皮紙の中で、朽ちてボロボロになっていた古い資料の書き写しなど、仕事はいくらでもあるようです。
提灯は火の精霊の住処として好評で、火に馴染みの深い里人は軒先に吊るしておくようになっています。
ちなみに燃料は魔石なのですが、今までは獣脂での灯りになっていて臭かったらしく、必要最小限の利用になっていたのですが、魔石に種火の術式を刻んで使用しています。
そのほうが長持ちして効率も良いので、うちの膨大な精霊さんの魔力を用いた手作り魔石を交換品目に足してからその需要が多く、あちこちの生活必需品作成の家との取引では毎回使われるようになったので、水晶球の輸入もかなりやっています。
以前は毎日少しずつの注入になっていた魔石作りですが、今では水晶球を握って精霊さんにお願いと念じるだけですぐさま完成するので、家の備蓄としての魔石の量はかなりあり、少なくなったら大量生産という具合になっています。
そもそも、例の洞窟の中の濃密な魔素の大気を活用すれば現地生産がやれるのが分かったので、風の精霊さん経由で水タンクの中の空気の入れ替えをやりつつ、水の精霊さんが魔素を抜いて水晶に流すという連携の元、在庫が全部魔石となる作業もやるようになりました。
その時に、なるべくあの化け物に近いほうが効率が良いので怖いけど仕方なく近くでの作業となり、またぞろ何か話し掛けては来るものの、交流は一切やらないので最近では近くに寄っても何も言わないようになりました。
後は魔石の件だけど、馬鹿でかい水晶の原石を獲得しまして、小分けにして魔石にしようと思ったところ、精霊さんがそれに魔力を注いでみたいと言うので、物は試しと任せてみたところ、やたらとでかい魔石になったのでした。
「これは凄まじいの」
里長に見せたところ、是非とも里の財産にしたいと言われ、今後100年の古茶の権利と交換になってしまい、必要で使用されると共に、その補填も任されたのでした。
つまり、狩りとかで魔力を消費しても普通は自然回復になるんだけど、枯渇寸前では精霊さんも辛いので、狩りから戻ったら手を当てて少し補充するようになったようで、毎月の補填を頼まれるようになったのでした。
精霊さん、お願いね。
それは良いんだけど、寄贈・双精霊術師、とか台座に刻印しないでよ、恥ずいから。
◇
でかい水晶の原石を魔石に変えるのをうちの精霊さんが気に入ったらしく、外への買い出しでは毎回のようにでかい水晶の塊を買い求めるようになり、完成したら拡張バッグの肥やしになるものの、必要ですぐさま使える備蓄となったのでした。
確かに今は濃縮魔素水の獲得には苦労しないものの、何時までもあの封印洞窟が使えるとも知れず、あれが消えたらまたぞろかつてのような魔力量になるんじゃないかと精霊さんが危惧していて、その為の保険の確保に余念が無いようです。
確かに封印された存在が何時消えるかも分からないので、そうなったらもう濃縮魔素水の回収はやれなくなるだろう。
他にもそんな存在を封じた環境があれば別だけど、養殖迷宮の底の精霊水と称した濃縮魔素水の窃盗ぐらいしか無いので、いかに外の連中は関係無いと言っても、他人の商業活動の邪魔は宜しくないので、あんまりやりたい行為じゃありません。
となると封印存在がある内に濃縮魔素水を回収しての水晶原石への備蓄しか思いつかないので、精霊さんからの要望もあって毎回の水晶の買い出しになったのでした。
巷でも魔石の生成はやってはいるものの、あくまでも人族の保有魔力からの生成なので大量生産がやれない事もあって、水晶の売れ行きは芳しくないのが現状のようで、生産地での大量獲得の話を持ち掛けると、どの販売者も在庫のあらかたを売ってくるようで、こちらとしてはかなりありがたい話になっています。
「原石と言うとこの辺りかの」
見つけました、馬鹿でかい水晶の塊がたくさんありました。
精霊さんが欲しい欲しいと伝えて来るので早速の買い占めです。
金貨数百枚が飛びましたが、お茶の儲けからすると微々たるものです。
「他とは言うが、この辺りの連中に頼まれての仕入れになっていての、それが不良在庫になっていたのだ。だから他にはあんまり無いかも知れんぞ」
そうしているうちに水晶の採掘現場を知る事になりまして、現地の土の精霊さんとの交渉の結果、うちの精霊さんの蓄えの濃縮魔素水をいくらか渡す事で合意され、鉱脈のうち、人族の手が届かない場所の水晶を回収しての交換取引という、誰にも迷惑の掛からない取引が成立したのでした。
◇
あれは交換が成立したしばらく後の話。
土の精霊さんからの情報に従い、うちの精霊さんに導かれて採掘してできた大穴に侵入して、そのまま奥へ奥へと誘われた挙句、やたら濃い魔力の塊の空間に誘導されたんだ。
どうやら地下の魔力溜まりらしく、風の精霊さんが喜び勇んでその空間内を泳ぎ回り、水の精霊さんは風の精霊さんが得た濃縮魔素空気から魔素を抜き取って淡水を濃縮魔素水に変える作業を始めており、ついでに水晶の原石を出せと言うのでその場にて、魔素溜まり⇒濃縮魔素水⇒水晶の原石⇒巨大魔石、の流れが出来まして、今回と前回以前の大量の水晶の原石がそっくり魔石化された挙句、9割の濃縮魔素水と1割の濃縮魔素空気となり、うっかりと水が使えない状態になってしまったのでした。
おおい、それは困るよ。
しかもまだ魔力溜まりの魔力はあらかた残っているので、またぞろ水晶の原石を集めて欲しいと言うようなのが伝わって来たので、それから各地を巡ったのでした。
全世界を対象にした水晶の原石集めのついでに産物も仕入れたので、今回の外部との交易の成果が莫大となった挙句、里人との取引をしても殆ど減っておらず、仕方がないので里長と相談した結果、周辺種族との交換品目に入れられる事となり、かなりの量を引き取ってくれたんだ。
「古茶1000年分かの」
もうね、それしか無いんだよ。
あらゆる生活必需品は里の連中との交換契約になっていて、里自体との取引が不要になっている関係上、里自体との取引は古いお茶ぐらいしか無い事もあり、オレ達が里で暮らす内は永久的にその権利を継続って事で何とか引き取ってもらえたんだ。
オレとしては寄贈でも構わないんだけど、例の巨大魔石でその手は既に使っていたので、いくら新参でもやり過ぎだと言われたので仕方なく、お茶の権利で何とかしたのでした。
どんどん里に貢献したいのに、相手が恐縮して受け取ってくれないんだ。
だからあの手この手での交換って手を駆使していたんだけど、次はどんな名目が使えるのか分からないものの、お茶の利益の還元は是非にもやりたいので、次なる名目を考えないとな。