表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/53

お茶の交易で里を護ろう

 

 話し合いは無事に終了し、献上の話は無くなった。


 取引は現状のままで構わないものの、他には流してくれるなと暗に匂わされ、やはり戦略物資と思っている事は確実となった。

 本来そのような品の交易は望ましくないのだけど、里では単なる嗜好品の扱いだからな、その有効利用をしただけだ。


 畑の肥料にするよりは、里の重要性を知ってもらい、その交易の継続を望ませると共に、他国からの干渉の抑制を任せるのも手なのでと思ったんだ。

 それが重要と思えば、他国に渡したくはないだろうから、他国との交易を止めさせるだけのものを提示しないといけない。

 となると必然的に里への攻撃などという、自国の弱みを放置は出来ないだろうから、辺境伯の陰謀は潰えると。


 畑の肥料がその役に立つのなら、里長も文句は言うまいよ。


 ただ、始めた以上は途中で切らさないようにしないと、またぞろ以前のような関係、いやそれ以上になるだろうけど、あの樹、枯れたりしないよな。


 さて、そうなると他国に撒いた餌が無駄になるんだけど、どれだけの便宜を図ってくれるかが問題だな。

 永久不可侵条約も捨てがたいけど、そんなものは絵に描いた餅でしかない。

 その国がそうであっても、茶の権益をいくらか渡す見返りに、他国が攻めて来る可能性も否定出来ないだろうし、民間の組織を送り付けるかも知れない。

 つまりは国としては不可侵であっても、民間までは規制出来ないと言われればそれまでの話になる。


 例えば冒険者。


 国境の無い彼らに依頼として出せば、世界中から冒険者が押し寄せる事にもなりかねん。

 となるとギルドとも顔を繋いでおかないと拙いとなると、各ギルドへの依頼の差し止め要求を代わりにやってもらうぐらいで良いかな。


 それを交易継続の証として受け取れば、反故になった時点で取り止めても構わないって事になる。

 継続を望むならギルドへの交渉は本気になるだろうし、いかにギルドとしても一国がそっくり敵に回るのは好ましくないはずだ。

 まあ、オレもまだギルド員の端くれなんだし、そんな依頼があればすぐさま分かるので、その時になってから抗議するという手もあるけど、そもそもそんに事態を許容した時点で、他国との取引にするからもう止めると宣言しても構わないって事になる。


 その為の暗躍なんだし、いざって時には有効利用するさ。


 とりあえず現状はどんな品でも構わないとなると、一番古い肥料一直線の茶葉から始めるのが無難だろう。

 そうしてゆくゆくはランク付けが成されるかも知れないけど、そういうのはやりたい奴がやれば良いだけの事。


 現状は独占なんだし、ランクでの卸価格の上下は言えないだろうから、売る時の価格に影響を与えるだけで終わるだろう。

 確かに他にも売り手があるならば、価格競争になるかも知れないけど、そうなればこちらはあっさりと手を引いても構わない。

 他に無いから求められるのであり、だからこその放出にしているだけであり、特に好き好んで出している訳ではないのだから。


 まあ、頑張って代替品の開発をしてくれと思うだけだ。


 ◇


 異世界知識チートメモと称するノートの中身を精査して、有用そうな情報を抜き出して整理する。

 大豆があれば和風調味料の数々が作れるだろうけど、大豆が見つからないと書かれてあるからそれは望み薄なのだろう。


 マヨネーズで食中毒の危険と書かれているのは、恐らく飼育環境が清潔ではないからだろう。

 なんせニワトリはお尻から卵を産むんだし、清潔じゃないと殻が細菌の温床になってしまう。

 それをそのまま売りに出した場合、割った時点で中身に細菌が付着する可能性もある。

 当然、手も細菌だらけになるだろうから、それで調理は致命的だ。


 卵を割る前に綺麗に消毒すれば防げると思うけど、消毒薬も無い異世界ではそれも中々に困難な話だ。


 森林族は病気になって長患いって話を一切聞かないので、病気になったら精霊化で治るのかも知れないので、ある程度の清潔さを保てばマヨネーズが作れるかも知れないな。


 後は米も見当たらなかったらしく、かなりの落胆の文字が躍っている。


 それに関しては探索の程度の問題だろうから、全世界を探してからでも遅くは無いだろう。

 例え冒険者として探したにしても、馬車か馬での移動で何処までの探索が出来たものか。

 精霊化で大陸中を探してみても構わないし、何なら別の大陸に手を伸ばしてみても構わない。


 今はそこまで欲しいと思わないがな。


 他の情報としては、実用科学の実現方法なんかが有用なのと、シリカゲルの製法があったので早速活用させてもらう事にした。

 火薬は拵えたらしいが、保管中に爆発したと書かれてあるから、きっと火の精霊の玩具になったのだろうな。


 同様に気球に関してだけど、水素の気球はやはり爆発するらしく、熱気球の可能性について書かれていたものの、魔力消費がネックになっていて、魔石の大量使用なら可能だが、費用の問題で実現は困難と書かれている。

 やはりヘリウムが安全だけど作れなかったらしく、飛行機も実現困難と書かれている事から、早々に断念した可能性が高い。

 偵察兵が上空から……なら可能だろうけど、それなら飛行魔法……まあ浮遊魔法だけど……があるからそこまでの需要は見込めないだろう。


 主に費用対効果の問題で。


 内燃機関に関しては魔法があるから誰も話には乗って来ず、そもそも燃料たる原油も見つからないからアルコール燃料にするしかないものの、またぞろ保管中に爆発したと書かれているから、精霊との馴染みが無い人族に燃える物の扱いは難しそうだ。


 ともあれ、有用そうな情報がいくらかあったので、有効利用させてもらう事にした。


 ◇


 結局、お茶に関しては王に分けるのは納品後の取り扱い責任者の裁量という事になったので、好きに分ければ良いだけだ。

 つまり、納品後の取り扱いに関しては他国に該当する産地なので、納品価格には影響を与えないものとして主張した。

 そうしないと半分分けるから、その分はタダにしろと言われかねないからだ。

 そんなのは献上と何も変わらないので、妥協する理由が無いからな。


 まあ、嫌なら買うな、これが通るからな。


「何とも強気だな」


「例えばさ、王が全て欲しいと言ったら、タダでいくらでも寄越せとなるよな」


「それはいくら何でも」


「まあ、用心だよ。そのいくら何でもをやられても、対策があれば安心するだろ」


「確かにそれはそうだが、普通はそこまではやれないものだぞ」


「約定が無ければ理不尽を言われても泣き寝入りするしかないけど、里は小さくても独立国に等しいのだから、それなりの防衛措置は必要だろ」


「確かに相手が他国なら分からんか」


「なんせ今まで侵略しようと、どっかの辺境伯に攻められていたんだ。そんな国との取引でいきなり相手を全面的に信用しろと言われても無理な相談だ」


「ああ、それがあったな」


 そうして納品額の2割を代行販売手数料として、名目的には弟弟子が取り扱い責任者として、実質的には道具屋のあるじが副業として行う事となる。

 本来なら道具屋のあるじは職種が異なるのだが、弟弟子が薬師なのでそれを手伝うという名目が使えるので、そういう方法になったようだ。

 更に薬師ギルドにも噛ませて利益分配をするらしく、危険回避には余念が無い様子。

 そうして儲けた金で周辺種族と里の必要物資の購入と決まった。


 これで辺境伯も手が出せないだろうな。


 後は精霊魔法の件だけど、あれっきり何の音沙汰も無いのが逆に不安なところだけど、もしかしたら壁の掃除の件が漏れたのかもな。

 いくら黙っててやるとは言っても、国の上層部からの詰問に対し、それを遵守する程の恩義じゃないんだし、相手も仕方が無いと話す可能性はかなり高い。

 その点から言うと情報漏洩になってしまったと思うんだけど、そもそもこちらは練習中とのたまっている。

 練習中であの威力だと思ってくれれば、火炎熊の大群に対してのオレの言葉に嘘は無いと思ってくれれば、うっかり手が出せない里の戦力って事になるだろう。

 それで強敵という認識になってくれれば、戦うより交易の継続を願ってくれるだろう。


 まあ、相手の態度で分かるだろう、ある程度は。


 とりあえずはお茶の件は現状のままとして、各国への暗躍を少しだけやっておこうかな。

 大っぴらに交易じゃなければ問題無いんだし、どっかの商人が独自に仕入れたとか、そういう手も使えそうだし。


 まあ、当分は静観かな。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ