The back of the story
閲覧注意)
ネタバレを多分に含みます。
そういうのが嫌な方はパスしてください。
読まなくても問題ありませんので。
(予備シナリオ、ですか)
(そうです。ある魔王の生い立ちを今回、予備シナリオとして行おうと思っています)
(それは本来の予定にはありませんよね)
(はい。これまでならばやれない事ですが、先日の規制緩和、あれを活用しようと思うのですよ。私は確かに反対派でしたが、盟主の決定事項に反するような、過激な思考は持っていません。それに、私が真っ先に活用すれば、私に賛同してくれていた者達への道しるべとなるでしょう。私はね、浅慮な思考で身を滅ぼすような行動を、彼らに採って欲しくはないのですよ)
(よく分かりました)
(シナリオでは人を殺した後、獄中で死しての転生でしたよね)
(はい。転生してすぐに家族を掌握し、表と裏の顔を使い分け……)
(そうです。ですが、そこにひとつのファクターを投入してみます)
(と、言いますと)
(殺された相手のリベンジですよ)
(詳しくは書かれてないはずでしたが)
(それがね、原作者の脳裏にはあったのですよ。微かですけど)
(さすがですね。読み取り専門の者より深く読み取るとは)
(あれはまぁ、シナリオ改変の程度の確認の為と言いますか、なのでそんなに詳しくは読み取らないのですよ)
(そうなのですね)
(はい。さて、本題です。リベンジと言いましても、あくまでもシナリオの魔王が優先です。なのでステータスは魔王有利で開始されます。ですが、君がそれに対抗出来るようなステータスを与えてやってくれませんか? )
(私が、ですか)
(そうしてもうひとつ、彼の記憶の回復時期を君に決めてもらいます。生まれてすぐでも構いませんし、生命の危機でも構いません。また、少しずつでももちろん構いません。どのみちフタは専門でしょうから、それぐらいの事はやれるでしょ)
(魔王優先と言いますと、シナリオでの兄のステータスの改変になるのでしょうか)
(はい。誰に見られても変に思われない範囲での改変です)
(それだとかなり厳しいかと)
(まあそうでしょうね。ならば更に追加といきますか。君が彼に対し、世界内で少し贔屓を許します)
(それはさすがに)
(いえいえ、大っぴらではありません。そう、幸運だったと、彼が思うような贔屓です。なので直接介入ではなく、あくまでも間接的にです。どうですか、これなら規制緩和の範疇に収まると思うのですが)
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(ああは言われましたが、並大抵ではあのステータスの相手には対抗出来ないでしょう。しかも相手は生まれてすぐに記憶を確保しますから、なまじ記憶があると警戒されてしまいますね。となると……)
(何とか乗り切りましたね。しかし、まだまだ油断は禁物です。このような調整は邪道と言われるかも知れませんが、少しずつ記憶が戻すのは構わないと言われましたので、それを逆手に取らせてもらいますね。さてと……)
(何とか師に巡り合わせる事が出来ました。このまま修練していけば、次期当主も夢ではないでしょう。それにしても、少しやり過ぎのようですので、しばらくは離れておいたほうが良いかも知れません。さてと……)
(何という事でしょう。折角の師匠との邂逅が無駄になってしまいました。確かに薬師の修練は続けているようですが、肝心の魔法の修練が止まってしまいました。ああ、既に精神魔法が行使されていますか。困りましたね……)
(どうにも宜しくありませんね。すっかり掌握されてしまってます。このままですと、将来的に下僕となるか抹殺されるかのどちらかでしょう。どうにかしてあげたいですが、直接的な干渉は禁じられていますので、さすがにそれを破る訳には……)
(策士策に溺れると言うのでしょうか。まさか兄を追い出しに掛かるとは。あのまま下僕としての未来しか無いかと思いましたが、これなら何とかなるかも知れません。となると……)
(危ないところでした。何とか荷物でガードして大怪我は防ぎましたが、これはさすがに越えていると言われるかも知れませんが、今回だけ許してもらうとしましょうか。さてと……)
(何とか精霊を感じられるようになったようですね。このまま行けば対抗の機会も訪れるかも知れません。それにしても、少し越えていると言われても仕方の無い干渉になったかも知れませんが、これぐらいやらないと無理だったのですよ。なんせ相手はさすがにチートもチート、それこそ俺TUEEE状態だったので、つい……)
(世界中の歪対策をしていました。あれからどれぐらい経過したでしょう。掛かり切りは良くないので放置になっていましたが、おや……)
(このままではダメですね。何かのファクターが欲しいところですが、どうにも良い作戦が思い付きません。そう言えば、あの娘を少し強化……は無理ですか。となると……)
(ようやく巡り合いました。これで彼の方向性は定まりましたね。さすがに性欲の干渉は嫌だったのですが、あの町で欲情してくれないと、巡り合えなかったので致し方無くです。あとは……)
(これが最後の干渉になるかと思います。彼は元々、心優しいと言うか、お人好しの傾向にありましたので、本来ならチャンスを逃す可能性もありましたが、ここで一気に仕留めてもらいます。そうしないともう無理でしょう。その前哨戦と言いますか、弟君の配下を抹殺の方向に誘導して、その勢いで当人も……)
(上司の苦笑いが見えるようです。今回は規制緩和の道しるべという事で、私も少し越えてしまったかも知れませんが、これがギリギリアウトならこれ未満ならいけるでしょう。なんにせよ、召喚された勇者に対して巻き込まれたモブを勝たせたような感じになってしまいましたね。次からは控え目の方向で……)
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(やりましたね)
(ありがとうございます。それで、贔屓の程度はどうでしたか)
(そうだね、まあ、あれなら何とか許容範囲でしょうか)
(ですが、シナリオはかなり破綻したように思うのですが)
(ふふふっ、それで良いのですよ。今回は少し派手に壊れましたが、道しるべにはこれぐらいのほうが良いのです。私以内に収めれば良いと知れば、対策も楽になるというものです。それに魔王とは言いましても単なるやられ役。いずれ淘汰される存在なら、単なる人形でも構いませんからね)
(では、再登場ではないと)
(リベンジを見事果たしたのです。その相手がまたすぐに現れたのでは、倒した甲斐がないでしょう。少なくとも、彼が生涯を全うするまでは出さないつもりです)
(本シナリオ開始に間に合いますかね)
(それはこの際、問題ありませんよ)
(なれば良いのですが)
(さて、山場も越えましたし、これからのシナリオ本番の前に、少し所要が出来ました。シナリオの再確認なので少し時間は取りますが、本番が始まる前には戻ってきます。ですので、世界を少し頼みますね)
(はい。いってらっしゃいませ)
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(使徒さん、原因は分かりましたか?)
(ああ、どうやらこちらの俯瞰の勘違いだな)
(私もあちらに掛かりっきりになってまして、詳しい事情は分からないのですよ)
(つまりな、こっちの俯瞰が本来なら転生後の魔物に付与するはずのスキルを、刺されたメインに付与したのが原因だ)
(あー、それは拙いですね)
(痛いと言われて痛覚無効。んで、痛みが消えたら転生の話をしちゃったもだから、すっかり本人はラノベでお馴染みの異世界転生だと舞い上がって、ポテンシャルの限界まで色々なスキルを要求したと。んで、転生後の魔物になった彼には既に余裕が無かったから、耐性系のスキルが付けられず、トカゲの魔物にあっさりと溶かされて死んじまったと)
(それは私の伝達ミスですね)
(いやいや、俯瞰にその手の知識が無かったのがそもそもの原因だろ。古参の俯瞰ならこんな有名な小説、知らないはずは無いんだからさ)
(そこまでだったのですか? )
(ああ、現地で集めたオレが言うんだから間違い無い)
(確かにかすかな記憶にあった話ではありましたが)
(アニメにもなったからな)
(それで覚えていたのですね)
(とにかく、メインストーリーは何とか動くようにしておいたから、それなりの話になると思う)
(助かりましたよ。序盤でいきなりメインの死亡となると、シナリオ破綻はともかく、世界が不安定になりますからね)
(まあ、もしまたヤバそうなら神様に連絡してくれれば、オレが出張って来るからさ)
(分かりました。その時はお願いしますね)
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私は世界内存在に対しての干渉は余り好みではないが、配下の行動まで縛るつもりはないのだよ。
なので彼に愛着を感じたのなら、少々の事は許します。
なのよりまだ本シナリオ前だし。
それでも私が世界にいると気が休まらないだろうから、しばらく現代のほうの世界に滞在するよ。
だから君の思うように介入して構わないとも。
まあ、大っぴらには言えませんが、程度は弁えているはずですし、問題は何もありませんね。
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(彼女は私の分身……そうしないと精霊化に対して精神が保たなかったので仕方無くですが、どうやら元々の意識が限界のようです。なので私が代わりに……上司がいなくて良かったですね。見つかると叱られそうですし。ですが、せめて彼女の精神が回復するまでの代行はしませんと。たまにはこういうのも良いですね。もうしばらくこのままで……)
◆
(率先しての行動、ありがとうね。君は反対派筆頭だったと言うのに、辛い役目を負わせてしまいましたか。ですが、君の行動は、君に賛同した者達の救いになるのは確かです。厳密に言うなら少し越えているかも知れませんが、それはこの際、関係ありません。君の行動は賞賛されるべきものですし、その行動は後背の規範となるからです。元々君が私の後継のつもりでした。今は彼を見出した事で浮気みたいになっていますが、彼にはその気が無いようなので、やはり私の後継は君しかなさそうです。いずれ私も淘汰される時が訪れるでしょうが、その時には頼みますね)
出演
・自然派筆頭管理
・筆頭管理直属俯瞰
・派閥の長(通称、神様)
・神様の使徒