表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/53

大量解体と塩作り

 

 買い物を済ませて拡張バッグに収めた後、財布に入れてまた水化です。

 早々に到着して火炎熊50頭、それと樽が100個、後は小麦粉を20袋渡します。


「樽キター。良かった、樽が足りなかったのよ」


 やっぱりな。


「熊の蜂蜜漬けの現物を渡す事になったぞぃ」


 生でも良いの?


「生と言うても蜂蜜漬けじゃからの、試しなれば問題あるまいと申しての」


 じゃあ新たな村の産業になりそうなのね。


「そのような発案者への攻撃は、利権の奪いを疑われ、名誉の毀損になるじゃろ」


 うわぁ、師匠が悪辣です。


「権力者と相対する場合はの、相手が失いたくない物を盾にすれば良いのじゃ。

 今回なればこちらが利権になりそうな物を持てば、攻撃する事はそれを奪わんが為と世間の者は見るからの、そうなるようにこの辺りの領主にも教えて利益分配をしてやるのじゃ」


 師匠だけにしても問題無さそうね。


「わしの事は心配要らぬ。じゃから安心して旅に出るがよい。既に村の長から新たな名物になりそうな物を開発したと、領主への手紙を書かせておる。後はその検証に来た者が食えば決まりじゃ」


 師匠の事を心配していたのが馬鹿みたいだ。


「かつての頃を思い出すの」


 あの時も結局は問題無かったね。


「今回も問題は無いからの」


 うん、信用して旅に出るよ。


「それはそうと、解体を急ぐのじゃ」


 はいはい、頑張りますとも。


 ガンガン解体している途中、終わるまでに弟子候補がやって来たら、オレはまだ戻ってない事にしてもらって欲しいと告げました。


「なれば裏の小屋を使うかの」


 物置小屋で寝泊りすればバレないと言うのですが、師匠を1人にするのが心配です。


「なんの、元は1人であったし、新たな弟子もおるのじゃし、心配は要らぬ」


 お弟子さん、ご飯作れると良いね。


「ううむ、それがあったの」


 結局、レシピをひたすら書いて残しておく事になりました。

 弟子に修行の一環として料理をやらせるつもりらしいのですが、でかい道具屋の次男坊に料理が出来るか、少し怪しく思います。


「薬も料理も似たようなものじゃ。薬師なれば料理も出来るのが普通じゃ。わしはほれ、魔術師がメインじゃからの、たまたま苦手なだけじゃ」


 ものも言い様です。


 ちなみにオレの料理は、前世での親戚のばあちゃん仕込みなので、煮物なんかが得意です。


 ◇


 大量の火炎熊のなめし毛皮は証拠物件になるのでおいそれとは売れない、と言うのはこの毛皮なんだけど、実に派手な特徴があるのでした。

 火を吐く熊なのでその毛皮には耐火性が付いてまして、独特な色合いをしているのです。

 毛の根元は黒なのですが、次第に毛先に行くにしたがって白く変わっているのです。

 まるで熱に炙られて漂白したかのようなその色合いは、火炎熊の特徴として有名なので、白熊と誤魔化す事も出来ないらしく、やるなら毛を染めて黒熊にするしかなさそうです。

 ところが毛染めに対しても見分ける方法があるらしく、先人は様々な方法でインチキ商品の開発をしたのだと感心します。

 まずは毛染めに使う塗料ですが、あの毛はかなり独特なようで、まともな塗料は乗りません。

 つまり、手で撫でると剥げてしまうのです。

 なので塗料の研究はその為に進化したと思われますが、その用途が贋作用として固定観念のようになってまして、他の物に流用するという考えが無いようでした。


 贋作の苦労は他にもあります。


 火炎熊の毛は黒から白への微妙な色合いで変化してますので、じっくり見れば分かるのですがそこはインチキ商品売り、まともな塗料もないのに吹き付けの技術を開発し、少し離れて吹き付けてその色合いを出す、なんて事をやったらしいのです。


 なのでこの世界には、油性や水性の塗料と吹き付けの技術はあるのですが、それを家壁に使ったり看板の塗装に使ったりはしてないようです。

 刷毛からの発展なあちらの世界と比べて、その発生手順と言うのか、発想が異なるので使用用途が思い付かないらしいのです。

 吹き付けはあくまでも贋作用の技術という扱いで、凝り固まっているのですね。


 そんな訳でうちの師匠の家壁は、それで塗り直してみたのですが、古ぼけた建物が綺麗になって師匠はあえて何も言いませんでしたが、少し顔が綻んでいるようでした。


 ともあれ、そんな訳で売ればすぐさま火炎熊と分かる毛皮はおいそれと売れないのでした。

 しかも贋作かどうかのチェック機構もかなり充実しているのは過去の戦歴でしょうけど、それに持ち込まれたらやたら時間が掛かるのです。


 検査員はさ、本物を持ち込まれても疑惑の目で見るのが仕事だと思っているのか、検査を長引かせるとそれだけ稼ぎになると思っているのか、無駄に時間を掛けるのを当たり前だと思っているのか、本当に厄介な存在なのです。


 なので所属検査員の全てを納得させないといけない真贋検査に出すぞ、というのは脅し文句としては時間的余裕の無い人には絶大な効果があり、そうやってゴタゴタとされている間に辺境伯の迷宮の被害報告書に辿り付かれると面倒な事になってしまいます。


 なので尚更売れないのです。


 と言う訳で、森林族への土産物と言うか、旅の途中での便宜の為に貰う事にしました。

 場所によっては硬貨が使えない場合もあるので、物々交換には魔物のなめした毛皮は大抵いけるというのが師匠の体験談だそうで、50枚の毛皮も持っていく事になりました。


 贋作騒ぎに発展するのはあくまでも文明社会……まあこの世界での話ですが……限定なので、辺境の村落にはそんな事は関係ありません。

 昔に発生した火炎熊の贋作騒ぎは有名なので皆知ってはいるものの、真品は素人でも見れば普通に分かるので、交換に出せばかなりの値打ちが付けられます。


 素人でも普通に分かる品でも、モノが火炎熊の毛皮なら徹底的に検査をする、それが検査員クオリティ……まあ、過去に王族が引っかかって、検査局の大物が罰を受けたのが後を引いているのかも知れませんがね。


 ともあれ、これから赴くのは森林族の集落なので、そんな心配は要らないのです。


 後はせしめた金貨も使い尽くすぐらいの気持ちで減らさないと、財布の中をもし見られたら言い訳が出来ないと言われ、確かにその通りなので解体が終わったら買い出しに出るつもりです。


 何を買うのかって?


 どうやら村では塩が貴重らしいので、何処でも良いから塩を大量に買って来るように頼まれました。

 腐るものじゃないから買えるだけでも構わないと言うのですが、それについては少し試してみたい事があるので、巧く行けば金貨が減らない可能性もあるので、その場合は砂糖を探してみようと思っています。


 ちなみにオレが欲しいのは香辛料であり、それも種類が多い程、ありがたいのですが何処かにあって欲しいものです。


 そしてカレー粉を作るんだ(キッパリ


 まあ、米の無い現状ではそちらが先かも知れませんけど。


 ともあれ、水化の時に感じた魔素の濃い薄いだけど、真水と海水を比べてみたいのです。


 海水にはミネラルが含まれていますので、魔素を含んだミネラル塩として認識すれば、塩が採れるかも知れないのです。

 この世界には確かに科学の欠片もありませんが、自分の頭の中には存在します。

 つまり、発想の元になるイメージがあるので、こちらの人では不可能とされた事も、やれそうな気がするのです。

 それにその手の事は散々研究会でやりましたので、後は魔法があれば可能ぐらいになっており、魔法がある現在なら、理論のまま使えそうなぐらいなのです。


 だからおたくと言うな。


 ◇


 空想概念理論化研究会に栄光あれ。


 ああ、あいつらに伝えたい。

 お前らが確立した理論に間違いは無かったと。

 てな訳でミネラル塩、ゲットです。


 実は精霊に頼みました。


 空中の水分子に含まれる魔素の量の測定とかは無理だったので、それを感覚的に把握出来るという精霊に頼みました。

 彼(彼女)? 達は厳密な数値とかは分かりませんが、かなり細かな量として把握出来るようなので、空気に含まれる水の分子ひとつひとつに含まれる魔素の量を把握してもらい、それに合致する物質を海水から取り除いてもらったのです。

 ただし、水分が少なくなると固体化するので取り除くのが大変らしく、ある程度固体化した後は風精霊に頼んで乾燥させて貰いました。

 本当は海水から水を抜けば終わると思ったのですが、精霊には水も海水も同じ液体としての認識なので、その区別の方法から伝授する必要があったのでした。

 まあそのついでに微量貴金属も省いてもらいましたが、見えないぐらいの量なので、これは無理かも知れません。


 一度やれたら後は早い。


 近くの風の精霊の助けも借りて、分離して乾かす工程が出来てからはもう、それこそ魔法です。

 拡張バッグの上で作業して、サラサラと雪のように降り注いで、満タンになるまでそれが終わらないのです。

 微量貴金属も恐らく容器に、多分入っているのだとは思いますが、どうにもよく分かりません。


 結局は手持ちの大型拡張バッグに満載に……これも金使いの一環として追加で買いました。

 いやね、確かに財布の中には4つしか入らないけど、それは満杯に荷物を入れた場合の話です。

 そもそも、そこまでの量は入れるつもりが無いのとは別に、空のバッグも欲しかったからです。


 いわゆるカモフラージュですね。


 確かに水化した時には邪魔になるので財布に入れますが、普通に移動するのに手ぶらと言うのは何かと疑惑を誘いますので、その為に空のバッグを背負うのです。

 もちろん、空と言っても少々入れたぐらいでは膨らまないので、樽のひとつやふたつは入れるかも知れませんが。


 道具屋の親父さんに聞いた話ですが、実は大型の拡張バッグの内容量は、ドラゴンを丸々1頭入るのが目安らしく、誰が確かめたのかは知りませんが、ドラゴンを狩って入れてみた事があるのでしょぅね。

 いやぁ、世の中、強い人はとことん強いんですね。


 道理で火炎熊が50頭も入るはずです。


 そんな訳で手持ちの大型が3袋が塩で埋まりまして、仕方が無いので一度帰る事になりました。

 財布の中に3袋入れて、残りのカバンは何とか丸めて隙間に詰めて帰りました。

 

世界ミニ知識


大型拡張バッグの性能検査では、ドラゴンの原寸大模型が入るかどうかで決まります。

これはかつての英雄が本物のドラゴンを狩って、それを型取りして拵えた石膏製になってまして、その為に検査はその石膏像のある神聖帝国アルゴニアの首都で行われています。

実はそこには座ったサイクロプスの石膏像もありまして、中型の検査も出来るようになっています。

ですが、サイクロプスは神話上の怪物なので、そのモデルは様々な資料から得られた寸法で拵えてありまして、本物の大きさとは本当は異なっています。

歴史書は大げさに書かれているようで、かつて存在したサイクロプスはあんなに大きくはありません。

ちなみに小型のサイズは人気の無い石膏像で行いますが、抱き合ったオーガという趣味の悪い代物が使われていて、変更要請が全世界から送られているのが現状です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ