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精神的損害賠償獲得作戦

 

 部屋に戻ってベッドに横になり、ぼんやりとさっきまでの事を思い返す。


 いやはや、オレも残酷になったものだな。

 いかに干渉されて進路が変わったにしても、元の世界なら間違っても殺そうとは思わなかったろう。

 確かに前世の恨みもありはするが、世界が変わってしまったらもう時効みたいなものだ。


 それでも今、殺さなければもうその機会は無かったはずだ。

 万が一、脱獄されたらもう、手が付けられなくなっていたはずだ。

 多分、弟は至近距離で司祭にステータスを盗まれたんだろう。


 壁ごしとかなら、やれそうな感じがするし。


 そうして禁忌のステータスを見て、用意周到にやられたんだろうな。


 まあそれはオレもやられる可能性はあるが、神の慈悲たる生活魔法に手を加えてはいるものの、禁忌魔法なんかは所持して無い。

 それでも外に出る時は花壇を消しておいたし、宿では壁の近くには寄らなかった。

 まあ、今はそんな気配でもあれば、精霊からの警戒的な雰囲気が来るから防げるとは思うが、それでも用心に越した事は無い。

 さて、そろそろ夕食か、少し早いぐらいだから、風呂でも借りますか。

 だけどゆっくり浸かる気にはなれないので、残念だけどすぐに出る事になるだろうな。


 殺しの後は風呂でのんびりとか、何処の殺し屋だよ。


 ◆


(お人好しなのね? )

(うむ、じゃからの)

(魔法、ダメじゃないの? )

(水70らしいの)

(それなら充分だわ)

(巧く行けばおぬしのモノじゃ)

(任せといて)


(あやつなれば問題あるまい。馬車で片道1ヶ月、自腹で往復を2度も受けるような者は、お人好しも大概じゃ。裕福なればまた別じゃろうが、平民となった者の出費はかなりのはずじゃのに、呼べば早馬に乗ったが如くに現れおる。そのような者は何かと便利なのでの、あやつの飼い犬にちょうど良いわ。それにあやつの弟には何かとしてやられたからの、その見返りと思って諦めよ)


 ◆


 前にも思ったけど、シャワーって無いんだな。


 つまり、どじょうから得る知識は戦いに役に立つモノばかりで、生活を便利にする類の事は聞いてない可能性がある。

 確かにどじょう自体が転生チートで広めた物はあるだろうけど、それとて権力者が囲い込んだらもう表には出なくなるだろう。

 となれば、生活より戦いの知識が多くなるだろうけど、多分だけどその知識を生かすのは並大抵じゃなかったろう。


 なんせこの世界には科学の欠片も無いんだし、基礎科学無しで造れる武器がどれだけあるか。

 もし今までに鉄砲を誰かが教えていれば、兵士は背中に背負っているはずだ。

 なんせあれは使い手を選ばない武器なのだし、どんな新米でも殺しがやれる。

 普段は剣は使うにしても、背中に背負っていれば用心にはなる。


 だけどそんなの見た事ない。


 水化して離れに行く途中で屋敷を色々見学したけど、宝物庫はあったけど中には鉄砲とかそれ関連の物は全然無かったし。


 えっ、宝物庫?


 うん、2回分の移動費用と損害賠償はもらったよ。

 ちょうど金貨が入ったでかい袋があったからさ、そのまま財布に入れておいたんだ。

 なんせ今はオケラに近いと言うか、スカンピンだしな。


 ああいかん、やっぱり浸かっているとぼんやりしてくる。


 早く出ないと、風呂の中で寝ちまいそうだ。


 ズンズンズン……。


 あれ、何の音だろう。


「邪魔するわよ」


 水化……。


 おいおい、何だよいきなり。


「あれ、いないわね」


 いや、風呂の中にいるよ。


「おかしいわね、確かに中に入ったと報告を受けたのに」


 もしかしてハニトラの類か。


「こうなったら夜這いね」


 これはいかん、早々に退散しよう。


 もう嫁さんは見つけてあるのに、ハニトラで既成事実とかされたら洒落にならん。

 しかも小太りならまだ許せても、あんなのは要らんぞ。

 道理で足音が響いていたはずだ。

 夜這いはいいが、潜り込もうとしたらベッドがきしむぞ。

 分かり易く言うなら、普通の体重計では計れませんって感じだ。


 あれって120kgまでだしね。


 あんなのに圧し掛かられたら、水化しないと窒息死するかも。


 確かに貴族のじじいは家の利が一番か。


 師匠の言った通りだな。


 あんなのを寄越して鎖に繋ごうするとか、じいさんに対する印象が丸っきり変わっちまったぞ。


 もう知らん。


 ◇


 勝手知ったる宝物庫。


 さっきは遠慮して金貨の袋ひとつで済ませたけど、あれは多大に精神にダメージを受けたという事で、損害賠償を勝手に徴収する事にした。


 顔はブルドッグ、身体は関脇、歩く姿は誰も見たくないってなもんだ。


 そんな存在の裸体を至近距離で見させられたんだからな、嫁さんの記憶が汚されたぞ。

 あれを同じ性別と思いたくもないが、そんなのに強制的にやられるとか冗談じゃない。


 ここじゃ強制性交等罪には問えないんだからな。


 それにしてもこれは拡張バックが必要なぐらいはあるが、ちゃんと大型拡張バッグはあるんでした。


 買っといて良かったな。


 ああ、もちろん古ぼけた甲冑みたいなのは放置したよ。

 いくら価値があるかも知れなくても、あんなの邪魔になるだけだ。

 だから大量にある魔石の袋とか、金貨や銀貨の袋とか、回復薬と思しきアンプルのケースごととか、魔杖をつらつらと。

 剣は実用的なのを入れて、やたらでかいのは放置した。

 ツーハンドソードと思しき、やたらでかいのは見ている分には興味をそそられるけど、とても使えそうにない代物だしな。

 斧とか槍も使わないので、投げ槍みたいなの以外は放置した。

 後は美術品だけど、こういうのは処理が大変ですぐ足が付くので放置したけど、魔導具みたいなのだけは入れておいた。


 師匠の土産になりそうだし。

 

連日の殺人で少し精神の変調が見られるようです。

だけど根は小市民なので、このまま盗賊に堕ちる事は無いと思います。


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