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売り尽くしたらトラブル発生

 

 禍福は糾える縄の如しってか。


 回復薬を全部売って金が作れたので、やっと銀貨が大台に乗った事で念願のマジックバック(大)が買える事になり、以前は門前払いをされた商店に赴き、辺境伯からの手紙を見せて交渉してみたんだ。


 結果は大成功。


 そこで値切りの為に銀貨ばかりで支払いをしようと、いかにも頑張って貯めました風を装ってジャラジャラ出した事で信憑性が増したのか、ほんの少しだけど負けてくれて、これも大成功。


 通常売価金貨50枚のところ、何か他の買い物を少しだけサービスで付けてあげると言われ、趣味の小物をいくつか込みで金貨50枚分の銀貨で支払った。


 つまりは銀貨1000枚な。


 そうしてふわふわした気分で財布の中に拡張カバンを入れて、アレ、拡張カバンの中に拡張カバンは入らないとされているのに、どうして財布に入ったのか不思議に思ったんだけど、入った以上は活用するだけだ。


 財布の中を花壇にしなければ、いくら大型でも拡張カバンを詰め込んだら4つぐらいは入りそうなので、これを利用すれば大型の馬車数台分ぐらいの物資を手ぶらで持ち運べそうなのだ。

 折角のアイテムボックスが水タンクになって残念に思っていたけど、この方法なら初期資金は掛かるものの、アイテムボックスの代用としては問題ないぐらいだろう。

 なんせオレの全属性は5しかない上に、生活魔法に1確保するので実質は4しかない。

 なら、水タンクにならなかったとしても、そんだけの容量が得られるとは思えないので、代替品だけど同等の効果なら、もうアイテムボックスに見切りを付けても構わないと思っている。


 なんかさ、精霊の親切心? のせいで容量が広がった結果、もう余裕が無くなったみたいなんだよな。

 だから別口のアイテムボックスはどうにも作れそうな気がしないので、これは福音と言えるかも知れない。


 確かに花壇は便利だけど、うっかりステータスを見られたら厄介な事になる。

 生活魔法の改変が神の慈悲をないがしろにする、なんて言われなければ普通に使えるのに、そうじゃなければ結局は大っぴらには使えない。

 ならば普通はアイテムボックスの代替品として活用し、他人が居ない時だけ花壇として活用すれば良い。


 ◇


 買えてラッキー、サービスでラッキー、財布に入ってラッキーと、そんな気分の時に背中がぞわぞわっとして、後ろに害意を持つ存在を察知したんだけど、尾行が付いていると、背中を精霊がくすぐっているみたいにぞわぞわするんだ。

 以前にもそれがあったんだけど、その時はミステリアスな奴隷女風の格好の時で、その後で魔法で撃退したんだけど、それでその感覚は分かっている。


 もし、襲われたら魔法で何とかするつもりだけど、相手がもしプロの殺し屋とかだと勝つ自信は全くないので、何とか工夫はしてみるけど、どうやら複数のようなので無傷という訳にはいかないだろう。

 そうなった時に頼りになるのが自前の回復薬なのだけど、生憎と全部売ってしまった後だ。

 本当は500本だけ売って24本は残す予定だったんだけど、ギリギリ足りなかったら情けないから全て売って、それでも足りなかったら貧乏の中で必至で貯めましたって同情を誘って何とかしようと思い、とにかく全部売ってから余ればまた考えようと思っていたんだ。

 回復薬を全部売ったのが今更ながらに悔やまれるけど、売ってしまった物は仕方が無い。

 返却希望を出せば、いくらかなら返してくれる場合もあるし、普通ならそうしたかも知れない。。


 ただ、あの受付嬢は怖いので別の人が望ましいけど、無理なら我慢して交渉しようと思っていたんだ。

 だけど、何とか足りたものの、残金が乏しい……銀貨7枚と銅貨46枚が残金だからギリギリだ。

 なんせ道具屋のカウンターに全ての金を出して、頑張って店員と共に数えたんだから間違いない。


 なのでこの際、道具屋の片隅にどういう訳だか薬草の若芽を発見したので、

 いくつかせしめて花壇で促成栽培しようと思ったんだけど、実はその薬草は道具屋の家の子が栽培していたみたいで、交渉の結果……なけなしの金から小遣いとして渡す事になった……何とか手に入った。


 若芽5つで銀貨5枚は酷いぼったくりだ。


 足元を見やがって、あの小僧……と、言っても多分年上。

 前世のオレぐらいの年かな、なんでも薬師を志しているらしく、まずは薬草の自作に挑戦しているらしく、熟成の話はさすがに知っていた。

 普通なら師匠に付いて6年弱と、先輩風をひけらかすところだけど、どうやら薬師の師匠を探していて、どんな場所でも行く覚悟があるとか、そんな事を言われてうちの師匠の事を話したら、師匠の新たな弟子になってしまいかねない。

 それではオレの秘密も色々とバレるかも知れないので、残念だけど薬草はそのまま使うのだと言って、薬の事は何も知らないフリをした……ごめんな。

 なので回復薬にしてやろうかと言う、彼の親切も断るのに苦労した。


 急ぐのでと、それで何とか誤魔化して現在に到ると。


 ◇


 だけどあれだな。


 もし、尾行の連中の目的がオレを誘拐か殺すかのつもりなら、誰かの恨みを買った可能性があるものの、そんな複数の害意の持ち主を雇うとなると、かなりの金が必要になるだろう。


 なのにそこまでとなると相当に限られる。


 さすがに回復薬の売りのライバルの線はまず考えられない……初級のみなので8掛けでギルドに売っても銅貨16枚。

 なので1000本売っても銀貨800枚、つまりは金貨40枚にしかならないのだ。

 普通の薬師は薬草の生息地に通って採取しないといけないので、年間の生産量はオレに及ぶべきもない。

 毎日通って月に1500本と言いたいが、若芽までは比較的早く育っても、周囲の魔素が余り濃くないので、熟成までは時間が掛かるのが災いしてそんなに作れない。


 となるとその1割か2割が精々って事になる。


 そんな状態なら余計に収入が減るのは困るだろうけど、その収入の中からライバルを害する存在を複数雇える余裕があるのかって話だ。

 元々、師匠の家は村外れにあるし、オレも普段から外出はしないので……薬草ばかり作っているからそんな暇は無い……他人との接点が殆ど無いので、そもそも恨みの買いようがない。


 確かにミステリアスな状態なら誘拐の可能性はあるだろうけど、今はかつて着ていた普段着で行動している。

 かなり千切れてウエスに使って消耗したけど、実家から持ち出した普段着はまだいくらか残っていて、貴族の子息の普段着となれば、そこらの平民の服より上等なので、ミステリアスとの相違点は比べるべくもない、と思う。


 いや、直せるのは直したのよ、もったいないから。


 だけどさすがに風の中級攻撃魔法を受けた対象の身体の怪我を防いだ代償に、あらかた千切れてボロボロになっていて、奥のほうの服が何とか修繕可能だったぐらいで、後はウエスにするしかなかったんだ。

 まあ、端切れになった元服を束ねて、ウエスタイプの雑巾として使い回したけど。

 それはともかく、その限られた相手となると、まず数人。


 その中でも1番なのが、多分だけど弟だろう。


 前回の面談で洗いざらい話した事で辺境伯が調べる羽目になったから、それで恨みはかなり買っていると思うんだけど、それで殺し屋を雇うかと言えば実は自信が無い。


 なんせ記憶の中の弟は兄想いの純粋な奴で、とても悪事を働けるような存在とは思えないんだ。

 まるで子犬のような瞳でさ、当時のオレはあれにすっかり騙されていたんだなと思いはするが、色々と記憶の相違があるからこそ何かをされたと気付くんであって、そうじゃなければ今でももしかしたら騙されたままだったかも知れない。


 ◇


 何とか作れて花壇は元に戻した。


 花壇と言っても財布に直に土を入れる訳ではなく、花壇のようなマットレスと言えば良いかな。

 だから普段は畳んでマジックバッグの中に入れておけるんだけど、長期に入れておくと排水の関係で根腐りするので時々出して水を抜かないといけないのだ。

 さすがにこの異世界で高分子吸収シートは作れないので、それに似たナニカ……木炭を作って並べただけ……なんだけど、その関係でそいつを時々入れ替えてやらないといけないのだ。


 もちろん、湿った木炭は乾燥させて再利用するけどね。


 そうして畳むと言っても本当はクルクル巻いて土がこぼれないようにする必要があるんだ。

 だから簡単に敷設出来るんだけど、中を見る魔法を使われたら、とてもそれが簡易タイプの財布とは思ってくれないだろうね。

 財布の中身がただの荷物ならスルーされる大きさだけど、さすがにそこに薬草を植えていたら、まず間違いなく異端の研究と思われるだけだ。


 危険な植物の栽培をしていると。


 そんな疑いを持たれたら、そう簡単には解放されないだろうし、そこで余計な事……精霊の関係……が漏れたりしたら、研究対象として生涯をそれに強制的に費やされる可能性もある。

 現代社会だと妄想だと言われそうな想像だけど、ここ異世界では結構現実的な危険として、今でも行方不明になっている研究者が何人かは出ているぐらい、人権より儲けを優先されると言うか、それだけモラルが低いって事なのかな。


 ◇


 結局、早朝まで回復薬作りをやる羽目になったものの、睡眠不足は水化して誤魔化した。

 実は水化すると不思議と体調が良くなる……長期は精神疲労が出るけど……ので、二日酔い対策や睡眠不足対策に使ったりする。

 さすがに連日はしないので、多分精霊が身体の不調を水化したのを幸いに調整してくれているんじゃないかと思っている。


 この水化だけど、恐らくは精霊化だと思う。


 だけど精霊に化けると言うか、精霊の真似をしているつもりなので、水の精霊もどき化の略で水化と言っているんだ。

 だってオレは人間なんだし、精霊になるとかおこがましい事は到底言えないので、あくまでももどきのつもりだ。


 精霊になったとか、魔素の扱いのプロになったと自称しているみたいで、とても恥ずかしくてそんな事は言えない。

 まだまだ未熟だと自認しているので、限りなく近い別のナニカなのだ。

 

世界のミニ知識


神聖魔法の中に、生活魔法のひとつである財布の中を見られる魔法があり、犯罪者の財布の中を調べられるのだけども、実は精霊魔法ではそれに干渉する事が出来、神聖魔法は劣化版なので、ただ見るしか出来ないだけなのである。

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