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アイテムボックス? いや、違うだろ

 

 恐らくこれって水の才覚がかなり補佐しているよな。


 そうじゃないとイメージのままと言っても、ここまでの完成度は無理だったろう。

 この才覚と言うのは恐らく、精霊からの好感度のようなものなのだと、今では思えるようになってきた。


 小さな部分だけど、自分ではどうしようもない物が巧い具合に収まったり、理論的にはいけそうなのに、これをどう繋げればって時に、良い感じに繋がったり、今回みたいにアイテムボックスの中の水を、手の平への誘導方法に困れば導いてくれるような感覚。


 しかもそう信じれば効果が強まるような感覚。


 ならば水よ、水の精霊よ、左手から水を取り込む事も可能だよな。


 おお、いけそうな感覚。


『取水』


 おや、さっきは気付かなかったけど、タンクに水が入っていくような感覚があるぞ。

 そう、ビルの屋上にあるようなでかいタンクに水が注ぎ込まれていくような。

 かなり使ったのか半分ぐらいになっているタンクに、今、左手からの水が注がれていく。


 精霊さん、ありがとう。


 うん、やっぱりそうなんだね。


 滝のように入っていくようになったし。


 もはやこれ、左手から吸い込んでいるよ。


 うお、吸い込まれる~


 なんてね。


 ◇


 内蔵水タンク……もはや使い道が固定された。


 胸を直接開口部にするのが気持ち悪いと感じたからなのかあれ以来開かなくなり、必然的に左手からの取水のみの手段になった結果、水以外を取り込めなくなってしまったようだ。

 仕方が無いので改造財布の中の花壇の水撒きに利用しようと思えば、今まで魔力が吸われていた感覚が微量となり、あれは水を生産して供給していたのだと知った。

 後、ステータスがまた変わり、魔力の量に苦労する事が無くなった。


 どうやらオレが精霊の存在を実感出来たのが切欠だったらしく、今のステータスはこうなっている。


 火5・土5・風5・水60・光10・闇5・空5・生活(水5)・精霊・魔力995(+65535)


 これは精霊魔法という、かつて森林族が操っていたという伝説のアレかな。

 かつて、人族至上主義とか言う下らない思想に毒された連中によって迫害され、彼らは今では森の奥深くに隠れてしまい、本当に伝説の存在になってしまっているらしいけど、これに熟練したら逢えないかな。


 と、言っても特別な事をする訳じゃない。


 ただ、魔法をあれこれといじくる時に、傍らの存在を信頼して、足りないところを助けてもらう感覚と言えば良いか。


 それをやるだけなんだよな、オレの場合。


 だけどその感覚に慣れると、わざわざ魔法を作ろうと考えなくても、これをこうしたいと、まるで相談するかのような思考になると、それを導いてくれるような感覚になるんだ。


 そうして魔力の量だけど、()内の数値が必要量を補佐する感じで、必要が100なら、そのうちの60を分担してくれるような。

 これは恐らく、水60の数値が関わっているのだろう。

 だから自らの魔力量が1000必要な場合、まだ足りないけど600の補佐があれば発動は可能になる。


 本当に精霊さんには感謝しか無いよ。


 ◇


「随分遅かったの」


 気付いたら夜だった。


 いやね、川岸で魔力循環をしながら、さっき感じた精霊らしき存在を感じようと座禅を組んでいたんだ。

 そうして知らないうちに一体感と言うのかな、たゆたう水に同化したような気分のまま、空腹になって気付いたら夜だったと。


 この方法で馴染んで行けば、未来が明るい予感もあるので、これから毎日続けてみようと思っている。


「あれはどうなったのじゃ」


 水以外入らなくなった。


「ほっほっほっ、なれば動く水がめかの」


 それは嫌だ。


 けど、そうだな。渓谷の清水を満載にすれば、歩くオアシスになりそうな。


 まあいいや、とりあえず回復薬を拵えて、今日も両方のギルドで売って資金にしよう。

 なんせあの呼び出しで大赤字になっちまったから補填しないと。


 ◇


「そう言えばまた辺境伯から手紙が来ておるぞぃ」


 うえっ、またなの? 勘弁してよ。


 馬車で1ヶ月も掛かるってのに、どうしてまた呼び出すのかな。

 テレポートでもあれば構わないけど、移動の費用が大変なんだからな。


 と、愚痴ってみても始まらない。


 部屋で服を脱いで財布に入れ、身の回りの物もついでに入れ、精霊の導きのままにさっきの感覚を思い出し、さっきの場所近くの川の感覚を思い出す。


 いやね、精霊が導いてくれているんだ。


 その導きのままに、身を委ねる。


 ◇


 ザッバーン……うお、あれ、水になったはずじゃ?


 だけど成功した。


 師匠の家のオレの部屋から、この川までの移動。

 自分が水になった感覚で、精霊に導かれて川まで散歩した気分。

 その気分のまま水に飛び込んだのに、何故か元の身体に戻っていた。


 近くの水場への転移のような現象だけど、気分的には水になって散歩したって感覚。

 つまり、時間的に見ると、外からは一瞬でも自分の感覚では時間が経過しているって感じかな。

 それでも散歩と言ってもベルトコンベアの上を歩く感じで、速度はかなり速かったような。

 でも走るって感覚じゃなくて、あくまでものんびりと歩いている感覚なんだ。


 この移動方法なら馬車要らずで早く着くだろうけど、困った事がひとつ。

 水と同化する感覚のせいか、服を身に付けているとダメみたいなんだ。

 早朝か夜間の移動に限定しないと、下手したら街道の王様に……嫌だぞ。


 裸族とか言われたら赤面する自信はあるし、辺境伯に知られたら痴態が趣味な変態紳士かと勘違いされそうで、そうなったら以前の好意的な雰囲気が霧散する事間違い無しだ。


 でもなぁ、またあの往復の資金を使うのは嫌だし、何とか人の居ない場所で顕現するしかないな。


 それからも練習を続けているが、やればやる程に慣れていき、もう水浴びの為に水を用意しなくても良くなった。

 まるで川が近くに引っ越してきた感じで、全裸になって少し歩けば川の中なのだ。


 なので財布の中の花壇の片隅にはタオルや石鹸が用意され、川原で身体を洗って川で漱ぎ、温風乾燥機の魔法で乾かしてそのままベッドまで散歩で帰る。


 毎日の水浴びは快適です。


「段々と人間離れしておらぬかの」


 それを言わないで。

 

世界ミニ知識


魔力に馴染んだ身体は大気中の魔素に晒されており、それを取り込んでいるうちに次第に魔素との関連性を深める結果となり、更には食物にも含まれている魔素を身体に取り込んでいけば、魔素化と呼ばれる現象を行使出来るようになる。

多分に素養と理解が必要になるが、柔軟な心の持ち主以外はその現実には耐えられないと言われている。

また、魔素化は精霊化とも呼ばれているとか。

ちなみに精霊とは、遥かな過去からの様々な意識が昇華したもので、人だった意識の欠片や動物や魔物の欠片が合わさってひとつの存在を形成したものと言われている。

そこに悪意があれば悪霊になりそうなものだが、清浄な存在以外は淘汰されるらしく、精霊と呼ばれる存在で悪意の塊は現存していない。

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