吹っ飛ばされて気が付いた
よろしくお願いします。
15才の正式測定で魔力量が規定に満たなかったので、廃嫡のうえ放逐された。
私にはどうやら魔法の才覚は無いようで、3年前から弟と相談して当時才覚を発揮した彼に後を委ね、自分は彼の護衛として生きていこうと剣術を磨くことにした。
弟は更に才覚を伸ばす修行をして、私はその護衛になれるように剣術を磨く。
それでいけると思ったのに、どういう訳だか追い出されたのだ。
それでもしばらくの猶予は貰えたので弟との別離の挨拶の時、彼が跡を継いだら戻って来て護衛をしてくれと言ってくれたので、近くの町で冒険者でもしながら腕を磨こうと思っていた。
彼との約束を胸に秘め、平民となる覚悟も無いままに、それでも何とか生きていこうと、とりあえず師匠の元に身を寄せようと思い、荷物を纏めて屋敷を出た。
「まだ居たのかっ、風の嵐っ」
いきなりの言葉と共に放たれた風の魔法によって、屋敷の玄関から飛ばされた。
荷物がクッションになって何とか重傷は免れたものの、意外な現実を知る。
◇
◇
◇
気付くと身体中が痛い。
ううん、何で、こんなに、痛いんだ。
ああ、あちこちすりむいて、だけど血はそんなに出てないな。
骨も折れているようには……。
何とか動けるか。
ここは……外……なのか。
「知らない茂みだ」
いやね、外だから天井は無いんだよ。
いつかは言ってみたい台詞だったんだけど、天井が無いなら仕方が無い。
それは良いが、ここは何処だ。
オレ、何でこんなところで寝てんだ。
昨日、何してたっけ。
朝は普通に学校行って……。
ああ、飲み会に誘われたな。
先輩のおごりかと聞いたら、そうだって言うから……。
それで参加して……。
乾杯して……飲んでて、しばらくして河岸を変えるって言い出して……。
それで移動中に……チラシもらったな……それ見てて。
気付いたら先輩とはぐれていて……。
探して……疲れて公園のベンチで休憩して。
何かと話したな……。
えっ、猫?
オレ、猫と会話してたの?
喋る猫とかレアって言うか、本当に喋ったのか?
まあ、多分、オレの独り言に相槌みたいに鳴いただけだろう。
で、そのまま寝ちまったのか?
となるとここは公園か何かで……。
何だ、この荷物は。
いや、待てよ、確か……。
そうそう、腹が減ったからラーメン食おうとしたんだったな。
そこで自由業の方とぶつかって……。
そうそう、言い合いになったんだった。
それで、殴られた……のかな?
突き飛ばされたような気もするが、とにかく後ろによろよろと……。
そして何かの衝撃を受けて、気付いたらここだ。
◇
かなり記憶がはっきりして来た。
それと共に周囲の状況と、記憶の整理も幾分と進んだ結果、今の状況が少しずつ分かってくる。
どうやらあれで死んで転生になったみたいだ。
と言うのも魔法が使えるって記憶があるんだよ。
その記憶のままに水を出して汚れた手足とか顔を洗ったんだけど、案外スムーズに発動するからさ、練習をした事があるんだよ。
そんな記憶もちらほらと。
それで今の状況だけど、どうやら廃嫡になって放逐になったみたいだ。
風の魔法を食らって飛ばされてこの茂みに突っ込んだみたいでさ、荷物がクッションになったせいか、大怪我しなかったみたいで幸いだった。
記憶が蘇って気付いたら、死ぬ寸前だったとか洒落にならないしな。
その点は良かったけど、どうしてもっと手前で思い出さないかな。
もう手遅れだろ。
まあこのままここで寝ているのもなんだし、もう少し落ち着いたら移動しないとな。