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チートスKILL ~中途半端な転生者~  作者: 奥 悠人
4章 冒険しても いいかも?
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パーティー&パンティー

 ギルドの入口に立っているフローシアを見つけた俺は、驚きのあまり困惑する。

 美人で胸が大きい冒険者が付き添ってくれるとの話だったが、まさかフローシアが来るとは思っていなかったからだ。


 なぜ彼女が初心者冒険者の手伝いみたいな仕事をしているのだろうか?


 こんな仕事をするより仲間と一緒に違う依頼を受けたほうが、はるかに稼げるはずである。

 それに、以前俺との取引で手に入れた宝石を売ってしまえば大金持ちになって、働く必要もなくなるだろうに。


 だけど、今はそんなことを考えている暇はない。


 組長に背を向けていた俺は、あわてて振り返るとカウンターに両手をついて立ち上がった。


「組長、チェンジで! 違う冒険者の方に代えてください!」


 いくら組長が言ったとおりの人物で、俺のストライクゾーンのど真ん中だったとしても、フローシアと俺は訳ありの関係だ。そのことを彼女は知らないだろうが、何かの拍子にバレないとも限らない。


 もし、以前の取引したゴブリンであることが知られてしまったら、どうなってしまうのだろう?


 ふと思った。


 ――嫌あぁぁぁ、絶対にスパイか工作員と勘違いされるうぅぅぅ!!


 まずいぞ、それだけは避けなくては。


 期待していたのはエッチなドキドキハプニングであって、ハラハラドキドキするようなサスペンス展開じゃない。


 だいたい「DT湯けむりサスペンス」なんてテレビドラマが放送されたとしても、誰も見たくないだろう。

 俺のほうも、そんなドラマの殺され役で出演するのは願い下げだ!


 唖然としていた組長が、ハッとした表情をする。


「なんでだ!? 俺が言ったことにウソはなかったはずだぞ。ちゃんと美人で、おっぱいがデカい冒険者だ。いったいどこに不満がある?」


 組長は俺の発言に戸惑っているようだ。


「不満はありません。ただ、こちらにも、いろいろと事情がありまして……」


「そうは言われてもだな、もうここに来てもらっているんだ。アイツに支払われるはずの報酬――十万ピエンを負担してもらうことになるが、払えるのか?」


 なにぃ!? チェンジにカネを取るだって!

 普通は一回くらい無料じゃないの?


 でも、納得するしかない。

 

 ならば取るべき手段は、ただひとつ。


「それなら、付き添いの方は不要です。一人で行きます」


 Mランクで薬草採取の依頼だ。

 道中も危険がないようなら、一人でも大丈夫だろう。


「しかしだな、その場合でも十万ピエンの負担は変わらんぞ」


 組長はヤレヤレといった感じであきれた表情をしているが、そんなことはわかっている。


 俺は不敵な笑みを浮かべた。


「くっくっくっ、大丈夫です。私に考えがあります」


「なん……だと……。この状況から解決する、いい方法があるっていうのか?」


 あり得ないといった表情をする組長。


 それが、あるんだなぁ。しかも簡単な方法で。


「ええ、あります。彼女が同行したことにすればいいんですよ」


 組長はイスから勢いよく立ち上がる。

 

「そうか! 実際は同行していないのに、したことにするわけだ!」


「名付けて『カラ同行』です。組長の権限を使えば、これくらいのことならどうとでもなるでしょ?」


「……おめぇ、スゲェことを考えやがったな。天才だ」


 尊敬の眼差まなざしが、俺に注がれる。


 でも、これって人に褒められるような方法ではないよね。絶対に悪いことのはずだから。

 とはいえ、俺の生死にかかわることだから、神様も許してくれるだろう。


「そんな、天才だなんて言いすぎです。組長たちがやっている助成金詐欺にくらべたら、まだまだですって」


「おいおい、勘違いしてもらっちゃ困る。あれはグレーゾーンだから、いいんだよ!」


 そういえばハロワさんも、そんなことを言っていたな。

 

 でも、俺から言わせてもらうと十分にヤバい。

 冒険者になると一回だけもらえる助成金が、毎年もらえると言って言葉巧みに一般人をそそのかし、その手数料で儲けようとするのは、どう考えてもアウトだ。

 監査が入らないことを祈ろう。


「ところで話は変わるが、おまえが言った方法、できなくはない」


 組長はイスに座りながら、真剣な表情で言った。


「それならよかった! これで問題は解決ですね」


「いや……問題は、アイツがそれで納得するかだ」


 組長はそう言って頭を抱えた。


 そのときだった、背後から何者かに肩をつかまれたのは。


 ――ビクッ!

 

 まるで背中に氷を入れられたような反応が体に起こり、そのまま体が金縛りになったように硬直した。


 いきなりのことで驚いてしまう俺。


 顔さえ横に向けることができないので、頭の中で不安が広がっていく。


 そうしていると、甘くて爽やかな香りをした風が俺の真横を通った。


「おはよう、組長さん。やけに時間がかかるねぇ」


 組長は困ったような表情をして答える。


「……よっ、フローシア。悪いな、待たせて」


 いい香りの主はフローシアだった。


 最初に彼女を見かけてから、少し時間が経っている。

 すぐこちらに来なかったところをみると、離れた場所で呼ばれるのを待っていたようだ。

 でもあまりにも遅すぎて、痺れを切らせたらしい。


 フローシアは、俺と組長の顔を見比べながら神妙な顔つきをする。


「何やらずっとめているみたいだね、組長。いったいどうしたんだい?」


「いやな、そいつがおまえさんの手伝いをいらないって、急に言い出してな。一人で依頼をやるんで、おまえさんは来なくていいんだとさ」


 するとフローシアは俺をにらみつけ、怒りをあらわにする。


「はぁ? なにかい、私が気に入らないってのかい!」


「ち、違います!」


 だって、以前あんな風に出会っていなかったら、大喜びで歓迎しているよ。


「じゃあ、どうしてだい? 理由を言ってみな」


「……教えたくありません」


「そいつはダメだね。ちゃんと答えてもらおうか」


「…………理由は、一人でやりたいからです」


「それじゃ答えになってないね。こっちは理由を聞くまでキャンセルは認めないから、さっさと言っちまいな」


 フローシアはそう言うと、俺の頭を鷲掴わしづかみにした。


 ――くぅ、痛てぇ!


 彼女の怒りはもっともなので、俺は声を出さずになんとか耐える。

 この痛みに耐えれば諦めてもらえるかもしれないという、淡い期待を抱きながら。


「で、どんな理由だい?」


 フローシアは指先の力を少し抜いて、俺に答えるように促した。

 

 さすがにウソでもいいから答えないと、許してもらえないか。


「実を言うと、子供のおつかいくらいランクの低い依頼なので、なんだか手伝ってもらうのが急に申し訳なくなってしまって……」


 もちろんウソである。


 でも、ちょっと理由が苦しいか?

 まあ、口は達者だから、多少のことなら言い逃れできるだろう。


 そう思っていると、頭に激痛が走った。


「痛たたたたたたた!」


 先ほどまでとは比較にならないくらいの痛み。


 俺は無意識に声が出ていた。


「私は最近いろいろあって、人間不信なんだよ。相手がウソを言っているんじゃないかって、すぐに疑っちまうくらいにね。さて、アンタはどうなんだろうね」


 フローシアの指先に、さらに力が入る。


 おそらく、これが彼女の本気の力。


 とてもじゃないが、我慢できるような痛みじゃない。


 俺は耐えきれずに彼女の手をつかむ。


「ギブギブ! 話します、本当のことを話します。だから、放してぇぇ」


 するとフローシアは「やっぱりか」と言って、指先の力を緩めた。


 痛みから解放された俺は、たまらず床にしゃがみ込むと、頭をさする。


 はぁー、死ぬかと思った。


 そう思っていると、彼女は俺の前に立って、上から見下ろした。


「それで、本当の理由は?」


 さすがに、もうウソを言う気力はない。

 今度また同じことをされたら、次は頭が割れてしまうだろうし。


「……それは知っているからです」


 つぶやくように言って、俺は顔を上げた。


「はあ? 知っているって何をだい?」


 フローシアは不思議そうな顔をしている。


 すぐに答えを言ってもいいが、そのまえに周りを見て、周囲に人がいないのを確かめる。


 幸いにも俺たち三人以外には近くに誰もおらず、少し大きな声で話したとしても、ほかの誰かに聞かれることはなさそうだ。


 でも組長に聞かれるのはマズいかもしれない。


 これから俺が話すことは、フローシアのことについて。

 組長はその内容を、彼女から知らされていないかもしれないからだ。


 俺はヒソヒソ話をするように頬に手を当てると、フローシアだけに聞こえるように声を絞る。


「それはですね、あなたの本名がフローシア・ド・ビンボーで、王族だということをですよ」


 それを聞いたフローシアは、一瞬固まったあとに鬼のような形相になり、カウンター越しに組長の襟元えりもとをつかんだ。


「まさか、私の素性を全部話したわけじゃないだろうね、コワッソー!」


「そんなわけ、ねぇって!」


 否定する組長。


 フローシアは組長の襟元えりもとをつかみながら、ビシッと俺を指差す。


「じゃあ、なぜコイツが私の秘密を知っているってのさ!」


「俺が知るわけがないだろ。ほかのヤツが話したんだろうよ、きっと」


「それはないね。ほかに知っているのはリバーサイドとダンボルの二人だけで、今は牢屋の中だよ。そもそも契約魔法で、私がいるところ以外では話すことができないからね」


 フローシアは組長の襟元えりもとを強く引っ張り、顔を近づける。


「詰みだよ、コワッソー。諦めて認めな」


「そう言われても、知らないものは知らねぇんだよ。ただ、そいつは異世界転生者だ。そういうのを知れる力を持っているんじゃないのか?」


「転生者だって!? ウソでしょ?」


 フローシアは驚いた表情で俺を見た。


「いや、本当だ。ただ転生者のくせに、この仕事には向いていないくらい冒険者ランクの測定値は低いけどな」


 それを聞いてフローシアは組長から手を放し、腕組みする。


「そういや確か、転生者の中には鑑定とかいうスキルを使って、相手のことがなんでもわかるヤツがいるって話があったね……」


「それだ!」


 組長は命が助かったというような顔をすると、天の助けと言わんばかりに俺を指差す。


「鑑定スキルを持っているぞ、そいつは!」


 いやいやいや、違う違う違う!

 俺が持っているのは、鑑定は鑑定でも、おっぱい鑑定だって!


 だいたい、これはそういうことを調べるスキルじゃないし、ステータス偽装の産物だから使うこともできないスキルなんだよ。


 でも、それはフローシアには言えない。


 たとえ使うことができないスキルだとしても、俺がおっぱい鑑定なんてスキルを持っていると知られたら、また大変なことが起こるに決まっている。


「コワッソー、それって本当なのかい? ウソをついて逃れようってんなら、ただじゃ済まさないよ」


 フローシアは疑うような目でコワッソーを見た。


「本当だって、ちゃんとこの目で確認したから間違いないって! そいつが持っている鑑定スキルは、()()()()だ。おまえさんの胸だろうが素性だろうが、調べることは造作もないことだろうよ」


 組長、言い方、言い方! バレちゃう、バレちゃう!


「なるほどね……。わかった、信じようじゃないかい」


 フローシアは組長の襟元えりもとから手を放すと、俺のほうに向き直る。


「だけど私と一緒に行くのが嫌ってのは、私のことを知っているからって理由わけじゃないんだろ?」


「もちろんです。それと誤解されたままでは嫌なので言っておきますが、あなたの素性を知っているのはスキルなどを使って調べたからではありません」


「ということは、やはり誰からか聞いたんだね?」


 俺は覚悟を決めて頷く。


「ええ、そのとおりです」


「いったい誰だい、その不届き者ってのは。もちろん教えてもらえるんだろ?」


「はい……」


 俺はゆっくりとフローシアを指差す。


「それは、あなたです」


 俺の告白に、フローシアは目を丸くする。

 そしてそのまま俺の胸ぐらをつかむと、しゃがみ込んでいた俺を強引に立ち上がらせた。


「それって、いつだい!? アンタの年齢から考えると、二十年も三十年も前ってことはないだろうけど、私にゃアンタみたいなヤツに会った記憶はないよ!」


「当然です。それを知られたくないのが理由ですから」


 フローシアは俺の答えに不満そうだったが、俺の胸ぐらから手を放した。


 手のひらにアゴを乗せて、フローシアは考え込む。

 しばらくすると、彼女は俺の目を見た。


「……言う気はないのかい?」


「はい」


 俺は頷くと話を続ける。


「そういう理由わけなので、一緒に行くのを諦めてもらえませんか? あなたの正体は誰にも話しませんから」


 フローシアは「チッ」っと舌打ちをする。


「一つ聞くが、その場合、私がもらうはずの報酬はどうなるのさ?」


「心配いりません。私のほうでフローシアさんに同行してもらったように申請しますから、報酬は支払われます」


「そりゃダメだね。私は不正が嫌いだし、もしそのことがギルド本部にバレでもしたら、三ヶ月間は謹慎する羽目になっちまうよ」


 フローシアは考えることなく即答した。


「わかりました。それなら、あと払いでどうでしょう?」


「それこそダメだね。あと払いなんて言葉の響きはいいが、結局のところは借金だ。私が一番嫌っていることだから、他人にもさせられないよ」


 そういえばスゴい借金を背負っていると言っていたからな……。

 大変な目に合ったからこそ、言える言葉か。


 ……となると、あとは組長に前借りするくらいしか思いつかない。


 けれど、それこそ本当の借金だ。


「どうしてもダメですか? フローシアさんが簡単な依頼を終わらせる間に、こちらも依頼を終わらせます。そうすれば、より稼げるはずです。だから、どうかお願いします」


 俺は頭を下げて頼み込んだ。


「でもね、こっちは簡単に終わらせられる依頼なんて、すぐには見つからないよ。パーティーを解散して、今は仲間がいないからね」

 

 そう言えばさっき、仲間は二人とも牢屋に入っているって言っていたっけ。

 パーティーも解散したみたいだし、何か大変なことがあったんだろうな。


 …………あっ!?


 もしかして、あの宝石の取り分でもめたとか?

 仮にそうだとすると、俺にも宝石を渡した責任があるじゃないか……。


 こりゃ、ますます俺の正体を知られるわけにはいかなくなったぞ。


「あのー、一緒に行くのを、どうしても諦めてもらえませんか?」


「ああ、絶対に引き下がらないよ。いま私ができる安全な仕事は、これしかないからね」


 フローシアの表情から、揺るぎない決意が見て取れた。


 こりゃ、諦めさせるのは無理かもしれない。


 お姫様ってことは、たぶんワガママだろうから一筋縄ではいかないだろう。それに万策も尽きてしまっている。


 ――ということで、もうお手上げだ。


 俺はフローシアに、しぶしぶ条件を提示する。


「わかりました。では約束してください。もし私のことを思い出したとしても、危害を加えずに見逃す。それが条件です」


「いいだろう。それじゃあ、こっちからも条件だ。私に手を出したら、なんでも一つ言うことを聞いてもらう。殺されても文句は言わない。それでどうだい?」


 フローシアはそう言うと、手を差し出した。


 どうやら商談成立の意味で握手をしたいらしい。


 俺はそれに応じようとしたところで、相手のわなに気づく。


「……まさかとは思いますが、握手をしただけで『言うことを聞け』とは言いませんよね?」


 フローシアは一瞬、キョトンとした表情を見せたが、意味がわかったのか腹を抱えて笑い出した。


「アハハハハ! 面白いことを言うじゃないのさ。確かに握手をするには私に手を出す必要があるからね。でも手を出すってのは、エッチなことをするほうの意味だから安心しな」


「よかった、試されているのかと思いましたよ」


「気に入ったよ。アンタ、名前は?」


 やっぱり聞いてくるよね。


「答えなきゃだめですか? あんまり言いたくないんですけど……」


「そりゃまた、なんでだい? 名前くらい、いいだろ?」


 そうは言うけど、恥ずかしいんだよ、今のプータローって名前。人間が相手だと、意味が通じてしまうから。


 うーん、そうなると偽名か。

 でも、彼女はウソが嫌いと言っていたからなぁ。


 ……仕方がない、このまま名乗ろう。


 どうせ今の名前じゃ、彼女が俺の正体に気づくことはないだろうし。

 まあ、ちょっと恥ずかしいのを我慢しないといけないけどね。


「……プータローです。只野ただのプータロー。プータローが名前で、只野ただのが家名です」


「それって偽名かい?」


 真顔でフローシアは尋ねた。


「いいえ。一応、この世界での本名です……」


 それを聞いたフローシアは、表情を変えずに組長のほうを振り向いた。


「そいつの言っていることは本当だ。冒険者手帳にも、その名前でちゃんと登録されている」


 組長の言葉を聞いたフローシアは、いきなり吹き出す。


「ぎゃはははは! なんて名前つけてるのさ! あー、おなか痛い」


「こっちにもいろいろ事情があるんですよ。ところで私のほうはあなたを、どう呼べばいいでしょうか?」


「フローシアで構わないよ」


 そう言うとフローシアは、再び手を差し出した。


 俺はそれに手を差し伸べて、ガッチリと握手を交わす。


「短い間でしょうが、よろしくお願いします、フローシアさん」


「ああ、こちらこそよろしくな。プ、プ……プ、ウププププっっ」


 笑いのツボに入ったらしく、必死に笑いをこらえるフローシア。

 握手を終えるとすぐに後ろを振り向き、口元を押さえながらダッシュで数メートル離れた。

 そして、その場所で必死に笑いをかみ殺しながらしゃがみ込む。


 そのとき、事件は起こった。


 なんとフローシアがしゃがんだ拍子に、腰に下げていた剣が背中側にずれて、マントがペロンと上にめくれてしまったのだ。


 もちろん背中が丸見えになる。


 やはり以前と同じで、背中のほうに身を守る防具類は見当たらない。

 見えるのは、可愛らしい白いパンツだけだった。


「「あっ……」」


 組長と俺の驚きの声がハモった。


 パーティーを組むことになって、いきなりパンティーが見られるとか、そんな漫画みたいなエッチなハプニングにドキドキする俺。

 だが、見続けるのはマズいと思ってすぐに顔を背けると、組長と目が合ってしまった。


 組長が小声でささやく。


「おい、おまえ。マントを直してやれ」


「えっ!? 私がやるんですか?」


 俺も組長に合わせて、小さな声で答えた。


「おまえのほうが近いじゃねーか」


 確かに近いけど、そういう問題じゃない。


「だったら、口で言いましょうよ。もちろん組長が」


「バーロー、アイツはマントの中を見られたのを知ると、めちゃくちゃ怒る。だから、こっそり直してやるしかないんだよ」


 なんだよ、それ……。

 見られて怒るくらいなら、ちゃんとした鎧を着たらいいのに。


「それならいっそのこと、このまま背を向けて待ちませんか? 見ていないって言えば、穏便に済ませられるかもしれませんし」


 もう、この方法しかないだろう。

 俺は台風の中、屋根に上って瓦を直すような危険なことはしたくないし。


「そりゃ、もう無理だな。ほら、入口のほうを見てみろ」


 そう言われ、ゆっくりと後ろを振り向く。

 

 げげっ! 冒険者たちがいっぱいやって来た!


 あわてて正面を向く。


「組長、マズいです。このままだと確実に、フローシアさんはパンツが見られたことに気づきます」


「そのとおりだ。だから、早くやれ。お前たちはもう仲間だろ」


 『仲間だろ』とは、なんて便利な言葉なんだろう。

 どんな危ない橋を渡る必要があっても、その一言ですべて解決するからだ。


「……わかりました」


 俺は観念して、やむを得ず了承した。


 嫌な予感がする。


 そう思いながらも、フローシアの後ろからこっそりと近づく。

 そして、剣に引っかかっているマントの裾をそっと持ち上げた。

 

「……アンタ、なにやってんだい?」


 後ろを振り向いたフローシアと目が合った。


 やはりこうなってしまったか……。

 十中八九、こうなるんじゃないかと予想はしていたけど。


 とりあえず答える。


「えっと……、慈善活動?」


 我ながらナイスな返答である。


 だってそうだろ? これはフローシアを救うためのボランティア活動だ。


「へえー、私にゃ痴漢活動にしか見えないね」


 うまい! 座布団十枚!

 

 おっと、感心している場合じゃなかった。


「いやいやいや、違いますって。パンツが見えていたんですよ」


「はぁ、言っちまいやがった……」


 後ろのほうで組長の嘆く声が聞こえる。


 それを聞いて、俺も「しまった!」と思ったが、時はすでに遅かった。


 そのあと、俺は当然怒られた。

 でも組長がかばってくれたおかげで、大事にならずに済んだけどね。

 ただ、問題がないわけではなかった。

 フローシアが口を聞いてくれなくなってしまったのだ。


 こうしてフローシアと険悪なムードの中、俺は冒険者としての一歩を踏み出し始めることになる。

 ハラハラドキドキの冒険が待っているとも知らずに。

やっと3章以外の修正が終わりました。


一旦は、これで修正を終わりにします。

今後は4章の続きを書いていく予定ですが、誤字脱字、ストーリーの辻褄が合わない箇所は修正します。


まったりと書いていくので、時間がかかると思います。

気長にお待ちください。

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