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チートスKILL ~中途半端な転生者~  作者: 奥 悠人
3章 今日からブタは!!!
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到着、逮捕とカツ丼

「なんじゃこりゃー!」


 鏡を見た俺は、思わず叫ばずにはいられなかった。

俺は何事もなくオークランドに到着したが、門番のオークに不審者として捕まってしまい、検問所の一室にいる。

なぜ、オークが門番なのかは疑問に思ったが、ここは異世界、いろんな種族が同じ町で暮らしていてもおかしくはないはずだ。

それよりも問題は、鏡に映る自分の姿だ。

俺は人間になる薬を飲んで、イケメンの人間になれたはず。

だからこそ、今の自分の姿に驚きを禁じ得ない。


「オークか? 間違いない、オークだ」


 鏡の前で驚いている俺は、自分の顔をペタペタと触って形と感触を確かめた。

確かに鏡に映る生物はめちゃくちゃイケメンでスリムだが、俺がアニメや漫画で見たオークに酷似している。


「なぜなんだ……ウィンドウには人間に見えてるんだよね?」


「えぇ、私からは人間に見えてるわよ。だけど鏡で見た場合や、私以外の人からだと、オークに見えるようね。飲んだ薬の副作用かしら?」


 ウィンドウも首をかしげ、理由については知らないようだった。


「そうだ! 俺のステータスを表示してくれない?」


「了解よ」


 俺は自身のステータスを確認していなかったことを思い出す。

ここにヒントがあればいいんだけど。

ほどなく、目の前にステータスウィンドウが表示され、現在の自分の状態が表示される。

そこにはやはり人間と表示されておらず、バグっていたがオークと読める文字が表示されていた。


「やはりオークなのか……」


「みたいね、ブータローさん」


 いつの間にか、名前もサブローからブータローに変わってるし……

俺が絶望して机に突っ伏していると、部屋がノックされたので、俺はいつも調子で返事をする。


「母さん、あとにして……」


 しまったと、思う気力もない。

ノックしたのが誰であろうと、別にもういいや。

そんな状況の俺を知ってか知らでか、扉の向こうにいる人物はボケをかました。


「はーい、母さんだよ。って、だれが母さんや!」


 取調室の扉が開くと、パリッとしたスーツを着たオークが部屋に入ってきた。

俺が今いる取調室は四畳半くらいの大きさで、部屋には机と椅子があるだけで他には何もない。

壁には面通し用のマジックミラーが備え付けられており、俺はその鏡を見て自分の姿がオークだということに気づいたのだった。

先ほど部屋に入ってきたオークは取調官と思われ、俺の対面にある椅子に座ると、手に持ったどんぶりを目の前に差し出してきた。


「腹が減ったろ? まずはこれでも食べて落ち着きな」


 取調官のノリツッコミについてはスルーしたが、腹は減っているので食事はありがたく頂戴する。


「ありがとうございます」


 お礼を言うと、俺は久しぶりの温かいご飯に食らいついた。

見た目はカツ丼ぽかったが、やはり調味料が違うのか食べたことのない味だ。

こっちの世界には醤油しょうゆはないだろうし、砂糖も貴重品のようなので仕方ない。

それに、具材の下にあるはずの白米もパサパサしていて、俺の知っている白米とは程遠かった。

だけど、最近食べたのは保存食ばかりだったので、正直ありがたい。


「面白い味ですね。これってなんて料理ですか?」


「え!? 知らないのかい。オークランドじゃメジャーな料理なんだけど……」


 取調官は驚きの表情を浮べ、ますます疑いの目を向けてくる。

余計なことを言わなきゃよかった。

だけど、どうせバレることだし、ここは割り切ろう。


「実は、オークランドは初めてなんですよ」


「そうなんだ。この門から出入りするのは行商人ぐらいだけど、君は行商人には見えないね」


「まぁ、無職なんで……。ここには仕事を探しに来ました」


「へぇ、まぁいいや。そうそう、この料理はカツ丼、オークの肉が原料さ」


 俺は思わず口に入れいたご飯を吹き出した。

えっ!? オークの肉? オークって共食いするの?


「あれれー、オークギャグも通じないとなると、本当に違うところから来たみたいだね。ちなみに本当はブタの肉ね」


「驚かせないで下さいよ。実はオークの人と話すのも初めてなんですから」


 うん、嘘は言ってないな。

まだゴブリンと人間としか話したことないからね。


「あぁ、それで納得した。だから腰布一枚だったのか」


「あのー、それって変なんでしょうか?」


 俺の知っているファンタジー漫画では、オークの格好は腰布や全裸が多かった気がする。

たまに鎧を着たタイプもいたと思うが、目の前のオークはそれらとは違って人間が着るような服を身に付けていた。


「この国には、たまに人間が来ることもあるからね。彼らの要望で、お偉いさんが裸や下着だけの外出が禁止にしたんだよ」


 なるほど、だったらオークランドは意外と人間の町に近いのかもしれないな。

どういった経緯でそうなったかは不明だけど、この町で人間に戻る方法を探すのも悪くなさそうだ。


「じゃ、詳しい調書を取るよ。まずは名前と年齢を教えてくれる?」


「名前はブータローです。年齢は二十歳はたちになります」


俺はステータスに表示されていた内容を思い出し、刑務官に淡々と答えていく。


「お国はどこの出身かな?」


「わかりません。あっ、でも人間と暮らしてました」


 ゴブリンと暮らした記憶はないので、人間と暮らしていたことにする。

人間の暮らしというものは、異世界でもそう大差はないはずだ。

もし、そのことで質問されても答えられるし、それが正解だろう。


「名もない集落で人間に育てられたのか。だとすると、野良オークではないみたいだし、一般常識もありそうだ。受け答えもしっかりしているし、この町に入れても問題ないかな」


 おぉ、ありがたい。

意外にすんなりと、この町に入れそうだ。


「ところで君、お金って持ってる?」


「無一文です。この町で稼ぐ予定ですけど」


「あちゃー、それだとブタ箱行きかな……」


 刑務官は手で顔を押さえ、非常に残念そうな顔をした。

そして、調書にサラサラと何やら書き込んでいる。


「えっ!? もしかして通行料とか必要でした?」


「いや、オークだと必要ないんだけどね。君が布切れ一枚で町に入ろうとしたのが問題で、罰金が必要なんだ」


「そうなんですか……。で、いくら必要なんです?」


「罰金は金貨100万枚だね」


 俺はあまりの桁違いな罰金に驚いた。

え? 100万枚って、いったいどれぐらいの金額なの??

想像がつかない金額を聞いた俺は、椅子にもたれ、ぼうぜんと天井を見上げるしかできない。


「どちらにしろ、文無しならブタ箱に行って働いて稼ぐしかないね」


 刑務官は調書にポンっと印を押すと、どんぶりを片付けてさっさと部屋を出て行った。

ドアの閉まる音にふと我に返った俺は、もっと聞きたいことがあったのにと嘆いたが、後の祭りである。

 とりあえず、目下の問題である金貨の価値について推測してみる。

日本だと、下着での徘徊は迷惑防止条例違反に該当したはず。

罰金は50万円以下だったかな?

だとしたら、金貨1枚は日本円で0.5円程度の価値しかないのか。

驚かせやがって。

ってアホか! そんなの、ありえないじゃん……

金貨なんだし、どう考えても最低10,000円ぐらいの価値はあるだろ。

ということは、まさかの一生刑務所暮らし!?

そんなアンハッピーライフの予感に、俺は絶望するしかなかった。

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