プロローグ
2025.1.26 1章修正
「どこなんだ、ここ?」
俺が寝そべっていた場所は、辺り一面が真っ白の場所だった。とても広い場所で体育館のような施設かと思ったが、窓や扉は見当たらない。
俺はうろたえてしまう。目を覚ましたら、まったく見覚えがない場所にいたのだから当然だ。
そこで何が起こったのかと考えていると、一つの結論にたどり着いた。
「こりゃあ、親が引きこもりの支援団体に相談したんだろうな……。食事に睡眠薬を盛られ、眠らされている間にそいつらの施設に連れ込まれたと考えると、つじつまが合うし」
実は俺、ここ二年くらい家に引きこもっている。仕事を辞めてからというもの、ずっとゲームしたりアニメを観たりしてグータラな生活を送っていた。
だからそれを見かねた両親が、俺を引きこもりから脱却させようと強引な手段をとったのだろう。
俺はため息をついたあと、ゆっくりと立ち上がって頭をかいた。
「さて、困ったぞ……」
途方に暮れていると、突然正面から聞き覚えのない声が聞こえてくる。
「目が覚めたっスか?」
若そうな男の声。
だが、見える範囲には誰もいない。一応後ろも振り返ってみたが、それでも誰もいなかった。
もしかして、幻聴だったのか?
薬で眠らされていたわけだから、その可能性は充分に考えられる。
俺は首を傾げながら、再び正面に顔を向けた。
「!!」
いきなり目の前に男が立っていたので、俺は驚いて声を上げそうになる。
いったい、どこから現れたんだ?
そう思いつつも、俺は素早く男を観察する。
男の年齢は、おそらく二十歳前後。細身で俺よりも少しだけ背が低い。そして派手な服装に、ピアスや指輪を多数つけているので、かなりチャラそうに見える。
しかし、人を見た目で判断するのは早計だ。
俺はコホンと小さく咳払いをすると、心証をよくしようと思って丁重に話しかける。
「こんにちは。施設の方ですか?」
そう尋ねると、正面の男が無表情のまま口を開く。
「よくわかったっスね。確かにおいらは神の使節の者っスよ。ところで君の名前は、チュウトスキルくんでいいっスか?」
俺の名前は中途隙瑠。よくチュウトスキルと読み間違えられるが、俺は気にしたことはなかった。
だけど年下から君づけで呼ばれるのは、さすがにムカっとくるぞ。こんな失礼な若者を雇わないといけないくらい、この施設は人材不足に陥っているんだろうか?
あと気になるのが、ここの施設の名前。神の施設という名前らしいけど、いくらなんでもセンスなさすぎだ。
この施設のオーナーが神野さんだったら、いいんだけどさ……。
おっと、そんなことより早く相手の質問に答えないと。
「私の名前はチュウトスキルじゃありません。そう間違われる方が多いのですが、名字は中途で名前は隙瑠と読みます」
「へー、そう読むんっスか。日本人の名前はキラキラしていて難しいっスね」
いや、俺の名前はキラキラネームじゃないし。
そう言いそうになったが、なんとか平静を装って口を開く。
「確かに最近の若い人は、みんなキラキラした名前で読めませんよね」
「ホントそうっス。でも中途くんはおっさんなのにキラキラなんスね」
こいつ、人の話を聞いているのか?
穏やかな性格と言われている俺でも、さすがにブチ切れるぞ。
――って、ヤバいな。このままだとコイツに話のペースを握られてしまいそうだ。
もうちょっと話を聞こうと思ったけど、とっとと本題を切り出すか。
「ところで、どうやら私はここでお世話になるみたいですね」
俺はそう言うと大きく息を吸い、続けて言う言葉に力を込める。
「――だが、お断りします!」
それを聞いた男――いや、この際だ。チャラ男と呼ぶことにしよう。
――で、そのチャラ男がため息まじりに言う。
「まじっスか? それは困るっス。おいらの神体に関わるっスよ」
口では困ると言っているのにチャラ男の声は冷静そのもので、表情にも慌てた様子は見られなかった。
よほど俺を家に帰らせない自信があるとみえる。
しかし、俺は諦めない。
「あなたの進退と言われましても、私の希望も汲み取ってもらわなければ困ります!」
「それなら大丈夫っス。この場所で、いろいろ能力を覚えることができるっスからね。で、そのあと新天地に行ってもらうことになるっス」
回りくどい言い方をするやつだなぁ。要するに四十五歳の俺を採用してくれる企業なんてそうそうないから、この施設で職業訓練を受けて新しいスキルを身につけろってことらしい。で、そのあとに新天地――就職先を紹介してくれるそうだけど、はっきり言って余計なお世話だ。
「勝手に決めないでください。いま身についているスキルや資格だけで充分やっていけるんですから。それに働き口も、いずれ自分で探します。だから、どうか家に帰してください」
「無理なものは無理っス。家に帰るのは諦めてほしいっス」
「そんなの絶対にイヤです! 首を縦に振ってくれるまで、私は諦めませんからね」
「そんなこと言われても、もうどうにもならないっスよ」
どちらも一歩も譲らない押し問答が、ひたすら続く。
俺はまだ知らないでいる。いつの間にか俺の頭上にゲームのウィンドウみたいなものが浮かんでいて、そこに表示されている時間が減っていっていることに。
⇒ New Life+α (Enter code)
Continue (Freeze)
END
--------84 minutes remaining--------
下手くそな文章で申し訳ありません。
自己紹介を一度見てもらえるとありがたいです。