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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
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皇都(インペリアルパレス)I魔鋼(マギメタ)M戦闘団(ストライカーズ)S 第4話

目的地は遠く・・・


空飛ぶ揚陸艦は、往く!

皇都から500キロ離れた東の地には、坂東平野にある都市<東都とうと>が在った。

西の<京>に対し、その昔臨時の政府が置かれていた為、東のみやこの名を冠された都市。


そこにはもう一つ、魔鋼の学校が置かれる事になった。


校名を<帝国学園>と呼ぶ。


帝国とは、<日の本>になる前。

日ノ本皇国であった折りに造られた名残でもあるのだが。


ミハル達が通う<皇都 都立学園>が公立校なのに対し、<帝国学園>は私立わたくしりつ


私立でもある<帝国学園>を運営しているのは、出資者達の集う理事会だった。

本来は、企業に役立つ人材を教育するのが狙いだった教育方針が変えられる事になったのも、

運営している理事会のエゴからだという。


有力企業が出資し、理事を配していた<帝国学園>にも魔鋼の学科が開設されることになり、

出資有力企業である軍事企業<道魔重工業>の人材創出が狙いだとも聞き及んでいた。


<帝国学園>魔鋼学部。


そこには一般から応募してきた少年少女達が狭き門を潜り、次代の研究の為に学ばんとしていたのだった。


表向きは・・・





澱んだ空間を映し出すディスプレイ。

そこに映っている者が、蔑む様に男に言い放った。


「「もはや、賽は投げられたのだ。

  道魔よ、判っておるであろうな?閣下は二度のしくじりは認められんぞ?!」」


甲高い女の声が、スピーカーから流れ出る。


「はっ、はいっ、心得て御座います」


慇懃な返事をディスプレー越しに返す、でっぷりと太った男。


「「ならば・・・そなた自身の手で奪い取ってみせるが良い。

  そうすれば、総統閣下も罪を問われはしないであろう」」


女の声が道魔に言い放つ。


「はは~っ!肝に命じまして・・・」


恐懼する道魔が頭を下げた時。

ディスプレイに映っていた女が、掻き消されて無くなった。

映っているのは乱れた画像の嵐・・・


「糞めが!

 儂がどれだけ手を打って来たと思っているんだ!」


道魔が悪態を吐いた。


「聞いておったであろう?手抜かりの無いように務めるのだ!」


傍に控える部下に向けて、武器産業会社会長の命令を与える。


「ははっ!我が社の威信に掛けまして」


平伏した部下が急ぎ部屋から出ていくのを、苛ついた眼で追った道魔が。


「今度こそ。失敗は許されない・・・失敗は全てを失う事になる」


自信の命運も、会社の存続をも賭けて。


「最悪の場合、学園自体を爆破する事になる・・・わが命と共に」


歪んだ魂を曝け出す様に、口端を吊り上げるのだった。









夜闇の中。


都立学園魔鋼科学部校舎に、紅い警告灯が燈る。


「「警報!警報!! 本校はこれより航宙揚陸艦を発進させます!」」


どこかから警告が発せられ、学園体育館が校庭に横滑りし始める。

更に体育館があった地面が罅割れ、開口部をもっと巨大に広げていった。


「「航宙揚陸艦<大鳳>発進!避けれない者は何かに掴まれ!」」


警告が切迫した事実を告げ、空気までが震え始める。



地下から図体を現わせた<大鳳>。


全長120メートルに及ぶ巨体を、地表付近までエレベーターに載せられて上がって来ると。


側面に取り付けられていた6個の円環が水平に降ろされる。


「航宙揚陸艦<大鳳>・・・発進せよ!」


艦橋で直接指揮を執るマモル司令の命で、円環に重力波が与えられると。



 バッバァーンッ!



砂煙を巻き上げ、巨大な船が空へと舞い上がる。


「進路東へ!速力50ノット!」


航海士官が、目的地の航路と速力を指揮する。


「よぉーそろぅ!進路90度!速力半速っ!おもぉーかぁじぃー!」


海軍式の命令が復唱され、航宙揚陸艦が跳び発つのだった。






月を見上げている女性達が居る。

夜も更けたというのに、灯りも灯さず月を観ている影が。


「本当に・・・こんな夜が来るなんて・・・ね、ミユキ」


年嵩の麗人が、傍に控える神官巫女に話す。


「また・・・昔に戻ってしまったみたいね?蒼乃・・・」


二つの影は和装姿の麗人蒼乃宮と、気安く話す神官巫女姿のミユキだった。


「昔・・・か。

 ついこの前の様にも思えてしまう、こんな月を観てしまうと」


宮殿の庭先へ明かりを溢して来る月。

その月の中を、一隻の飛空船が過って行く。


「あの闘いの末期。

 我が日の本から同盟国フェアリアに向けて飛び立った船。

 あの日を思い出してしまう・・・ミユキやマコトの元へと向かわせた。

 私と、当時の連合艦隊司令長官。そして大本営の決定をみて・・・」


「ええ。初めて観た時に分かったわ。

 あの船は死に逝く者へと贈られたのだと。

 死を求める者への手向けに送り込まれたのだと・・・解ったのよ」


二人は月から眼を逸らさずに話す。


嘗ての最終戦争。

そう・・・あの闘いで全てが終わる筈だった。


セカンドブレイク・・・後にそう呼んだ闘いの果て。

人類は希望を手に出来た筈だった。

生存を認められる代償に、魔法を失った。

人類は魔法を捨てる事になった闘いで、からくも殲滅を免れたのだった・・・のに。


「再び魔法という異能が蘇った。

 それが一体何を示すというのか?

 再び闇が蘇り、人類を脅かしている。

 再びあの惨禍が起きようとしているのなら、私達は再び断たねばならない」


蒼乃は瞳を伏せて零すのだった。


「蒼乃・・・まだそうと決まった訳ではないわよ?

 私達に与えられた宿命さだめは、あの時に終わったの。

 一人の娘が終わらせてくれたのだから」


傍らに立つミユキが、自らを投げ出して護り抜いた娘の事を指す。


「でも、あの娘も帰って来たのでしょう?

 魔法が蘇ったから・・・闇に対峙する存在として。

 再び人魔じんま大戦が起きないとも限らないわ」


「そうね・・・」


魔法が蘇った事に因り、悪魔までもが現世に出没するようになった。

まだ完全に復活を遂げた訳では無い事だけが、世界を混沌に貶めずに済んでいる。


結界の中で蠢く間は、人に与える影響も限定されると考えれるが。


「もし。悪魔が大手を振って現れ出るような事になれば。

 世界は今度こそ滅びの道を歩むかもしれない・・・」


蒼乃に振り向いたミユキが、憂いながら呟く。


「そうならない為に。

 私は再び少年達を熾烈な闘いへと放り込んでしまった。

 いくら人類の為とはいえ、年端も行かない少年達に闘えと命じてしまった」


視線を絡め合う二人の記憶に、初めて逢った日が呼び覚まされる。


「蒼乃・・・殿下は、私にこう言われたわ。

 <あなたの命を頂戴>と。

 そしてこうも言われたのよ?<命の代償は人類の希望>と、ね?」


甦るのは<始まりの魔法石いし>を差し出された日。

幼き2人が邂逅した・・・あの日の光景。


挿絵(By みてみん)


ミユキにとっても、蒼乃のとっても。

忘れがたい始まりの日だったから・・・


記憶の片隅に映るのは、宿命を継承させてしまった娘の顔。


「私とミユキだけでは終えられなかった。

 二人で防ごうと試みたけど、力が足りなかった。

 そしてフェアリア皇国に存在した女神によって、運命の歯車が回ったのよ」


「ええ、リーン・F・マーガネット。

 本当の姫ではなく、替え玉の方が女神だった・・・

 私は闇の結界の中で知る事になったわ、もう一人の女神ミハルに教わって」


(作者注・詳しくはエピソード0.5 Ballad to Hope<希望への譚詩曲>を参照ください)


月の中を過ぎり去る飛空船を見上げて。

蒼乃とミユキが過去を振り返る。


激烈な悪魔達との闘いを共に越え、人類生存を賭けた運命の日。


その日。

娘は帰っては来なかった・・・


「あの子はね、必ず帰って来るからと・・・私と約束したのよ。

 ・・・

 孫が産まれて、やがてその子が魔法の石を授かった。

 女神リーンの生まれ変わりであるルナリーン姫から。

 ミハルがどうしても逢いたい魂に授けられた・・・自らが宿るべき石を。

 ・・・

 その意味がやっと現実のものとなったようね。

 ルナリィーンには分っていたのでしょう、闇が復讐に現れるのを」


ミユキは悪魔達が復讐の為に帰還したという。

それを解っていた女神の魂を宿した姫が、孫娘ミハルへ託したのだとも。


「だから・・・ね、蒼乃。

 あなただけが子供らに辛い宿命を背負わせたのじゃない。

 かつての闘いを知る者全てが、闇との闘いを覚悟しているのよ?」


月の中には、もう飛行船の影も姿も見えなくなっていた。


「・・・あの子達には。

 ミユキの孫達には、不幸を背負って貰いたくないわ」


「あら?孫の手を借りないといけなくなったのよ?

 不幸になるだなんて決まってはいないわ。

 それに孫だけじゃないのよ、娘や息子達も手伝ってくれるわよ?」


殲滅のひかりは、人類から魔法を取り去った。

生きている者全てから、魔法が奪われた。

だが、魔法が蘇った時。

新たに生を受けた子等は、再び魔砲を放てるようになった。


「孫達の年代から、再び魔鋼が使えるようになったんだもの。

 彼等の異能ちからなくして、悪魔達と対等に戦えないのよ?」


「そうね・・・悔しいけど」


ミユキに諭された蒼乃。

悔し気に自らの手を握り締める。


悔し気に歯を食いしばる蒼乃へ、ミユキが微笑んで教えるのは。


「でもね、女神も復活したのよ?

 あの子達も、魔鋼力を持ったままで帰って来れたの。

 だから、きっと大丈夫。きっと闇を断ってくれるわよ」


夜の空に消えて行った飛空船を追い、見上げるミユキは朗らかに言った。


「ミユキ。そう願いたいわ、私も・・・」


皇都の上空から消えた飛空船。

目指すは、今回の黒幕である<道魔重工業>会長の訴追。


一筋縄にはいかないだろう。

相手は魔鋼の技術を使い武器を生産する、重産業会社を傘下に持つ理事長。


道魔は、これから起きる闘いを予測しているだろう。


もしかすると手ぐすねひいて待ち構えているかもしれない。


果たしてミハル達IMSは、敵の野望を断つ事が出来るのか?!

嘗て。

日の本皇国と呼ばれていた頃、少女達は運命に導かれて出逢ったのでした。


皇女蒼乃と巫女美雪。

彼女達が出逢った時、世界の終わりが始ったのです・・・


このお話はまた、外伝としてどこかで。


さて。

いよいよ敵が現れます。

雑魚じゃない・・・モノホンの悪の幹部が。

物語はやっと本当の敵と出会うのか?


次回 皇都インペリアルパレスI魔鋼マギメタM戦闘団ストライカーズS 第5話


悪の手先。それは案外の姿で現れるのです・・・魔王級が登場?

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