皇都(インペリアルパレス)I魔鋼(マギメタ)M戦闘団(ストライカーズ)S 第3話
ローラが新たな魔鋼少女に?!
それならちゃんと服装も整えなくっちゃ!
都立学園に魔鋼科学部が新設された訳。
表の顔が魔鋼の少年達への教育とすれば、もう一つ裏の顔があった。
都の護り、国の鎮めを司る、征夷大将軍にも等しき蒼乃が率いる組織。
公には出来ない国家安寧の戦闘部隊。
各地に点在する諜報機関の中枢でもある、<魔鋼戦闘団>本部。
それがここ、<都立学園 魔鋼科学部>の裏の顔だった。
体育館地下数十メートルに位置した司令本部。
指揮系統中枢である本部には、司令 島田真盛以下数十名が秘密裏に勤務している。
基地内最下層に位置した魔鋼戦闘団整備室では、命じられた出撃状況に併せて準備が整えられていた。
鼠色の整備員服を着た男達に因り、<翔騎>3機が出撃体制を整えつつあった。
白い機体の<零号機>には、早々と補助装甲が取り付けられ、配電室からの電力供給が始まった。
その横では、ピンクの機体の<一号機>が重武装である肩乗せキャノンを装着され、予備弾がカートリッジごと砲側に装填されていく。
後方に控えている蒼い機体の<2号探知装備機>にも、左肩に重機関砲が載せられ、戦闘態勢が整えられている。
< ビィービビィーッ >
くぐもった警告音が整備室に流れると、整備員達の動きが更に早まって行く。
「「 搭乗員乗騎! 魔鋼騎搭乗急げ! 」」
紅い回転等が廻り始め、各機の受け持ち整備員がパイロットが来るのを待ち受ける。
「それじゃぁ行ってきます!」
マモルが見詰める前で、ミハルは軽く敬礼を交わすと。
「ローラ君は?ここで待機して貰うの?」
残して行くと思って訊ねたが。
「いいや。初めて搭乗するにしろだ。
ミハルがリードして連れて行ってあげるんだ。
ローラ君も母を自分の手で救い出したいと思っている筈だからな」
意外な事に、マモルは連れて行けとミハルに応えて来た。
「え?!でも・・・ローラ君は操縦なんてやった事がない・・・」
連れて行くにしても<翔騎>に乗せていくなんて無謀だと思ったミハルだが。
「ボクは。どんな事をしたって、お母さんを救い出したいんだ!
連れて行って貰うだけじゃなくて、この手で救出したいんだよ!」
躊躇するミハルに、ローラが食い下がった。
「せやでミハル。
ウチかてそうやったし・・・連れて行ったったらどうなんや?」
横合いからマリアが口を挟んでくる。
「ミハルの腕やったら、ローラを護りつつ闘うなんて眼やあらへんやろ?」
ニヤリと笑うマリアに釣られて、ローラが必死の表情で。
「ミハルさんっ、お願いだよ!」
手を取って頼んで来るのを、無碍には断れず。
「でもぉ、ローラ君は<翔騎>になんて乗った事が無いんじゃ?」
まだ一般では目にする事も無い<翔騎>に、どうやって乗るのかと躊躇していたミハルに。
「ミハル、お前だって初めて乗った時に動かせたじゃないか。
この<翔騎>2号機には、遠隔操作装備もついてあるんだからな」
それと・・・と、マモルが付け加える。
「敵の本部に入った事があるのは、ローラ君とノーラ君だけなんだ。
相手の計略に嵌らない為にも、連れて行った方が良いと思うんだがな?」
司令マモルの言葉にローラの眼が輝くのと、ミハルの眉が跳ね上がるのとが同時だった。
「なるほど。流石に司令は百戦錬磨の魔鋼騎乗りでもありますね!」
頷くマリアが、即座にミハルへ向けて。
「そう言う事やからミハル。
魔鋼戦に入るまで、ローラのサポートと守護を任せるからな了解?!」
「う・・・分かりましたキャプテン」
キャプテン命令だと無理強いして認めさせた。
「ははっ、ローラ君。不束な先輩搭乗員だけど宜しくね?」
仲を取り持つようにマモル司令が頼んで来るのを。
「不束なって・・・失礼な。ぷんすか!」
「あはは。こちらこそ宜しく、ミハルさん」
剥れるミハルに、ローラがやっと笑顔を見せた。
「それでは。搭乗服に着替えるんや二人共!」
先に着替えていたマリアが、紅い魔鋼少女隊員服を指差して。
「ローラも・・・や。
服はシューターの中に備えられているから、飛び込んだら分かるやろ!」
仕切られた扉を目で示して教えるのだった。
「よっし!ローラ君。いくよ!」
白い扉の前に立ったミハルが、背中で押し付けると途端に扉が回転し。
「あっ?!ミハルさん?」
ローラの前で姿が消えた。
「ほなら、ローラはこの蒼い扉に入ってや。
入ったら身を任せて着替えるんやで?
着替え終わったら勝手に扉が開くさかいに・・・」
マリアが背中を押して扉の前に立たせると。
「あ、あのっ?!マリア?それって・・・」
どう言う事?と、訊く前に。
マリアに押されたローラが扉に吸い込まれるように消えた。
「よっしゃっ。
・・・それでは島田司令!出撃準備に掛ります!」
姿勢を正したマリアが、改めて出撃準備に取り掛かると申告しなおした。
「うん、マリア君。二人を宜しくね?」
いつも通り、優しい司令が娘と同級生の娘に頼んだ。
「はいっ!任せてください」
頼りがいのある娘へと成長を遂げたマリアへ微笑むマモル。
踵を返してピンクの扉に身を翻し入ったのを見送ると、直ちに本来の姿に戻って命じるのは。
「整備長!航宙揚陸艦<大鳳>、3機を載せて出撃せよ!」
「「了解!」」
マイクに向けてマモルが命じた<大鳳>の正体とは?
扉を抜けると突然身体が浮き上がる感じが襲って来た。
「?!」
声を上げる暇も無く、ローラは自然落下に翻弄される。
だが、身体だけが落下しているのではなく、床は足下に厳然とある。
次第に落下速度が落ちると、目の前に光が見え始め・・・
「あ。これがそうなんだ?!」
狭い円筒状の小部屋が出て来た。
前の扉が開くとインナーウエアが飛び出し、左からは上着が、右側からはブーツが。
それぞれ装着しろとばかりにせり出して来た。
「あ・・・脱ぐんだよね?で、着れば良いんだよね?」
慌てて見繕いを始めるローラが、インナーに袖を通して気が付いた。
「あれ?!まるでボクに誂えられたみたい。
ピッタリとしていて小さくも大きくも無いや!」
思わず自が出て、男言葉になってしまう。
「あれ?!そう言えばボクって女の子姿のままなんだよね?
どうやってサイズを調べたんだろう?男なら昔の身体測定表とかがあるけど。
こっちに来てから、魔法の力で女の子に化けていたんだけど・・・」
言ってから。顔を紅くしたローラだったが、何とか制服に着替え終えられた。
最後の胸元のリボンを着け終えた瞬間。
ブッシュゥン!
前の扉が強制的に解放されて・・・
「よっ!着替え終わった?」
いつの間にかマリアが腕を組んで待っている。
「わぁ!ローラ君って蒼い隊員服が似合うんだねぇ!」
その横に控えたミハルも、紅い魔鋼少女隊員服を着終わって待っていたようだ。
二人の少女は紅い魔鋼服を、ローラだけは碧い魔鋼のユニホームに着替えていた。
「ふぅうん?!二人は女の子だから紅い服なの?
だったらさぁ、ボクもこの姿なら女の子の色が良かったかなぁ?」
ローラが来ている蒼い服が、男の子色だと思ったみたいだったので、マリアが首を振ってから。
「ちゃうんやローラ。
色付けは魔鋼の属性に因って決められるんやで?」
キョトンとしたローラがマリアに訊き直す前に。
「そうそう。この隊員服の色はね、戦闘系が赤。
偵察が青、助力が黄色。まるで信号機みたいなんだー!」
傍からミハルが補足して来たので、色分けが男女の話では無いのが判った。
「ウチとミハルは攻撃を主眼とする<翔騎>に乗ってるんや。
ローラが今から乗る<2号偵察機>はな、主眼を索敵にもってる特殊機なんや」
更にマリアが追加で教えてくれる。
「そ、そうなの?じゃあボクのする仕事って?」
魔鋼服を指で摘まんで調べていたローラが、何も判らずに訊ねると。
「今回、<翔騎>でローラがするんは。
ウチ等に情報を提供してくれることなんや。
知っている事、感じた事・・・そして敵の弱点を。
詳しい話はあれに乗ってからするわ!」
くるっと振り返ったマリアの先に見えたのは。
「ローラ君・・・ちゃんって呼んだ方がいいかな?
あれが強襲揚陸艦<大鳳>・・・おおとり君って呼んであげてね?」
ミハルが二人の間に立って呼びかける。
「よっくよく観るとぉ、ローラ・・・ちゃんだよね?
それって・・・自家製だよね?どうみても・・・さ?」
こんもりと盛り上がった胸元を、ミハルがジト目で睨んで訊いた。
「あ・・・そ、そうだよ?可笑しいかな?女の子のままじゃあ?」
「・・・もしかして?男の子に戻れなくなったの??」
ピクっとマリアの頬がヒクつく。
「あ、いや。そうじゃなくて・・・その。
タイミングを失したというか・・・どうしたら良いのか解んなくて」
「ほほぅ?ローラ君じゃ居られないとか?女の子になるのが常套になってるとか?」
再びマリアの頬がヒクつく。
「だからぁ、隊員服も女の子用に誂えてあるからだよ!」
「ほほぅ・・・これは誰かの陰謀だと?」
プチン ・・・と、マリアの堪忍袋が切れた。
「ええ加減にせんかいっ!ローラは魔鋼状態で乗らへんとあかんのや!
男の子姿じゃー能力を使いきれへんのやってマモル司令にも釘を刺されてたやろ!」
「あ・・・マリアちゃんが喋っちゃった・・・」
ピクク・・・頬を引き攣らせ、マリアが口を手で塞いだが。
「何もかもお見通しだったんだね?マリア・・・」
「そうそう!マリアちゃんはお見通しっ!・・・ぎゃ?」
浮かれているミハルにマリアの拳骨が堕ちた。
「これはっ!ローラがウチ等の仲間になってくれるって思うてたからや!
悪気があって調べたんとはちゃうって、言ってたやんか!」
「はにゃ~ぁ・・・そうだったっけ?」
眼を廻したミハルへ、マリアが必死に言い返すが。
当のローラは意にも解せずに、微笑んで二人に言った。
「ボクのことをマリアは信じてくれていたからこそ。
親友になってくれた時からずっと、ボクにいろいろ教えてくれたんだ。
マリアの事も、ボクが知らないいろんな辛い事だって。
ボクも言える事はみんなマリアに話して来たんだから。
当然だと思うし、知ってくれていて助かったとも思ってるんだよ?」
「えぇ~っ?!ローラちゃんはマリアちゃんとぐるだった?!」
知らされたミハルが、今度は自分だけが知らなかったのに驚かされる。
「まぁ・・・なんや。
帰り道に駄弁ってな。
ついうっかり、話してもうたんや・・・二人して」
「にゃんと?!」
怒るよりは、笑えば良いかと。
つまりは、ローラの闇は既に半ばまでマリアに因って滅ぼされていたのかと。
「「むぅ・・・どうりで。
弱っちい悪魔だと思ってたんだけどねぇ。知らなかった(笑)」」
蒼き宝珠の中でも、女神が苦笑いを浮かべる。
親友になっていた二人の垣根なんて、どこにも存在しないようだ。
「搭乗員は指定の位置に待機!」
整備員が搭乗を促す。
「はい!搭乗準備にかかります!」
先任であるマリアが直ちに答えて。
「話の続きは揚陸艦の中でしよう!二人共、判りましたね!」
言葉を改め。
キャプテンであるマリアが命じる。
「搭乗する!<大鳳>に乗艦せよ!」
「了解!」
マリアに向けて、二人の了承が重なった。
いよいよ!
駆け出し魔鋼少女となったローラ!
彼女の先輩はマリアと、頼りないミハル。
大丈夫なのか?!
次回 皇都I魔鋼M戦闘団S 第4話
彼の地で待つのは邪な人か、それとも悪魔なのか?新たな戦いの巻くが開こうとしている。




