皇都(インペリアルパレス)I魔鋼(マギメタ)M戦闘団(ストライカーズ)S 第2話
秘密部隊の名称だった・・・
IMSって?!
日の本語で言えば・・・<コマセ>?
イカン、遺憾がぁっ!(遺憾砲発射!)
扉がもう一つ開かれる。
3人の前に姿を現したのは・・・
「ようこそ、魔鋼戦闘団へ。ローラ君」
中央に配置された机の奥に座ったマモルが呼びかけて来る。
「さぁ、君も我々の仲間になったんだ。指揮所に入り給え」
開かれた部屋には、マモルの他にもう一人の女性が微笑んでいる。
「どうぞこちらへ。歓迎しますわローラ君」
差し招いて来るのは、長い栗毛の女性。
戸惑う様に見詰めるローラの手をマリアが牽き、
「ほら。こっちやで?」
魔鋼戦闘団搭乗員服を着ているマリアに伴われ、ローラも部屋に入ると。
後からミハルも続いて、
「ローラ君の確保、並びに闇からの救出を完了しました!」
マモルに向けて敬礼を送り、申告を終える。
「うん、ミハル、女神も。御苦労さんだったね」
扉の前で申告しているミハルを振り返り、不思議そうにローラが聞いているのを。
「ああ、ローラには言ってへんかったんやけど・・・な。
ウチ等には司令から言伝されておったんや。
ローラがウチ等に接触してきた理由を知らされていたんや」
闇に染められていたローラが、学園に編入して来た訳を調べていたマモル達。
あらゆる情報機関を駆使し、集められた事実に基づき教えられたのは。
「奴等にローラが誑かされているか、闇に堕ちているのかが重要だったんやが。
ウチ等と共にいる間は、悪さをして来なかった事実から考えられたのは・・・」
マリアがローラに振り向き、肩を竦めて続けようとすると。
「我々が導き出した結論は、君の魂は邪なる者に利用されているだけだと判断した。
因って、君の後ろに居る物から離れさせれば、救出出来ると一計を企てたんだよ」
マモルがミハルを観て答えて、
「それが出来るのは、ミハル・・・いいや、そこに居る女神に任せるのが良いと至ったんだ」
ミハルの宝珠に宿る女神を指して言葉を結んだ。
「そうなんだ、ローラ君。
このリングに宿った伯母ちゃんが、アタシにそうしなきゃ駄目だよって。
最初に出会った時からずっと、ローラ君の事を案じていたらしいから。
操る悪魔が出て来るまで、見守ってくれていたんだよ?」
ミハルが今迄の事は、全て女神によって考えられていたシナリオだったという。
今こうして此処に居られるのも、マモル司令と女神が図った事なのだと。
「へぇ・・・じゃあ、ボクを救う為にワザと?
悪魔に操られていると知りながら、ボクと友達になってくれたの?」
やや、寂しそうに顔を俯かせたローラに、マリアが首を振って言うのは。
「ちゃうよローラ!
ウチが言ったやろ?普段はローラのままやったからって。
悪魔が出現する時だけ、ローラじゃ無くなってしまうんやって。
ミハルからも聞いてたんやから、姉さんを停めに来た時に女神様が感じたって。
ローラは邪悪な者に操られているだけだから、助けてあげなきゃ駄目なんだってな!
せやから、ウチ等はローラを信じられたんや。
必ず女神様が救い出してくれるって。
きっと今迄通りに友達で居られるんやって・・・そうなんやで?!」
一気に捲し立てたマリアに、ローラがコクンと頷いた。
「そうなんだよローラ君。
僕の姉も悪戯好きでね・・・と、言うより。
女神でも現実世界の中では、悪魔祓いは出来ないらしいから。
君の方から悪魔を連れて来て貰わなきゃいけなかったらしい。
今夜がその日だったって事らしいんだけど、上々の首尾だったみたいだね?」
統合幕僚官姿のマモルからそう聞かされて、ローラが改めて皆を見回す。
「ボクは。
女神様の手の上で踊っていただけなんですね?
人が悪いなぁ、初めからそう言ってくれてれば良かったのに?」
少女の姿をしているローラが愚痴る。
「「ちょっと!人が悪いとは聞き捨てならないわね!」」
「あ・・・出て来なくてもいいのに」
右手から女神の声が零れ、ミハルが慌てて宝珠を押さえたが。
「「私は君達の事を慮ってだね・・・
あれ?姪っ子ちゃん、言っておきなさいって言わなかったっけか?」」
蒼い猫毛玉がふわりと舞いながらミハルに訊いた。
「言ってない・・・言わなかった!」
断言するミハルに、ニャンコダマが固まる。
「「う、う~んっ・・・そ、だったっけ?」」
ヒクつく顔でバツの悪そうに笑う女神。
「ミハル姉、いつもながら・・・どっか抜けてるよ?」
弟であるマモル司令にまでジト目で観られて、蒼毛玉は宝珠に逃げ帰る。
「ま、そう言う訳だから。ローラ君にもすまなかったと詫びるよ、姉の代わりにね」
全然悪びれていないマモルに毒気を抜かれて、ローラも納得せざるを得なくなる。
「ごめんねローラ君。早く言わなきゃいけなかったんだろうけど。
悪魔を誘き出す為には、そうする他は無かったらしいの。
伯母ちゃんを悪く思わないでね?」
宝珠を押さえてミハルが代わりに謝罪すると、ローラが首を振って受け入れて。
「ううん。助けて貰ったんだから、ボクもノーラ姉さんも」
姉の話に振ったローラが、マモルに向き直ってから。
「姉さんはどうなっているのですか?
犯罪を犯して来ちゃったから・・・拘束されているんですよね?」
心配そうに身内を心配すると。
「あ、ローラのお姉さんやったら・・・ほら、救護班で休んではるで?」
机に設置されたディスプレーを指すマリアから教わった姉の姿は。
「あ・・・ああっ?ノーラ姉さん?」
ベットで横になっているノーラの姿。
ちゅっかり枕元にお菓子の山が築かれているようだったが。
「ああ、君のお姉さんは甘い物が好きなんだな。
情報を提供してくれる代償に、あれだけのお菓子が必要だったよ?」
マモルはいとも簡単にそう言って除けたが、姉の子供じみた交換条件に呆れ果てて。
「ああ・・・昔っからああだったっけ?
なんでも欲しい物を枕元に集める癖が・・・抜けてないよ」
額を押さえてローラが愚痴るのを、皆が微笑ましく想っていると。
「司令官、そろそろ本題に入りませんと」
傍に控えていた女性が、マモルを促して来た。
栗毛の女性から告げられ、頷いたマモルがローラへ問いかけた。
「君のお姉さんからも実情を訊いたんだけどね。
お母様が人質に取られているそうだね?その件を詳しく話して貰えないかい?」
優し気に訊いて来たマモルを観て、ミハルは父であるマモルの真剣さを感じ取った。
ー マモル君は、怒っているんだ。
ローラちゃんやノーラさんのお母さんを捕えている奴等に。
普段なら<その件>なんて使わないもん・・・
ミハルは見た目にこやかな顔をしているマモルに、怒りを与えている何かを知っていた。
自分に宿る女神と父であるマモルには、ローラ達と同じ経験があったからと。
戦争中に起きた悲劇を、ミハルは訊かされたことがあった。
フェアリアに住んで居た頃に起きた理不尽極まる出来事を。
ー きっとマモル君は、ローラ君達に起きているのを我が事のように思っているんだ。
だから最初から自分で調べようとしていたし、助けてあげたいと思っているんだ!
大好きな父が想っているのを敏感に感じ取り、手助けをしたいとミハルは思っている。
考え事をしているミハルの前で、ローラは経緯を話し終える。
「そうかい、それじゃぁもう一度訊くけど。
ローラ君が知っているのは、お母様は帝都学校の道魔理事長に面談してから行方知れずになった。
しかる後に、君達姉弟に迫って来たと言うんだね?」
悪魔が・・・とは、マモルは聞かなかった。
「はい、そうなんです。
ボク達姉弟が言いなりにならざるを得なくしたのも。
お母さんを返して欲しくばって言って来たのも。
あの道魔理事長・・・政府公認軍事産業会社の道魔重工業会長なんです!」
ローラの答えに、マモルと女性官が軽く頷いた。
「やはり・・・そうだったのね。
軍事産業の受注利権問題だけに留まらず、
悪魔と契約を取り交わしているってのは、本当だったみたいねマモル」
長い栗毛を掻き揚げた女性官が、マモル司令に訊ねる。
「ああ、ルマ。やはり私服を肥やさんとする者が蔓延っているようだ。
フェアリアにも居たように、日の本にも奴等の触手が伸びていたようだね」
じっとローラを観ているマモルに、
「それじゃあ、このことをフェアリア本国迄伝えるわよ。
日の本にも魔の手が伸びていると。イシュタルの民が再び動き始めていると、ね!」
ルマが書類を机から掴み取り、指令室から退出していく。
「ルマまま。ルナリィーン様に報告するの?」
横切る母に、ミハルがそっと聞いたら。
「いいえ・・・女王様によ。
フェアリア本国でも、戦闘団を結成されたみたいだから」
足を停めずにルマが教えて来た。
「そっか・・・お姉ちゃん元気だと良いな」
ミハルの問いに答えは帰っては来ず、退出したルマが扉から消えた。
「「むぅ・・・ルマめ。わざと私の気を急き立てたな?」」
宝珠の中で、女神が愚痴る。
「「姪っ子ちゃんに知らせず、私の気を焦らせるつもりね?」」
嘯いた女神が、ニヤリと嗤う。
「「良いじゃないのっ!さっさと悪魔に属する輩を始末してやろうじゃない!」」
女神ッぽく無い戯言をのたまった。
「ねぇ伯母ちゃん。
それよりもローラちゃんのお母さんを助け出そうよ?」
宝珠に宿る伯母へ、思っている優先課題を告げると。
「「それはね、マモルが手配してくれているわ!
心配しないでミハル。私の弟は抜けてはいないから」」
こっそりと、女神が教えてくれた。
ローラの母親を救出する手配を、既に準備しているのだと。
「よし、それでは君達の出番だ。
我々は闇に属する奴等を成敗するのが役目。
我が魔鋼戦闘団は、只今を以って<人質救出作戦>を展開する!」
女神が言った通り。
マモルが発したのは・・・
「皇都魔鋼戦闘団、出撃準備にかかれっ!」
「了解!」
マリアキャプテンが敬礼を司令官に送った!




