皇都(インペリアルパレス)I魔鋼(マギメタ)M戦闘団(ストライカーズ)S 第1話
壁に背を宛てた途端・・・
前に観えていた景色が一転して行く。
薄暗い円筒の中に入ったと思ったら・・・
「ローラ君は初めてだもんね。舌を噛まないように口を噤んでいて!」
手を握ってくれているミハルの声が聞こえた。
何もかもが一瞬のこと。
マリアの声が聞こえたかと思えば、ミハルに促されて訳の分からない状態になってしまった。
「ちょっ、ちょっとミハルさん?!」
「黙って!いくよ!!」
どう言う事なのか皆目見当がつかないローラに、ミハルが唇に指を宛がうと。
ガクンッ!
足元から金属音が響いたと思ったら・・・
ビシュンッ!
まるで垂直に落下するエレベーターの感覚が襲い掛かって来た。
「うっわっ?!」
ミハルと載っている何かが、地下へ向けて猛烈な速さで落下し始めたのだ。
「うわあえあわらぁ~っ?!」
驚愕を超えて恐怖が沸き起こり、ローラの絶叫が堕ちるに任せて響き渡った。
グンッ!
どれ位下っただろう。
急に減速したエレベーターの中で、ローラが半ば放心状態になっていると。
「着いたよ、ローラ君!」
ミハルの声に気付かされる。
「ふわわぁっ?!死ぬかと思った・・・」
「死なないよぉ?それじゃこっちに来て!」
毒気を抜かれたローラが、ミハルに掴まれたまま歩き出す。
薄暗い通路を行き止まり迄歩くと、立ち止まったミハルが。
「零号機パイロット、来ました!」
厚そうな鉄の扉に向けて開錠を求める。
バグンッ!
スライドした扉の中から、眩しい灯りが眼を焼いた。
「ようこそ。ローラ!」
逆光で観えないが、その声はマリア。
眼が明るさに馴染んで来ると、室内に居る人達が分かり始めた。
赤毛のマリアがニヤリと笑って、手を指し伸ばしている。
いつの間に着替えたのか、観た事も無いユニホーム姿に代わっていた。
「マ、マリアだよね?一体ここは?君は何をしているの?」
「ははぁ~んっ!ミハルの奴になんも聴いとらへんかったんやな?」
指し伸ばした手でローラを室内迄連れ込むマリアが、
「なんやミハル。盗賊を倒した後、ローラの闇を取り除くんやって言ってたよな?」
「うっ・・・そ、それは。
伯母ちゃんがちゃっちゃとやってくれたんだけど・・・」
ローラを観てから、言い訳をするミハルに視線を移す。
「ん・・・で?女神様に取り祓って頂いて?
魔鋼戦闘団に入隊して貰えるように話したんやろ?」
「い、いいやぁ~っ・・・・それがまだ」
両手の人差し指をツンツンしながら、ミハルが言葉を濁す。
友達が言い合っている傍で、ローラが機械が詰まっている室内を見回していると。
「ローラ!ミハルが言い損ったみたいやからウチが言うわ。
ウチ等の仲間になってくれへんか・・・頼むわ?」
「え?!仲間って・・・学校での話では無くて?」
マリアの誘いに、戸惑いを隠せないローラへ。
「そうそう!もうここまで入っちゃったんだもんね。
アタシ達の仲間になってくれなきゃ・・・嫌っなんだよぉ?!」
指を一本フリフリ、ミハルも誘う。
「あのなミハル。最初から誘っておけって言ったやないか!」
額を押さえたマリアが、めげていないミハルに言い返す。
二人を交互に見て、肝心のローラが訳が解らず訊き返すのは。
「あのさ・・・何がどうなってるのか。説明してくれない?
ボクはついさっきまで、女神様と闘いにもならなかったんだけど争っていたんだよ?
そのボクがどうして仲間なんかに成れるのか・・・自信も無いし」
闇から抜け出せたのは女神のおかげ。
しかも、ついほんの数分前の事。
「なに言うとんのや?
ローラには初めから闇なんか宿っとらへんかったんや。
魔鋼の力を闇に誑かされただけなんやで?」
「そ、そうだよ!ローラ君は騙されていただけなんだから。
それに伯母ちゃんが、しっかり退治しちゃったもん。
もう、誰から観ても魔鋼の男の子だよ!」
両手に力を込めて・・・ミハルが言わなくても良い一言をほざいてしまった。
「男・・・やとぉ?
誰が?ローラは女の子やろーが?(・・・今は)」
最後がごにょごにょと言い辛そうに言ったマリアに。
「えっと・・・あのねマリア。
ミハルさんには観られちゃった・・・というか。
ボクの正体を晒しちゃったんだ・・・ごめんよ?」
ローラがマリアにも見せた事がある姿を観られたと言うと。
「なっ?!晒してもうたんかいな!
・・・ミハルに?!この口軽っ子にっ?!」
マリアが素っ頓狂な声をあげる。
「・・・口軽っ子?・・・酷いにゃぁ~」
ガクッと肩を落としたミハルに、ローラが笑い掛けると。
「ミハルさんは軽口でばらしたりはしないよ。でしょ?ミハルさん」
「う・・・うん。たぶん・・・まぁ」
自分の軽はずみさを分かっているのか、ミハルが冷や汗を掻いて頷くと。
「ホンマなんやろーな、ミハル?
学校で喋ったら・・・死の制裁が待ってるで?」
「ひぃいっ?!言いません言いませんってば!」
マリアの駄目出しに、涙目で応じる損な子。
二人の漫才に表情を緩めるローラへ。
「で?どうないやローラ?
ウチ等と共に、悪い奴等から皆を護らへんか?」
マリアがやや、真剣な口調になって訊ねる。
蒼い瞳には、願いと信頼が見て取れる。
友となり、これからも信じあえると訴えかけられて居るような目で求められて。
「ボクに・・・仲間に成れる資格があるのなら。
でも、ボクよりノーラ姉さんの方が適任なんじゃないの?」
魔鋼の力なら、姉の方が上ではないかと考えたローラ。
「ノーラ姉さんもボクと同じ能力を備えている筈だよ?
どうしてボクなの?ノーラ姉さんじゃないの?」
姉が居るからこそ、自分も此処に居るのだからと。
魔鋼の異能なら、二人共持っているのだからと聴いて来たローラに。
「それはなぁ。
ウチ等がやりにくいやん?
ローラのお姉さんが仲間だったとしたら、敬語とか使わなきゃいかんやろ?」
「それにぃー、ローラ君の方が闇に詳しいし。
一度は闇の力を知ったんだから、アタシ達と同じなんだって言う事なんだよ」
えっへんと胸を逸らすミハルに、マリアがジト目で観て来る。
「え?!二人共・・・闇の力を使った事があるの?」
ほらみてみろっと言わんばかりにミハルをジト目で観ていたマリアが。
「言い難いんやけど・・・そうなんや」
あっさり認めた。
「そーなのぉ!マリアちゃんもアタシも。
闇の異能を知ったんだよ、それで魔鋼力が適合出来たんだ。
アタシ達が乗る<翔騎>に。魔鋼の人型機械<翔騎>に・・・」
ビシッとローラに指を突き上げてみせるミハル。
「ここまで知っちゃったんだからぁ~っ!
もうローラ君はアタシ達の仲間になるしかないよねぇ~」
勝手に決めつけて、自分の失点を揉み消そうとした。
ぼかっ
「この阿保ぅは、ええとしてだな。
ローラはどうしたいんや?ウチ等の仲間になってくれるんか?」
ミハルを拳骨で殴り倒して、マリアが決断を求める。
「い・・・痛い・・・どう?ローラ君?」
めげずに、ミハルも決断を促すと。
「そんなの。
こうまで言われて・・・嫌ですって言える?」
ローラが手をマリアに差し出すと。
「じゃあ。マリア先輩・・・お願いします」
握手を求めて誓って来た。
「わぁあ~いっ!ナカーマ!ナカーマ!」
ミハルがヤンヤと囃し立てるのを放置して。
「ローラ・・・ええのんやな?」
握り返すマリアが覚悟を仄めかす。
「うん、僕達は仲間だから。大切な親友だから・・・これからも!」
二人は固い握手を交わした。
マリアは何も言い返さず、ローラは碧い瞳を見詰め直し。
「ああ~っ?!アタシも仲間に入れてぇ~っ!」
ジタバタするミハルが脇で頼むのを、二人の優しい目が呼んでいた。
3人が伴となる。
3人が魔鋼の搭乗員になる。
それは新たな闘いを前にして、力強くも思えた。
「「宜しい、ローラ君!君を我が<皇都魔鋼戦闘団>に迎え入れるよ!」」
今の今迄、他の誰も居ないと思っていた処へ、マモルの声が響き渡った。
秘密基地?!
もう秘密でもなんでもないような?
ただ、学校にこんなモノがあったら・・・遊び場になっちゃうんじゃね?
遺憾・・・・遺憾砲発射!
次回 皇都I魔鋼M戦闘団S 第2話
ローラはミハルとマリアに良い含められて・・・どうしようか?




