闇に染まりし者よ 第6話
ニャンコダマはナニを追う?
ニャンコダマはナニがしたいんだ?
・・・そう?そうだったのね?!(呆れ)
ぐるぐる追いかけ廻すニャンコダマ。
コントローラーを操るローラにも目を繰れずに。
「あーっはっはっはっ!それそれっ捕まえてみろ!」
勝ち誇るローラ。
唖然と光景を眺めるだけのミハル。
「にゃああっ!待つのニャアァっ!」
ローラの操るラジコンとは?!
漸く我に返ったミハルが絶叫する・・・
「馬鹿馬鹿馬鹿ァっ!叔母ちゃんっ何やってんのぉっ?!」
蒼毛玉になっている女神が追い回しているのは・・・
「ネズミのラジコンを必死に追いかけてる場合かぁっ!」
・・・は?
「にゃぁ?!本能には勝てないのよぉーっ?!」
・・・にゃんと?!
女神を超えて、猫毛玉の本性が現れたのか?!
ローラに操られるネズミを模したラジコン車を、必死に追い回し(?)ているニャンコダマ。
「うにゃぁーっ!待つのにゃーっ!」
確かに我を忘れているような?
女神と言う前に、人じゃなかったのか?
「にゃっ?!ニャにゃニャァ!すばしっこいぃー!」
・・・・もはや。人以下に成り果てたか?
「ニャーッ ・・・ じゃ、なぁ~ぃいっ!」
呆れを通り越したミハルが叫ぶのだが。
ぐるぐる逃げ回るネズミ型のラジコンを捕まえようと、目を吊り上げて追いかけ廻している。
「くっくっくっ!実に・・・お馬鹿さん」
ローラはニャンコダマをとある方向へ誘う。
ぱっくりと入り口を開け放っている女神ポイポイへ・・・と。
「あ?!伯母ちゃんっ、そっちに行っちゃぁ?!」
駄目だよって、言う前に。
「追い詰めたぁ!覚悟するにゃー!」
ネズミを追い回す猫の本能に、女神は勝てなかったのか?
「ほい・・・捕まえた!」
と、言ったのはローラの方。
がちゃんっ!
コントローラを放り出して、ローラはしてやったりと細く笑む。
分厚い壁で覆われた女神拘束箱の入り口が、ニャンコダマが入ると途端に閉じられてしまった。
「ああっ?!伯母ちゃん!」
閉じられた箱から出て来ないニャンコダマに、ミハルが呼びかけたが。
「あの箱に入ってしまえば、どれだけ魔法力があったとしても抜け出せはしない!」
益々勝ち誇るローラが、今度はミハルに振り向き。
「次はお前の番だ!大人しく着いて来るのなら手荒なことはしないが?」
女神を取り上げた事で、ミハルの魔鋼力を奪ったと勘違いしているローラが命じたが。
「あのねぇ。
伯母ちゃんを嘗めていたら、とんでもない神罰が下るよ?
それに、アタシが素直に言う事を聞くとでも思ってたら大間違い!」
右手を翳し始めるミハルが、闇に堕ちているローラへ答えた。
「ローラちゃんを解き放たないと、月に代わってオシオキしちゃうよ?」
魔法の衣を呼び出そうとするミハルに、ローラが返すのは。
「魔法戦でもする気なのか?
少しは考えてみたらどうなんだ?
お前には空を飛ぶ事なんて出来ないだろう、ボクには飛べるんだよ?
この靴があるから!」
ローラの足元に円環が描かれると、紅い羽が伸びて羽ばたき始める。
それに併せて、ローラの躰が空中へと舞い上がり始めた。
「空対地。それだけでもボクが断然に有利なんだぜ?
それに今は人質・・・いいや、女神を虜にしてるんだぞ!」
逆らえば、どうするかは自分次第なんだ・・・そう言ってるようなものだったが。
「あれ?ローラちゃんに巣食うあなたには判っちゃいないんだ?
その箱に入っているのはネズミ型のラジコンだけだって・・・気付かなかったの?」
逆にミハルから突き付けられたのは、女神は捕まっちゃいないという事。
「な?!馬鹿にするな!
間違いなくポイポイに入ったじゃないか!」
目視で確実に捉えたのを観た・・・間違いなんかじゃないと。
箱を振り返ったローラが、その中に居る筈の女神を確認しようとする。
「その必要はないから。
あなたの相手はアタシがするだけだもん。
あなたに勝って、この結界を破るだけだもん!」
「ふんっ!それもそうだな。
お前を捕えれば、女神もおまけに着いてこざるを得ないものな!
良いだろう、勝負してやるよ。少々痛い目に遭えば、思い知るだろうからな!」
<翔飛>で空中に昇ったローラが両手を開くと、澱んだ魔力が弾を造り始める。
「そっか。
ローラちゃんにあった闇を増幅してるんだね?
それなら・・・あなた自体を消せば、ローラちゃんを取り戻せるんだ?!」
敵になっているローラに宿った闇の力の元を断てば。
澱んだ邪心を取り除く事さえ出来たのなら、本当のローラに戻ってくれると信じた。
「勝手な事をほざくな!
ボクは元から闇の力を持つ者なんだぞ!闇の魔力は無敵なんだ!」
魔砲弾を完成させたローラが、頭上に振りかざして叫んだ。
「そう・・・闇の力と云っても。
悪い事に使わなきゃいいんだよ?
邪心に染められ無かったら、持っていても良いんだよ?
使い方さえ間違ってなかったら、使っても良いの・・・」
吠えるローラに対して、項垂れたミハルが言い返す。
「確かに、闇の力は絶大だよ。普通の魔法使いになんて使える筈もないから。
どんな人だって少なからず持っている、だけど邪な心で使っちゃいけないんだよ?
あなたが言った通り、無敵かもしれない・・・けど」
項垂れたミハルの魔法石が光った。
「うるさいっ!御託は聞き飽きたんだよ!これでも喰らいやがれ!」
魔砲弾を振り下ろすローラが、目の前に居るミハルを観て愕然となる。
「けどね。
あなたの力では役不足なの。
アタシも人だから・・・闇の力を持っているんだよ?
・・・魔王級の。・・・ルシファーの。闇の魔力を持っているんだよっ!」
目の前に居るミハルの瞳が赤く光る。
魔法石に因って呼び出された闇の波動が、髪を噴き上げオーラで包んだ。
「ば・・・か・・・な?!」
ローラが繰り出した魔砲弾は、ミハルの魔力に打ち消されて消滅した。
「魔王・・・だって?!ミハルが魔王だなんて?!聴いちゃいないっ!」
驚愕したローラは吠えるだけ。
相手の力が太刀打ちが叶うレベルでは無いのが痛い程解るから。
女神が宿る娘なのだと知っていたが、まさか魔王の力まで宿していたなんて・・・
「知らなかった!これ程の異能者だったなんて。
ボクに与えられた力じゃぁ、敵いっこないじゃないか!」
驚きを通り越して、苛立ちさえ覚えてしまうローラが誰かへ向けて恨み節を放つ。
「そう・・・あなたは騙されたの。
闇の力を買い被るように嗾けられていた・・・
今こそ、正気に戻るのよローラ!」
「ひっ?!お前っ、それはっ?!」
髪が赤く染まり始めている。
それが意味するのは、ミハルが完全に魔王の力を放てる状態になったと告げていた。
紅き瞳、紅き髪・・・そして。
「受けてみて?アタシの闇祓いの魔砲を。
闇の異能により邪心を滅ぼすの。
アタシは・・・光と闇を受け継ぎし神子。
破邪・・・救聖・・・」
突き出された右手の先から。
「シューゥトォーッ!」
紅い渦巻き状の魔砲が放たれる。
「うわあああぁーっ?!」
逃げる暇も無く、巻き込まれるローラの肉体。
だが、不思議な事に痛みも苦しさも感じ取れない。
「?!」
あるのは唯。
安息を齎す鐘の音が聞こえて来るだけ。
「これは?!これが?」
紅蓮の炎は、魂に宿る邪なる心だけを焼き払った。
「「願うんだよ?今、邪な心を捨て去るんだって。
光を求め、闇から抜け出したいと・・・願って!」」
心に鳴る鐘の声が、諭して来る。
「「私はこの子と同じく願っているわ。
あなたという娘が、もう一度光を掴めるのを・・・」」
ローラの心に語り掛けたのは。
「「私は理の女神。闇の中でも人々の安寧を願う神。
ローラ、あなたは取り戻さねばならない。人である証を」」
蒼き髪の少女が微笑んだ。
観た事も無い少女は、微笑みかけて手を指し出して来る。
心の中にあった邪なる心は、微笑みに打ち破られ消し去られる。
ローラの心は、微笑みかけて来る少女の手を掴んだ、しっかりと。
「もう大丈夫みたい。良かった・・・」
気を喪っているローラを抱いていた。
ローラの闇が敗れ去ったのは、穏やかな表情からも分かる。
黒髪に戻っているミハルが、少しやつれた顔で結界の天井を見上げる。
もし、ローラが結界を張ったのなら、既に消えている筈の。
「まだ・・・本当の犯人がいるんだよね?
ローラちゃんを遣って来た奴が・・・潜んでいるんだよね?」
どこかに居る筈の闇の化身に、ミハルが警戒を続ける。
「アタシは良いとして。ローラちゃんだけはここから出さなきゃ」
手強い相手なら、巻き込む恐れもあったから。
「アタシの魔鋼力も、後僅かしか残っていないから」
友達を護りつつ闘うのには、甚だ不利な条件が揃ってしまった。
結界を破ろうにも、相手が分らなければ手の打ちようが無かった。
「ローラちゃんだけでも・・・なんとか」
折角救えたのに。
そう考えていたミハルの背後から。
<< ドシュン >>
赤黒い闇の波動が放たれた
いきなりの攻撃の手が、ローラを抱くミハルへ襲いかかって来たのだ!
残念過ぎる伯母なんて置いといて。
ミハルの魔砲が炸裂した!
ローラは倒れミハルが抱き起こすのだが?
次回 闇に染まりし者よ 第7話
やはり!最期はこの<ひと>がやってくれます!だって・・・<ミハル>ですから(納得して!)




