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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
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蒼き光の子 Act2

今回・・・突然のお風呂回・・・



いや、当然と伝統のお風呂回・・・です

ぼんやりと窓辺に映る月を見上げて、今日の出来事を思い返していた。


登校した時から家に帰り付いた時までに起きた、普段とは違う一日に想いを馳せて。


突然現れた転校生に振り回された一日だったなぁ・・・と。


身体の芯まで温まった。

心の中まで温まった。


「ふぅ・・・」


湯船に浸かりながら夜空に浮かぶ月を見上げてため息を吐く。


「どうしてなんだろう・・・」


コハルは時々思う事がある。

それは、自分に着けられた名前の由来。

父の姉だった人の名前と呼び方が同じというだけなのに、みんなが気にする。


両親だって、祖母祖父だって。


自分を名前で呼ばない。

徒名の<コハル>って呼び続けている。


もう、ちっちゃな時から呼び続けられて、自分でもコハルって名乗ってしまう時がある。


どうして本当の名で呼ばないのだろう。

何時になれば<ミハル>と、呼んでくれるのだろう。


確かに小学校では<ミハル>と名乗り辛い。

名字を着けて名乗れば叔母さんと比較されるし、自分にはない力を求められてしまう。


世界が変わった時に、魔法なんてなくなったというのに。

自分の生まれる前の話なのに、自分にはある筈のない異能ちからなのに。


唯、同じ名前というだけで、クラスメート達はソレを見せろって囃し立てた。

世界から魔法の力が消えたのに・・・もう、十三年も前の話なのに・・・


湯船に浸かり、コハルは物憂い顔を窓に向けて月を見上げていた。


挿絵(By みてみん)






「帰って来てからずっとあんな感じなのよ、マモル?」


晩酌の伴をしていたルマが心配そうに風呂場へ視線を向ける。

盃を飲み干したマモルに、酌をしながら。


「なにか学校であったのかしら?」


マモルが答えないのに気付いて顔色を伺う。


「あら?マモルも何か心配事でもあるの?」


難しい顔で盃を持つ夫に訊ねるが、ブツブツと答えるだけで聞き取れない。


「なによ、はっきり言ったらどうなの?」


心此処に在らずのマモルに、耳を近寄せると。


「ついこの間まで・・・一緒に入ってくれたのになぁ。

 <マモルパパ、ごしごししたぁげりゅー>なんて言って・・・可愛かったなぁ」


(( ぴしっ ))


ルマの眉間に怒りマークが貼り付き。傍に在った新聞をハリセンに折りたたむ。


「もう、一緒には入ってくれないんだろうなぁ・・・悲しいなぁ」


「マモル・・・呆れた!」


((ペシッ))


挿絵(By みてみん)



ハリセンがマモルの頭にヒットする。


「で?本当は何を考えてたのマモル?」


ころっと怒りモードから脱したルマがマモルに訊いた。

夫が何か別の事を考えていた事を、とうに見抜いていたから。


「ああ。父さんに見せられた奴が気になってね。

 本当だとすれば大変な事になるかも知れないんだ」


盃を置いてルマに答えたマモルの眼は、少しも酔ってはいない。

そればかりか、ルマを見詰める目は陰を潜ませている。


「やっぱりか。今日のマモルもあの子と同じ。

 何かを秘めているとは思ったんだけど・・・近付いているの?」


ルマがマモルの眼に問いかけるのは。


「再び闇が目覚めた今、闘う機械も復活するのよね。

 私達が乗った・・・あの魔鋼の戦闘機械達が蘇ろうとしているのね?」


ルマの声に、マモルは小さく頷く。


「そっか・・・いよいよ・・・その時が来るんだね?

 新たな魔砲が出現する・・・新たな異能ちからを持つ者が」


自分達にはもう魔砲力は無い。

闇の力に対抗する術も無くなった。


だが、闇の力が復活したというのなら、聖なる者も現れる筈だと言えた。


闇と光。

相対する者達は、同時に現れる筈だから。


「こんなに早く。

 ミハル姉が救ってくれた世界に、闇が戻るとは思わなかった。

 折角救ってくれたのに、闇を求める奴等が居るなんて。

 人はどうしてこうも、身勝手な生き物なのかしら・・・」


ため息が零れてしまう。

姉の様に慕った人が、自らを犠牲にしてまで護ってくれた世界を。

新たに済世された世界だというのに、たったの十年そこらで闇が産まれてしまった。

・・・ルマはそう思った。


「悲しいねマモル。

 何の為にミハル姉は死んで逝ったというのだろう。

 どんな想いを残して行ったというのだろう・・・人の世界に」


思い出すのも辛い。


眼の間で巨大な紫色の魔法石が噴き跳び、世界に光が戻った。


あの一瞬。

女神となっていたミハル姉は消え去ってしまった。

たった独り。

宿命を背負った魔砲少女は、闇と共に消え去ってしまった。


「あ・・・ごめんマモル?!思い出させちゃった?」


悲しそうな瞳だ・・・そう思ったルマが謝るが。


「いいや違うんだルマ。

 いつも君には感謝しているよ、君が想い続けてくれるのが嬉しいんだ。

 きっとミハル姉も、心から感謝していると思う」


妻となった幼馴染を抱き寄せ、腰に手を廻す。


「そうよね・・・きっと。

 ミハル姉は観ていてくれているわ、私達残された者の事を。

 争う事を辞めた人類になれる日が来ることを・・・夢見て」


じっと幼馴染は瞳を交わす。


二人の間には同じ思いと、同じ姉の微笑みが映ってい・・・


「大概にしたら?二人共・・・観ちゃいられないよ?」


・・・いつの間に・・・


横を通り抜けたコハルを見送る二人の眼に、欠伸をする娘の姿が映っていた。








__________






月の明かりは夜闇を照らす。


だが、その灯りさえも届かない場所がある。


そう・・・陰だ。



「まだ以って捕縛できんのか?愚か者めが!」


暗い闇の底。

真っ暗な空間に声が響いている。


「我らの目的は唯一つ。

 今一度審判を下さんと欲する者を蘇らせるにある」


別の声が誰かに告げる。


「人類を殲滅させ、やがて来る新しき世に導かん」


闇の中で何かが蠢いていた。


「その為には手段を択ばん。

 彼の地へ赴き、女神を捕らえよ。

 母体となる前に・・・一刻も早く!」


((ざわざわざわっ))


蠢く者達がどこかに向かって進みだす。


「善いか?!日の本に於ける扇動は、表立ってするに当らず。

 人類に気取られる前に完遂せよ!」


最初の声が命じると、蠢く者達が一斉に消えた。


「まだ、表立って行動するには早いのだ。

 時が満ちるまで・・・もうすこし・・・今少しの時間がかかる」


闇の中が静まって行く。

汐を退いたように、妖しい気配が消えて行く。


「我が友、ケラウノスよ。復活の時は近付いた。

 我等、異種いしゅたる者に力を貸せ!

 そなたが力で、我が御子を復活へといざなうのだ!」


陰の中で闇は蠢く。


怪しげな影は向かった・・・運命さだめを受けし子の元へ。


世界を救った子の産まれた国へ。


・・・日の本へ・・・





____________





駆け足で追い縋ろうとした。


だけど、いくら全力疾走で追っても、引き離されるだけだった。


「ひいいぃっ?!なんて足なんだろう、追いつくなんて無理だった」


はぁはぁぜぇぜぇ、息を吐き。

もう諦めようと足を停め、肩で息を切って腰折れていると。


「アンタ・・・背中が煤けてるやん?」


「へっ?!」


いつの間に廻り込まれたのか、背中に指を差されていた。


「ひぃいいいっ?!化け物ぉっ?」


びっくりしたコハルが飛び退くと。


「失礼なやっちゃな?!バケモンちゃうで?」


赤毛を掻き揚げたマリアが口を尖らす。


「バケモンじゃなかったら何よ!どうしたらそんなに速く走れるのよぉ?!」


こちらが全力で追いかけ、息も上がっているというのに。


「呼吸一つ乱れていないなんて!化け物に違いないんだから!」


「あんなぁ、人をバケモン呼ばわりするんは、辞めてくれへんか?」


赤毛のマリアが息の上がったコハルに言い切る。


「ウチがどうして、コハルはんに追いかけられなきゃならへんのかを教えてくれへんか?」


ジト目で観られて、コハルがたじろぐ。


「そ、それはその・・・気になったから!

 どうしてアタシの大切なネックレスを奪おうとしたのか、知りたかったの!」



学校からの下校道。

コハルはマリアを追いかけた。

昨日とは逆の方角へ向かうのを、変だと思ったから。


しかも、とっくに夕方になっているから。

学校を出てからもう1時間も歩いていた。


普通に通学するには距離が離れ過ぎている。

学区を飛び越えていると思った。

もしこれだけ距離が離れている家から通学するのなら、バスや電車を使う筈だから。


「それはなぁ、ウチのオカンに言われたからって言うたやろ?

 アンタの魔法石が本物かどうかを調べたかったんや」


懐に隠してある蒼き魔法石を指差し、マリアが言い返す。


「もうその必要は無くなったんや。

 今日の授業中に確認したからな、もう触らへんから」


「えっ?!ホント・・・って。いつの間に?!」


マリアは<もう>と、言った。

つまりはどこかのタイミングで触ったという事。


「気が付かへんかったやろ?

 ウチがたぁーぷり触ってたんを。アンタの知らん間に」


「えっ?!いつ?どこで?どうやって?!」


ニマァと笑うマリアに、動揺を隠せずに訊く。


「アンタ、ホンマにフェアリア人やったんやなぁ、日の本人とは違ぉて・・・

 意外と着やせするタイプなんやなぁ・・・ウチもやで?」


ニマァと笑うマリアが制服の上着を捲って見せびらかす。


「ちょっ、ちょっとぉ!往来でなんてハシタナイことを!!」


真っ赤になってマリアを観る。

確かに日の本の同世代の子より、出る処が出てた。


「どや?立派やろ?アンタもそやけど・・・遺伝か?」


急に真面目な顔になってマリアが訊いた。


「はぁ?!遺伝なんて関係ないでしょーが!

 まだ十歳にもなってないんだから、出てようが出ていまいが関係ないでしょ!」


しっかり・・・話を逸らされた。


「ほなら、そー言う事で。ウチはコッチやさかいに」


家路に向かう・・・そう言いたかったのか。


マリアは急に走り出す。

山の方に向かって・・・民家のない山に向かって。


「え?!何処に行くの?そっちには家なんてないのに?」


はぐらかされたコハルが慌てて追いかけようとすると。


「コハル!こっから先は来ちゃアカン!早よ帰り!」


言葉の端に、何かしら危険な匂いを忍ばせたマリア。


「待ってよ!アタシ・・・方向音痴なの!帰る方向が分からないの!」


その気配も分からないのか、切迫感のないコハルが答える。

コハルの声に立ち止まったマリアが振り返ると。


「コッチ・・・私の指す方角に行きなさい。

 しばらく行くと大きな道に出られるわ・・・そこで誰かに頼ればいいのよ?」


差された指先を観るよりも、赤毛の髪を靡かせる顔に目が停まる。


気になるのは話す声、言葉使い。


そして、もっと気になるのは・・・


「マリアさん・・・その眼は?さっきまでよりも蒼いよ?

 まるで・・・蒼く輝いているみたいに。

 ・・・まるで聞いた事のある魔砲使いみたいに蒼いよ?」


コハルを見詰めるマリアの瞳は、蘇った異能ちからを宿して輝いていた・・・

癒されたのはコハルの心か?


それにしてもマモルよ。

お父さんになったんだなぁ・・・オヤジか?


次回 蒼き光の子 Act3

君は行ってはいけなかった、観てはいけなかった・・・その姿を。


ミハル「その光は誰を照らすの?あなたは何を見てしまうというの?」

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