闇に染まりし者よ 第1話
冬の訪れの前。
朝靄が都のを覆い隠した。
気温差が激しい朝に観られる光景・・・そんな日でも。
「ふっ!はっ!やぁっ!」
寒稽古には幾分早いが、娘は日課を休むことはない。
「はぁ~っ、ちょっとは寒くなって来たなぁ。
もう直ぐ年末が来るんだもんねぇ、一年って早いなぁ」
「「おばさん臭いわねぇ、姪っ子ちゃんってば」」
ニャンコダマの女神に茶々を入れられても。
「違うよ、アタシが言いたかったのわね。
何も解決出来なかったんだなぁ今年もって・・・心苦しく思ったの!」
「「ニャンとっ?!殊勝な心掛け!
・・・で、なにがなのよ?」」
惚けるニャンコダマに肩を竦めたミハルが。
「先ず、マリアのお父さんの事。
それに闇のイシュタルの民・・・そして<九龍の珠>を狙うモノ」
ニャンコダマに背を向けたミハルが答える。
「「・・・それだけ?」」
女神の声が聞き咎める。
「・・・伯母ちゃん、判ってるでしょ?」
稽古着をずらして首筋を晒すミハルが、
「痣が・・・どんどん濃くなってくるの。
アタシの中に居るルシファーさんと、何か関係があるんじゃないの?」
女神に聴き返した。
「「うにゅぅ、それが判れば苦労しないわよ」」
あっさり返されたミハルだったが、
「そうなんだ、伯母ちゃんでも分からない事が多いんだね?」
「「失礼な!多いとは何よ」」
蒼毛玉の女神をその場に置いて、ミハルは着替えに自室へと戻っていく。
「「姪っ子ちゃん・・・ごめんね」」
女神は知っていた。
姪に宿る神が、人間世界の闇に染まりかけているのを。
未だ目覚めないルシファーが、毒気に充てられる様にくすんでいるのを。
「「イシュタルの民とかいう輩の所為だわ。
奴等を本丸ごと叩き潰さないと、このままでは・・・」」
女神は、ミハルの言った通りだと自覚していた。
早く・・・早く解決しなければならない事が多過ぎると・・・
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「ジャじゃぁ~んっ!今日はコロッケなのだぁ!」
「マジか?!ミハルさん・・・それ全部?」
「・・・頭痛い・・・」
巨大弁当の中には、コロッケがマシマシに入ってる。
「それ・・・全部食べる気?」
「・・・頭痛い・・・」
ローラが驚いて訊いて来る横で、マリアが頭を抱えていた。
「そっだよー!一つくらいは交換しても良いよ!」
「交換かいっ!」
突っ込むのはマリア。
唖然と観ているローラ。
食欲魔人のミハルは、お構いなしに食べる子。
「ところで、図書館での勉強会だが。明日から開始しようか?」
「ぶあっ?!もうそんな日にちに迫ったの?!」
マリアに告げられたミハルが噴き出しながら訊き返して来る。
吹き出したミハルを煙たそうに手で払い、ローラにどうだと訊くマリアへ。
「そうだね、明日から早速やろうか?!」
「ひゅにゅぅ・・・勉強会かぁ・・・」
納得するローラに、ぶつくさ言うミハル。
「なんや、ミハルは嫌なんか?そやったら、独りでやるか?」
「しょんなぁ~っ、嫌じゃないよぉ。唯、気が乗らないだけだよぉ」
駄目出しされるミハルも、ここは仲間に入れて貰いたい。
「明日からだね、じゃあ・・・今日は寝よう・・・ぐぅ~」
「・・・まだ学校だし。寝んな!」
「気が早過ぎるってば!」
試験勉強会は明日たからに決まった。ミハルは怠そうだったが。
「それにしても、最近夜が静かでいいねぇ・・・あ」
背伸びして言ったら、マリアの痛い目に気付いて口籠る。
「本当だよね、夜になると昼間の喧騒が嘘みたいだよね」
ローラが気付いていないのか、ミハルの口車に乗って来る。
「あはは、つい眠くなっちゃうよね。何も無いのは良いことだけど・・・って、ひぃ?」
軽口を言うミハルの耳を引っ張るマリア。
「うん?マリア、何か気になる事をミハルさんが言ったの?」
気付かないのか、ローラは気安くマリアに問うのだが。
「い、いやいや。なんもあらへん。ミハルの耳に虫が居ったんや」
「?」
キョトンとするローラに隠れて。
「余計なことを言わんでくれ。ウチ等の正体がバレてしまうやんか!」
「ひんっ!ごめんなさぃぃっ」
小声で叱られてしまうミハルだった。
あははと、苦笑いした二人にローラが何気なしに言った。
「そう言えばね、明日の晩は満月だったよね?
肌寒い夜の満月って、なんだか外を出歩きたくなるじゃない?」
「へっ?!うろつくの?」
ひょんな言い方をされたミハルが、小首を傾げる。
だが、ローラが手を振って応えるのは。
「違うよ。徘徊する訳じゃなくて。
月明かりに呼び出されると言うか、なんかこう・・・踊りたくならない?」
「あ、御餅つきするウサギさんみたいだね?」
一瞬だったが、ローラの瞳に何かが宿った気がしたのだが。
敢えてミハルはボケてみた。
「ウサギ・・・ねぇ。
どちらかというと夜泣きする猫退治かな?」
「ほほぅ・・・猫退治?」
答えたローラはすっと立ち上がると窓辺に行き。
「そっ!猫退治さ」
虚空を見上げて答えて来た。
「・・・・」
ローラが何を言わんとしているのか。
黙って観返すミハルとマリアは、明日の晩に何かが起きると踏んだのだった。
そう。
久しぶりに、夜の仕事が舞い込む気がしていたのだ。
あれだけ毎晩やってきていたノーラという盗賊も、ローラの登場により姿を消していたのだが。
遂に再び現れるのだろうか?
また、<九龍の珠>を狙って来るというのだろうか?
明日の晩を想い、ミハルはマリアと目配せしていた・・・
闇が蠢く。
再び遅い来るのは盗賊か?それとも??
ミハルは自分に何者かが迫って来るのを感じ取っていたのか?!
ニャンコダマよ、姪っ子には教えた方が良くは無いか?
次回 闇に染まりし者よ 第2話
君は試験勉強を前もってやってましたか?今やってる?!失礼しました・・・頑張ってね?!




