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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
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虚像の男の娘 第3話

かけっこ勝負の行方は?


そして真実がバラされるとでも言うのだろうか?


あ・・・まさかーの??

号砲フォイッスルで二人がダッシュする。

100メーター走はスタートが決まった方が断然に有利なのだ。


「おおぅっ?!素人にしちゃ上出来やな!」


短距離がお手の物のマリアも、ローラのスタートダッシュに舌を巻いた。

陸上部でキャプテンを務めるようになったのは、誰よりも早いスタートアップにあったから。


そのマリアをして、舌を巻くほどの速さを見せたローラ。


「なんや、ローラはんって陸上でもやっとったんかいな?」


殆ど差の無い速さをみせるローラへ、声を掛けるだけの余裕を窺わせる。


「そやけど、こっからがウチの見せ所なんやで?」


スタートして20メートルも来ただろうか。

ここまでは並走してきたが、マリアにはローラに話しかけるだけの余裕があった。


「陸上部のメンツっちゅーもんがあるんやから。

 悪いけどちょっとスピード上げさせて貰うで!」


このまま同着するのも悪くはないが、キャプテンとしてのプライドもあるから。

短距離走だから、僅かな差でゴールを切ったら良いと。

少しだけスピードを上げたマリアだった・・・のだが?!


「ごめん・・・よ」


つぅいっと前に出たマリアの耳に、ハスキーなローラの声が。


「えっ?!なんやて?!」


抜き去って行くローラの背が観えた。

しかもどことなく男の子っぽい感じのする背中を見せて。


挿絵(By みてみん)


「マジか?!早いやんか?」


一瞬だけ戸惑ったが、マリアは本能に突き動かされた。

ダッシュにはダッシュで。

勝負は短距離だから、途中から巻き返すのは余程のスピードを出さないといけない。


ローラのスピードは半端なかった。


ー さては、魔法でも使っとるんか?


足の速さを倍に高める魔法を知る者なら、このスピードも納得出来る。


ー 真昼間から使うなんて、よっぽど負けん気が強いんやろか?


学校の中で、しかも衆人環視の今。

魔法を放って迄も勝負に拘ったのかと、マリアはびっくりしたが。


ー その割には速さが足りないような?


折角魔法を使ったのなら、もっと速く走れる筈なのに・・・と。


そう思った時、マリアは気が付いた。



「げぇっ?!ローラはんが男の娘になっとるぅ?!」


スタート時にはあった胸のラインが消え、華奢だった二の腕も太くなっている。


「マジか?!ウチの眼が腐ったのやろか?」


引き締まった曲線に代わって見える、走り方までも変わっている。


「くっそぅ!冗談やあらへんで!

 こうなったら全力全開や!負けへんからな!」


ローラの背中に怒号を浴びせ、マリアの瞳が燃え盛る。

相手が陸上を経験していない女の子だと思い込んでいた自分に、ハッパを掛けるマリア。

残り20メートルを全速力で、ローラを追い越そうとした。




ゴールラインではミハルが手を振って待っている。


「うにゃっ?!マリアちゃん・・・マジ顔なんですけど?!」


ローラが僅かに前を走っているが、追い上げるマリアが抜き去るかもしれない。


「ローラちゃん・・・早いね。

 やっぱり・・・男の娘って奴だったのかぁ?!」


ミハルは月の夜で出会った少年の姿を思い出していた。

あの晩以来、盗賊は出て来なくなっていた。

ローラと接触した晩から、ノーラは襲って来なくなっていた・・・から。


「睡眠不足もやっと解消されて来たんだもんね。

 だったらマリアちゃんも本気で走れるよね?ローラちゃんだって同じだよね?

 と言う訳で・・・ガンバッ!二人共!!」


全力疾走中の二人に、ミハルは声援を贈る。

魔鋼学園陸上部エースのマリア対、本当は男の娘だったローラ。


勝負の行方は?




「ゴールぅ!」


ストップウオッチを切った部員が、二人を計測し終えて。


「ぎゃっ?!10秒03・・・・って?!マジですか?」


非公式だが、中学生レベルの速さじゃない・・・ですよ。


「おお~っ!やっぱり。並みじゃないとは思ったんだよ・・・って。

 あれ?マリアちゃん達、ゴールは過ぎたよぉ??」


タイムを計っていた子も、ミハルもあっけに取られ続けるのは?


「お~いっ、マリアちゃんローラちゃん?!

 どこまで走っていくの~っ?」


二人共スピードを緩めることなく、並走して行くからだった。


「ありゃりゃ・・・引き続いてマラソンでもする気なんだろーか?」


観ていた皆も、そうして良いのか分からなくなって傍観しているだけ。

猛烈な速さで駆け続ける二人に、あっけに取られているだけだった。


「まったくぅ、マリアちゃんも負けず嫌いなんだからぁ」


言葉ではそう言ってみたが、ミハルはマリアが何を考えているのかが直ぐに判って。


「それじゃあ、皆。後片づけしとこうか?」


見世物はお終いだと、解散させたのだった。


「マリアちゃん、ローラちゃんと信じあえると良いね?」


走っていく二人に、ミハルはそっと呟いた。





「はぁはぁはぁっ!いつまで走る気なんや?」


「それはこっちの訊くセルフだよっ?!」


並走する男の娘と陸上娘が、足を停めずに訊き合う。


「勝負は終わったんやろ?なぜに停まらへんのや?!」


「そっちこそ、いつまでついて来る気?」


顔を観られるのが嫌なのか、ローラはずっと前だけを向いている。


「ローラはんが男のだったなんて。

 最初から言っておいて欲しかったんやけどなぁ」


「ボクもマリアさんがこんなに速いって、教えておいて欲しかったよ!」


どちらからかスピードを緩め始めて、やがて歩く位の速さに落とした。


「もうええやんか?停まらへんか?」


マリアがキリの良い処で切り出した。


「うん・・・あそこの木陰で。誰にも観えない場所で・・・」


ローラが前にある木立を指す。


「分かったわ、二人っきりになるんやな」


「そう、マリアさんになら見せても良いかなって・・・想うんだ」


蒼銀髪のローラと紅毛のマリアが、周りの視線から遮断された陰に入る。


「ここなら誰からも見られへんよ?」


マリアの前に立つのは、男の子になっているローラ。

女の子の時より若干背が高く、若干顔も男の子っぽい。


「あまりじろじろ見ないで・・・恥ずかしいから」


言葉だけは女の子らしいが、やはり立っているのは男の娘。


「いつの間にトランスフォーメーションしたんや?

 走り始めた時は女の子やったやん?」


不思議そうに見て来るマリアに、もじもじし続けるローラが言うには。


「いつも・・・気が付いたら変わっちゃっているんだ。

 ちょっと本気を出そうとしたら、この姿になっちゃってるんだ。

 ボクの魔法が暴れ出しちゃうみたいなんだ・・・自制しようとは思うんだけど」


話し出して気が落ち着いたのか、ローラは碧い指輪を撫でる。


「あの・・・元に戻るから。目を瞑っていて?」


変身を解くローラに頼まれたマリアが頷き、両手で顔を覆った。


蒼い光がローラから放たれる。

髪が僅かに伸び、ランニングシャツの胸が盛り上がる。

腕も細く、腰つきは厚く・・・女の子の体つきになった。


マリアは指の隙間から観ていた。

興味もあったし、なにより魔法で性別が替わるなんて知らなかったから。


「もういいよ」


促されても、マリアは直ぐには手を除けれなかった。

紅潮した顔と心臓の高鳴りを押さえる間、覆い続けていた。


「ホンマに・・・変わるもんやな?」


目の前には、いつものローラが顔を逸らして立っている。


「いずれ・・・みんなに知られちゃうだろうけど。

 今はなるべく知られたくはないんだ。

 だって転入して直ぐにいたたまれなく成るのは嫌だから。

 魔鋼学園でもボッチになっちゃうから・・・」


「あ・・・そうなんや?」


ローラが嫌がっている訳が判った気がした。

魔法使いは殆どが女の子。

魔法を使えて学園に来れるのは、一握りの女の子ばかりだった。


女の園と化した学園に男の姿をした子が居れば、居辛いことだろう。

グループを造りたがる女の子に、男子が入れる筈もない。

つまり、独りぼっちにならざるを得なくなってしまうだろうから。


「本当は男の子の姿で学校生活を送りたかったんだ。

 戸籍上では男だし、魔力の消耗もあるから。

 でも、普通科に居たら魔法使いは除け者扱いされるんだ。

 魔法を使えるのが判ったら、普通科に居るなって化け物扱いされるんだよ」


つい5年ほど前には、こんなことにはならなかった。

魔法が世界に戻るなんて思われても居なかったから。


でも今は、魔鋼の力が存在するのが知れ渡った。

政府も魔女の力を欲していたから・・・学園が出来た。


国内から集められた魔砲使いの卵達は、属性に因って適任者を見出す為に教育されている。

科学部と名付けられたのも、そうした経緯があるから。



「そんなことないで。

 少なくとも、ウチ等のクラスやと。

 男子やからって除けもんなんかにならへんし。

 もし仲間外れにする奴が居るんやったら、ウチがぶっ飛ばしたるわ!」


「え?!マリアさんが?」


マリアは胸をぽんっと打つと。


「せやっ!任せときぃー!

 ウチがローラの大の友達になっちゃる!

 友達を仲間外れにする奴が居るんやったら、ウチがやっつけちゃるよって!」


困惑するローラに、大きく笑い掛ける。


「せやから、ローラ。

 明日からでも、気が向いた時からでええんや。

 本当の姿で登校したいんやったら、味方になるで!

 意地悪言う奴が居ったら、ウチに言うたらええで!」


目を丸くするローラの顔に指を着けて。


「こないな綺麗な顔の男の子なんやから、惚れられちゃっても知らへんけどね?!」


「そ、そんなこと・・・ないよ。たぶん・・・」


ますます戸惑うローラに、マリアは顔を寄せて。


「ふうぅ~んっ?ローラの家には鏡が無いとみえるな。

 男のでも良いけど・・・男子なら下級生に注意しなはれや?」


つんっと鼻先をつついて、笑うのだった。


「それから。

 ウチの事、マリアって呼び捨てにしてええんよ。

 絶対の信頼の証やから、ウチもローラはんの事、ローラって呼ぶさかい!」


「えっ?!ちょっ・・・そんなの恥ずかしいよ?」


ずいずい来るマリアに、ローラは尻込みするが。


「恥ずかしいやてぇ?

 親友に恥ずかしがる方がもっと、恥ずかしいんやでぇ!」


ニコッと笑うマリアに、ローラもやっと笑顔になり。


「じゃあ・・・マリア・・・ぴくぅ」


自分で言って動揺したローラに、


「やれば出来るやんか!それでええんや!それがええんや!」


抱き着いて喜ぶマリア・・・


「ぎゃっ?!マリアってミハルさんと同じことするんだね?!

 ボクは男のだって、言ってるだろ!」


「むぎゃーあぁっ?!忘れてたんにゃぁーっ?!」


飛び退いたマリアが、それでもローラの手をしっかり掴んでいた。

ローラも、マリアに掴まれた手を放さずに指を絡ませていた・・・



誰からも見えない筈の木陰。

でも、女神には筒抜けだったようで。


「「姪っ子ちゃんよ、覗きなんて趣味があったのね?」」


蒼毛玉がふるふる涙する。


「「こんなハシタナイ娘に育てた訳じゃないのよ?」」


ミハルは密かに魔鋼刀を取り出す。


「「もぅっ、聞いてるのかしらね。

  あの子達の仲は固く結ばれたのよ。男と女として・・・」」



  バキッ


「友達としてでしょーが!・・・って。飛んでっちゃった」


魔鋼刀エクスカリバーでぶった切られたニャンコダマが、遥か彼方に消えた。


「でも。

 ホントーに良かったねマリアちゃん。

 友達として認め敢えて良かったねローラちゃん・・・あ、君かな?」


二人の間に蟠りが消えたのを、誰よりも喜んだのはミハル。


「新しい友達の輪が、また一つ増えたんだよね。

 みんなが皆、こうやって繋がれれば良いのにね?!」


心の底に光が瞬いた。

魂の中に、希望の光がまた一つ燈った気がしたミハルだった・・・


ぎょへぇ?!

ローラは男の娘だったのか?!

いいや、違うっ!これは・・・


反則のTS物語と化したようです?

イカン・・・遺憾よ!チミィ!


ミハル「けしからーんっ!」

お前が言うか?


次回 虚像の男の娘 第4話

君は巨大損!世界を救える・・・だろうか?無理かもね?

ただ今中学生活を満喫中?!ミハルは2人の秘密を知った・・・から?!

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