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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
8/219

蒼き光の子 Act1

登校するコハルに絡む赤毛の少女。

見るからに外国から来た留学生っぽかったのだが?!

初夏の日差しがやって来た頃。


時節外れの転入生がコハルのクラスにやって来た。


癖っ毛の赤毛を掻き揚げ、碧い瞳を逸らして。


「みんなに紹介するわ。お母さまの転勤で日の本に来られたマリア・クルーガンさんよ。

 仲良くしてあげてね、みなさん!」


クラスのみんなが目を丸くして見詰めた。

赤毛の少女なんて観た事も無かったのだろうから。


唯独り、コハル以外は。


「それじゃあ。島田さんの後ろの席に座りなさい」


担任教師の太井おおいたまが小太りの身体を揺すって席へと導く。


コハルの後ろに座る事になったマリアが、通り過ぎる時一瞥をかける。

その眼に気付いたコハルが身体を固くして俯いた。


挿絵(By みてみん)


「ん?どうかしたの島田さん?」


目ざとく気付いた太井先生が訊ねると。


「な、なんでもありませんっ!」


更に固くなって答えるのを。


「マリアさんもあなたと同じフェアリアから来たらしいのよ?

 同郷のよしみで仲良くしてあげてね?」


先生が促して来る。


「・・・なぜなの・・・どうしてなのよ・・・」


俯くコハルが思わず呟く。


「アンタ・・・宜しくやで?」


後ろに座ったマリアの一言がコハルに告げられるやいなや。


「宜しくぅ?!よくもそんな事が言えるわよね?

 あんな事しておきながらっ、よくもそんな口が利けるよね?!」


振り返ったコハルが騒ぎ出すのを、軽く手を挙げたマリアが。


「授業中でっせ、島田はん?」


落ち着き払って停める。


「きぃぃいいぃっ?!」


頭から湯気でも噴き出したかのような叫びをあげて、コハルが言い返そうとしたが。


「あらま、島田さんがこんなに怒るなんて。珍しい・・・わ!」


わ、のタイミングで拳骨が落ちる。


「いたたたっ、そんなぁ・・・」


怒られてしまうコハルを観て、


「ぷっ、損 なぁ・・・やて?!」


嘲られたコハルがムキになって言い返そうとするのを太井が停める。


「はいはい。それではホームルームを始めますからね、お喋りはここまで!」


あっさりいなされてしまう損なコハル。


「うう~っ、酷い・・・・」


しょげるコハルが何故マリアにムキになるのか。


それは・・・今朝の事だった。






______________






この前起きた怪現象を思い出し、遠くから公園を横目で見ながら学校へ歩いていた。


「本当に起きたのかなぁ。あれから何も起きないから・・・やっぱり夢だったのかなぁ」


寄り道する事をルマから注意されてから猫と遊ぶ事も控え、真っ直ぐに帰るようになったのもある。

公園に近寄る事も無くなり、それからは何も起きてはいない。


コハルも少しだけ注意力が散漫になっていたのか、横目で公園を観て歩いていると。


「わっ?!」


目の前に見慣れぬ少女が立っているのに気付かずぶつかりそうになった。


「ご、ごめんなさい!」


寸での処で立ち止まれたのだが、ぶつかりかけたから素直に頭を下げて謝った。


「・・・・・・」


謝った相手はコハルを睨みつけて、何も答えてくれなかった。

相手が何も答えてくれないから、コハルが頭を上げて少女を観る。


赤毛、碧い目。

日の本人ではない事が容易に判る。


自分より僅かに背が高く、腕を組んで観下げるように睨んでいる。


「あの、謝ったよ?ぶつからなかったから許してよ?」


少女が怒っていると思ったコハルが許しを請う。


「・・・ふん、これだから。日の本人はあかんのや。謝れば済むと簡単に思うとる」


睨みつけたまま、少女が嘲る。


「やっぱり。外国の子なんだね?」


観れば分かるのに、訊ねてしまった。


「アホかアンタ?見れば解るやろぉ、ウチの髪の色や瞳を見りゃー?!」


「うっ・・・それはそうだけど・・・」


声高に罵られてカチンときたコハルに、


「ウチはなぁ、この辺りに来るのは初めてなんや。

 日の本の都やっていうてもなんもあらへんのやなぁ、まるでフェアリアの田舎みたいや」


腰に手を充て周りを見回して小馬鹿にした。

国の名にハッとする。

懐かしい国の名を聞いて、少女をまじまじと見る。


少女はコハルと同じ学校の制服を着ている。

これから登校するのだろうが、今迄観た事もない少女だった。


「ねぇ、あなたはフェアリア人なんだね?!フェアリアから来たんでしょ?」


小馬鹿にしたのに瞳を輝かせて訊いて来るコハルに、怪訝な顔を向ける少女が。


「せやけど?それがなんか問題でもあるんか?」


否定せずに訊き返すと。


「アタシもなの!アタシもフェアリア生まれなんだよ!」


傍目で観れば、日の本人にしか見えないコハル。

黒髪に僅かだけ母親譲りの茶毛が伺え、瞳に僅かだけ蒼い色が滲む。


唯、日の本の少女にしては肌が透き通るように白かった。

それも日に焼けてしまえば白くは無くなるだろうけど。


赤毛の少女は同郷だという少女を品定めするかのように睨みつけていたが。


「フェアリア人とは思えへんな、アンタは。

 何か証明出来るもんでも持ってるんか?」


疑いの眼で話してきたと思ったコハルが、何か証明できるものがないか考えるが。


「う~ん。証明するモノって言われても・・・

 そうだ、話しかけてみてよフェアリアの言葉で。

 ~大概の事なら答えられるから、去年まではフェアリアで暮らしてきたんだから!~」


フェアリアの言葉を交えて答えてみた・・・が。


「ウチ・・・早口でフェアリア語、聞かされても判らへんねん」


あっさり拒否られてしまった。


「ええええっ?!どーして?フェアリアの田舎みたいって言ったじゃない!」


「そんなん、オカンの写真で見ただけやし・・・」


・・・


ポカン


・・・


ツンと明後日を向く赤毛の少女に、開いた口が塞がらないコハル。


「せやけど、アンタがフェアリアに住んで居たのは間違いあらへんのやろ?

 そんなに早口でフェアリア語を喋れるんやし・・・な?」


赤毛の少女がフェアリア語だと理解し、認めてくれたと感じたコハルが。


「うん、解ってくれてありがとう。

 そういえば、あなたも帝都学園に行くんでしょ?

 一緒に登校しようよ、あまりお喋りが過ぎると遅刻しちゃうよ?」


赤毛の少女を促して歩き始めると。


「ちょい待ち。アンタ、名前を名乗らんのか?」


コハルを立止まらせる。


「あ、そうだったね。アタシは・・・コハルって呼ばれてるの」


つい、呼び名の方で応えてしまったコハルに。


「コハルやて?・・・名字は?」


眉を潜めた赤毛の少女が訊き直して来る。


「あ・・・ごめん。さっきのはいつもの徒名あだなで。

 本当は島田しまだ 美晴みはるっていうんだよ。

 でも、みんなは伝説になった叔母さんと重なるから、コハルって呼ぶの」


ちょっとだけ肩を竦めて、コハルが苦笑いを浮かべる。


「な、なんやと?!アンタ・・・今なんて名乗ったんや?!」


急に掴みかかって来た赤毛の少女に瞳を見開いて、


「え?!あのその、島田しまだ美晴みはるだけど・・・」


コハルはシマッタと思った。

見ず知らずの人に本名を告げると、大概こんな反応を返される事を忘れていた。

自分が伝説にも等しい勇者の近親者であるばかりではなく、

名前が被っている事で、今迄どんなに辛い思いをさせられて来たのかを。


掴んで来た少女から顔を背けた。

また、遠い目で観られるのかと思ってしまい。


「アンタ・・・そうなんやな?!アンタがミハルなんやなコハル?」


少女の声が耳に痛かった。

自分の迂闊さに気分が滅入ってしまう。


「悲しいけど・・・そうなの。

 こんな名前をどうして付けたんだろう・・・って。思うんだ」


同姓同名・・・漢字だけが違うだけ。

他の者が観れば・・・由来や意味なんて関係なく。


「なに言うテンねん!素敵な名前やないか!

 しかも本当に叔母さんなんやな?世界を救うた勇者は?」


あれ?って思った。

今迄と違う反応だと感じた。


「そう・・・だよ。

 マモル君と叔母さんは勇者達の仲間だったって。

 そう聞かされているからミユキお婆ちゃんに」


本当の事を言えば、この少女も退くかも・・・そう思ったが。


「おおおおぉっ?!マジか?こんな所で見つけれるなんて!ラッキィー!」


・・・・


・・・・・?!


「はぁ?!」


少女は退くどころか抱きしめて来る。


「ちょ、ちょっとぉ!いきなり何を?!」


慌てるコハルにお構いなく。


「つぅーかぁまぁえぇーたぁー!」


抱き締めるというより、羽交い絞めされる。


「きゃぁ?!痛たたぁっ、何を?」


バックろに廻り込み、羽交い絞めにする少女に訳を聴く。


「ウチはなぁ、オカンに頼まれて探しとったんや。

 アンタの事を、いや。

 蒼き魔法石の所在しょざいが間違いないのかを、調べるように言われとったんや!」


「蒼き魔法石・・・?!」


はっとネックレスに眼をやってしまう。

胸元に覗く蒼き魔法石の付いたネックレスを。


「そこやな?」


少女に見つけられた。

羽交い絞めにしていた手が、襟口から入って来る。


「やぁ?!やだよ、盗らないで!」


身悶えて拒否するコハル。


「何人聞きの悪い叫びをあげるんや?!ちょこっと貸してみぃな?!」


「やだよぉ、盗らないでぇ!」


身悶えて逃れようと暴れるコハルに、業を煮やしたのか少女の手が服の中をまさぐる。


「にゃぁ?!こそばいよぉ!」


暴れるコハルが必死の想いで少女を突き飛ばす。


「はぁはぁ!やめてってば!」


振り解けたと思ったコハルが一安心したのも束の間。


「こらこら!人を突き飛ばすなんて。島田さん、駄目でしょ!」


不意に後ろから女性が注意して来た。


「あ・・・先生?!」


振り向いた先には、担任の太井女史が立っていた。


「あ、先生じゃありません!人を突き飛ばすなんて、もし転んじゃったら怪我するでしょ!」


訳も聞かずに注意されてしまう。


挿絵(By みてみん)


「でも、先生!この子が・・・あれ?」


太井先生に訳を話そうとして振り向いた先には、赤毛の少女の姿は消えていた。


「さっきの子はもう走って登校して行ったわ!

 島田さんも急ぎなさい、それから後で職員室に来なさい。

 分かりましたね?!」


「あ、はい・・・」


頭ごなしに怒られそうになり、その場から走り始める。


さっきの少女に言い募ろうと探したが、前を走っていた筈なのに観えなくなっていた。


「足が速いなぁ・・・もう観えなくなっちゃった・・・」


校門が観えて来た時、コハルはもう一つ肝心な事があったのに気付いた。


「あ、そうだ。あの子の名前を聞きそびれてた」


確かにこの学校の制服を着ていたのだから、探せば見つけられると思うのだが。


「職員室に行くまでに見つけられるかなぁ・・・」


酷い目に遭ったと、自分の不幸を少々嘆くのだった・・・





・・・朝の少女が後ろに居る。


魔法石を奪おうとした子が・・・


コハルは身の危険を感じるより、朝のお返しをどこで打とうかと考えを巡らせていた。


辞めておけばいいのに・・・






マリアと名乗る少女。


意味有り気な言い回しが興味を掻きたてる。

その少女は・・・


次回 蒼き光の子 Act2

君の秘密は誰にも言わない、でも・・・知ってしまった


ミハル「赤毛の少女が現れた、今あの子の事を思い出しています・・・」

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