魔鋼少女(?)と怪盗 第3話
アレッと思った。
学園に昼間から出向いて来るなんて、そうざらには無い事だったから・・・
「マッモッルッく~んっ!どうしたのぉ?!」
平日の昼間に学園に来るなんて参観日でもないのに、父親が居るのに驚いていた。
走り寄るミハルに気が付いたマモルが、威厳を正すように。
「ミハルぅ~っ、学校でその呼び方はないだろう?」
ちょっとだけ、気恥ずかしさから怒ったふりをする。
「あ、いつもお世話になってます!」
一緒に居たマリアが、ニヤリと笑い掛けて頭を下げる。
「ああ、ミリアさんの処のマリアちゃんか。
こちらこそミハルがいつも迷惑を掛けて、すまないねぇ」
呼びかけられたマモルも、棒読みの答えを返して来る。
二人の会話を聞いていたミハルが、ポンと手を打つと。
「そっかぁ!つい忘れてた。
学園内とはいえ、魔鋼騎乗りのマリアと局長のマモル君の間柄だなんて言えないんだったよね」
あっさりと秘密条項を口にする。
ぼかっ
マリアの拳骨がミハルを黙らせた。
「痛い(涙目)」
「ジトォ~っ」
それ以上言うなと、マリアが睨む。
「あははっ!ミハルもマリアちゃんには形無しだな」
破顔一笑したマモルへ、
「今日は何か用でもあったの?教員室から出て来たけど?」
用事の訳を訊いて来るミハルに、マモルが笑いながら答える理由とは?
「ああ、どこかの娘が授業中にしょっちゅうぼけっとしているので注意されたんだよ」
カマを懸けているとは思わないミハルが仰け反って驚く。
「えええっ?!大貫先生に呼び出されちゃったのぉ?!」
顔面から血の気を退いて、ミハルが訊き返すと。
「そうそう!ミハルはこのまま行ったら落第させられちゃうかもな?」
引っ掛かったミハルに、追い打ちするマモル。
「ひいいいいぃっ?!それ、本当?!」
今にも泣き出しそうになるミハルを観て、マリアがぱたぱたと手を振り。
「親子そろってのボケはそこまでにしておいた方が?」
ミハルの失言の埋め合わせの為にマモルがボケを噛ましたのを見破って言った。
「さすが、マリアちゃん。
そういうことだミハル、秘守事項を口に出したらいけないんだぞ?」
笑い顔のままで、娘に注意を促した。
「あはは・・・は。ごめんなさい」
苦笑いして答えるミハルに、
「今日来たのは、とある子を調査に来たんだ。
魔鋼の適性があるらしいから、魔鋼騎乗りに出来るかも知れないと思ってね?」
それは嘘ではない。
マモルがローラを調べに来た事は、嘘では無かったから。
「まだ、何とも言えないけど。
その内調査も完了するだろうから・・・見神君だっけか。
二人にもお願いするよ、あの子から眼を放さないようにしてくれないか?」
娘とマリアに対し、転入生を気に懸けておいて欲しいと言った。
「そうなんだ。見神さんを・・・うん、分かったよマモル君」
頷くミハルが父に向けて承諾すると。
「・・・ミハル。マモル君はよしなさい」
癖が抜けきれないミハルに、諦めたマモルが注意した。
「ミハルのお父さん、見神さんを魔鋼騎乗りに選抜されるのですか?」
首を捻たったマリアが、秘密部隊の局長に向かって訊ねる。
「まぁ・・・適性があれば。
可能性があるかはまだ調査中だよ」
上目遣いに訊いて来たマリアへ、軽く受け流したマモルが。
「じゃあ二人共。遅くなる前に帰るんだよ?」
ウィンクを贈って片手を挙げる。
それに答えてミハルとマリアも手を上げるのだった。
校舎から出て行ったマモルを見送り、ミハルは気になった事をマリアに訊いてみた。
「ねぇマリアちゃん、あのね。
見神さんってどの程度の魔鋼力があるのかな?
魔鋼科学部に編入されてくるんだから、余程の才能があるんじゃないのかな?」
中学生になってからの編入は、聞いた事が無かったから。
初めて学部が造られた時ならイザ知らず。
「そうやなぁ、関東のレベルがどれ位なんかは知らへんけど。
この都立に入れるくらいなんやから、レベル3以上は確定なんやないか?」
見神の魔法属性が戦闘に向いているのなら、最低でも魔鋼の武器は扱える筈であった。
レベル3以上の優秀な魔法使いしか、この学部へは入れない筈でもあったから。
「そうだよねマリアちゃん。
レベル3以上なら魔鋼騎には乗れる筈だよね、後は戦闘に向いてるのかどうかだけだよね?」
― マモル君は、一体何を調べに来ていたのだろう・・・
不思議に思うミハルは父が出て行った後を見詰めて考えた。
「ボクの魔鋼は、これなんです」
机を指して楼羅が答える。
「まさかとは思ったけど。
この世界には不思議な能力があるものね・・・」
大貫教諭がマジマジと机の上を見詰めて言った。
「この力はお母さんから引き継いだんです・・・姉さんと共に」
ローラ(作者注・ここから楼羅の事をローラと呼びます)は、目を細めて答える。
机の上に書き出された文字。
大貫教諭の机の中に隠されてある物を間違いなく記してある。
「魔力を秘めた物を見つけ出せる能力・・・か。
透視能力に近いとでも言っておきましょうか。
君には魔法石を言い当てられたわ、この通り」
引き出しを開けて、自分の魔法石を取り出した大貫教諭が。
「間違いない。見神楼羅君には、魔鋼が秘められている。
しかも、今迄発見されてこなかった偉大なる異能が・・・ね」
ローラの持つ魔鋼力を認めた。
「では、その力をどう役に立たせるのか?
君は姉を救うと言った。闇から抜け出させると言い切った。
どうやって?闇の盗賊を取り戻す気なの?」
問われたローラが、俯き加減に呟く。
「仲間を集って・・・ノーラ姉さんを捕まえるんですよ」
紅い瞳を向けて来たローラ。
口に出した名は、月夜に舞う盗賊の名を告げていたのだ。
「宝玉を狙う娘・・・闇の盗賊。
あなたは姉を救うだけが目的なの?
姉さえ救えればこの学園にも用が無くなると言うの?」
大貫教諭の問いに、ローラは静かに首を振る。
「言ったでしょう、仲間を集うって。
ボクには仲間が必要なんですよ、姉さんを救い出す為にも。
姉さんを救い出した後、やらなくっちゃいけない事があるんですから。
それが完遂出来るまでは・・・此処に居続ける筈です」
意味有り気に顔を向けるローラは、教員室に張り出されている地図の一点を見詰めた。
はっきりと目的を教えないローラに、大貫教諭は訝しむ。
「君の目的・・・それが判るのはノーラを救い出してからって事ね?」
教えようとしないローラへ、最低限の答えを求める。
「そう・・・そう思って頂いて結構ですよ。
帝学の校長も認められたのですから・・・
その為の編入だと依頼書にも書いてあった筈ですよ?」
低い声でローラは応えた。
「そうね確かに書いてあった。
意味する処は書かれてはなかったけど・・・」
そこまで答えた大貫教諭が立ち上がると、静かに手を指し出す。
「良いわローラ君。
あなたを正式に生徒として認めましょう。
魔鋼の生徒として今日から私が担任を務めます、分ったかしら?」
「ええ、宜しく・・・」
握り合った二人は、互いの内に秘めた力を探り合った。
方や生徒、方や教諭・・・それだけではないと。
魔鋼学園に、新たな生徒が現れた。
姉を救うという不思議な力を秘めた、ローラという紅い瞳の子が。
楼羅は何が目的で学園に編入してきたのか?
姉を救うと言っていたが・・・果して?!
夜ともなれば、どこからとも無くやってくる邪操機兵。
魔鋼騎乗りは迎え撃つ・・・例え寝不足だったとしても。
ミハル「すぴぃ~っすぴよ・・・・」
寝てるんかいっ?!
次回 魔鋼少女(?)と怪盗 第4話
君はジェットコースターみたいな展開って好き?選り好みはナシコ!




