発進! 魔鋼騎(マギカメタル)輝騎(こうき) 第5話
月夜に舞うは猫。
月夜に闘うは輝と闇・・・
月を背にした娘からの声が辺りに響き渡る。
ビルに侵入を図ろうとしていた影が振り仰いだ先に居た者は。
「なんや、またお前か?性懲りも無く・・・懲りんやっちゃなぁのらっ?」
決め台詞を言い放った娘に肩を竦めて、
「ウチの邪魔ばかりするところを見ると・・・暇なんやな・・・のら?」
<輝騎>零号機に跨るミハルへ向けて言い返した。
「むかっ!あなたの方が性懲りもないだけでしょ!
この間から<九龍の珠>を狙って、何度も奪いに来てるじゃない!」
言い返されたミハルが受けて立つ。
「せや。シーフがお宝を狙って何が悪いんや?
あの魔法石はウチが貰うって決めたんやしの~ら、邪魔せんといてんか赤リボン!」
影は言い返したミハルに応戦する。
「赤リボン?!ちょっと!他に云い様がないの?
正義の味方とか、カッコいい魔法少女とか?!」
影に足割られてしまうミハル。
「お前なんか赤リボンで上等なんやのらっ!
ウチの邪魔ばかりしよりよってからに!」
「あ~っ!また言った!」
・・・・なんだかどっちもどっちのような。
「兎に角や!お前には邪魔なんかさせへん!
このビルに保管されてある魔法石を頂戴するんやからなーのらっ!」
「誰が!させるもんですか!」
影はミハルを無視して侵入を試みようとするが、黙って見逃す筈もない。
「魔鋼の技で、あなたを捕らえてみせるから!」
零号機のコックピットに踊り込んで、起動ボタンを押し込むミハルが。
「アタシの<輝騎>零号機からは逃げられないんだから!」
上部ハッチが閉じ、稼働システムが起動したのを確認した。
「またその阿保魔鋼騎で邪魔するんか!こっちは生身なんやで?
反則やろーが、赤リボン!のらっのーら!」
影がくるっと身体を捻ると、零号機の上を飛び越した。
影は人では考えられない程の跳躍力をみせる。
「ちょっと!待ちなさいよ泥棒猫!盗みに入るんじゃなかったの?」
スピーカーから、怒ったミハルの声が飛び出す。
「あのなぁ、さっきも言ったやんか、ウチは生身なんやのらっ?
こないなハンディーをどないせいっちゅーんやねん?!どあほ!」
「ど・・・弩阿呆ぅっ?!ひっきぃーっ!言わせておけば!」
影が飛び越し、逃げの一手に移る。
嘲るように悪口を言われたミハルが、奥の手を出す。
「もう赦さないんだからね!
アタシの剣舞を見せてあげるんだからっ!斬鋼剣!!」
零号機の左腰部に装備されている、強硬度の鋼鉄剣が鞘から引き抜かれる。
「これでも喰らいなさーいっ!」
邪操機兵の装甲さえも切り裂ける剣を、影に向けて居合抜いた。
ーーー ザンッ ---
目にも留まらぬ速さで、魔鋼の剣が揮われる。
「せやからっ反則やんかーのらっ?!」
影は剣波が襲い掛かる前に、闇の中へ潜り込んだ。
ミハルが放った斬波は影には直接襲い掛からずに、辺りの闇を斬り割いた。
「ふぅっ、危ない危ない。
そないな破壊波動をもろに喰らったら、ウチでも一溜りはないわ。
せやけどな、ウチには魔法の靴があるんやのら!
なんぼ斬ろうとしたって簡単にはやられへんで?のろまの赤リボン!」
影は闇から顔だけを覗かせて、零号機のミハルにほざいた。
闇から覗かせた影は、紅い瞳と金色の瞳で嘲り嗤う。
月の光に顕わになった姿を魅せて。
蒼銀髪に色違いの瞳。
肩下まで伸ばした髪は闇の中でも靡いているのが判る程、美しく輝いて観える。
月に照らされた姿。
迷彩のスーツは、身体のラインを崩すことなく露わに魅せる。
「今日の処はこれで引き上げるけどな。
必ずお宝は頂戴にあがるで?!そん時は吠え面かかせてやんよ、のらっ!」
ミハルは自分より年上のしなやかな肢体を観て、静かに微笑んでいた。
「ほなら・・・な、のらっ!」
すっと、のらのら言っていたシーフが闇の中へと消えた。
「そうだね野良猫さん。
人に迷惑かけちゃ駄目だよ?泥棒なんて辞めなきゃ駄目なんだよ?」
微笑むミハルの前に映るモニターには、標的照準点からワザとずらしたマークが残っていた。
「あの人。<九龍の珠>なんて盗み出して、何に使う気なんだろう?」
影が狙った魔法石<九龍の珠>。
闇の化身と化した龍が宿っていた珠。
とある海辺で、ミハル達が闘いの末で手に出来た魔法の石。
強力な魔力を引き出せるとされた、古から伝わる珠。
今は国立保管庫に納められ、誰の眼にも触れられない処に納められたという。
「まさか、また機械兵に宿らせるつもりなんかじゃないよね?
泥棒猫さんが闇の化身を使って、世界を狙うなんて・・・ある訳ないよね?」
側面モニターに映るビルを横目で見て考え込んでしまうミハル。
「いつになったら・・・本当の平和が来てくれるんだろう?」
右手の宝珠へ向けて、ミハルが溢した・・・時。
「「こぉらぁ!ミハルぅ!ボケっとしてたら時間切れになるでしょうがぁ!」」
モニターの右端に映った人が喚き出した。
栗毛の長い髪を揺らして怒鳴る女性が、
「「さっさと帰還しなさい!じゃないとまた立ち往生する事になるわよミハル!」」
「ひゃぁいっ!ルマお母さんっ?!」
怒鳴られたミハルが、モニターに映った母に答える。
「「お母さんじゃありませんっ!<輝騎>零号機に載ってる時は司令ってお呼び!」」
「ひぃぃ~んっ!ごめんなさいぃっ!!」
慌てて操縦システムを稼働させたミハルが、目を廻したかのように帰還の途に就く。
「「それから言っておきますけど。
無駄に剣舞を発動させた始末書を、帰ったら書く事・・・いいわね?!」」
「えええええぇっ?!損なぁ?」
自動操縦システムに帰還を任せたミハルが、モニターに向かって揉み手を捧げて涙する・・・
「「黙らっしゃい!」」
問答無用の一声が、ルマ司令から返って来た。
「シクシク・・・」
ずっどーんと、落ち込むミハルであった・・・
蒼き魔法石の中で、女神が闇を睨み考えるのは。
現れ出て来る邪操機兵に。
現れ出た影のシーフにも。
それが意味するのは、一体何なのかと。
<答えは・・・間も無く奴らの方から教えてくれるでしょうね。
もし、魔龍の石を手にしたら。また蘇らせようとするに決まっているわ>
理の女神として、断じて許すべきではない。
<闇は必ずやってくる。魔龍の力を欲して・・・襲ってくる>
闇は力を得ようと試みている。
人を操り、人を貶めて。
自らは何もせず、操る者の魂を貶めて。
<私の力だけでは防ぎきれなくなったかも。
ねぇ、ルシちゃん。いつになったら目覚めてくれるの?>
宿る娘のうなじに描かれ続ける、聖なる者の紋章。
<千年の女神として人を観て来るように、サタンだった機械は願ったのよ。
必ず邪なる者が現れるのを見越したケラウノスが、私に約束を交わさせたの。
宿命を受け入れなければ、人類は滅ぶだろうと告げたから・・・>
女神は、寂し気に話す。
<あと・・・後どれくらい我慢すればいいのかな?
いつになればリーンの元へ行く事ができるんだろう?>
女神は宿る魔法石の中で涙を零す。
だが、それが何時の為るのかは女神でも分からなかった。
ケラウノスとの誓いは、未だに果たせていないのだから・・・
登場しましたね野良が。
いいや、ノーラですが・・・何か?
怪しい盗賊は、ミハル達とどう係わってくるのでしょう?
それは・・・新たな物語を産もうとしていたのでした。
次回 魔鋼少女(?)と怪盗 第1話
やって来たのは?!蒼銀髪、紅瞳の・・・ハスキーボイスっ子でした?!




