約束と希望 Act4
ミハルという損な女神は・・・
自ら毛玉となる・・・ペットな状態で。
・・・・だからって、これは?!
女神が宿る蒼き魔法石が宙に浮かぶ。
皆が不思議な力を感じる傍で・・・
「シャイニングゥーチェーンジィ!」
コハルが魔砲少女に変身した。
「なんやコハル?!何か感じたのか?」
マリアだけが、いきなり変身したコハルに訊ねると。
「普段ならここで決め文句を言う処だけど・・・今は妖しい者なんていないから。
というより、女神伯母さんが勝手に変身させたんだよねぇ」
困ったような顔でマリアに答えてきた。
「はぁ?!女神様が?どうしてなんやろか?」
マリアもコハルも、訳が判らず魔法石をみあげて。
「女神伯母ちゃん、アタシを変身させたのはどうしてなの?」
まだ受話器を持ったままのコハルが魔法石に訊くと。
「あ、あの・・・ね。これには訳が・・・」
魔法石から女神が答えようとしたら。
「「ねぇ、ミハル。そこに居るんでしょ?
ちゃんと私の<ペットになった>の?
まさかまだ石に隠れたままなんじゃないでしょうね?
ミハルの姪っ子ちゃんどう?ミハルは姿をみせたの?」」
「ぎゃぁっ?!御主人様ぁ、損な御無体な?!」
電話からフェアリアの女神の声が轟く。
魔法石が宙に浮かび上がり震えていたが。
「ねぇ女神伯母ちゃん?こんな事を仰られていますけど?」
受話器を突き出したコハルによって、審判の女神の呪文が金色の輪になって魔法石に絡みつく。
「ああああっ?!もう駄目だぁっ!」
断末魔の声に似たミハルの叫びが魔法石から聞こえた・・・時。
(( シュル・・・シュルン ))
魔法石から蒼い何かが飛び出て来た。
「なんでよぉ・・・こんな姿になっちゃったじゃないのぉ」
飛び出て来た蒼い何かから、ミハルの声が?!
「毛玉になっちゃったし・・・しかも、ペットな状態で」
蒼いおかしなものからミハルの嘆き節が聞こえる。
「・・・・・・はぁっ?!」
「まさか・・・これは?!」
声を出せるものは、目の前に現れ出た<異次元物体>に、目を疑う。
「あ、けっこう可愛い・・・」
コハルが眼をパチクリしながら、宙に浮かんだ変なモノを見詰める。
「か?可愛い??」
マリアが開いた口が閉まらなくなってコハルの精神を疑う。
魔法石から現れた蒼い毛玉状の者が、自分の姿を映しだしたガラスの前で泣く。
「ふぇええぇん、酷いよリーン。こんな姿にするなんて・・・鬼だ」
蒼い毛玉はモフモフの獣耳<猫毛玉>になっている。
ふさふさの毛玉。獣耳を生やした毛玉。
しかも紅いリボンを、しっかりと着用している。
これは・・・間違いなく。
「そんなっ?!ミハル姉が?」
「あらまぁ、何故だか懐かしく感じるわぁ(棒)」
「そうそう、彼の紅い毛玉に対抗して蒼毛玉。しかもリーン様に呪われてペットモドキ!」
「あああっ?!おいたわしや分隊長・・・」
マモルがルマが、ミリアもチアキも。
唯、呆れたように話し合うのが、女神には痛く感じる・・・やはり。
「だっ、だから嫌だったのよ!
コハルちゃんを墜落の衝撃から護る時に初めて現実世界に出た時、分ったんだから!」
ミハルがリーンの命令に拒んでいた理由がこれなのか。
「そういえば、輝騎の中でちらっと観えてた気がする・・・」
ルマが思い出して、
「耳が付いただけでも良いじゃないミハル義理姉。
コハルも可愛いと言ってるんだから・・・ねぇ」
嘆き泣く損な女神を慰めようとしたが。
「うるしゃいっ!こんな姿にされた者の気にもなりなさいよ!」
却って逆効果だったようだ。
「「ねぇ?!ペットなミハルになってるの?」」
受話器からリーンの声が流れ出ている。
「あ、リーンお姉ちゃん、アタシ。ミハルですけど、ちゃんと出てきましたよ。
ヘンテコネコ毛玉になって、女神伯母ちゃんがって・・・痛っ!」
コハルがフェアリアの女神に教えたが、毛玉アタックを喰らって仰け反る。
「御主人様ぁ、どうか呪いを一時解除して頂けませんか?
あまりのも情けない格好になってるの・・・お願いです、許してぷりーず!」
コハルの持った受話器にお願いする女神だったが。
「「ほほぅ?!私にお願いするなんて1万光年早いっ!
大体ミハルが私の元で目覚めなかったのが悪いのよ!
フェアリアに来るまでの間、その恰好のままで過ごしなさい!」」
「ひぃいぃ~んっ!損な殺生なぁっ?!」
ミハルがリーンの呪いでペットに成ったままでいろと断言されて、滝のような涙を流す。
1000年ぶりに声を聞けたというのに、どうしてこうなったのかと。
「「でも、ミハル。これからの世界を考えて欲しいのよ。
私もあなたも現実に戻って来たのが一体どう言う意味なのかを。
姪っ子ちゃんに刻まれた呪いの意味、それにずっと消えない闇の力をどう考える?」」
審判を司る女神同士が、次々に起きる不可解な事実に疑問を投げ交した。
「うん、その通りだよリーン。
私にも少しだけ分った事があるんだ。
この先に何が待つのかは分からないけど・・・闇は必ず襲って来る。
邪な心を持つ人間達に因って、復活を遂げようと画策するかもしれない」
理を求める女神が、審判を下す女神に語る。
「もしも闇が再び人々に襲い掛かるのであれば、私は人に戻る前に闘わないといけない。
どれほどリーンと逢いたくても、約束を果す前に憂いを無くしておかなければならない!」
「「そう・・・ミハルも同じなのね。私も、そう思ってたのよ」」
人に戻るのを拒む訳ではないが、やらねばならない事がある。
二柱の女神が、互いに同じ思いであったことを話し合い、
「リーン、直ぐにでも飛んで行きたいけど。
姪っ子が独り立ちできるまで待って欲しいの。
自分で運命を切り開けるようになるまで、この子を護っていたいの」
コハルを観て、強くなれるまでどれ位の時が必要なのだろうと考えた。
「「勿論よミハル。そう願えばこそ、あなたの魔法石を託したのだから本当は。
茶化しちゃってごめんねミハル、きっといつの日にか逢えるのが分かったから嬉しくて」」
リーンの声が震えている。
やっと大好きなリーンらしい声を聞けたと感じたミハルも、本当の涙を溢れさせる。
「ああ、今すぐにでも逢いに行きたい・・・リーンの元へと」
心からの声が溢れる。
「駄目だ!ミハルはもうしばらく日本に居てくれなきゃ駄目なのだ!」
「そうそう!ミハルにはコハルちゃんを護って貰わないとね」
女神の両親が停めに入る。
「お父さん、お母さん・・・うん」
分っているのだが、言ってみたくなっただけ。
まだ、女神のままなのだから・・・二人共。
「「ミハル。約束だからね、人に成ったら。
私が人に成れたのなら、直ぐに教えるから。ミハルもよ、解った?」」
「うん、約束は果たすよ。辛くなったらまた声を聴かせてくれる?」
ネコ毛玉状態でぽろぽろ涙を零すミハルへ。
「「ええ、ルナリーンが良いというのならね」」
生まれ変わりの娘に宿るリーンが了承する。
「「ミハル、懐かしく感じない?
私達も昔はそれぞれに宿られていたわよね、双璧の魔女に」」
「そうそう、あの頃は何が何だか分からなかったよね」
二柱の女神達が思い出話を始めようとして居たら。
「あのぉ・・・ミハル伯母ちゃんはずっとこのままなんですか?」
コハルがねこ毛玉をつんつん突きながら訊いてきた。
「あっ、そうだよリーン。呪いを解いてよ?!」
普通の女神として現世に姿を現したいミハルが頼んだが・・・
「嫌ーぁよ。猫毛玉って姿をこの目で観るまではそのままでいなさい」」
「・・・あっ・・・そ」
リーンの悪戯な声で悟っていたミハルだったが、天を仰いでため息を吐く。
「わぁ~いっ、女神伯母ちゃんは毛玉だぁ!」
無邪気で悪意のない一言を、コハルが叫ぶと。
「毛玉かぁ。皆何もかもが懐かしい・・・・」
猫毛玉になったミハルが遠い目を浮かべる。
「ほぇ?何が懐かしいの?」
からかったのに受け答えされず懐かしがられ、拍子抜けしたコハルに。
「そう。この姿はねぇ、みんなも良く知っている神様の姿なんだよ」
「・・・神様?」
ますます訳が判らなくなるコハルへ、
「そう神様。私の大事な想い人・・・紅き毛玉になって私を護ってくれてたの」
猫毛玉が遠い過去の話を始めた・・・が。
「なんだか良く解んないけど。
女神伯母ちゃんはこの姿で納得したみたいですよ?」
電話先に居るリーンに話すコハル。
「「あらま・・・なんて順応性が強い。
まるでGみたいね・・・」」
「それはいくらなんでも言い過ぎじゃぁ?」
惚けた話を交わした二人だったが。
「「ミハルちゃん、ルナリーンが逢いたがってるわよ?
またフェアリアに来て欲しいわ、ご家族一緒にね?」」
コハルの事を美晴と呼ぶ審判の女神。
再び彼の国へ行けるのかどうかが判らないから両親を振り返ると。
二人は同時に頷いてくれた。
「ええ、勿論。私の国ですもの!」
コハルは電話先に居る筈のルナリーンへと誓いの言葉をかける。
「「待っているわ。この子も私も・・・いつの日にか逢えると信じて」」
別れの言葉を継げようと思ったコハルの耳へと入って来たのは。
ルナリーンの幼い声と、大人の女性が同時に言ってくれた信頼の証。
「うん、うん!きっとね!」
コハルの想いが伝わったのか、受話器から通話が途切れた音が流れ出す。
「ああっ?!コハルっ、私にも言わせてよ!」
女神な猫毛玉が慌てて受話器に寄って来たが。
(( カシャン ))
無碍も無くコハルが受話器を置いた。
「もう切れてたよ?」
「・・・リーンの意地悪ぅ」
そうはいっても。猫毛玉は嬉しそうに見えた。
コハルには毛玉が嬉しがっている気分が良く解っていた。
ネックレスに宿る伯母が、姿を現せて。
大切な人の声を聞けたのが、どんなに嬉しく思っているかが分ったかのように。
「それじゃあミハル伯母ちゃん、ネックレスに戻る?」
要件が済んだと思ったコハルが勧めたが。
「いいえ、皆の前に出た今こそ。
皆に大切な話があるのよ・・・」
猫毛玉が集まった者に顔を向ける。
「今は一つの闇が消えただけなのだから。これから起きることに備えて貰いたいの」
急に真摯な声となったミハルが、一体何を話すというのか?
・・・それは。
猫毛玉と化したミハル。
その姿でどれだけ真面目な話をしたって・・・
信憑性ってもんが・・・だな?!
何を話す?何を告げる?!
女神は、1000年の想いを語るのか?
次回 約束と希望 Act5
君は女神としての務めを果す気なのか?!古から引き継いだ運命の果てを!
ミハル「ニャァ~ッ!ニャニャニャニャァ~っ!!(ナに言ってるのか皆目不明)」




