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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
61/219

新たなる魔鋼 輝騎<こうき> Act7

佳境へ。


女神ミハルの作戦は?!

闇を撃ち滅ぼせるか?!

操縦手マモルは、思わず耳を疑った。

娘に宿っためがみの企てを教えられて・・・


「もう一度、言ってくれるかなミハル義理姉ねえ?」


同じ思いだったのか、ルマも訊き直した。

宿った女神の躰は、娘なのに危険過ぎると考えたから。

成功したとしても、無事には済まないと思えたから・・・


突入する車体を制御しながら、マモルももう一度説明を受けたいと思っていた。


「う~んっ、時間が勿体ないから。

 残り僅かに30秒しかないのよ?説明を繰り返している暇なんてないわ!」


それはそうだけども。

娘の身体が無事に済む保証は?


マモルもルマも、ミハルの事を信じてはいるのだが、


「じゃあ、約束してよ姉さん。コハルは護ってくれるんだね?」


「当たり前じゃないの!誰だと思うのよ、私は理の女神なんだよ?!」


しんじつを測り、正しきことを司る女神だと聴いていた。


「大丈夫だから、姪っ子ちゃんは私と同化してるの。

 もし姪っ子ちゃんに疵を着けたのなら、私も同じなのよ?」


だからと言って・・・無事に済む保証は?

口に出かけた言葉を、ルマが代弁してくれた。


「ミハル姉!コハルは任せるから、絶対無事に返してよ!」


「あたりきこりきぜっぴんしゃんよ!」


どこのスラングかは知らないが、女神ミハルが確約した事で納得した。

だってミハル姉は約束を違えたことがないから。


「カウントダウンは任せるよ。いつでも急ターンするから」


マモルは即時待機状態に持って行く。

アクセルとブレーキペダルの両方に足をかけ、声をかけられたら瞬時にターンをかける用意を整えた。


「オッケ!それじゃあ行くよ!

 < 5 > ・ < 4 > ・ < 3 > ・ < 2 > ・・・」


作戦計画に沿って、マモルが敵に突っ込んでいく。

女神が立てた作戦とは・・・


照準器に捉え続けている敵邪操機兵に撃ちかけながらチアキは思った。


ー これがミハル隊長の考える作戦。

  オスマンの時も、ラミルさんから聞いた事のあるフェアリアでの作戦も。

  誰も思いつかないような事を思い付かれる・・・成功するかは分からないけどね


敵の眼を30式にだけ惹き付けさせる為に、突っ込みながら砲撃する。

こちらは新式の自動装填砲だから、ほぼ連射が可能であったが機動力の勝る人形ロボットには当てられなかった。

優秀なる砲をもってしても、卓越したチアキ少佐の砲撃技術を駆使しても。


一方敵は火炎弾を撃ってきてはいるのだが、見当違いの場所へ悪戯に放ち続けている。

敵オズベルトは、戦車兵でも狙撃手でもなかった。

唯闇雲に火炎弾を4本の手からあてずっぽうに撃って来るだけだったのだが。


ー こちらが接近すればするほど、敵も当てやすくなる。

  勿論私もだけど・・・どちらが早いか。4対1では勝負はみえてるけど・・・


敵の4本の腕に備えられた火炎弾砲と、30式の90ミリ戦車砲1門では、

先に当てられる方が勝ちとなる。いや、正確には致命傷を与えられるかの問題だった。


ー それにしても、まさか・・・本当に出来るのだろうか?

  いくら女神ミハルとはいえ、作戦通りにいくのかどうか・・・


チアキは危険なほど接近した敵のことよりも、ミハルの作戦が成功するかの方が気になっていた。


ー 敵の火炎弾を喰らわないかな?大丈夫かな?


遂にカウントダウンを始めたミハルを想い、チアキは成り行きを見守った。



「・・・ワン・・・ゼロォーッ!」


女神の声に急ハンドルを執り、左転輪だけブレーキをかけた。

マモルの操縦に、皆が足を踏ん張り辛うじて身体を支えた。


「チアキ!右舷90度っ、上下角プラス25度!」


車体が左に振られてスタビライザーの効果を切ってある砲塔が、揺れに任せて上方へと傾ぐ。

タイミングを合わせてチアキが旋回させると、射撃照準器に邪操機兵の胴部が入って来た。


「今だ!チアキっ、奴の胴をぶち抜け!」


キューポラにしがみ付いているミリアの命令が飛ぶ。


「了解!」


照準器には拡大された邪操機兵の胴下にある接続部が写っていた。

そこが厚い装甲の一番薄そうな部分でもあり、ダメージを確実に与えられそうな部分でもあった。


射撃に集中しているチアキには解らなかったのだが、


「チアキさんっ、奴は4本の腕をみんなあげているわ!ミハル姉の思惑通りにね!」


ルマが観測情報を叫んだ時、照準器の端に何かが落ちていくのが観えたが。


フォイアっ!」


タイミングを逃さず、動きを停めた邪操機兵に射撃した。




目前に迫った邪操機兵の撃ちかける弾は悉くマモルが避けていたが。


「いつマグレ当たりするかも分からない。なにせ4本の砲を持っているんだから」


いつ弾が当たるかもしれない状況に、ハラハラ心を痛めながら観ていた。


「そうね。でもねマリアちゃんには判らないでしょうけど。

 マモル達は必ず勝つわ、敵は自分の力を過信し過ぎているのよ」


闘いの趨勢を見詰めるミユキが、戦車という物を知らない子に教えた。


「あの子達も判ってる筈よ。

 敵は砲を放つ事に夢中になり過ぎて、肝心な事が分かっていないと」


「え?それはどう言う事なんですか?」


マリアがコハルのお祖母さんに訊いてみると。


「うふふっ、子供でも分かる事よ。

 動き回るモノに命中させるのは、標的の動く先を見越して撃たないと・・・ね?」


「・・・あっ?!」


マリアにも、ミユキの言った射撃の常識が分った。

目の前に居るのならともかく。

離れた所を動く敵に命中させるのは、照準の真ん中に捉えていても当たらない。

砲身を敵の動く先に向けて撃たなければ、弾は動く後ろに着弾する。

どれだけ早い弾でも、動標的に命中させるのは照準点を未来位置に併せて撃たねば当たらない。


空を飛ぶ蝶々を網で捕らえる時を考えれば分かる。

後ろから追いかけても網には入らない。

飛ぶ先目掛けて振り下ろさねば網の中に収めることは出来ないだろう。

砲撃とは違うが、理屈は同じ。動くモノを捉えるには見越し角を素早く判断せねばならない。


「それがあの機械兵には解っちゃいないようなのよ。

 だから・・・ね、あの子達が勝つのよ・・・きっとね」


ミユキに教えられたマリアが大きく頷いた。





オズベルトは半狂乱だった。

自慢の火力を活かせず、闇雲に火炎弾を撃ち続けて。


「何故当たらない!照準点に捉え続けているのに?!」


ミユキの言った通り、素人の男には砲撃の何たるかが全く分かっていなかった。

確かに照準には捉え続けられている、機械の性能のおかげで。


「なぜこうも弾が遅いのだ?!これだけ撃っても掠りもしないとは?!」


4本から撃ちかけ続けるが、どれもこれも明後日の場所に落ち続ける。

業を煮やしたオズベルトだが、撃ち続ける他に執るべき方策は有りはしなかった。


「なんて事なのだ、こうなれば奴をもっと惹き付けてから・・・」


30式戦車の撃って来る弾は、自動的に回避出来ているのに安心したのか。


「外れない距離まで近寄らせるのが一番だろう!」


敵の弾が当たらないと、変な自信を抱いたオズベルトは、犯してはならない方法を執ってしまう。

相手が30式だけならば、それでも良かったかもしれなかったが。


「さぁ来い!4本同時に撃てば・・・」


もう手の届きそうな所まで近寄らせたオズベルトが自信に満ちた声を上げた時・・・


「なっ?!馬鹿な!」


観たモノとは?!




「跳べ!魔鋼機械輝騎こうき!」


カウントを唱え終えたミハルが急走行をかけた。

載せられていた戦車が急旋回を掛ける。


振り出される力に、邪操機兵目掛けて脚力を全開させたミハルが。


「行けっ!奴の頭上まで飛び上がれ!」


急停止した反動と、脚力に物を言わせて・・・


(( ダンッ ))


飛び上がった。


挿絵(By みてみん)


モニターに映る光景は、天と地を反転させていく。

頭頂部が徐々に下を向く。

飛び上がった勢いが和らげられ、自然落下が始った。


下方に居る敵に向かって。


「捉えた!これでジエンドよ!」


照準も何もない。

眼下に居る敵邪操機兵目掛けて、ミハルはモニター一杯に映る紅いレンズに撃った。


((  ドンッ ))


最初の一発はレンズを砕いた。


(( ドムッ ドムッ ))


自然落下に併せて照準点がずれていく。

だが、昔の杵柄か。それとも女神の腕なのか。

ずれた照準をものともせず、頭頂部に次々と弾痕が残って行った。


ーーーボムッーーー


炎が噴き出される。

照準レンズを破壊された邪操機兵の動きが完全に止まった。

女神ミハルの睨んだ通りに。


「やったわ!後はチアキに任せるわよ!」


完全なる破壊を試みたミハルの作戦は図に当たった・・・が。


((  ビィーッ  ))


警告ランプと警報が鳴り響いた。


「「活動限界です、全能力停止・・・シャットダウン」」


「ほぇ?!あわわっ?」


まだ空中にあった輝騎の中で、女神ミハルが狼狽える。

今の今迄映し出されていたモニターが全て消えてしまった。

時間切れ・・・そう、着地する前に。


「ぎょえええええぇっ?!」


何がなんだか分からなくなる。

何をどうしたら良いのかなんて、女神ミハルにだって考えられなかった・・・

自然落下する輝騎は、単なる重量物に過ぎなかった。





「ぐあああっ?!眼がっ眼がぁっ?!」


機関砲を撃たれた。

命中した弾は光学兵器たるモニターを消したのだ。

まるで目潰しを喰らったかのような衝撃を受けたオズベルトが叫ぶ。


「畜生めぇ!」


補助モニターで捉えた輝騎に向けて4本の腕を上げた。

今の今迄30式を狙っていた腕を全て。


それがオズベルトという邪操機兵の最期の声だとは、当の本人も分からなかっただろう。



ーーー ドワッ ーーー



猛烈な衝撃と破壊波がオズベルトの意識を奪い去る。

何が起きたか、考えることも無く。



90ミリ砲弾が、装甲を打ち破り内部に致命的な破壊を齎した。

チアキの撃った徹甲弾に因り、邪操機兵は誘爆を始めた。

内部は次々と破壊され、瞬時に炎の塊と化した。


挿絵(By みてみん)


「撃破・・・確実ですね」


ルマがマモルへ親指を立てる。


「うん、流石チマキ。やるじゃないか、相変わらずに」


ミリアも元部下たる少佐を褒め称えるが。


「小隊長ぉ~っ、チマキじゃありませんです・・・」


苦笑いを浮かべるチアキが言い返すと。


「待てっ?!コハルは?ミハル姉さんはどうなった?!」


気が付いたマモルだけが心配すると、30式を操り輝騎の墜ちた方に進路を向けた。


「そ、そうよ!コハルは?」


接続したケーブルが引き千切られたので、電話は通じない。


「本部!聴こえているのなら輝騎との通信を試みて!」


通信士のルマが無線に呼びかけたが。


「「こちら本部。零号機との回線は途絶えた」」


一方的な回答に、ルマの焦りは頂点にまで上り詰める。


「そんな!コハルはどうなっているのよ?!」


邪操機兵の残骸の影に輝騎の姿が捉えられた。

動きを停めた状態で。落下したまま地面にめり込んだ状態で。


「嘘・・・そんな?!」


ルマが絶句したのも頷ける。

動かず土にめり込んでいるのなら、中の乗員はどれ程のダメージを受けたのかと。


「う~ん、こうなる事を考慮してなかったのかなぁ」


だが。

マモルは気安く話す。


「いつもながら、ミハル姉は最期の詰めが甘いよな」


「そんな呑気に構えて?コハルが心配じゃないのっ?!」


ルマは普通の少女コハルを案じているようだが。


「いや、だってさ。敵に撃たれた訳じゃないからさ。

 輝騎の装甲は落下ぐらいじゃなんともないよ」


「ばっ、馬鹿!機械なんてどうでも良いわよ。

 私はコハルの身体が心配なだけなのっ!」


母親ルマはそう怒るのだが、マモルはニヘラと笑うと。


「落ち着けよルマ。ミハル姉は約束したじゃないか。

 敵弾に当たらなかったのなら絶対に大丈夫なのさ、だってあのミハル姉なんだぜ?」


「そ、そうは言っても・・・あなた、全速で近寄って!」


まだ心配なのか。ルマがマモルの肩を揺すって急がせる。


「私もゆっくりミハル先輩とお喋りしたいなぁ」


「ですよね、ミハル隊長とは16年ぶりなのですからねぇ」


二人を置いて、ミリアとチアキがお気楽に話していた。


「ただ問題は、マモル君とルマさんに許可を執らなきゃいけないって事よ」


「んだんだ・・・まどろっこしいですねぇ」


どこまでもお気楽な仲間達であった。

それはミハルという娘を誰よりも信じている証でもあったのだが。


「コハルぅ!待っててね!今救い出してあげる!」


我が娘を想うルマ以外は・・・



やはり・・・と言いますか。


損な女神ミハルは健在だったという事か?!


電力が尽きた輝騎が動きを停めた・・・空中で。


つまりは・・・地面が近付く。


次回 新たなる魔鋼 輝騎<こうき> Act8

決着の時、君は光と闇を抱く者となる!


ミハル「姪っ子ちゃんの力が発揮される時。私は暇だわ・・・・Orz」

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