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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
58/219

新たなる魔鋼 輝騎<こうき> Act4

コハルの体を使って乗り込んだミハル(女神)。


操縦方法を訊いた人は・・・

国防軍情報班にも、無線は傍受されていた。

動力を取り戻した輝騎<零号機>と、司令部との通信を掴んでいた。


「どうやら、本当だったようだな・・・」


情報官からヘッドフォンを渡された男が呟く。


「やはり・・・ですか?」


情報担当官が男に伺う。


「時は満ちつつあるという事だろう・・・後は上の判断だな」


答えた男がヘッドフォンを情報官に返し、その場から離れる。


「黒野参議官殿、どちらへ?」


離れた男の名を呼んで、情報官が訊ねると。


「うむ、報告を入れておかねばならん。我々は事実だけを上申する義務があるのだからな」


黒野参議官は無線傍受室から出て行く。

誰に上申するというのか・・・それは答えなかった。






モニターが点滅している。

動力が戻った事に因り、通信が回復したのだ。


「ミハル姉、動力が回復したようだね。

 先ずは操作手順から教えるから、オフラインになってる通信機をオンにして。

 手元の黄色いボタンを押してみて」


戦車との電話回線だけでは教えようがないと思ったマモルが、本部との回線も回復させようとした。


「ええっと・・・これかな?」


電話口から、コハルの声に被さって女神ミハルの返事が返って来る。


コハルの身体を借りているミハルが、それらしいボタンを探して押し込むと。

モニター左上に誰かの顔が写り込んだ。


「ほぇ?!顔が?誰?」


本部との通信回線が繋がり、本部の操作官の顔が写された。


「誰って・・・君こそ誰なんだ?ラミ候補生はどこに居る?!」


本部に居る操作官には、事情が判ろう筈も無い。


「こちら島田真盛しまだまもる隊長です、司令官に報告があります」


通信に割って入ったマモルがマコトを呼び出す。


「輝騎に搭乗しているのは島田美晴シマダミハル、そして美春ミハルなのです。

 そう伝えてくれれば父さん・・・いいや、島田司令官は分かられると思います」


通信担当の操作官に、早口でまくし立てるマモル。


「なんだって?もう一度ゆっくり訳を・・・」


「なんだと?!コハルちゃんが乗っているではないか、どういうことだマモル?」


ミハルの見詰めるモニターに、操作官を押し退けたマコトが写り込んだ。


「お父・・・さん・・・だ」


ミハルは声を呑んで呼んでみた。


「お父さん・・・お父さん、私、ミハルです」


コハルの姿を借りて呼んでも、信じて貰えるか分からないと思ったが、呼ばずにはおられなかった。

モニターに映った、眼鏡をかけた初老の紳士に。


「ミハル?!まさか・・・ミハルなんだな!」


でも、父は孫に宿った娘を瞬時に分かったようだ。

なぜなのかなんて知らない、どうして分かってくれたのなんて気にも留めない。


「お父さん・・・ただいま。戻れたんだよ?」


話しかけられる。

姪っ子に宿っているとは云えど、自分の言葉を伝えられた。


「ミハル・・・善く戻ったな。辛かっただろうに・・・ありがとう」


マコトは慰めとも感謝ともとれる言葉を贈って来た。


「うん・・・お父さんも。みんなを導いてくれていたもの。

 女神ミハルとして感謝します・・・ご苦労様でした」


父と娘の再開は弟の声によって途切られる。


「感動の再開は後回し!

 司令官、今より輝騎はミハル姉が搭乗するんだ。

 乗った事のない女神ミハル姉に、サポートを宜しく!」


輝騎隊の隊長を兼ねるマモルの声で、マコトは即座に指令を下し始める。


「そうだったな、今は現れた敵邪操機兵を倒さねばならん。

 ミハルは直ちに操典を読め、モニターに初めから操縦方法を流す。

 いいか、魔鋼騎と同じように思うな、嘗ての機械とは訳が違うぞ!」


ミハルの前にある正面モニターへ、輝騎の操縦マニュアルが映し出される。


人形兵器の輝騎。

操縦するには、普通の人間では並大抵のことではない。

だが魔法力のある者が力を使えば、思い通りの機動を執れる。

そうするには、魔法力を伝達させる必要があった。


「ミハル、まず最初に。ヘッドモニタリングチューブを頭の両側に着けろ」


マコトがモニター越しに操典を示しながら教えて来る。

座席コックピットのヘッドレスト両側から延びるチューブ先に着いた端子を髪に着ける。


「こう?」


「そうだ、それで良い」


確認する操作官を顧みてマコトが頷き、


「次は肩付近から延びた円環を両手首に装着するんだ」


同じくチューブの先に取り付けられてある円環を手首に填める。


「こう?」


「円環に着いた緑のボタンを押すんだミハル」


手首に填めた円環には、緑のボタンと赤色のボタンが付いていた。

緑のボタンを押し込むと円環が縮まり、手首にフィットする。


「そう、それで輝騎の腕はミハルと同化した。次は足だ。

 足元にある円筒に靴を履いたままで良いから突っ込んでみろ」


コハルの身体では足元にある円筒には届かない。

入っても足首までがやっとの状態だった。


「お父さん、入ったけどこれでいいの?」


ミハルの声に、操作官へ質すと首を振る。


「うむ、底部にまでは届かんか。

 それでは座席を動かすからな、そのままの態勢を執っているんだ」


目配せしたマコトにより、操作官が座席の配置を動かした。

座席の角度が変わり、中腰態勢になる。

座っていた角度が変えられて円筒部分に足が沈み込んだ。


挿絵(By みてみん)


操作官が感度を掴めた合図を送ると、


「どうだミハル?辛くはないか?」


コハルの身長が足らない為に窮余の策を執った事に。


「ううん、大丈夫。ちょっと足が開き過ぎかなって・・・」


通常なら脹脛ふくらはぎ部分で収まる円筒が膝頭近くにまで登っていた。

まだ動かしていない状態では、足を無理やり開かれた様にも感じたのだが。


「ふむ、円筒の配置を考え直さねばならないな。

 ミハルには悪いが、今回は調節不能だと認識してくれ」


「うん、いいよ。耐えられない程じゃないから」


ミハルはそう答えるのだが、中腰で股開きだとバランスが悪く感じる。

立っているのが辛いとは思わないが、ちょっと姿勢を変えると倒れそうになる。


「コハルちゃんの身体が柔らかいから良いけど。

 なまじ運動していない人が乗ったら・・・筋肉痛になっちゃうね」


宿った少女の身体に、ミハルは感謝する。

姪っ子は剣術を習い始めて、身体が柔軟になっていたようだ・・・と。


「さぁ、此処からだぞミハル。作動させるからな、ショックに備えるんだ。

 コハルちゃんの魔法力を消耗する事になるのか?・・・大丈夫なのか?」


搭乗した者の魔砲力を、魔鋼機械は消耗する。

それは過去の機械と同じ・・・だと思っていたのだが。


「現在の機械は過去の魔鋼機械とは雲泥の違いがある。

 試験結果では過去の魔鋼騎の8倍もの魔力が必要なのだ・・・耐えられるか?」


「はっ?!八倍っ?」


流石の女神ミハルも、それ程までに消耗するとは思いもしなかった。


「そんなに?じゃあラミちゃんはそれに耐えて闘っていたの?!」


モニターに映ったマコトが静かに頷いた。


「あ・・・あははっ、馬鹿に出来ないわねあの子。

 そんなに優秀な魔砲使いさんだったなんて・・・知らぬが仏」


泡を喰う女神ミハルに、マコトが促す。


「ミハルは現在、コハルちゃんの身体を使っているのだ。

 無理して姪っ子の身体を壊すんじゃないぞ、いいな?」


「わ、分かってますって、それくらいのことは!」


マコトに言われるまでもないが、少女の魔砲力に頼る事は出来ないと思う。

そんなに魔力を消耗するとは考えてなかったが、女神の自分になら不可能ではないとも思えた。


「操典は左下モニターに、常時映しておく。

 咄嗟に見ることは出来ないと思うが、お前なら感覚で分かるだろう。

 魔鋼騎士だった頃を思い出せば良い、後は格闘戦さえ行わねば何とかなるだろう」


マコトは操縦マニュアルを読むミハルへエールを贈る。


「簡単に言ってくれちゃって・・・ふふっ」


褒められたのか貶されたのか。

ミハルはマコトの言葉に笑う。


「良いかミハル、これだけは覚えておくんだぞ。

 一番肝心なのは、残電力ゲージに注意を払う事だ。

 それと言うまでもないが、火力にもだぞ!」


「はい!お父さん」


コハルの顔でだが、<お父さん>と呼んで来たミハルに。


「闘いが終わったら。ミユキと一緒に想い出話をしようじゃないかミハル」


父である司令官がそう話を結んだ。

現れた闇の眷属との闘いの果てに、親子が逢いまみえられると。


「うん、マモルも・・・一緒に、ね。お父さん!」


答えて来た娘に頬を緩めたマコトだったが。


「輝騎<零号機>は、これより現れ出た邪操機兵との決戦に入る。

 各員各自の任を全うせよ!制限時間は僅かに5分、それ以上は電力が持たないと心せよ。

 作戦・・・開始!」


操作官達に命じ、自らの手で零号機の発動ボタンを押し込んだ。


押されたボタンは初めから黄色信号を放っていた・・・



遂に動き出す<輝騎>


ミハル達は闇の邪操機兵に勝てるのか?


挿絵(By みてみん)


画像はイメージになります。

今回ミハルの乗った<零号機>ではなく、<初号機>です。


次回 新たなる魔鋼 輝騎<こうき> Act5

君の闘い方は巧く行くのだろうか?闘えミハル?!


ミハル「うにゅ~っ、何だか思うようにいかないなぁ・・・ニャ(びっくり?!)?」

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