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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
57/219

新たなる魔鋼 輝騎<こうき> Act3

邪操機兵と対峙する仲間達。


動力を失った輝騎に近寄るコハル。

魔砲の少女に秘められた本当の力とは?!

そして、女神の声が聴こえた者達はどう思うのか?!

娘の声だと瞬時に分かった。

女神となって消えてしまった筈の娘が甦ったのだと確信した。


「ミハル?!ミハルなのね?」


上ずった声で呼んだ。

孫娘の魔法石に、蒼き魔法石の中に宿るミハルへと。




「そうだよお母さん、聞こえるのね?

 私の声が魔力を持たない人にも聞こえたんだね?」


蒼き石が輝きを保ちながら訊き返してきた。


「ええ!ええ!聴こえるわよミハルの声が。

 忘れるものですか、私の娘の声を!私のミハルが呼ぶ声を!」


ミユキは感極まって涙ぐむ。


「そっか・・・ごめんねお母さん。ずっと辛い想いをかけて・・・

 もう帰れたから・・・やっと戻れたから・・・

 見守るだけじゃなくなったの、こうして話せるようになった・・・やっとね」


ミユキに魔法力が無くなっていたから。

コハルに宿らねば話す事も出来なかった。

だけど、ルシファーの力を授けられた今は・・・・


「魔法石の中からでも話せるようになったから。

 魔力を持たない人にも話せるようになったの、自分の声で」


コハルの口を借りずとも、自分の声で話せるようになった女神ミハル


「でも、今は悠長に話している時ではないの。

 アイツ等を闇に送り戻さなきゃいけないんだからね・・・お母さん」


「ミハル?!どうやって・・・まさか?!」


女神の話した方法に気付いたミユキが、魔法石とコハルを見詰める。


「そう・・・魔鋼騎なんでしょ?この人形ひとがたは?

 だったら、魔法使いが乗らなきゃ動かせられないんでしょ?」


女神には輝騎の何たるかが解っているのか。


「まっ、待ちなさいミハル!コハルちゃんにそんな危ない事をさせるなんて?!」


ミユキは魔法石のミハルがコハルを使って闘わせようとしていると分った。


「でもねお母さん、このままあの闇の兵達が暴れ出したら。

 世間の人に知られてしまう、女神わたしが戻った事も、闇の魔力があることも。

 それに何より平和が脅かされているのを世界中に知らせてしまう・・・

 魔砲が蘇った事を遍く人々に知らせるのは、まだ早いから」


女神ミハルが杞憂するのは、混乱が拡がり秩序が乱れてしまう事。


平和になった世界に再び戦争の惨禍が拡がるのを憂いていた。


「そうは言っても。コハルちゃんに闘わせるなんて・・・無理よ」


訓練も受けていない、操縦のやり方も分からない筈。

闘い方以前の問題と、ミユキは停めるのだが。


「コハルちゃんの身体を借りるわ。

 そしてマモルに送受方法を教えて貰いながら女神わたしが闘ってみせる。

 そうする他、闇の力に対抗する術はないもの」


新しい魔鋼騎、輝騎に初めて搭乗する事に、なんら臆していなかった。

尤も、女神にはそれだけの理由があったのだから。


「それにね?闇に捕えられた悪漢とは云っても、地獄へ送るかどうか。

 粛罪を求める魂がそこに在るのなら。

 姪っ子ちゃんの力が必要なの、この子に与えられた闇の力が女神わたしには無いから」


魔法石からの言葉に、ミユキは思い出していた。

女神になる前のミハルが、闇に染まった魂を救わんとしていた事に。

<光と闇を抱く者>として・・・心優しき少女だったのを。


「ミハル・・・女神となった今でも?

 あなたは昔と変わらないのね・・・」


記憶を辿ったミユキがミハルに言うと。


「ううん、私も思い出させて貰ったの。

 姪っ子ちゃんの優しさに触れて・・・

 1000年も女神をやってるとどうしても救いきれない魂があったの。

 悪魔を倒すだけに必死になって、心まで封じていた事を思い出させてくれたの。

 それに姪っ子ちゃんには・・・」


言葉を一端そこで切った。

マモルや戦車兵達が、輝騎の電源ソケットに接続を終えたのが観えたからだ。


「お母さん、女神わたしが護るから。

 マモルとルマの娘を預けて欲しいの、この子の身体が必要なの。

 いいえ、はっきり言うわ。

 美晴ミハルちゃんの異能ちからでしか奴等には勝てないの。

 今此処に在る兵器で奴等と闘うには、これしか方法がないの」


女神ミハルを宿した魔法石が言い切った。

ミユキを前にして、嘗ての闘いと同じだと告げたのだ。


「ミハル・・・あなたはまだ闘いに明け暮れようとしているの?

 まだあなたの宿命は果たされていないとでも云うの?」


手を挙げて停めようとしたが、その手は上がらなかった。

ミユキには嘗ての力はない。

自分が替わりを務められないのは分かる・・・・が。


「コハルちゃんはまだ小学生なのよ?!

 姪にまで闘う運命を引き継がせる気なのミハル?!」


もう何を言っても退き返せないとは思っても、言わずにはいられなかった。


「おかあさんも・・・だったよね?

 私に運命を引き継がせたくなかったから、教えてくれなかったでしょ?

 私に魔法力があるのを、隠し通そうとしてたでしょ?」


闇祓いの巫女であったミユキは、自分に与えられた宿命を産まれてきたミハルに告げようとはしなかった。

引き継がれる運命さだめを隠し、娘を護ろうとしてきたのを分かっていた。


「おかあさん、私ね。

 1000年前に遡らされたんだ、世界の始りの日まで。

 この1000年周期の始りの日にまで飛ばされちゃったんだよ。

 そこから1000年かけて戻って来れたのやっとのことで。

 時代を超え人に宿り、モノにまで宿って・・・

 そしてお母さんが産まれた時にも、お母さんがリーン姫を闇の中で護っていた時にも。

 私・・・傍に居たんだよ?覚えていないだろうけど・・・」


「え・・・どうしてそれを?ミハルはそこに居たというの?」


女神ミハルの声はやや寂し気に教えて来る。


ミユキには精神世界である闇の中でのことは記憶に残されていなかった。

オスマン帝国で救われる時までの記憶は消滅していた。

現実世界とは違う悍ましい世界の記憶は。


「ミハルが救いに来てくれたのは覚えているけど。

 私が闇の中に貶められたのも覚えているけど・・・ミハルも闇の中に居たというの?」


闇の中で悪魔に貶められなかった訳・・・それは女神ミハルが護ってくれていたから。

娘から初めて訊いた真実。

今より17年も前に起きた、フェアリアでの始まりの時。

審判の女神を呼び覚ます鍵だった自分の運命を娘に託してしまったあの日。


リーン姫の魂を呼び覚ます為に、当時のフェアリア皇国にまで招聘された家族。

偉大な技術者であるマコトと共に、ミユキは自らを犠牲にしてまで実験に臨んだ。

その結果・・・精神世界に貶められたのだ、人としてあまりにも過酷な世界へと。


それを娘であった女神ミハルが護っていたという。

人ならざる技で、闇から護り抜いてくれたのだと。


「そうだよお母さん。オスマンで救い出される時まで。

 あの時が来るのが判っていたから・・・でもね。

 まさか自分自身を観るなんて想像つかなかったんだ、

 もしかしたら歴史が替えられたかもしれないと不安だったんだよ?」


だからミユキを護り続けたのだと言いたかった。

精神世界でミユキを護り続けるという事は、他に手を出せないという意味。

女神だからと言って、全てを護り続ける事は出来ないのだとも・・・



マモル達が輝騎にとりつき、電源コードを接続させた。


電力を供給された輝騎のモニターに、再度作動ランプが燈る。


「フル充電は無理だが、何とか稼働は出来るだろう」


マモルがチアキとルマに戦闘可能だと告げた時。


「マモル君!アタシが乗るよ」


コハルがいつの間にか輝騎のキューポラに登っていた。


「コ・・・コハル!何を言うんだ、馬鹿な真似は辞めるんだ!」


頂部にある小型乗降口キューポラに半身を飛び込ませたコハルへ、マモルが停めたのだが。


「あなた!任せてみない?」


駆け寄ってきたルマが、マモルの手を曳く。


「何を馬鹿な事を?!」


ルマの手がマモルに教えていた。

自分の娘を彼女に託してみようと・・・義理のミハルに。


「ルマ・・・ミハル姉が闘うと言ったのか?」


離れていたから気付かなかった。

ルマと同じようにミユキもまた、停めていない事を。


「母さん・・・ルマ?!

 でも、いくらミハル姉だと言っても、輝騎に乗った事なんて無い筈だろ?」


操縦方法も敵対行動も。

なにもかも知らない筈では無いのかと。


しかし、マモルの心配はコハルに破られる。


「マモル君!その戦車に乗ってって、女神ミハル様が言ってるよ?

 何だか知らないけど、ルマお母さんもだって!無線がどうのこうのと言ってるよ?」


キューポラに身体を沈めて、コハルが大きな声で知らせて来る。

魔法石に宿るミハルの声を代弁して、


「この魔鋼機械の動かし方も、教えなさいって言ってるよ?」


コハルの声でマモルは確信した。

魔鋼機械の名を知っている筈が無いコハルが、そう呼んだのだから。


「ミハル姉・・・分かったよ。

 コハルに疵の一つでも付けたら承知しないからね!」


接続した戦車によじ登ったマモルが元々の搭乗員に退避を命じる。


「ミユキ義理母おかあさん、コハルの事は私達夫婦に任せてください!」


ルマが戦車に乗り込みながら訴えてきた。


「ええ、コハルちゃんを・・・護ってあげてね」


手を振るミユキの言葉には、魔法石の宿った娘も・・・と、含まれている。


頷いたルマが無線手として乗り込み、操縦手としてマモルが乗り込んだ。


「おっと!誰か忘れちゃいませんかね?」


フェアリア軍服を纏ったチアキ少佐がキューポラへと飛び込んだ。

戦車兵として、砲手として。


「ミユキお母さま、ご無沙汰しておりました」


戦車を見詰めていたミユキに後ろから掛けられる声は。


「私も・・・恥辱を晴らさねば気が済みません。

 皆と一緒に闘わせていただきます」


振り返った先には、嘗ての同僚であるミリアが立っていた。


「奴等によって行った罪を、私自身の手で拭い去らねばなりませんから」


ミユキに対して頭を下げて謝罪しながら、


「ですから、この子達を護っていて貰えませんか?」


そこには、ラミに抱き留められているマリアが居た。

固く唇を噛み締め、ラミ候補生に捕まれているマリアへ。


「あの子達を安全な場所まで連れて行って貰えないでしょうか?」


ミリアの願いに、ミユキは黙って顎を引いた。


「ありがとうございます、では・・・」


ミユキに事後を頼んで、ミリアは戦車兵だった頃と同じ敬礼を贈って来た。


「ミリアさん、無事の帰還を待っているわ」


ミユキも。戦車兵だった頃の敬礼を返して微笑みかける。

敬礼が降ろされると、ミリアは駆け出した。仲間の元へと・・・



4人乗りの30式中戦車に乗員が揃った。

操縦を任されたのはマモル。

無線手としてルマ。

砲手としてチアキ少佐。

そして・・・


「屈辱を晴らす為なんて思わないでよ、皆!」


正気に戻ったミリアを迎えて車内に居る者達が笑う。


装填手配置が必要ない自動装填砲を備えた30式に、ミリアの声が弾んだ。


「車長配置なんて烏滸おこがましいから、見張りでもなんでもするわよ!」


「ミリアさん、あなたを差し置いて誰がミハル姉と協働出来るんですか?

 ミリアさんこそが相応しいのですから、車長配置に就いてください!」


ミリアの声に、ルマが即座に答えた。

そう言い切られたミリアが顔を引き締めると。


「それじゃあ、マモル君!先輩に使い方を教えてあげて。

 まず最初に後部ハッチ上に乗り上げて貰う様に勧めて頂戴!」


車長配置のミリアの声に、マモルは頷く。


「チアキ!敵の動きは予測不能とも採れる。射撃時には要注意して!」


砲手席に座った元魔鋼騎士が各種射撃装置をチェックして。


「了解!」


元々の上官であり車長であったミリアに併せて頷いた。


「ルマ、ミハル先輩の姪っ子との連絡は?無線しかないの?」


接続しているのだから電話かなにかで話せないのかと訊いた。


「あなた、ケーブルにラインは着いていなかったの?」


ルマが接続させた本人であるマモルに問うと。


「ああ、多分ラインも着いていると思うけどな?」


緊急用の外部電力ケーブルには、内部との連絡を執れるように非常電話回線が着けられている筈だった。

すかさず、ルマが通信回線をオンにする。

緊急時に内部との連絡を執れるように考案されたコードには、電力供給と内部との連絡用のラインが同軸で入っていた。


「コハル!聴こえる?聞こえたのなら声を出してみて!」


ルマが作動を確認しようと無線のスイッチと併用する。

暫くは返って来なかったコハルの声だが。


「ルマ、あなたそこに乗ってるの?マモルだけじゃないの?」


コハルの声だが、明らかにコハルとは思えない。

搭乗した時はコハルだったが、魔法石から乗り移ったのか。


「こちらミハル!女神ミハルが操縦するから!

 姪っ子ちゃんの身体を貸して貰って、これから闘うから・・・ね!」


挿絵(By みてみん)


戦車に乗って聴いていた4人は、コハルじゃない者の声を聞いた。

それは今から16年前に、一度は喪われた仲間ミハルの声だった!


遂に搭乗したコハル、いいやミハル。


戦う仲間達の絆、再び!


次回 新たなる魔鋼 輝騎<こうき> Act4

君は新たな魔鋼の力を示す。闘う魔鋼少女・・・今再び!


ミハル「うにゅーっ、なんだかよく解んないけど。暴れればいいんだよね?!」


違うと思うぞ、損な女神よ。

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