<輝(ひかり)と邪(やみ)>Act5
いやいやいや!
ちょっとちょっと!
なんなんですかこの展開の急変は?!
イキナリ黒幕が出てきちゃいました!
そして・・・
日本国駐在大使オズベルト。
数年前から大使となり、赴任してきた男。
フェアリア国大使としての任期を半年後に終える予定であった彼が、目の前に居た。
その傍に、椅子に縛られた妻の姿が・・・
「ルマ!なぜこんな事に?!」
マモルが部屋に駆け込み大使に咎めたてるが。
「お前達は我々が拘束する!」
入って来たドアの陰から数人の男がマモルを取り囲んだ。
「なんですか君達は?これは一体?」
状況が把握できない・・・と、でも思うのだろうか。
マモルはこれある事と感ず居ていた。
ポケットに忍ばせた発信器のボタンを押し込み、ルマの顔を観ながらウインクする。
ルマは後ろ手に手錠をかけられて、声を出せないように猿轡を噛まされているが。
「・・・んっ!」
マモルが突入してきてくれたことに安堵の頷きを返して来る。
<あなた・・・遂にこの時が来たのね。やっと正されるのよね?>
ルマの顔に信頼と願いが表れる。
マモルが手ぶらで他国の大使館に来る訳がないと。
武官として勤めて来たマモルが、何も手立てがない状態で来る訳がないと考えて。
「ボクの妻を。駐在武官であるルマ少佐を拘束する理由をお教え願いたい。
それと、わざわざ呼びつけた理由もだ。
返答次第では只では済まされないと心されたい!」
ポケットに忍ばせた発信器からの音声は、緊急ボタンを押された事でマコトにも届いている。
つまりは・・・日本国にも知れ渡っていた。
「島田3佐。お前は御子を捕える為の道具に過ぎん。
大人しく御子を捕えるまで拘束されていろ、それが出来んというのなら。
お前もお前の妻も、この場で射殺してもいいのだぞ?」
拳銃を突き付けて来る男に囲まれ、マモルはポケットから手をだして。
「お前達の目的は何だというのだ?
コハルを捕らえた後、何を企てているのだ?
それにこの大使館には闇が存在しているようだが、お前達が呼んだのか?」
睨みつけながら、発信器にも通るように声を大きくする。
「何をだと?決まっておるではないか。
闇の大魔王を復活させて世界を我等の想いのままにするだけだ。
その為にお前の娘は存在しているのだ・・・解っているだろうが!」
オズベルトの傍に居る黒服が嘲笑い、
「その為に召喚したのだからな、悪魔を。
目的を果たす為に必要な少女達も、誘拐してきたのだからな。
今はある筈のない魔砲力を持っている可能性のある娘達をかき集め、悪魔達を呼びつけたのだ。
・・・まぁ、悉く敗れ去ったみたいだがな、ミリア公使補に宿る悪魔以外は」
わざわざ。
この黒服野郎は言わなくてもいい事まで話してくれたようだ。
少女誘拐事件の真犯人も、悪魔召喚の事実も。
此処に居る<イシュタルの民>の所為だと知れた。
「ならば。お前達を誘拐共助の罪で捕縛しなければな。
ここが喩えフェアリア国と謂われても、看過してはおられんな」
マモルの声は発信器を通して外部に漏れる。
「ボクは先ごろ配置換えを受けてね。特別班の隊長になったんだよ。
知らないだろうけど、君達フェアリアの志願者も部下にいるんだよ」
黒服が手錠をかけようと迫る中、マモルは俯いて教えた。
もう、此処はフェアリアじゃないのだと。
犯罪者はその国の法律で裁かれねばならないのだと。
つまり・・・
「今直ぐ日本国警察に自首するか、さもなくば本国から沙汰があるまで謹慎しておくか。
君達はどっちを選ぶ?ボクには君達を見過ごす事なんて出来ないからね」
最後通牒を言い渡し、
「まぁ、君達のことだ。
飽く迄抵抗する気なんだろ?日本国警察が来ても・・・
だから・・・隊長の命令を下すよ、君達<イシュタルの民>とやらを殲滅せよと!
<<出撃せよ!島田魔鋼戦騎隊!>> 」
発信器で繋がっているであろう本部に命令を伝えた。
「隊長からの命令を受信!魔鋼騎隊出撃体制へ」
国防軍新兵器開発局に警報が流れる。
開発局総司令 島田 誠 元陸軍技術官が発令する。
「目標!元 フェアリアの大使館。
攻撃条件、我が国市民に害を及ぼす行為。並びにその準備行動。
撃滅目標、国民に被害を及ぼすと思われる全て。
出撃せよ!魔鋼戦騎隊、零号機発進! 」
遂に放たれる事になった。
敵が物理物体であるのなら、魔砲の力だけで叩くのではなく。
こちらも鋼の魔砲で闘う機体を繰り出すのだと。
「「発進準備完了!電池容量満タン!いつでもいけます!」」
少女の声がモニターから聴こえる。
「零号機、ラミ候補生・・・発進!」
出動操作官が、スイッチを切り替える。
オールグリーンのランプが忽ちイエローに切り替わる。
「制限時間まで残り30分!」
魔鋼の機械には電池パックが着けられている。
その電池残量に因って、動かせられる時間が異なる。
「後は・・・マモルに任そう」
マコトはどっかりと指揮官椅子に座り、モニターに映る零号機に注目した・・・
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「二人を離すんや!さもないと・・・赦さへんで!」
コハルの代わりにマリアが叫んだ。
ミリアを担いだまま、マリアは後ろポケットに忍ばせた水晶銃に手を伸ばす。
マリアに先を越されたコハルも、胸の魔法石に手を伸ばそうとした・・・が。
「馬鹿な真似はよしたまえ。二人がどうなってもいいのかね?」
黒服に目で指図して、オズベルトが嗤う。
拳銃をマモルとルマに着き宛て、黒服男達も嘲り嗤う。
「魔砲少女になられても敵わんからな。その魔法道具をこっちに差し出せ」
一人の黒服が手を指しだし、少女達に迫る。
「くっ?!なんて卑怯なんや!」
大人と少女達は睨みあう。
その中で・・・蒼き魔法石の女神が、一番怒っていた。
<ダイの大人が。なんて卑怯なの!なんて汚いの!
そんなだからいつまでたっても闇が消えないのよ!>
ぷんすか怒る女神。
このままこいつらをのさばらすのも癪だが、もっと癪に思えるのは。
<マモルぅ・・・なにやってんのよ。
こんな奴等なんかあなたに掛かればイチコロじゃないの?>
魔砲があった時には、女神の力をも超えるくらいの戦闘力があったのに・・・と。
女神はじれったく思えてしょうがなかった。
だが。
よく見れば、当のマモルもルマさえも。
<あん?あの二人・・・何かあるわね?
娘達のピンチだというのに・・・笑ってるじゃないの?>
女神は、新たに授けられた力を使っていた。
今迄だったら結界の中でしか観れなかった、聞く事も満足に出来なかったというのに。
<姪っ子ちゃんの闇の力が、活用されているんだ。
流石ねルシファー・・・ありがとう。やっぱりあなたには頭が上がらないわ>
コハルに眠る堕神の力。
一瞬の邂逅だったのに、気付いてくれていた。
それは女神を心から信じ、愛してくれているから・・・と。
<そうだからこそ。姪っ子ちゃんは私が護り抜かなきゃ。
あの子に眠るルシファーを護る為にも・・・ケラウノスを封じる堕神の為に!>
コハルを護る事は、堕神ルシファーを護り審判の機械をも封じることになる。
全てを悟った女神は、新たに決意を固めるのだった。
<だったら。姪っ子ちゃんに暴れて貰わなきゃ。
こいつらの良いようになんてさせないから・・・ね!>
女神は魔法石の中から抜け出る準備に掛る。
そう・・・あのルシファーと同じように。
護るべき人の前に姿を表す為の・・・・
「さぁ・・・寄越すんだ!」
黒服が手を伸ばす。
「渡さないというのなら・・・こいつを喰らわしてやってもいいんだぞ!」
拳銃の筒先を担いだミリアに向ける男。
「人質ならまだ居るからな、公使補一人を消したって」
嘲笑う男がトリガーに指をかける。
「待って!渡すっ、渡すからオカンを撃つな!」
マリアが水晶銃を男に差し出した時。
「渡しちゃ駄目だよ・・・マリア」
コハルの声が怒りに震えている。
「こいつらはどうせ人質を無事に釈放する気なんてないから。
アタシを捕らえた暁には・・・4人共撃ってしまう気なんだから」
コハルは項垂れると、
「だから・・・この人達の言いなりになっては駄目。
だから・・・アタシ。アタシが・・・・」
コハルは一体何を言いたいのだろうと、マリアが口を開こうとした時。
「シャイニングゥー・チェーンジィ!」
魔砲少女へと変身した!
遂に発動する<新魔鋼騎>!
フェアリアから来ていたラミが乗る機体。
それは・・・<輝騎>
人型兵器の出撃が・・・
次回 <輝と邪>Act6
君は闘う為に生み出された機械に乗ってくる!新たな魔鋼騎に・・・
ミハル「きゃぁああっ!これよこれ!やっぱり魔法少女に成ったのなら乗るのは当然よね!」
↑
独断と偏見の塊・・・・




