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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
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望郷の彼方 Act4

コハルを眠らせて宿るとは・・・女神ミハルは何を企む?



ミハル「だってぇ~っ、ルマが居ないなんてチャンスなんだもん」


・・・なんだとぉ?

娘の顔に浮かぶ微笑みは何を指すのか。

マモルの顔を見詰める瞳に浮かぶ涙は、何を意味しているのか。


「奇跡なのか・・・ミハル姉なんだろ?」


一瞬にして蘇った。

自分にまだ魔砲力が備わっていた時分の頃に、抱いていた想いが。


「・・・随分大人になったんだね、お酒を呑めるようになってるなんて。

 姪っ子ちゃんのお父さんになってるんだなんて・・・」


膝の上に載った我が娘から返って来たのは、紛れもない姉の言葉。

見上げて来るコハルの声で、ミハルが話しかけていると確信した。


「ミハル姉!やっと・・・帰って来たんだね?!」


コハルから女神ミハルの話を聴いていたが、自分の前には現れてくれなかった。

だから、もし本当に魔法石に女神ミハルが居るのなら、呼びかけようとも思った。


・・・どれ程待ち望んでいた事か。

何度も。

そう何度も、娘の魔法石に触れようと思った事か。


自分に魔砲力があれば、話しかけられたのに。

声が聴こえた筈なのに。

あの日以来、神の声が聞こえる筈もなく待ち続けた。

ミハルが帰って来ているのを感じながらも。


マモルの手がコハルに触れられず、抱きしめたいのに触る事も出来ず。

膝の上に載っているミハルを見詰めるだけだった。


見上げている娘が、静かに微笑み・・・


「どうしたの、マモル。抱き締めてくれないの?」


涙を頬に伝わせる。


もう、何も憚る必要も無い。もう心を曝け出せる。

娘の声が、自分を記憶の中へ誘う。


「ミハル姉さんっ!ミハル姉!おかえりっおかえりなさいっ!」


小さな少女の身体に宿る姉。

娘の身体を強く抱きしめ、姉への想いを叫んだ。


「マモル・・・ただいま。

 約束・・・守ったから・・・今」


抱き締められたコハルの身体の中で、ミハルの魂は歓喜の瞬間を迎える。


「マモル、逢いたかったよ。

 傍まで来ていたのは感じられていたんだけど、観る事も話す事も出来なかったんだよ?

 姪っ子ちゃんが異能ちからに目覚めるまでは。

 この子に光と闇の力があることで今、やっと話しかけれたんだよ?」


女神ミハルの力を以ってしても、魔法力の消えた者に話せられなかった。

それがどうして今は話せれているのか。


「マモル・・・姪っ子ちゃんになぜ闇の力が備わっているの?

 ルシファーの力みたいに強力な闇の力を感じてるの・・・何故なの?」


コハルに呪いが掛けられているから・・・マモルは話すべきか戸惑う。


「この世界に再び悪魔が蘇った・・・私の所為で。

 私が帰還を願ってしまったから・・・リーンの元へ帰りたいと願ったから。

 だから・・・代償として闇が残された・・・違うかしら?」


女神に隠し事をしても、いずれは分ってしまうだろう。

既に半ばまで理解している様だったから。


「ミハル姉、コハルにはね。

 ボクにかけられていた呪いが受け継がれてしまったんだ。

 ケラウノスの放射した光を浴びたボクに、呪いをかけて来たんだ。

 ボクに復活の鍵を忍び込ませ呪いをかけたんだ、いつの日にか蘇ろうと企んで」


マモルはミハルの心を気に懸けながら教える。

審判の時、ミハルが犠牲になったというのに呪われてしまった、自分の所為だと言いたげに。


「呪いはボクだけにかけられたものだと思っていたんだ。

 コハルが産まれて、ボクの身体に刻まれていた闇の紋章が消えた。

 この子に呪いが移るなんて、想いもしなかった。

 刻まれたのはスリー6・・・悪魔の紋章。

 大魔王を呼び覚ます鍵である証・・・」


ミハルに教えてしまった、いずれは分ってしまうだろうと思ったから。


「マモル・・・ごめんなさい。

 ルマやあなたに、それに姪っ子ちゃんにまで・・・

 女神ミハルは恥じる、女神として護り切れなかったことを。

 マモルの姉として、人としてあなたの家族に謝りたい」


こうべを垂れて弟に謝罪する姉。

自分が永遠の時を与えられ、遠く遥かな旅路に出た後のことは知らなかった。


時代の中で繰り返される悲劇に身を置いてきた女神ミハルにとって、

帰り付いた場所でも、悲劇は起きていた。


記憶に蘇るのは、運命に翻弄される人々。

運命に飲み込まれ、抗って力尽きた人々の顔がよぎる。

今、自分の掛け買いも無い人にも因果は起きているのだと知った。


「ミハル姉、今はまだ闇は完全に蘇っては居ないんだろ?

 だって闇が再臨したのなら、ミハル姉も蘇れる筈じゃないのか?」


「そう・・・マモルの言う通り。

 姪っ子ちゃんに宿らなくても済む筈なのよ。

 本当なら、リーンの元で目覚める筈だったのにね」


マモルの言葉に、女神ミハルが言い返した意味は。


「マモル、リーンは姪っ子ちゃんに私を託したのよ。

 きっとリーンは女神の力を持っているんだと思う。

 私は人として蘇って欲しかったけど・・・何か訳があるんでしょう。

 姪っ子に闇が潜んでいるが分かったから、私を遣わした・・・リーンが」


今此処に居るのは、リーンがコハルに授けたから。

フェアリア皇女ルナリィーンに宿る女神リーンが齎した事なのだと。


コハルに宿るミハルの言葉は、マモルの考えに沿っていた。

それは娘が闇の鍵に目覚めるのを防ぎ、闇に染まるのを護る事でもあった。


「マモル、心配しないで。

 私がこの石に宿っている限り、姪っ子ちゃんは護り抜いてみせる。

 今度ばかりは絶対に護り抜いてみせるから・・・ね」


抱き締められていた姉が身体を離し、か細く答えて来る。

コハルを護り抜くというのなら、ミハルは二度とこの世には戻れない。

大魔王からコハルを護り抜く事は、自分も人として復活を遂げる事は叶わない。


か細く話し、身体を離した理由はそこにあった。

自身の身体を取り戻せることは叶わないのだと。

願おうとも叶えてはいけないのだと・・・


「ミハル姉・・・」


マモルもそれが判るから・・・言葉を呑むしかなかった。


「あ~あっ、折角マモルと話せたのに。

 しみったれちゃったわね・・・こんな時は!」


弟に笑い掛けるミハルが、そこに居た。

娘の身体を借りた、15年前に別れた女神ミハルがマモルの膝に手をかけて。


「こんな時はね・・・大人になったマモルなら。

 どうするべきか知ってるでしょ?ねぇ・・・」


「えっ?!」


マモルの太腿を撫で、流し目を贈って来る。

今迄観た事も無い、コハルの妖艶な顔で。

今迄聞いた事も無い、コハルらしからぬ淫靡な声で。


「なっ、何言ってんだよミハル姉。コハルは娘なんだよ?!」


思いっ切り、動揺したマモルが勘違いして掴んでいた手を離すと。


「馬鹿ねぇマモルは。こんなチャンスは廻って来ないわよ?

 姪っ子ちゃんは眠っているし、ルマも黙っていれば気付かないのに・・・」


勘違いに拍車をかけるミハルの言葉が追い打ちをかける。


「ミ、ミハル姉と?!本気なのか?」


「?本気って・・・バレなきゃ分かんないでしょ?」


マモルは我が目と耳を疑う。

あのミハル姉が求めて来るなんて、女神になったとしても姉弟なのに。


「じゃ、じゃあ!本気にしても良いんだねミハル姉・・・」


マモルは勘違いを増幅してコハルの顔に寄る。


「・・・マモル。ものすっごぉーく、勘違いしてるみたいね?」


妖艶に観えていたコハルの眼が、ジトっと見詰めて来た。


「痛っ?!」


太腿に載っていた手が、抓って来る。


「大人なら、分別を弁えなさいよマモル。

 私は御酌の相手をしてあげようかって言ったんだけど?

 何か、ものすっごく身の危険を感じたわよ?!」


だったら、なぜそんな顔や目で観て来たんだ?

マモルは愚痴りそうになるのを辞めて、気が抜けたような顔になる。


「姪っ子ちゃんの身体に疵を着けて良い筈がないでしょうに?

 ホントーに、マモルはどうする気だったのよ。危ないわねぇ?」


顔を逸らして答えるコハルの声。

だが娘の声の変化に、気が付かないとでも思ったのだろうか。

ミハル姉は、心の底で何かを期待していたのではないかとも思える。


「ミハル・・・姉。こっち向いてよ?」


姉と弟に戻って、マモルが呼びかけた時。


「馬鹿ぁっ!危ないのは私の方なのよ!気が付いてよぉマモルゥ!」


振り向き様に・・・


コハルだった顔がミハルになった。




「・・・ごめん・・・ごめんねマモル・・・」


見開いた瞼の前に、涙を浮かべた<ミハル>が微笑んでいた。


「私・・・1000年間ずっと思っていたの。

 なぜ・・・しなかったんだろうって。姉と弟だからって・・・

 なぜ自分を誤魔化してきたんだろうって・・・考えて来たんだよ?」


本当の姉の瞳になった娘の顔を見詰める。


「理の女神だから?愛を司る神となったから?

 リーンに悪いから?ルシファーには与えたのに?

 なぜ、ずっと昔から大好きだった人にしなかったんだろうって。

 ブラコンだって思われるのが怖かったから。

 マモルに嫌われちゃうのが怖かったから・・・」


15年前と同じ声に聞こえる。

人だった姉が最期に話したのが、自分なのだと分っているから。


「マモルに唇を奪われたかった、与えてあげたかった。

 自分勝手な想いだとは思うけど、もう元の身体に戻るのは無理だから。

 ごめん、ごめんね私の可愛いマモル。

 姪っ子ちゃんにも謝っておきたいけど、今のは・・・マモルと私の秘密にしておいて?」


ふらりと娘の身体が揺れる。

真っ赤に頬を染めて。


「ミハル姉?どうしたんだ?」


急に頬を染めた理由が、見つめ合った事に因る恥ずかしさからかと思ったのだが。


「うにゅぅ・・・マモル。

 姪っ子ちゃんはね、アルコールが極度に弱いの。

 憶えておきなさいよねぇ・・・ヒック!」


挿絵(By みてみん)


ウィスキーというアルコールが強い酒を呑んでいたマモル。

アルコール成分が移ったというのか、コハルの身体に宿る女神ミハルもどうしようもなく。


「また・・・きっと。

 きっとマモルに逢いに来るから・・・また・・・ね?」


「ああっ?!ミハル姉っ、勝手に戻るなよぉっ?!」


言い募ったが、マモルにはどうする事も出来ない。

だけど、屑折れる娘の身体に宿ったひとが残して行ったのは。


「ミハル姉、ずっと想ってくれてたんだよね。

 ・・・ありがとう、とっても嬉しかったよ」


1000年間もの永きに亘り、心にしてくれていたという言葉。

女神になって彷徨う間も、ずっと気に懸けてくれていた想いに。


「ボクもだよ?姉さんのことがずっと、昔も今も・・・大好きだから」


眠りに就いた娘に辿った姉を、心から愛おしく感じていた。


相変わらず・・・損な姉だと微笑みながら。

女神の悪戯いたずら


女神ミハルはブラコンを炸裂させた!

マモルの心は姉に寄り添う?


ミハル「ヴぃ!」


・・・・・・・・・・・・・。


一方その頃ルマはというと?


次回 望郷の彼方 Act5

姉弟がぁっ?! ふざけてる間に本妻の身がぁっ!


ミハル「うふふっ、ホントーマモルは可愛いわね・・・」ブラコン女神談

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