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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
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蠢く闇 Act6

女神は姪っ子に託した。

まだ魔砲少女になって日が浅い新米魔砲師コハルに・・・

コハルが変わった。

魔法衣は変わらずとも、蒼きひかりを纏いながらも。


「見える・・・ラミさんに巣食った悪魔の姿が!」


闇の力を手にしたコハルの片目が金色に輝く。

左の眼に映るのはラミの姿に被さる悪魔の姿。


「こいつがシキ君にも宿っているんだ。

 ううん、ラミさんとシキ君とを結んだ糸が見える!」


金色の瞳が捉えたのは、悪魔ガーゴルムの正体。

二人に別れて巣食っていると思っていたが、どうやら分裂した訳では無かったようだ。


「「そうか・・・闇の力を持っていれば、同じ闇の者の姿が見えるんだ。

  私も昔はそうだったっけ・・・忘れていたわ。

  そういえばルシちゃんも見えていたんだし、ベルゼブブも見えていたんだった」」


コハルの中で女神ミハルが思い起こしていた。

まだ、フェアリアで闘っていた時のことを。

まだ女神になる前、人であった時の記憶を。


「「1000年も人々を観て来たというのに。

  私はすっかり自分の事を忘れ去ってしまっていた。

  何人も、何十人にも宿って来たというのに・・・

  コハルっ子ちゃんが思い出させてくれたなんてね・・・」」


女神ミハルは果てしなく思える時の中を越えて来た。

たった一つの約束を守る為に。


「「もう直ぐ・・・帰れる筈だったのに。

  平和になった世界で逢えるはずだったのに・・・

  人に戻れなくても傍に居続けられる筈だった・・・リーンの元へ。

  だけど、目覚めた時にはコハルちゃんの手の中だった。

  どうしてなのだろうって思ったんだけど、やっと訳が解った。

  コハルちゃんにリーンが手渡したんだね、こうなると知って。

  私が目覚めるのなら悪魔も目覚める・・・

  ならば、護らねばならないのは・・・」」


女神ミハルは姪の魂に刻まれた紋章を見詰める。

光の中に燻ぶるように黒い紋章が見えていた。


「「魔砲力を放つようになって、浮き上がり始めた。

  ケラウノスを起動させる紋章・・・悪魔に為り得る顕れ。

  この子にかけられた呪いは、私の落ち度。

  私が今ある為に残してしまった過誤・・・その顕れ。

  現代に蘇っている女神リーンがいち早く気付いたから。

  ・・・私が戻ると知っていても、授けたに違いないんだ」」


どうしてフェアリアで目覚める筈の自分が、姪っ子の元に居るのか。

本当なら愛する人の元に帰る筈だったのに、此処に居るのか。


全ての疑問が今、漸く紐解かれた。


「「私に与えられた責務・・・リーンが一番に願ったのは。

  私の過ちを正せとの想いからだろう。

  再び逢えると解っているからこそ、私をこの子に託した。

  リーン・・・ありがとう。

  ありがとうございます、御主人リーン様!」」


女神ミハルは遠く離れていても想いは繋がっていると信じている。

目覚めたからには遠からず逢えると信じていた。


「「だって、1000年もずっと我慢して来たんだよ?

  もうリーンの存在も感じられるんだもん、きっと逢えるよね?」」


悪魔ガーゴルムと対峙するコハルの中で、女神は笑っていた。


光と闇の異能ちからを持つ姪が、頼もしく思えて。

僅か10歳にもならない魔砲少女の事が、我が身の様に思えて。


「「さぁ、姪っ子ちゃん。

  あなたに全てを託すわ、ルシちゃんが私に任せていたように。

  コハルとしてではなく、ミハルとして悪魔に打ち勝ちなさい。

  島田美晴シマダミハルとして、闘いなさい!」」


女神は幼き魔砲少女へ、エールと魔砲力を贈った。



挿絵(By みてみん)




ラミに巣食う悪魔は動揺した。

今迄感じていた女神の気配が薄れたから・・・


「違うぞ?この気配は・・・魔王様にも等しい・・・まさか?」


ガーゴルムの焦りはもう一体の自分にも伝播する。

シキにも巣食っているガーゴルムは、コハルから流れ出て来る力に怯える。


「これは?!我が主にも似た力ではないのか?

 もう、覚醒されたというのか?そんな馬鹿な話がある訳が無い!」


魔王が覚醒したのなら、自分に敵対する筈が無いと考えた。

闇の者同士が闘うなど、同士討ちに他ならないと。


ガーゴルムの感じているのは闇の力。

それも桁外れて強い異能力ちからである。

目の前に居る小娘が放てる筈もない、魔王級の魔力ちからを感じて焦っていたのだ。


「もしかして?

 最早目覚められたのか、大魔王サタンよ?

 ならば、我と同道して世界を再び粛清せしめん」


動揺したガーゴルムが言わなくても良い一言を溢した。


「大魔王?アタシが?鹿じゃないの?

 アタシは人なのっ、大切な友達を護りたいだけの!

 悪魔かなんだか知らないけどね、アタシを同類にしないでくれる?!」


コハルの周りを奔り回るラミに言い返すと、


「悪魔なんかに二人を渡さないんだから!

 それに、人間ひとを嘗めないでよね!」


金色の瞳が悪魔を捉え続けている。

一瞬のタイミングを逃さない為に。


ー 二人の間に伸びている紐みたいなのを斬れないかな?

  二つを一つに出来れば、一発でケリを付けれるのに・・・


コハルは女神に言った方法をどうすれば出来るかを考える。


ー 何とかしないと。

  女神ミハル様にサポートを受けていてもタイムリミットが来る?!


悪魔が焦るのと同じように、コハルもジレンマに堕ちりそうになっていた。




「何やってんだよコハル・・・女神ミハル様は?」


帰れと言い渡されていたのだが、マリアは帰る事が出来ないでいた。

校門の影から情勢を伺い、じれったそうに3人を見詰めていたのだった。


「一思いにやっつければ良いのに。なぜ手出しせぇへんのやろ?」


ラミがコハルの周りを駆け回り、シキは黙って様子を観ている様にしか見えない。


「このままやったら・・・コハルの魔力が途切れてまう・・・」


コハルの魔砲力には制限がある。

そう思っているマリアが歯がゆく思って、カバンに手を伸ばす。


「帰れって言われたけど。

 手出しするなって言い渡されたけど・・・もう黙っておられへん!」


悪魔と睨みあうコハルの窮地を救う為に、マリアは闘いに介入を図ろうとする・・・


・・・が。




「駄ぁ目ぇ、あなたはここで待ってなさい」


鞄に伸ばした手を誰かが押さえつけて来た。


「えっ?!アンタ・・・誰や?」


振り仰いだその先に、微笑む女性がいた。


「あら?見忘れちゃったのかしらね?

 ミリアさんの処のマリアちゃんでしょ?私よ、マーブルお姉ちゃんよ?!」


青みかかった銀髪。

蒼い瞳・・・そして。


「コハルちゃんが闇と闘うなんて・・・ラミに巣食う者に気付いたなんてね。

 もしかして、宿られちゃったのかしら・・・隊長に?」


微笑む瞳でマリアに訊いた。


「マーブル・・・ああ、オスマンとフェアリアの両国で魔鋼騎士だった?!」


顔は覚えていないが、その勇名は聞いた事がある。


「マーブル・チアキ・・・まさか、こんな所で会えるなんて!」


驚嘆するマリアに微笑んだままのマーブル少佐が。


「そー。そのマーブルだけど、マリアちゃんに訊きたいの。

 今闘おうとしているのは私の部下なのよね。

 ラミ候補生ってんだけど、どうやら闇に染められちゃってるみたいなのよね」


マリアには微笑んでいた瞳が、シキとラミを観た瞬間に険しくなる。


「コハルちゃんは戦闘態勢を執ってるみたいだけど・・・

 どうやら手を出しかねているようね。シキ君とか言った男の子には」


ふむっと、考えていたマーブル少佐が。


「マリアちゃんはここで待っていなさいね。

 ちょっとだけ私が文句を言って来るから・・・観てて」


紅い軍服から何かを取り出したマーブル少佐が、マリアの頭を撫でる。


「文句って?相手は闇の者ですよ?!」


驚いたマリアが訊き返すと。


「そう、だから・・・よ。

 今の私には嘗ての力は出せないけどね、文句の一つくらいは言えるのよ?」


マーブル少佐はマリアに取り出した物を見せる。

蒼く輝く魔法の石を。


「そ・・・それって。コハルの石と同じ物じゃ?!」


驚くマリアにウィンクを贈ると、マーブル少佐が石を翳す。


「同じじゃないわ。だけど、この石には宿った魂があるの。

 私の御先祖様が闇と闘う為に宿っているのよ!」


マリアに答えたマーブル少佐の魔法石が光を放った。


「私自身が変身出来なくなっても、この石には宿った魂が息づいてる。

 我が先祖にして偉大なる陰陽師、そして偉大なる魔女の魂がね!」


魔法石に紋章が描かれる。

蒼き光を放つ魔法石は、古の魔女を表す刃の紋章を浮かばせた。


「秘められし魂よ、輝と共に我が剣を現せ!

 古から受け継ぐ<剣聖けんせい>たる者に授けよ!」


マーブル少佐の右手に光が集うと、そこには・・・


「魔鋼・・・いや、日の本の魔女の証・・・なんか?」


マリアの前に立つマーブル少佐は、光り輝く剣を手にしている。


「そうね、古来から引き継いだ魔法とでも云えるわ。

 あの日に一度は失った筈なんだけどね・・・戻りつつあるみたい」


姿は軍服のままだが、圧倒的な力を感じた。

自分には持てそうもない、聖なる力を手にしている様に観えた。


「さ、流石ですっ伝説の勇者様。コハルを助けてやって!」


まだ、何もしていないマーブル少佐を褒め称えて願ったマリアに。


「助けるのは、あそこに居る女神様が為されるでしょう。

 私はその手伝いをするだけの事なんだからね?」


手にした剣を一振りして感触を確かめる少佐が答えて来る。


「それじゃぁマリアちゃん。

 私がどうするかを観ておきなさい、きっといつかは役に立つでしょうからね?」


ゆっくりと校門から歩みだすマーブル・チアキ<剣聖>。


「はいっ!観ていますっ!」


勇者の後ろ姿を、キラキラした目で追うマリア。



「ふふっ、久しぶりに・・・逢えるんですね隊長?」


歩む剣聖チアキは、嘗ての上司を思い出す。


「あれからずっとお待ちしていたのですよ?

 リーン様を解き放たれたと知った時からも・・・」


蒼き魔法剣を右手に携え、チアキは微笑む。


「それにしても、ミハル隊長は相変わらず・・・損な人ですね?」


悪魔と対峙しているコハルに向けて、

今は伝説となりつつある魔鋼騎士マギカナイトチアキが笑った。


悪魔と対峙するコハル。

手出しがなかなか出来ない時に現れ出るのは?


伝説となっているオスマンの英雄。

稀代の魔砲剣士でもあったチアキ少佐。

彼女にはもう魔砲力が残されて居無いと言うのに?

悪魔とどうやって闘おうというのか?

えっ?!

文句を言うだけ?

・・・・嘘だろ?


次回 蠢く闇 Act7

君の力は未だ衰えていないのか?!

 あまりにも強力だった過去よりは大人しくなったというのかそれで?


ミハル「チマキィーッ!でしゃばるのも大概にしなさいよ!(ホントーは感謝)」

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