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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
35/219

蠢く闇 Act3

仲を取り持つ必要もない。

コハルの心はマリアに繋がっていた。


ラミ候補生とシキは学校に向かう・・・

本当は、母の元へ持ち逃げしなければいけなかった。

女神が宿った蒼き魔法石を奪って。

その結果、どんなに恨まれようと・・・



・・・でも、心の中では問い掛け続けていた。

学校に来てコハルの顔を観た瞬間に。


<どうしてミリアママ?

 ウチには出来へん・・・コハルを裏切るなんて。

 心から信じられる大切な人やのに・・・やりとうないよママ?>


手を出しかねて・・・話す事も出来ずに。


授業中は良かった。

何も話さずとも良いのだから。

進んで奪い去る事もせずに済んでいたから。


だけど、給食時間になったらコハルはいつも通りに笑い掛けて来た。

いたたまれなくなった・・・眼を合わせる事も出来なくなる。

ちょっと用事がある・・・そう嘘を吐いて逃げ出した。

校舎の屋上まで・・・


独りになりたかった。

コハルから逃げたかった、顔を観ていると決心が鈍りそうで。


「どうして・・・ウチはコハルと親友になってしもうたんやろ?」


独りで空を見上げていると、この学校に転入してきた時のことを思い出す。


ー ミリアママの頼みだったから。

  ジョセフパパを見つけ出すには、リーン皇女様の石が必要だって教えられていた。

  その石が日の本にあると誰かに知らされたママが、ウチに頼んだ・・・


マリアの記憶が、その時を思い出す・・・



マリアの肩を強くつかんだミリアが見詰める。


「良い事マリア。

 私達にはあの石がどうしても必要なのよ。

 リーン皇女が持っているのなら、あなたには手出し出来なかった。

 でも、どう言う訳かは知らないが、今あの石は日の本にある。

 しかも、私の良く知る夫婦の娘が持っているの・・・」


紅く澱んだ瞳でマリアに話す母ミリアに頷くと。


「幸いなことに、あなたの素性は娘にはバレていない。

 私の娘であることが、ミハルと名付けられた娘には知られていない。

 マリアにとってミハルと名付けられた娘に近付くのは容易いわ。

 チャンスが訪れたのなら、娘の手から石を奪うのよ。

 いいことマリア、奪う事に躊躇いを感じては駄目」


強く握った肩を、更に痛い程握り締めて来るミリアママに、戸惑いを感じる。


「あの石に女神が宿るのは間違いない。

 女神が宿った暁には、躊躇う事なく奪いなさい。

 私達の手に出来さえすれば、石と交換にジョセフを取り戻せる。

 どこかに居る筈のあの人を、取り戻す事が出来るのよ!」


ミリアママはそう教えてくれた。

コハルが持っている魔法石に女神が宿りさえすれば。

魔法石をママに手渡せば、きっとパパは帰って来てくれるのだと。

もう日の本で寂しい想いをせずに済むのだと。


ー そう・・・そして優しいパパに逢える。

  パパさえ戻って来てくれれば、ママも優しい元のママに戻ってくれる。

  ・・・そう・・・だから・・・


記憶の中で家族3人で暮らしていた頃を思い起こしていた。

幸せな日々。仲睦ましい暮らし。両親の暖かな手・・・


ー 取り戻せるのなら、ウチは何でもするって決めていた。

  ミリアママの言った通りに、コハルへ近づいた・・・


記憶は途切られ、今の自分が想う心を見詰め直す。


ー 初めはママの言いつけ通りにするつもりやった。

  せやけどコハルに触れて、コハルと話し、コハルを知った。

  この子から教えられてしもうたんや。

  友達がどれだけ大切なんかを、友達が居るってことがどれだけ嬉しいのかを!


目の前に微笑む友が居る。

心から信じあえるコハルの笑みが、手を伸ばせば届く処にある。


ー ミリアママの言う通りにすれば、パパは帰って来れるかも知れへん。

  せやけどコハルが大切に持っている石を奪うなんて、ウチには出来へん。

  約束破るけど、ウチには間違ぉてるとしか思えへんから・・・ミリアママ


マリアはコハルの微笑みに応える。

許してくれた親友の微笑みに、頷き返して。


「コハル、ウチな。

 ・・・ウチ、オカンに話してみるわ、コハルの元に来て頼んでみてって。

 奪うなんて酷い事せずに、コハルに訳を話してみてって・・・さ。

 コハルの御両親の前で、ちゃんとどう言う事なのかを話して。

 それでコハルが貸してくれるのなら借りればいいんだって・・・ね」


もう、コハルに迷惑を掛けないと約束する。

初めからこうしておくべきだったとの想いと共に。


「マリア君とか言ったわね?

 あなたはもしかして公使補ミリアの子女?」


ラミ候補生が、眉を顰めて訊いて来る。


「ミリア公使補が何かを企んでいると聞き及んでいたけど。

 まさか娘に盗難させようとは・・・とんでもない話ね。

 でも、訳があるのでしょうからこの場では聞かない事にしておくわ。

 それに、私に与えられたのはシキ君をコハルちゃんに逢わせる事だけだもんね」


ポンとシキの肩を押し出して、コハルに近寄らせると。


「ほらほら。コハルちゃんに改めて自己紹介でもすれば?

 シキ君はお兄ちゃんなんでしょう?中学生なんだからさ?!」


ニヤリと笑うラミ候補生が、中学生男子をコハルに紹介する。


「あのねラミさん!自己紹介ったって。

 改めて言う必要あるの?コハルにはボクだって解ったんだしさ?」


コハルの前に突き出されて、少し照れた少年だったが。


「コハル、ボクはね。都立学園中等部に入ったんだ。

 コハル達のいる小学部の上、同じ学校の中等部なんだ。

 何だか知らないけど学力が中学生並みなんだってさ?」


本当はコハル達の居る小学部に入りたかったのに・・・

そう聴こえるような声で、シキは頭を掻いていた。


「へぇ~っ、シキ君って頭が善いんだねぇ。羨ましい・・・」


闇の者の姿だった時には、少し背が高い位で小学生かと思っていたのだが。


「こうしてカッター着ている処を見せられると、納得・・・」


まじまじと見れば、シキの方がどうみてもお兄さんに見える。

背も少しくらい高いだけだと思っていたが、近寄ると頭半分は違うと判った。


「そっかぁ、シキ君って呼べないなぁ。

 シキお兄ちゃんって呼ばないといけないんだよね?」


見上げるシキの頬が赤くなった。


「コハル!お兄ちゃんはせってば!」


「じゃあ、なんて呼べばいいの?」


目上の少年に、溜口は良くないだろうと思ったのか?


「普通に呼び捨てでいいじゃないか?」


「でも、学校で呼び捨てにすれば・・・変に思われないかなぁ?」


自分は小学生、シキは中学生。

見ず知らずではないが、あまりに馴れ馴れしいのではないかと考える。


「ばっ、馬鹿っ!変って、なにがどう変なんだよっ!」


急に慌てるシキに、コハルは目を丸くして驚くと。


「だって・・・女の子が目上の男の子を呼び捨てにしたら。

 上級生の人に睨まれそうだもん・・・」


コハルの心配に毒気を抜かれたシキが、なんだとばかりため息を吐くと。


「じゃあ、今迄通りに君付けで呼んだらいいよ」


「うん!そうだね、そうするね!」


ぱぁっと頬を緩めてコハルが頷いた。



「よしよし。紹介が終わったようだからシキ君を借りて行くわよ。

 これから学園に転入手続きに行かなきゃいけないの。

 私はチアキ少佐の名代で付き添う事になってるから。

 じゃあ、コハルちゃんまたね!」


コハルの前からシキの手を取ったラミ候補生が、片手を振りながら足早に去って行く。


「コハル!明日からは学校で会おうな!」


連れ立って歩き出したシキが、コハルの肩に手を添えて笑った。


 (( シュン ))


シキの手がコハルの肩から離れた時、一陣の風が舞い起こった。

当のコハルにも判らない位の小さな風が・・・


「うん!分かったよシキ君!」


コハルも手を振り、笑って見送ったのだったが。

何故だか知らないが、急に睡魔が襲って来ていた。


ー あれ?!なんだろう・・・不思議な感じ。

  瞼が重い・・・気が遠くなる・・・


手を降ろしてマリアに振り向いた処迄は記憶があった。





「あの二人に感謝せんとなぁ。

 停めてくれへんかったら、ウチはもうコハルの前に居られへんかった。

 頭が上がらへんようになってもうたわ」


コハルと一緒に見送ったマリアが、


「コハル、明日にはミリアママの方から連絡させるよってに。

 御両親に話してくれへんやろか?

 ウチの事を許してくれるんやったら、頼めへんやろか?」


帰って早速ミリアに懇願すると言って来た。


「うん?・・・あ。

 なんだか急に声が良く聞こえるようになったな?

 そう?それでマリアちゃんは大丈夫なの?

 ミリアは何かに憑りつかているのかもしれないのよ?

 魔法石わたしを持って行かなくても大丈夫なの?」


急に心配顔になるコハルに、胸をドンと叩いてみせたマリアが。


「心配せんで宜しい。

 ウチがこうと決めたんやしな。

 判って貰えるまで何度でも頼んでみるさかいに!」


大丈夫だと、太鼓判を押して来る。


「・・・無理しちゃ駄目だよマリアちゃん。

 魔法石が必要ならいつでも言ってね?」


それでも心配なのか、言い募って来る。


「コハルは心配性になってもうたんやな?

 なんだか判らへんけど・・・宿ってはる女神様みたいやで?」


ちゃん呼ばわりされたマリアが、小首を傾げて聞き返すと・・・


(( びくっ ))


コハルの手が一瞬震えたような気がした。


「めっ女神なんかじゃないからっ!私はミ・・・コハルなの!」


言い繕ったのだが、却ってうろが出た。


「もしかしなくても・・・女神ミハル様じゃないんですか?

 もろにバレバレな気がしますけんど?」


ジトっと見られたコハルだったが。


「な、なにを馬鹿な事を!結界の中じゃないんだからっ。

 コハルちゃんに憑依出来る訳がないじゃないの!」


・・・・・・・・


「されてますよね?今?」


・・・・・・・・


「あれ?・・・・ホントだ?!」


・・・・・・・・


「・・・やっぱり」


「・・・・・これはどうした事なのっ?!」


憑りついた女神ミハルが自分の姿を確認する。


魔砲少女姿にもなっていないというのに、何故憑依しているのかと慌てふためき。

ペタペタと身体を触って、現実に存在していると漸く認識したようだ。


「ど、ど、ど・・・どうなっちゃったのぉっ?!」


女神ミハルらしいと言えばそれまでだったが。


「結界は何処?!私は誰?!それよりも!

 どうして憑依出来ちゃってるの?!」


女神ミハルにも、訳が解っていないようだった。


女神ミハル様、いつからこの状態になったんですか?」


「知らないわよ!

 気が付いたらコハルちゃんの気が消えしまって。

 まるで意識を喪ったみたいに眠り込んでいるのよ!」


・・・・


コハルが寝てる?

何時、どの時点で?


パニックに陥ったのは理の女神。

訳が判らないのはマリア。


夕日が迫る学校の壁際で、二人と一柱が騒いでいた・・・

挿絵(By みてみん)


ミハル「なぜっ?!結界もないのに?」

マリア「損なモンでしょ?」


ミハル「でもっ、なにか訳がないと現れ出ることは出来ない筈!」

マリア「損・・・な、女神なんやろ?」


ミハル「・・・マリアちゃん・・・デコピン・・・してあげようか?」

マリア「デコピン?そんなもん、幾らでも・・・」


((   びしっ!  ))


ーーートピユゥーンーーー


ミハル「ほぅ?マリアちゃんも月まで飛んで逝けたのね?」

マリア「(彼方で)逝ってませんっ!ばいばいきぃーん」



挿絵(By みてみん)


最近描いたミハルの目がキツイとのご意見を頂きました。

旧型の描き方の方が良いのでしょうか?


ご意見待つ!


次回 蠢く闇 Act4

君の前に現れたのは?本来の女神たる娘が相手とするのは?


ミハル「ふぅ・・・やっと訳が解ったわ。この子達に潜むなんて・・・・神罰を与えないとね!」

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