表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
33/219

蠢く闇 Act1

挿絵(By みてみん)


忍び寄る闇。

コハルに秘められた力を求める者が蠢き出す・・・

初めて自分の力を知ったコハル。

女神に頼らなくとも、闇に打ち勝てる力がある事に気付いた魔砲少女。


だが、少女はまだ何も知りはしなかった。

自分に秘められている、本当の運命さだめがあるのを・・・



あの日から数日経った。

コハルがフェアリア国少佐チアキ・マーブルと出逢ってから。


娘の事を案じたルマはマモルと協議の上で、

母国フェアリア公使補であるミリアに打ち明ける事にした。


既に女神の存在を知るミリア公使補に実情を知らせ、武官補の役職を解いて貰う為に。

娘の傍に今迄よりも長く居る為に。


「で、ありますから。

 武官を解任して頂きたいのですミリア公使補。

 少しでもあの子の傍に居たいのです、護りたいのです」


魔砲少女となった娘が、闇に知られてしまった現在。

狙って来るのは必定なのだと、いつ捕えに来るかも判らないのだと。


ミリア公使補も、マモルとルマの間に産まれた子の重要性を知っている一人であったから。

ルマの求めに応じてくれるものだとばかり思っていた。


・・・しかし。


「その必要はないわルマ。

 あなたの娘が狙われる事が無いように取り計らえば良いだけの事」


ミリア公使補があっさりと拒絶して来たのには、流石のルマも驚いた。


「取計う?どうやって?

 コハルはもう魔砲使いになってしまったのですよ?

 闇にその存在を知られてしまったのに、どうすれば狙われずに済むというのです?!」


母親の自分が傍にて護らねば、いったい誰が護るというのか?

拒否してきたミリアに対して、その方法とやらを訊ねると。


「簡単な事。

 あなたの娘が持っている魔法石を、我々が管理しておけば良いだけよ。

 女神ミハルが宿ったという魔法石を私に預ければ済むだけの事。

 そうすれば闇の者達には奪われない、そうする事に因って闇の者から娘を護れるの」


ミリアは切れ長の目をルマに向けて教える。


挿絵(By みてみん)



訊いた処、言われた通りかもしれないが、肝心な娘の安否についての保証が何もない。

魔法石は確かに護れるかもしれないが、闇の者がコハルを襲わないとは言い切っていない。


変身する為に必要なデバイスでもある魔法石を取り上げられてしまえば、

闇の者が襲って来た時に、自分で抗う事が出来なくなる。

また、魔砲使いになれなければ、連れ去られてしまう公算も大きくなる。


「公使補、蒼き魔法石をコハルから取り上げたとして、誰が護れるというのです?

 我々大戦経験者にはもう、魔力など残されていないのです。

 もし闇の者が私の居ない時に襲ってきたら、誰がコハルを護れるというのです?」


母親として護りたいのは当たり前であろう。

だがルマにも、そして他の大人達にも魔砲力など残されていなかった。

あの大戦の末、そこに存在していた全ての人間から魔砲力が奪われた事実。


しかし、闇の存在が現れた後。

新たに産まれ出て来た子供たちの中には、稀に魔力の秘められた子が現れた。

但し、その子らに魔砲が備わっていたにせよ誰も求めたりはしない筈だった。


魔砲は、闘う為に存在しているのだから。

闘う必要が無い今、誰も魔砲力の存在を調べる者が居ない筈でもあったから。



「ルマ武官補。

 あなたは何か勘違いしている様ね。

 闇の者達が狙うのはあなたの娘だけではないわ。

 報告書を観て御覧なさい、この数か月だけで日の本だけでも15名。

 そして我がフェアリアでも30名もの少女達が連れ去られているのよ。

 全て魔法力が秘められていた可能性が高い少女ばかりを。

 親が元々魔砲使いだった・・・大戦後に生まれた娘ばかりを連れ去っている」


ミリア公使補がルマに背を向けて話し出した。


「言っておくわルマ。

 あなたの娘ばかりじゃないのよ、私の娘だってそうなの。

 いつ闇に飲み込まれるか何て判らない。

 それはあの子の運命なのだと割り切って考えねばならないの」


ルマはミリア公使補の言葉に息を呑んだ。

母親だというのに、子供が連れ去られるのを運命だと言い切ったのだから。


母が子供の身を案ずるのがおかしいというのなら、自分は従えないと思った。


「ミリア公使補。

 今のあなたが仰られた言葉ですと、

 コハルが連れ去られても受け入れるべきとも聞こえましたが。

 私の聞き間違えでしょうか?」


背を向けているミリアに聞き足す。


「ミリアさん・・・あなたは変わってしまわれました。

 御主人のジョセフさんが行方不明になられてから。

 日の本に行使として滞在する期間中、いつも魔法石を気にしておられた。

 なぜ?・・・コハルの魔法石ばかりに気をかけられるのです?」


ルマが悲し気に付け加える。


「あの石に宿る者が目覚めるのを待っておられたのですか?

 義姉ミハルが帰って来るのを待ち続けていたのですか?

 なぜ・・・ミハル姉に何を願おうというのですか。

 何をさせようとしているのです?女神ミハルに・・・」


ミリアの狙いは何にあるというのか。

女神ミハルが宿る石、蒼き魔法石・・・

その石を渡せば、ミリアは何かを執り行う気だろう。

女神の宿った石の力を以って、夫を取り戻す気なのかもしれない。


「まさか・・・現れた闇の力と掛け合わせる気では?」


黙って自分の話を聴くだけだったミリア公使補に、ルマが最悪の魔術を思い出す。


「魂の・・・転移。若しくは再生・・・神の力では執り行えない闇の術。

 ミリア公使補は・・・まさか、古の術を再び行う気では?!」


後退るルマが拒絶する。


言い募られたミリアは振り向きもせずに言うだけだった。


「ルマ武官、返答は?魔法石を手渡す気はないか?」


「それは・・・ご命令ですか?」


ルマも淡々と聞き返す。


「・・・そうでは無いと言えば?」


「・・・従う訳にはまいりません」


即答で拒否するルマ


「・・・そう・・・か」


無理強いしても、無駄だと解っているのか。

ミリア公使補はそれ以上、何も話してはくれない。

二人の間で、暫しの沈黙が流れた。


「では・・・私はこれで・・・」


公使補室を退出する前に、ルマは兼ねて用意していた<辞表>を机に置いた。


「失礼申し上げました。ルマ元武官補、これにて失礼致します」


最敬礼をドアの前で送ってから、ルマは静かに退出した。


室内にくぐもった咽び笑いが漏れ出る。


「馬鹿な女だわあなたって・・・昔から。

 あなたがどれだけ拒絶しても、私には手があるのよ。

 あなたの娘から魔法石を取り上げる方法なんて・・・」


紅く澱んだ瞳をドアに向けて、ミリアが嘲る。


「我が手に出来ないとでも思って?

 私にはこの日の為に送り込んだ者が居るのよ・・・あの子がね」


口元を歪ませるミリア。

どんな方法でコハルから魔法石を取り上げられるというのか?


「間も無く・・・そうよ。

 もう直ぐ、時が満ちるのよ・・・あの人が帰って来る時がやってくる!」


澱んだ瞳には、既に心まで堕ちてしまった人の色が滲んでいた。


「私の魂を使ってでも、あの子を生贄にしても。

 必ずジョセフを取り戻し・・・我が願いを果たしてやる!」


赤黒く澱んだ瞳・・・それはミリアが闇の化身ものへと堕ちた証・・・








__________







「それでね、シキ君っていうのその子って!」


コハルが話しかけてもマリアは上の空だった。


「もう直ぐどこかの学校に通うって、チマキおばさんが言って来たから。

 住む処も決まったみたいだったから・・・良かったぁ」


いつもより饒舌に話を振っているのだが、マリアはなぜだかコハルと眼を合わさない。


「でね、今日にはコハルに逢いに来てくれるんだって!楽しみだよ」


ランドセルを担ぐコハルが立ち止まると。


「ねぇ、マリア?今日はどうかしたの?

 なんだか顔色も悪そうだから・・・どこか痛いの?」


心配そうに後ろから続くマリアに訊いた。


「ああ、気にせんでもええんや・・・気にせんでも」


俯き加減に、何かを耐えている様にも観えるマリアが答えると。


「気になるってば!今日のマリアって普通じゃないよ?」


俯いたマリアの顔を覗き込むように、下から見上げるコハル。

その胸に光っている蒼き魔法石を観たマリアが。


「なぁコハル・・・石を見せてくれないか?」


突然、マリアが求めて来た。

マリアが魔法石を観たいなんて言い出してきたことに不信も抱かず。


「え?うん、いいよ」


首に下げていたネックレスを差し出す。

親友に見せるのはこれが初めてでも無いから、マリアの手に載せる。

大切な宝物であるが、大切な親友には気兼ねなく手渡せた。


だが。


「コハル・・・コハル・・・」


呟くマリアの眼から涙が溢れて来たのに驚いて。


「ど、どうしちゃったのマリア?泣いたりして・・・」


「ごめん・・・ごめんやで!」



それは突然の事だった。

大事にしている魔法石を、マリアが奪い去る。

いつも肌身離さず持っていた蒼き魔法石を、親友のマリアが訳も話さず取り上げ走り始めたのだ。


「マリア?!なにを?待って返して?」


いつものマリアとは思えない。

冗談好きなマリアがからかった訳では無さそうだった。


訳が判らずコハルが叫ぶ。

いつもの冗談とは思えないマリアの急変に。


「マリア?!魔法石をどうするの?返してよ!」


「すまんっコハル!ウチは・・・ウチは!」


脱兎のごとく、マリアが走り出す。

リュックも何もほったらかしにして。

コハルもランドセルを振り下ろして追いかける。


足の速さではマリアに太刀打ちできない。

逃げ出したマリアに追い縋ろうと、必死に駆けるのだが。


「なぜ?どうして急に?!

 何があったのか、訳を教えてよマリア!」


追いかけながら必死に訊ねる。


「すまん・・・コハルぅ!」


謝る声だけしか答えてくれないマリアに、悲しみの涙が溢れて来る。


「なぜ・・・アタシ達親友じゃないの?

 どうして・・・停まってよ・・・話してよ?」


引き離されていく。

もう追いかける力が無くなってしまう。


信じていたのに・・・友達だと心を許していた筈なのに。


コハルはさし伸ばした手で、友を求めていた。


挿絵(By みてみん)


「すまんっコハル!ウチは・・・ウチには。

 オカンの命令を訊かなあかんのや・・・訊かんとアカンのや!」


コハルだけではない。

奪ったマリアも泣いている。


その涙の訳を知りもしないコハルは、絶望と悲しみで崩れ去るように座り込んでいた・・・


「・・・なぜ?酷いよマリア・・・」


零れるのは・・・失意の声。

コハルは絶望したのか?

なぜ追いかけないのか?


マリアは母の言いつけを守るというのか?

奔るマリアは泣いていた・・・


次回 蠢く闇 Act2

君達は何を求めるのか、何を告げようとしたのか?

 一言が君の心を開いた・・・本当の心を!


ミハル「心を繋いだ友を裏切れる筈がないじゃない!信じ合ってても良いんだよ君達は!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ