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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
32/219

チェンジ!魔砲の少女 Act9

漸く鬱モードも回収されそうです。


コハルは友を得られるか?

コハルは母と仲直りできるか?


果して?

陰っていた月が、雲の切れ間から光を指して来る。


背後から月光を受けた女性の影が近寄って来る。


「見違えたわ、あのミハルちゃんが魔法衣を着ているなんて」


親し気に呼びかけて来る女性の顔が、月明かりを受けてはっきりと分かった。


黒髪だと思っていた髪色も、今は銀髪だと判った。

眼に輝く瞳の色も、蒼く澄んでいるのが見て取れた。

左髪に、トレードマークの紅いクリップを付けて小さく纏めている。


着ている紅い制服は、軍服だと思われ、襟に着いた金筋1本が階級である少佐を指していた。


「それにしても、何だか派手にやらかしたわねぇ?」


周りの惨状を観ても、あまり驚いた様子を伺わせない女性がコハルに向けて教えて来る。


「早く魔法衣から元の姿に戻りなさい。そうしないと誰かに見られちゃうわよ?」


コハルの姿が魔砲少女故だと知っているみたいだった。


近付いた女性を見詰めていたコハルが、驚いた顔のまま立ち尽くしていると。


「ほら、ミハルちゃん。早くしなさい」


正気を取り戻せとばかり、促し続けてきた。


「あ・・・えっ?!どうして?」


変身を解く事も忘れて、コハルが訊ねる。


「どうして?ああ、私が此処に現れた事?

 それともミハルちゃんが魔砲少女になっても驚いていない事?」


「ど、どっちも!どうして?なぜ・・・フェアリアに居る筈のチマキおばちゃんが?!」


咄嗟にコハルが名前を呼んだ・・・が。


挿絵(By みてみん)


呼ばれたマーブル少佐が、つかつかとコハルの前まで来ると。


「チマキじゃないって言ってるでしょう?!

 叔母譲りの字名あざなを使うんじゃないっ、それにおばさんでもないから!」


コハルの頭を両手でグリグリ捏ねまわして、顔をヒクつかせて言った。


「うにゅぅっ?!やぁ~めぇ~てぇ~っ、ごめんなさいぃっ!」


魔法少女をこうも簡単に眼を廻させれる女性とは?


「ふむ、分かれば宜しい。

 さぁ、早く魔法衣姿を解除して。誰かに見られちゃう前にね」


コハルの頭から手を放したマーブル少佐が、コハルの後ろに立つ少年を観て。


「君、君も脱げるのなら脱ぎなさい。早く」


コハルを観る目とは違い、射貫くような鋭い目で命じた。


「えっ?!ボクも・・・なの?」


戸惑うシキに、頷いた少佐が。


「そう・・・脱げるのならね?その闇の魔法衣が・・・」


マーブル少佐という者は、シキの正体を見抜いているのか?

コハルに対する微笑みを一切見せず、シキを見詰めている。


「うん・・・っと。えっと・・・どうやれば脱げるんだろ?

 しょうがないから普通に脱ぐしかないかな?」


シキはコハルが解除呪文を唱えようとする前で、魔法衣を手で脱ごうとボタンに手をかける。


「えっ?!シキ君・・・まさか?こんな所で脱ぐ気なの?」


魔法衣を脱ぐということは、


「下着って・・・着てる?もしかして・・・着てないんじゃぁ?」


ビクつく理由は、自分だって魔法衣を全部脱ぐ事になれば裸だったから。


「でもさ、脱げって言われたんだから。脱いだ方が善いんだよね?」


「違う違うっ!シキ君は元々どんな服装だったの?

 アタシみたいに普通の服じゃなかったの?!」


コハルが教える為に元の羽織袴姿に戻って、こうなんだと教えたが。


「ああ、ボクね。元からこの魔法衣を着てたんだけど?

 これを替えれるのなら変えてみたいけど・・・どうすれば善いか何て判らないんだ」


眼が点状態のコハルに、困ったように話すシキ。

二人を見詰めていたマーブル少佐が、ため息を吐いて言うには。


「だったら、誰かに見られてもその姿のままで居るのね。

 火災の全責任を被せられても、言い逃れ出来ない事になるわよ?」


責任を求められるのは、このままの姿ではシキ独りになると教えた。


「そんな?!シキ君は何も悪い事なんてしてないのに。

 こんなにしたのは全部アタシの所為なのに?!」


悪いのは自分だと思わず白状してしまった。

コハルが魔砲で吹き飛ばしたのだと教えたら、


「ぷっ?!これ全部ミハルちゃんが?

 やっぱり・・・あの人の姪っ子だけあるわ・・・流石ね?」


何がどう流石というのか。

笑うマーブル少佐が、コハルとシキを手招きして。


「いいことミハルちゃん。今晩の件はいっさい喋っては駄目よ。

 公園には来なかった、火災も観なかった。

 そして変身なんてしなかった・・・いいわね?」


コハルの肩を優しくつかんで諭して来る。


「え?!でも、それじゃあ・・・これは?

 公園をこんなにしちゃった責任はどうすれば取れるの?」


自責の念に駆られたのか、コハルが惨状をみせる公園を指差しながら訊いた。


「言ったでしょ、ミハルちゃんは公園になんか来なかったんだって。

 来なかったし観なかった・・・責任なんて何もないのよ?」


「でもぉ・・・ルマお母さんに訊かれたら?

 どこでどうしてたのか訊かれたら?なんて答えれば良いの?」


戸惑うコハルに、再び笑みを溢したマーブル少佐が。


「それは・・・ね?<魔法>・・・よ?」


ウィンクをコハルに見せ、続いて背後に声を掛けた。


「ラミ!修復出来るわね?今晩中によ!」


誰も居ない陰に向けて命じた。


そう。誰も居ないと思っていたのだが・・・


「「人使いが荒すぎますデス、指揮官?!」」


女の子の声が返ってきて、コハルが眼を剥いて驚いた。


「うそぉっ?!誰も居ない筈なのに?!」


確かに声が返って来た方には誰も存在していない・・・筈。


「ねぇ、チマキおばさんっ、誰かいるの?!」


((グリグリ))


またもや、コハルは拳骨で頭を捏ねられる。


「いひゃい・・・許してぇチアキお姉ちゃん・・・」


涙目のコハルが少佐の名を返すと。


「ホントーに、あの人そっくりになって来たわねぇ。

 損具合もなかなかのモンだわ・・・名前通りに」


フンっと鼻息荒くコハルをあしらったチアキ少佐が。


「ラミ候補生はね、新研究の試験を兼ねて日の本に連れて来たんだけど。

 どうやら罪滅ぼしが出来そうだわ。

 ・・・この間にやらかした魔砲戦の罰直がまだだったわよねぇ?」


「「ひぃっ?!ごめんなさいっ、今直ぐ取り掛かりますデス!」」


どこかに居る筈の声の主に有無を言わさぬ口調で命じ、それに答えた少女の声が震えていた。


「判れば宜しい。じゃあ、頼んだわよ?

 私はミハルちゃんとこの子を送り届けるから」


ポンと手を一払いして、チアキ少佐がコハルとシキに目を向けて。


「そういう訳で。ミハルちゃんは私と同道する事。

 君も異存はないわよね?闇の者だった少年君?」


過去形で闇の者と告げるチアキ少佐が、シキも手招きする。


「えっ?!ボクをどこに連れて行くの?」


「チアキお姉ちゃん?!シキ君をどうする気なの?」


二人が少佐に訊ねかけると。


「ミハルちゃんはルマさんの所へ。

 君はこれからどこに住むのかを決める為に、私と一緒に来なさい。

 決して悪いようにはしないわ。

 だってもう君は闇には帰れないのでしょう?

 普通の人間に戻るべきなのだから、家を決めないといけないのよ?」


コハルは、シキがこれからどこに住めば良いのかなんて考えてもいなかった。

単純に家に連れて帰る事しか考えていなかった。

親達がどうするなんて考えても居なかった。

その結果、シキがどうなるのかなんて、子供には解り様が無かったから。


「シキ君をどうするの?

 酷い事にならない?酷い目に遭わされない?

 チアキお姉ちゃんに任せれば、シキ君はアタシの友達のままで居られるの?」


挿絵(By みてみん)



心配だったのか、コハルが離ればなれにならないかを訊く。


「そうねぇ、ミハルちゃんと同じ学校へ通えるかは判らないけど。

 この近くに住めるように頼んであげても良いわよ、この子が良いというのなら」


少佐がシキの頭に手を載せて、コハルの気持ちを汲んでくれた。


「そっか!それならシキ君とまた遊べるんだね?

 学校が同じだったら、もっと嬉しんだけど?」


大人の考えている事なんて微塵も思いつかないコハルが、素直に喜んだ。


「この子が今何歳なのか、どれ程の学力を備えているのか。

 確かめなきゃいけない事が多いからね、まだはっきりとは言えないんだけど。

 私が観る限り、この子はミハルちゃんより学年が上だと思うんだ。

 同じ学校に行けるのかどうかは、はっきりしてから教えるわ」


シキの頭に載せていた手を放したチアキ少佐が、コハルより見た目も背が高い事から判断したようだ。


「それじゃあ二人共、送って行くから。

 先ずはルマさんに私の方から訳を話すから、ミハルちゃんは黙っていなさいね?」


チアキ少佐はコハルの母と面識があるようで。


「久しぶりね、一年ぶりくらいかしら?

 フェアリアでお別れして以来、手紙でしか近況報告出来てないから。

 私がまだ独身のままだなんて知られたらやばいけど」


ニヤリとコハルに向けて笑い、


「良い事ミハルちゃん。

 絶対に喋っちゃだめだからね。今夜は何もしなかったし観なかった。

 唯、夜道に迷っていて私に会った・・・だけよ?」


言い含めて、自分に任せておけと胸を叩くのだった。


「うん・・・喋らないから・・・」


でも、良心の呵責からか。

コハルは暗い表情になって頷くだけだった。





______________





「と、言う訳でして。ルマ武官、お分かりいただけましたでしょうか?」


しどろもどろになるチアキ少佐に、ルマの眼が突き刺さる。


「ほほぉぅ?チアキ少佐。あなたがコハルを連れまわしていたと仰るのね?」


玄関口で、有志連合フェアリア軍制服を着たチアキ少佐に睨みを利かす。


「はははっ、そうです。懐かしさのあまり・・・申し訳ございません」


平謝りのチアキ少佐が、何度目かの謝罪を繰り返す。

その謝罪を受けても、ジト目で観ているだけだったルマだが。


「そう?じゃぁ・・・今日の処は赦してあげるわ。

 チアキが日の本に到着していたのは知ってたけど。

 まさかコハルにまでちょっかい出して来るとは思わなかったわ」


「いやぁ・・・あはははっ」


ジト目で観られ続けて、さしものチアキ少佐も苦笑いを返すのがやっとなのか。

自分の背後に隠したシキに、ルマの視線が向けられていた事にも動揺を隠せなかったのか。


「そこの男の子は?どうやら日の本人ではないみたいだけど?

 あなたがフェアリアから連れて来たの?チアキ・マーブル・フェアリア軍少佐殿?」


意味深な言葉で聞き咎めるルマに、


「そ、そうなんですよぉ武官。これには内密なる訳がございましてですね?」


引き攣った笑みを返して言い繕うチアキ少佐に。


「ほほぉう?武官にまで内密に事を運ぼうと?

 本国に打電して、その内密とやらを訊いても良いのかしらね?」


「ひゃぁあっ?!お辞め下さいっ、私の首が飛びますからぁっ!」


必死の懇願・・・なのか?言い繕う方法を間違えたのか。


「とっ、ともかくっ!この子は私が預かっておりますので。

 お子様をお届けいたしますから、どうか罰しないであげてください。

 今夜の責任は私が全て取りますので!」


チアキ少佐はそう言うと、コハルをルマの前に送出して。


「ごめんなさいね、私が遅くまで付き合わしたから。

 お母様もきっとご心配されていたでしょうからね」


自分が全て悪かったのだと言わんばかりに、コハルにまで頭を下げて来た。


「チアキお姉ちゃん・・・あの・・・」


気が咎めたコハルがチアキに謝ろうとしたが、片目を瞑って微笑むチアキ少佐に。


「・・・ありがとう・・・ございました」


母の元へ送ってくれた感謝と、事件を内密にしてくれた気心と。

それに何よりも感謝したかったのは。


「チアキ・・・私からもお礼を言うわ。

 コハルを連れ還してくれてありがとう・・・感謝するわ」


同じ思いだった。

親子喧嘩を仲裁してくれたチアキ少佐に、ルマが感謝の辞を贈る。


「チアキ少佐、島田ルマとして。

 この子の親として・・・あなたの行為に感謝します、ありがとう」


今の今迄、ジト目でチアキ少佐を観ていたルマだったが、本心は感謝に溢れていた。


チアキ少佐に背を押されたコハルがルマの前に来ると・・・


そっとルマが肩を抱いてくれた事に、涙が湧いてくる。


「お母さん・・・ごめん・・・ごめんなさい」


謝らずにはおられなかった。


「いいのよコハル。私がいけなかったのだから・・・」


肩に載せられた母の手を抱いて、コハルは泣いた。


「コハル・・・もういいの。謝らなくて良いのよ?」


「おかあさんっ!ごめんねっごめんねっ!」


耐え切れずに抱き付いた娘。

堪らなく愛おしく想える娘を抱きしめる母。


挿絵(By みてみん)



親子から後退ったチアキ少佐が、微笑んでいた。


「うん、これで良かったのよね。

 ラミをミハルちゃん警護に着けさせておいただけのことがあったという事ね」


ポツリと溢したチアキ少佐が、シキを伴って親子から離れて行く。

今晩コハルの前に現れたのは、偶然のことでは無かったのを匂わせて。

コハルとルマが諍いを起こした事も知っていたかのように。


「古の力を持つ娘達か・・・昔の私達のようですね、ミハル隊長」


同じ名前を持つ人を呼んで、親子を観ている。


・・・と。


「おばさん、親子って良いモノなんだね?」


母と子が抱擁する姿を観て、何かを感じた様な声で語り掛けるシキに。


((グリグリ))


「いたい・・・・・」


チアキ少佐の問答無用な両手拳骨捻りが炸裂して。


「おばさんって言ったらこれを喰らわすからね?」


三十路の独身者の笑みが少年に振り撒かれていた・・・





「要らないことを言うのなら、あなたにもグリグリ拳骨喰らわせるわよ?」



・・・・失礼しました(棒)


母娘の絆は固かった?!

お互いに謝る事がお互いの想いに繋がるのでした。


一方、現れたフェアリア少佐の目的とは?

マリアとコハルに危機がやってきます。

いよいよ本章の闇が蠢き出すのです!


次回 蠢く闇 Act1

君は命じられたことに背けないのか?ああ、君の心は今どこに?


ミハル「私が目覚めるまでの間に・・・何があったの?何があなたを追い詰めたの?!」

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