チェンジ!魔砲の少女 Act6
闇の少年シキVS光と闇を抱く少女コハル
対決が始る。
魔砲少女として目覚めたコハルが唱えるのは?!
ここで頂き物のご紹介を!
成宮りん様。
ありがとうございますーっ!マモルん・・・若いな。
この頃が一番輝いてたなぁ・・・・
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「成宮りん」様
闇の少年は眩き光に眼を逸らした。
突然現れた光に眼が眩んだ。
そう。
前に見た同じ光だと感じながら。
「シャイニングゥー・チェーンジィーッ!」
コハルの声が闇に轟いた。
魔砲の少女の叫びが耳を打った。
蒼き光の珠がコハルを包み隠し、地上へと降りる。
光に包まれている魔砲少女が、姿を替える。
蒼き髪、碧い双眸。
白の魔法衣、紅いリボン・・・
光が薄れると、魔法少女コハルの姿が見えて来る。
シュンシュンと光のベールが消えて、闇の中に現れ出でたのは・・・
「蒼き輝の魔鋼コハル。
月の女神様に代わって闇を討ち、闇を祓ってやるんだから!
覚悟しちゃってよね!」
びしっとシキに向けて指差しながら、決まり文句を言い放った魔砲少女のコハル。
「でたな、コハル!そうじゃなきゃ、そうこなくっちゃ!」
いつかみたいにはいかないぞ、と叫ぼうとしたシキに。
「君、アタシの声が、想いが届くのなら。
闇の中から出て来てみない?
アタシと本当のお友達になってくれないかな?」
指し示した指を下げて頼んで来る。
「もし、君が本当に友達が欲しいのなら、アタシがなるから。
だから、闇を捨ててくれないかな。陽の当たる場所に出て来てみない?」
闘うだけが闇を討つ事ではない。
闘っても闇が滅ぶ訳でもない。
「だって、君がアタシに教えてくれたんだよ?
君がアタシの闇を祓ってくれたんだよ?
君にも闇を祓えるんだから、友達にだってなれるんだから!」
降ろしていた手を差し出して、求めるように開いた。
黒の魔鋼である少年シキに。
闇の者である少年に、光を差し出す様にして。
「うっ、うるさい!僕はコハルが来てくれれば良いんだ!
コハルを手に出来れば善いんだ!コハルを僕だけのモノに出来れば満足なんだ!」
光に抗う闇のよう。
闇は光に屈せんと、抗う様に言い返した。
「独り占めは物に対して言う言葉。
想いや考えを持つ者に対して放つのは、己が思い上がり。
力ある者がか弱き存在に誇示する欲の顕れ。
君は自分が何者かが解ってはいない。
それに、この子を連れ去ろうとしているのはコントロールされているだけなの。
悪魔たる者に・・・私の敵に・・・」
コハルの声が女神に成り代わっていた。
変身した事に因り、魔法石の中からの声がコハルを介して手出せるようになっていた。
「理の女神として君に教えるわ。
あなたに掴まれたから解ったの、あなたは闇の者なんかじゃない。
元々は人。
あなたもコハルと同じ、人間なのよ死鬼君!」
女神の言葉が闇の少年にかけられる。
理を求める女神の声が、解き放つ為にかけられる。
「馬鹿をいうな!僕は生まれながらの闇のプリンスだ!
誰が女神なんかの言う事を信じるもんか!」
抗う闇の少年を観たコハルが、女神の言葉を返す。
「じゃあ、君には闇で育った記憶があるの?
突然闇の中で目覚めたんでしょう?気が付いたら闇にいたのでしょう?
じゃあ、君の記憶には不自然な事はないのかしら。
造り物の記憶じゃ、齟齬を来し始めてるんじゃないの?
親に抱かれていた記憶が微かに残っているんじゃないの?」
コハルが母と喧嘩したと言った時に、何も言い返せなかった。
親の事を知らなければ、一笑に付しただけだったろうに。
そう、シキの記憶には母という存在が残されていた。
母親というモノを理解出来ていたのだ。
闇に産まれた本物の悪魔なら、母親などというモノがどんな存在なのか分かろう筈がないのだから。
「バ・・・馬鹿な。僕には・・・解ってしまっていた。
それが僕が人であった証なのだと?!」
「ええ、そうよシキ君。
君には残されているの、記憶を操作される前の自分が。
君にもお母さんが居て、友達がいた・・・だから寂しいのよ?
だから求めたいの・・・人だった時の温もりを。
人であるが故に、闇に染まり切れず。人の子であるが故に、愛を求めるの」
もう、聞くまでもない。
自分は、女神の声が教えるように人であったのだと。
いいや、今も・・・人だから。人なのだから・・・
少年シキは闇の死鬼から抜け出そうとする。
理を求める女神の前で。
「僕は・・・人。
僕には親も友達も居るんだね?」
「そう。闇を捨てさえすれば・・・見つけられるから」
周りを囲んでいた闇の気配が薄れ始める。
「さぁ、シキ君。もう直ぐ君は人の子に戻れる。
きっと元の自分を取り戻せるからね、女神が導いてあげるから」
差し出される魔砲少女の手を目指して、シキは自分を掴もうとした。
女神の力に頼ろうとして、真実の自分を取り戻そうと願いを込めて。
「!!危ないっ!」
コハルの絶叫が、再び拡がり始めた闇に響いた。
コハルと女神の叫びが重なった。
シキに。
闇を捨て去ろうとする少年に向けられた叫びは引き裂かれてしまった。
黒の魔鋼たる少年が来ていたマントが裂け跳んだ。
コハルの手を掴もうとしていた少年が倒れ込む。
「シキ君?!」
コハルと宿る女神の呼びかけに、倒れ込む少年が微笑んだ。
「しっかりするのよ君!」
宿る女神はコハルの口で呼びかける。
まだ、精神世界となってはいないから。
まだ、女神に成り代われなかったから。
「コハルちゃん!この子に回復呪文をかけたいの。
教える通りに詠唱して頂戴、今直ぐにっ!」
倒れ込んで来た少年の傷を観た。
背中に大きな裂傷を受け、相当のダメージが与えられたと判らせる。
女神が教える通り、コハルは呪文を呟き始めた。
「コハル・・・ありがとう・・・」
半ば眼を閉じたシキが感謝を告げて来る。
それはもう、諦めている事を教えていた。
「黙ってて!シキ君、アタシが治してあげるから。
そんな弱気な声を出さないで!」
必死に回復呪文を唱える傍ら、シキの手を取ると。
「アタシだって感謝してるんだよ?
もしシキ君に逢えなかったら、本当に闇に堕ちていたかもしれないんだから」
ぎゅっとシキの手を掴み、同じなんだと教えたかった。
「うん、同じなんだよね僕達は。
だったら・・・僕も諦めないよ」
コハルは伝わった想いに気付いた。
願いを・・・願う希望を・・・諦めないと。
「そう!諦めちゃ駄目なんだよ。諦めちゃったらそこで何もかもが終わっちゃうんだから」
まるで自分に言い聞かせるみたいに、コハルは答えた。
「だから、シキ君はアタシが治す。
闇に傷付けられたってアタシが治すから。
だって、シキ君とアタシはお友達なんだもん!」
「僕とコハルが・・・友達?」
眼を見開いてシキが問う。
「そう!たった今から。アタシはシキ君のお友達だから。
人に戻ったシキ君は、島田美晴のお友達になったんだから!」
掴んだ手に力が籠る。
掴んだ友の手を異能が繋ぐ。
「だから・・・お友達をこんな目に併せた闇を赦しはしない。
美晴は大切な友達を護ってみせるんだから!」
回復呪文を唱え終えたコハルが闇を睨んで立ち上がる。
「シキ君を傷付けたのは誰?!
アタシのお友達に向けて刃を放ったのはどいつなのっ?!」
赤黒い結界が出来上がりつつあった。
闇の結界が包み込んで来た。
しかし・・・
<コハルちゃん!ここは精神世界じゃないわ。
奴等はコハルちゃんを狙ってるの、私の力を出させなくして。
このままでは奴等の思う壺に填められちゃう。シキ君を置いて脱出しなさい>
女神の声が魔法石から忠告して来る。
闇の結界だが、精神世界が開かれた訳では無いと教えて来る。
<この場所ではコハルちゃんを護れない。
この結界の中では姿を現せないの。
出来るのは話す事だけ、戦闘に介入する事も出来ない。
謂わば観てるだけしか出来ないの!だから逃げて!>
コハルが戦いに不慣れである事と、魔砲力があっという間になくなる恐れがあった。
それよりも、女神が最も恐れる事は。
<コハルちゃんは闇に掴まってはいけないのよ。
ルマやマモル達が恐れているように、女神でも怖いの。
コハルちゃんが闇に飲み込まれてしまえば、世界は滅びてしまうのよ!>
女神の声に、コハルはあの本の中身を思い出す。
女神が蘇ったら、悪魔も蘇るのだと書いてあったから。
でも、蘇ったのは女神。
自分が闇に呑まれても悪魔には関係が無いと思っていた。
<コハル・・・いいえミハル。
今から言う事を覚えておきなさい。
あなたは絶対に闇に捕えられてはいけない。
大魔王の復活を目論む者達に、利用されてはならないの。
どんな犠牲を払おうが、決して悪魔の機械を目覚めさせてはならないのよ!>
蒼く靡く髪の付け根、うなじに刻まれてある紋章が襟の袂に垣間見れた。
コハルのうなじに描かれたのは、闇の王たる証。
<<神の雷槍>>人々を神罰に因り殲滅する武器たる紋章であった。
「女神様、嫌です。
シキ君も一緒なら良いですけど、アタシ一人だけで逃げるなんて出来っこない!」
シキを横たえたコハルが立ち上がる。
<待つのよコハルちゃん、早まらないで!>
魔法石が停めるのだが。
「アタシが護らないと誰が護るんですか、シキ君を。
大切なお友達を・・・どうして置いていけるんですか?!」
白い魔法衣がコハルの意志に応じる。
「アタシに魔砲を授けてくれたのはこんな時の為じゃなかったの?
女神様に頼ってばかりじゃ、自分の身だって護れない。
いつまでも逃げてばかりじゃ前に進めないんだから!」
魔法で肩に、紅い攻撃魔法ジェネレーターが現れる。
紅く輝く丸い珠、それに籠められたのは。
<コッ、コハルちゃん?!この力は?!>
女神が戸惑う。
現れ出た攻撃力に、異能を教えられて。
<まさか・・・あなたは?!>
女神は思い出した。
自分がケラウノスと闘っていた日々の事を。
<コハル・・・いいえミハルちゃんは。
あの時の私と同じ、女神達と闘っていた私と同じ魔砲力を?>
紅いジェネレーターが発動した。
若き魔砲少女によって。
まだ10歳にもならない少女が、
歴戦の魔砲使いを超える力を持ち合わせているなど、
どこの悪魔でも考えは及ばないだろう。
もし放たれたとすれば、たちどころに消し去られてしまうだろう。
<コ、コハルちゃんっ、辞めるのよ!それは此処で放つ魔砲じゃないわ!>
女神の叫びは、魔砲力を最大限迄高めたコハルには届いていなかった・・・・
真っ赤に燃ぉーえたぁーっ。
いや、なに。
コハルの力は闇を祓う。
女神が望むのは光を翳す者。
今コハルに因って少年が目覚める!
次回 チェンジ!魔砲の少女 Act7
君は助けねばならない!身を捨ててまで庇ってくれた人を!
ミハル「女神の力だけじゃなくって?!
コハルちゃんっあなたには何が秘められているの?!」




