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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
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チェンジ!魔砲の少女 Act5

飛び出したコハルは公園のブランコに座っていた。

今迄一度だって母親に反抗したことが無かったというのに。


自分だけが悪いのじゃないんだと想いながら・・・

独り、ポツンとうな垂れてブランコに座っていた。

声を掛けられるまで・・・


「遊ぶって?ブランコにでも乗るの?」


自分の横が空いているから、そう訊いた。


「あ、それも良いかもね?

 でもさぁ、僕が遊ぶって言えば・・・こういう風に遊ぶんだよ」


自分が誰かを見ようともしないコハルへ指先を伸ばす。


「ごめんなさい、アタシ・・・遊ぶって気分じゃないの」


ぼそぼそと呟くコハルに、指先が停まる。


「なんだよ?この間とは別人みたいじゃないか!

 何があったんだよ?どうしてこっちを見ないんだよ?」


これからこの間の復讐戦を挑もうとしているのは、黒の魔鋼シキだったのだが・・・


「俯いてばかりいないで、こっちを見たらどうなんだよ?」


シキはこの間とは別人に観える程、落ち込んでいるコハルに戸惑った。

折角のチャンスだというのに、邪魔者も姿を見せないのに。


「おいっ!コハルっこっちを見ろってば!」


目の前まで近寄り、俯いた先に魔砲の靴をちらつかせる。


「あ・・・もしかして。この間の子?」


やっと気が付いたのか。

コハルが顔を上げて見せてくると、シキの方が驚いてしまう。


「おい・・・なぜ泣いてるんだよ?」


コハルの泣き顔に動揺してしまったシキが、


「何があって泣いてるんだよ?そんな顔されたら戦えなくなるだろ?」


復讐戦をするつもりで声を掛けたというのに、闘う気が萎えてしまう。


「うん、ちょっと・・・悲しくて」


「悲しいって?訳を話せよ?」


少年に訊かれたコハルは、誰かに聴いて貰いたかったのか心の内を溢してしまう。


「お母さんと喧嘩しちゃって家を飛び出してきたの。

 アタシに怒るから・・・アタシもカッと来ちゃって・・・此処まで逃げて来ちゃったの」


ぽつりぽつりと話すコハル。

話す相手が闇の者だと解っているのか。

もし、コハルが普通の状態なら、たちどころに闘いに発展したであろう。


もし、シキがイキナリ攻撃して来れば。

蒼き魔法石に宿る女神ミハルが防いでいただろう。


魔法石は二人の様子を観ているのだろうか。

女神は何を思って手出ししてこないというのか。


辺りを覆っていた闇が消えていた。

闇の魔法衣を着ているシキが、何も答えず横のブランコに腰かける。


「そっか、コハルは家出して来たんだ?」


「うん、そうなの・・・」


問われたコハルが頷く。


「それで?これからどうするつもりなんだ?」


「わかんないよ、そんなの・・・」


訊かれるコハルが返答に困る。

自分がこれからどうすれば良いのかなんて、答えようが無かったから。

シキは家に帰るのかを問いかけたつもりだったが、

コハルはこれから何の為に魔砲を使うのかが、判らないと答えたつもりだった。


「じゃぁさ、僕と一緒に来るかい?僕の仲間達が待つ所にさ?」


シキは元々の目的であるコハル誘拐を目指したのか?


「そこだったら僕が一緒に居てあげれるし、寂しくなんかないんだよ?

 いつまでも遊んでいられるんだよ、コハルが望むのなら」


誘拐とは思っていないようだ。

唯、遊び友達が欲しいだけ、自分と遊んでくれる人を求めているだけ。


「ねぇ、君の仲間って友達じゃないの?

 アタシをそこまで連れて行ったら紹介してくれるんだよね?」


コハルはシキが言う仲間について訊ねてくる。


「友達?なんだよそれ。

 仲間って言えば下僕しもべに決まってるじゃないか。

 遊び相手にもならないけど、命じた事は何でもする・・・いや、させれば良いんだ」


友達と訊かれたシキが嘲笑う様に答える。


「だから、コハルも仲間に命じればいいんだよ。

 僕と同じ位の力があるんだから、仲間達は言う事を聴いてくれるさ。

 仲間達はコハルに傅く筈だからね!」


仲間というより、力を誇示して言う事を聴かせているだけ。

友達というより、下僕と呼ぶのが相応しいと感じられる。


「そうなんだ、君の仲間って言う人達は友達じゃないんだね。

 そんな場所で遊ぶって、君と二人だけでなの?」


闇の世界で二人だけで遊ぶ。

仲間と言っても周りに居るのは全て闇の者だけ。


「そうさ、これまで僕一人だった所にコハルが来れば。

 二人で遊べるんだよ、それにコハルの魔法石に宿ってる女神も一緒にね?」


闇に連れ込んで、シキは何をしようとしているのか。


「今日ここに来たのはこの間の復讐を果たそうと思ってたんだけど。

 コハルが落ち込んでいたから辞めるよ。

 そんな悲しそうにされちゃ、闘う気もおきないから。

 だから、僕と一緒に行かないかい?僕の仲間達の元へ」


そう。

初めて会った時も、連れ去ろうと思えば連れ去れたのに。

コハルの身体を使って遊んでいた。

悪意はないというか、無邪気というか。

シキは闇の中で独りなのが嫌なだけ。遊んでくれる人を求めているだけ。


「でも、君と一緒に行ったら、マリアには逢えなくなっちゃうんでしょ?」


帰れなくなるのかと、問い直すコハルにシキが答えたのは。


「逢えるさ、遊び相手としてね。

 コハルが魔砲少女に会いたいと願うのなら、闇の結界に連れ込んだらいいんだよ。

 それに遊ぶのに飽きたら、殺しちゃえば良いんだからね?」


「マリアを?アタシが?・・・殺す?!」


コハルの眼が見開かれる。


「そうそう!飽きたらお払い箱にすれば良いんだから。

 邪魔なら消すだろ、ゴミは。自分に必要で無くなればゴミなんだよ」


コハルが黙って聴いているので調子に乗ったシキが嘲て嗤う。


「ゴミは捨てるモノだろ?廃棄するだろ?

 人間も同じだよ、必要なくなったらゴミなんだよ。

 人間だったら始末・・・いや、抹殺すればいいんだよ」


コハルに向けてにんげんを見下す言葉を吐く。

そう、シキは闇の少年。人とは違う者。


「・・・ゴミじゃないよ」


俯いたコハルが呟き返した。


「ゴミなんかじゃない!人は誰かに始末されていいような存在じゃない!」


顔を上げてシキを睨みつける。


「君の考えは自分勝手過ぎる。

 自分の思い通りにいかなかったら、他の人はどうなっても良いの?

 自分以外の考えを受け入れられないのと同じだよ?」


立ち上がったコハルがシキに詰め寄ると。


「もし君が、自分の思い通りにいく事だけを望むのなら。

 アタシは一緒には行かないから。

 だって、もしも喧嘩しちゃったら二度と仲直り出来なさそうだもん。

 自分の思い通りにいかなかったら始末しようとするんでしょ?

 そんな事になったら嫌だから、喧嘩なんてしたくないから・・・」


驚くシキに詰め寄っていたコハルがそこで話を区切り、睨んだ顔を緩めると。


「君にこんな事言えるようなアタシじゃないけどね。

 アタシだってお母さんと喧嘩して飛び出してきたんだから。

 やっと分かったよ、君のおかげで。

 アタシも自分勝手過ぎたんだなぁって、思えたんだ」


にっこりと微笑んだコハルが右手をシキに差し出す。


「ありがとう、教えてくれて。

 だから君も我が儘は辞めようよ。

 友達が欲しいのならアタシがなるよ?

 だから悪い事はもうしないでね?」


友達となる事を拒まない。

闇の者と友になるのを求めている。


シキは眼を疑った。

自分を狙う闇の者に、友になると言って来たのだから。


「お前・・・何考えてんだ?

 言っただろう、コハルを遊び友達にするんだって!」


思わずコハルの手を掴んで言い除ける。

握手としてではなく、その手を掴んで離そうとしないシキが、


「このまま闇の中に連れ込んだって良いんだからな?」


邪魔する存在は周りには居ない。

闇の者達も様子を窺っているだけなのか、手出しをかけていない。


「コハル!僕の言う事を聴かないのなら、闇の世界に連れ込んであげるよ!」


足元から魔法陣サークルが現れ、黒いリングに羽根が羽ばたく。

右手を掴まれたコハルが抗いもせずシキを見詰めて、


「駄目だよ、行けないよ。アタシは帰らなきゃいけないんだよ。

 コハルが我が儘言い過ぎたって、お母さんに謝らなきゃいけないの」


「謝る?コハルは普通の人間如きに謝るというのかい?

 人間なんて僕達にとっては唯の道具じゃないか!

 遊びに使う道具じゃないのか?!」


闇の結界を再び造りだしたシキが、掴んだ手を放さずに飛び上がり始める。

闇の中にコハルを連れ込もうとして。

だが、シキが言った最期の言葉にコハルが首を振った。


「道具なんかじゃないよ。

 みんな、皆が生きているんだもん。

 みんなそれぞれに考えも想いも持っているんだから。

 絶対に道具なんかじゃないんだから!」


シキの手が緩む。


「もし、君がどうしてもアタシを連れて行くというのなら。

 黙って連れ去られる訳にはいかないよ?

 君が考え方を変えてくれないのなら、アタシは抗うよ?」


空中に昇り出したシキに言い放つコハル。


「君が放してくれないのなら、変身するしかないんだよ?

 闘わなきゃいけなくなっちゃうんだよ?」


「闘う?このまま闇に入れば。もう僕のモノになるしかないんだよ!」


見上げて来るコハルに、シキが手を掴み直そうとした・・・時。


「ごめん、アタシは帰りたいから・・・」


コハルの手がシキの手を振り払った。


「待てよコハル!僕のものになるんだ!」


振り払われた手を呆然と観てから、コハルに向けて手を指し伸ばした。


「さっきはありがとう教えてくれて。

 だから、今度はアタシが君に教えてあげる。

 君も・・・本当は友達が欲しいだけなんだって!」


コハルの右手が下げていたネックレスに伸びる。


地面目掛けて飛び降りたコハルの身体が、蒼白い閃光に包まれた。


挿絵(By みてみん)

 


シキの手が緩んだ。

コハルは飛び降りる・・・闇の手から抜け出すように。


コハルの想いが魔法石に届く時・・・


次回 チェンジ!魔砲の少女 Act6

君は心の闇から解き放たれた!救ってくれた男の子にも光を与えたくて!


ミハル「いい子ねコハルちゃんは。さぁ、今度はあなたが救ってあげなさい!」

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