チェンジ!魔砲の少女 Act1
いよいよ、このお話からですね。
<<魔砲少女>>として覚醒するようになれるのは・・・
そして、いよいよ変身Gifの出番が近付きます・・・
再び世界に蘇った魔法・・・
克て審判の機械に因って人類に与えられた魔法。
人類は戦争を放棄出来るかを問いかけられた。
しかし、人は愚かにも魔法を戦争の道具に使ってしまった。
幸福を求める力とはせず、不幸を撒き散らす武器に求めてしまった。
審判の機械は、己が手で不幸を撒き散らす人類に鉄槌を下す。
悪魔の様に、人々を駆逐する事に決したのだ。
人類は滅び去るだけの運命しか残されていないかに見えた。
世界を支配する絶対者・・・審判の機械に歯向かえるのは居ないかと思われた。
魔法を与えられた人類は次々に戦う機械を造った。
審判を司る者に対抗しようと試みて。
神の如く強力な敵に、打ち勝つ術を手に入れんが為に。
圧倒的な戦闘力の、殲滅機械に立ち向かう者。
歯向かう刃として、存在する騎士。
魔法の異能を鋼の弾と化し、神をも打ち砕く者・・・
魔砲を放ち、鋼の刃を持つ騎士。
人は畏怖を込めて呼んだ。
・・・魔鋼騎士と・・・
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「と、云うのが。あなた達が産まれる前に起きたセカンド・ブレイクなの。
つまり、神々との闘いと呼ばれたハルマゲドンだったと言う訳」
太井先生が歴史を掻い摘んで教える。
「今現在は魔法は存在していないの。
セカンド・ブレイクに因って、今迄あった魔法が消されたの。
空を覆っていた電解層もその時以来無くなったのよ」
黒板にチョークで、魔法の文字にバッテンを付けた太井先生が。
「世界に平和が訪れたのも、ハルマゲドンを闘い抜かれた先輩たちのおかげだと感謝する事!」
教科書を閉じて聞き入っている生徒達に話し終えた。
と、同時に終了のチャイムが鳴り始める。
「じゃあ、今日はこれまで。
皆、宿題を忘れないようにね・・・それでは今日はこれでお終い」
当番の子が起立、礼の号令を手短にかけて一日の授業が終わりを告げた。
帰り支度を整えるコハルに、マリアがにこやかに笑い掛ける。
「すまんかったなぁ・・・コハル」
「ぷんすか!」
笑い掛けて謝るマリアに、コハルが剥れ続けている理由は?
「帰る時に渡したら良かったなぁ・・・まぁ、そんなに怒らんといてよ?」
「ぷんすか!」
激オコぷんぷん丸のコハルがまだ怒っている。
「ウチも着いて行くさかいに・・・職員室まで」
「ぷん・・・ホント?!」
眉が上がった。
怒りモードを解いたコハルが、マリアに訊き直すと。
「そりゃそうやろ?あのお菓子の缶詰はウチがコハルに持って来たもんやし。
朝一番に渡してもうたウチの落ち度でもあるんやから・・・でも・・・」
「でも?」
マリアはフェアリア土産をコハルに朝一番で手渡したという。
そこに何の落ち度があったというのか?
「でもなぁ、まさか・・・コハルが皆の前で小躍りして喜んだ挙句。
ひっくり返って中身をぶちまけるなんて・・・思わんかった・・・W]
「・・・それは。イワナイヤクソクデショ・・・Orz」
どうやら。
マリアに落ち度はなさそうな気がするのだが・・・
「それにしても、みんな驚いていたなぁ。
フェアリアのお菓子に、目を丸くしてたよなぁ」
「ホント、日の本じゃぁ見かけられないモノばかりだもんね。
欲しがってたよね、みんな・・・あげればよかったかなぁ」
マリアが折角持って来てくれたお土産だから。
あげられない・・・建前では。
「コハル・・・本当は独り占めしたかったんだろ?ウチにはそう見えたんやけど?」
「うっ?!ソンナコトナイヨ」
カチコチの声で答えて来るコハルに、
「ええから。ほな、職員室まで返して貰いに行こか?」
リュックを背負ったマリアが促す。
「うん!返して貰ったら、二人で食べようね?!」
「・・・やっぱりか・・・」
お菓子が大好きなコハルに、苦笑いを浮かべるマリア。
朝一番にお土産と称して手渡した時の顔を思い出して。
ー 喜んでくれた・・・良かった。選択は間違ぉうてへんかった
フェアリアから届いていた物産の中で、コハルが喜んでくれそうな物。
数ある中で、懐かしい故郷を思い出させる物と云えば。
ー 絵葉書なんかも良かったけど。
懐かしいと言うよりはホームシックになりそうやから、ウチの方が・・・
杜と山・・・そしてフェアリア城が映る絵葉書。
住み慣れた生まれ故郷に想いを馳せない筈が無い。
コハルに見せれば、少しセンチメンタルになるだろうと思ったので辞めた。
「ねぇねぇマリア。ちょっと訊きたい話があるんだよ」
不意にコハルが訊いてきた。
「なんや?」
気安く訊き直したマリアに向けて。
「あのね、フェアリアの事なんだけど。
送られて来た中に、お手紙とか無かった?
その・・・お友達とかの?」
「ウチ宛ての?それともコハルの御家族宛の?」
郵便物も確かにたくさん届いていた。
でも、殆どが公使館宛てであり、私郵便物は殆ど見受けられなかった。
「せやなぁ、無かったと思うで?それがどないかしたんか?」
「えっ?!ううん・・・なにもないよ」
無いと答えられたコハルが急に元気を落としたように観えた。
何もないとは答えて来たが、その表情を観れば訳が知りたくなる。
「誰かから送られてくると思ってるんやな?
誰からの手紙を待っていたんや・・・友達か?」
聞き咎められたコハルが首を振る。
「違う?じゃあ、誰からの手紙を待ってるんや?」
再度、コハルが待っている相手を訊いた。
俯き加減になっているコハルの口から、もごもごと小声が聞こえた。
「?なんやて、よう聴こえへんかった」
コハルの口元へ耳を寄せ、聞き取ろうとしたが。
「マリア、今のは魔法の石が言っていた人なんだよ?」
急に顔を上げて、コハルが答えた。
「せやから。誰やねんってば?!」
「ふふぅーん!教えなぁーい!」
コハルは、だっと一足駆けて先に立つと。
「きっと、フェアリアに想いを寄せてるんだよ。
だってこの魔法の石はフェアリアの御姫様から頂いたんだもん!
元の持ち主からの手紙に触れたかったんじゃないのぉ?」
えっへんと胸を逸らして指差して来る。
「なるほど・・・や、ないわ?!
どういう意味やねんて?教えんかいなコハル!」
置いてけ堀を喰らったマリアが訊いても、コハルは知らん顔で走って笑うだけだった。
胸元の蒼き魔法石に手を充てて・・・
ー 帰って来れた・・・とうとう。
だけど、帰って来れたのには訳がある。
本当は、帰って来ちゃ駄目だったのに・・・
精神世界の中で、ミハルは想い人の姿を夢見ていた。
永い時を一人で耐え抜いてきた。
永遠を与えられてしまったその時から・・・
ー 私・・・望んじゃいけなかったのに。
あなたの元へ帰れるように・・・残してしまったの。
望みを果たせるようにって・・・残しちゃったんだよ。
もう一度あなたの元に帰れる時がくるようにって、この石を。
魔法が無くなる世界に・・・魔法の石を。
矛盾する力を、あなたに渡してしまったの・・・リーン
女神は最期の瞬間、願いを託した。
滅び去る肉体から魂が抜き出た時、同じく魂だけとなっていた想い人を留まらせる為に。
本当は二度と帰れない筈だった。
本当に世界が変わるのなら、消え去るべきだった。
悪魔の機械と共に、女神も消えるべきだった。
ー でも。私は過ちを犯した。
帰りたいと思う気持ちに負けてしまった。
リーンに逢いたいと願う気持ちに嘘を吐けなかった。
目印として託したこの石の存在が、世界から魔法を消し切れなかった。
審判の光が世界を覆った時、魔法の存在を消す筈だった。
だが、審判を下した瞬間に、女神は願いを込めた石を贈っていた。
自らが帰る拠り処として、魔法の力を。女神の想いを。
ー 私が想いを託してしまったから。
希望を残したかったから・・・だけど。
それが間違いだったと判ったの、1000年間の時を経た今は。
精神世界の中で、女神が悲しそうに呟く。
ー 世界に残してしまった魔法に因って、数多の人が不幸になった。
理の女神になった私が観て来た事・・・人は闇を手放さない。
人は希望を歪め、輝をも闇に染め得ると知った。
欲望、嫉み恨み・・・人自身が持つ闇が、悪魔を呼び覚ますのだとも。
理を司るべき女神が悔いた。
ー 皆、闇の存在に怯える。
皆、光に希望を託そうとする。
だけど、魔法を手にした途端に変わってしまう。
自分の欲を満たす為には、魔法までも凶器と化して。
魔法を人を殺める武器に使い、闇を拡散した・・・
闇の前では、光などちっぽけな存在でしかなかった・・・
悠久の時を越えて来た女神は、一体何を見て来たというのだろう。
ー 今だから言える。
再び闇が現れたのなら、私は戻らねばならない。
私の手で犯した間違いを正す為に。
私自身の罪を償う為に、私が望んだ未来の為にも・・・
コハルの胸に光るネックレス。
フェアリア皇女として蘇ったリーンが持っていた蒼き魔法石。
彼女が何故、コハルに贈ったのか。
なぜ、リーンの手の元で目覚めず、コハルに因って目覚めさせられたのか。
そしてなぜ悪魔の存在が目覚め、闇を振り撒こうとしているのか。
ー 判ってるの。
私はこの時の為に戻って来たのだと。
もう一度この手で掴む為に戻って来たの・・・理を。
それがあの子と私の運命なのだから・・・
世界を紫水晶が変えた。
光が世界を変えた時、女神も変わった。
手にしたのは永遠。
与えられたのは新たなる運命。
始まりの時まで飛ばされ、終わりの時まで見守り続けた。
そう・・・本当の女神として。
現実世界に起きる事象には手を出す事が叶わず。
戦えるのは精神世界でだけ。
抗えるのは宿り主が求める時だけ。
ー 私は女神。
1000年の時を旅して来た、理を求める者。
今、あなたはなにを求めているの?
今、あなたには魔鋼が必要だというの?
ミハルは変わっていた・・・
過去から1000年間・・・
果て無き旅を彷徨い続けて来た娘の姿と目が。
最期は物語の大元少女が出ました!
一体彼女はなぜ女神となったのか?
どうしてコハルを見守り続けようとするのか?
その訳が分かるようになるのは、コハルがもう少し大きくなってから・・・
次回 チェンジ!魔砲の少女 Act2
闇がコハルに忍び寄る。月夜が翳る時・・・現れたのは?!
ミハル「ああ、ここが精神世界なら。コハルちゃんをこんな目に遭わさずとも済んだのに」




