学園編 エピローグ
彼女を待つのは一人だけではありませんでした。
少女は約束と言う名の絆を求めたのです。
これにて完結です。
お読み下された皆様に感謝と御礼を・・・
月の女神ことルナリィ―ン姫が憂いていた通りとなった。
あの娘はいずれそうなる運命だったのだと悲しく、やるせなく想うのでした。
せめて、違う運命になってくれなかったのかと。
ルナリィ―ン姫の中で、審判を司る女神は未だに覚醒出来ない自分の不甲斐無さを嘆いていたのです。
日ノ本から届けられた一報を受け取った今は、尚更に強く感じていたのです。
城のバルコニーから見上げる月に、ルナリィ―ン姫の瞳を通して見上げるのは。
「ねぇ月の女神。あなたはあの娘をどうしようとしているの?」
自問ではありません。
月に女神が存在しているかのように語り掛けていたのです。
「あなた達が帰還を果したいのなら、あの娘が必要なのではなかったの?」
覚えているのはあの日の事。
再び目覚める前、世界に混乱と闘いが溢れていた・・・最期の日。
「あの娘はこんな世界を希求したのではなくてよ?」
未だに人類から争いが絶えることはありませんでした。
未だにどこかの国では争いが、人類同士のいがみ合いが続けられていたからです。
憂うのは嘗ての審判の女神。
再び審判の日が訪れてしまわないかと・・・懼れても居たのです。
「この世界のどこかで、新たな審判の女神が産まれようとしているのかもしれない。
私ではなく、人の世界を忌み嫌う者が審判を下してしまわなければ良いけど」
ルナリィ―ン姫に宿る女神は憂うのです。
その時がいつ来るのかと・・・再び地上が阿鼻叫喚に包まれてしまわないかと。
「お願いよミハル。
あなただけは邪悪に染まらないで。
あなただけが私の願いを遂げさせてくれるの・・・最期の希望なのよ?」
ルナリィ―ン姫を通してこぼれた声は、遠く離れた彼の地までは届こう筈も無かったのです。
届けられたにしても最早、遅すぎたのかもしれませんでしたが。
そう・・・遅かったのです。
女神が・・・審判の女神が目覚めているのを知らせるのが。
もっと早く・・・せめて彼女に不幸が訪れてしまう前に知らていたら・・・
心臓が停まった。
脈が停められてしまった。
もう間も無く肝心の脳も停まる・・・
そのタイミングで彼が手を差し出したのです。
闇の貴公子だった・・・そして堕神を宿せた彼が。
命の尊さを学んだ、魔鋼の少年シキ君が美晴さんに命を分け与えたのです。
泣き叫ぶノーラさんを押し退け、どうする事も出来ずにいたローラ君の前で。
「美晴・・・俺が君を呼び戻すから。
俺の命を別けるから・・・息を吹き返すんだ!」
冷たくなりつつあった美晴さんの唇に自分を重ねて。
そして・・・魔鋼の異能を注ぎ込んだのです。
堕神から授かった、人の命を与えたのです。
自分を闇の存在から解放する為に授かった・・・たった一つの命を。
その行為は、再び闇の存在へと堕ちるのを意味していたのです。
もしも、美晴さんの息が吹き返さなかったら、シキ君は命を完全に分け与えていたでしょう。
神から授かった掛け買いの無い命の灯を分け与えてしまう。
全ての火を与えてしまう直前・・・
ドクン・・・・・ドクン・・・
美晴さんの鼓動が・・・
身体に命が・・・妖しく燃える火が。
「すぅッ・・・・・はぁ・・・」
唇を通して、シキ君の息を吸う音が。
ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・
与えられた命の灯を分け与えたシキ君が身体を起こします。
「早く救急車を呼ぶんだ!一刻も早く治療にかかるように言うんだ!」
ノーラさんとローラさんに命じる声は、敢然としていました。
その声には美晴さんを助けたい・・・いいえ、光の神子を救わねばという決意が漲っています。
「はい!もう直ぐ到着しますから!」
サイレンが近付いて来ていました。
倒れた通行人達の元へと。
間も無く奇跡は完結する筈でした。
命を差し与えた少年によって・・・・
ですが、シキ君の願いは思わぬ者を生み出してしまう事にもなってしまうのでした。
昼間は美晴。
月夜は憑神のモノ。
それが生き返った少女への呪い。
一つの躰の中に二つの魂が居るのです。
審判の女神が復活を願い啓示した通り。
聖なる異能と邪なる異能。
光と闇を抱く者・・・ミハル。
新たな宿命を受けて・・・再び。
彼女の願いは重なり合いました。
光の神子はマリアさんとの邂逅を。
闇の女神は審判の女神に。
唯一つ・・・願いは想い人の元へと・・・フェアリアへと。
月夜の晩に。
果されぬ想いを抱いた娘が見上げていました。
満月の中に浮かぶ女神を。
月の女神・・・それはまだ本当の姿を見せてはいませんでした。
ルナリィ―ン・・・彼女は待っていたのです。
光に満ちた未来を。
希望に輝く未来を・・・
「私は光を求める女神。
彼女が闇に堕ちるのなら、私は阻まねばならない。
月の女神は相対する輝を欲する、それは陽の光なのよミハル」
月夜に女神が願うのは・・・輝。
End
ここからは座談会です。
白ニャン 「うニャぁ・・・」
蒼ニャン 「何だかニャ~」
夕日の中で縁側に腰かけた二匹が溢してますが?
白ニャン 「歴史は変わらなかったってことニャ?」
蒼ニャン 「何の為に3000年彷徨ったのニャ?」
白ニャン 「それを言うニャ」
蒼ニャン 「これじゃぁ何にもならないじゃニャ~の?」
白ニャン 「・・・機動女神になってたって知らせられただけマシにゃ~」
蒼ニャン 「物語に寄与してないニャ~~~~~ッ」
白ニャン 「・・・・・・・・」
ここでお茶を一服。
白ニャン 「茶柱が建ってるニャ!」
蒼ニャン 「美晴ニャ~に別けてやるニャ」
白ニャン 「手遅れニャ・・・・」
蒼ニャン・白ニャン 「可哀想ニャ?」
おはぎを食べる二匹。
白ニャン 「今回の目的が果たされたニャ!」
蒼ニャン 「そこかッ?!そこに重点を置いてたニャ?!」
白ニャン 「過去の歴史は変えられニャいと分かったニャ」
蒼ニャン 「ニャったら・・・この後どうなるニャ?」
白ニャン 「知りたいニャか?」
蒼ニャン 「ウルウル(お願いポーズ)」
白ニャン 「うニャ。ごほんニャ・・・この後はニャ」
蒼ニャン 「ウニャウニャ、勿体つけず言うニャ!」
白ニャン 「・・・・・・・・」
蒼ニャン 「・・・・・・・・・・・・・」
白ニャン 「御主人ちゃまの許しが無いから言えないニャ!」
蒼ニャン 「ニャ?!ニャンと?」
蒼ニャンも御主人様には、歯がたたないようです。
ここで二匹は夕日を見上げます。
白ニャン 「それにしても終わりが終わりだけに・・・ニャァああぁ」
蒼ニャン 「ニャンかこう、明るい話題はニャいのかニャ?」
白ニャン 「それニャ!一つだけあるニャ」
蒼ニャン 「ニャンと?それはニャに?」
白ニャン 「私の所属する保安官事務所に新人が現れたニャ」
蒼ニャン 「・・・・関係ないニャ」
白ニャン 「大いに関係があるニャ!何処にとは言えないニャが」
蒼ニャン 「駄目駄目ジャン、ニャああああぁ」
溜息を吐く蒼ニャンと、キラキラ瞳を輝かす白ニャン
白ニャン 「嘘にゃ!本当の希望は・・・」
蒼ニャン 「ニャ?!あったのニャ?」
白ニャン 「うニャ。それはニャ・・・」
蒼ニャン 「ふむふむ。それは?」
白ニャン 「あの娘を助ける者が__」
びしゃん
閉幕
・・・・おしまい!
美晴「そ・・・損な」
ラストは闇に堕ちたミハルさん。
ですが美晴さんは誓うのです。
きっと・・・きっと・・・と。
魔鋼少女に輝きが戻りますように・・・
それでは、美晴の物語を一旦閉じさせていただきます。
彼女と仲間たちの物語はまた別のお話で。
その時まで暫しお待ちくださいませ。
ご愛読ありがとうございました。
さば・ ノーブ 拝!
2020年 5月4日 コロナ禍に負けず!頑張りましょう!!