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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
214/219

新たなる旅路 第1話

挿絵(By みてみん)


遂に宿命の輪を抜け出た美晴。


後は生き抜くだけかと思えたのでしたが・・・

これが<魔鋼学園>編ラストエピソードとなります。


ー ねぇマリアちゃん・・・約束だからね?


微笑みながら美晴は約束を強請ったんだ・・・必ずまた逢おうと。

私に紅いリボンを差し出して・・・ ー


海上を照らす夕日を見詰めながら、感慨にふけるマリアさんがデッキで佇んでいました。


母国フェアリアへと向かう貨客船のデッキ上で・・・



「マリア、こんな所に居たのね。

 もうキャビンに入りなさいよ、冷えてしまうわよ」


母であるフェアリア日の本公使だったミリアさんが傍に寄って勧めました。


「あ・・・うん。もう少しだけ此処に居たい」


振り返る事もせず、マリアさんは夕日を見詰めています。


「そう?風邪をひいても知らないわよ」


ミリアお母さんは娘を観て、何か感じる処があるのか娘に一言残して戻って行ったのです。

その手には一切れの通信欄が握られていました。


キャビンに入ったミリアお母さんは、通信欄を握りつぶして呟くのでした。


「今、あの子に言うべきではない・・・あまりにも残酷すぎるから」


任期を終えて帰国する事になった自分に併せて、娘であるマリアさんも帰郷の途に就かせた。

それが一枚の電報を受け取った時、運命の儚さを思い知らされることとなったのです。


「あの子はきっと・・・見送りに来たかったに違いない。

 マリアと再会の願いを交わしたかったに違いないのだから・・・」


握りつぶされた電信欄には、一体何が記されていたのでしょう?


「後は・・・ルマやマモル君、それにミユキお母様に委ねるしかない・・・悔しいけど」


キャビンの窓辺から娘マリアさんを見詰めて、ミリアお母さんは唇を噛み締めるのでした。



何が・・・一体あったというのでしょう?

それはミリア母子が帰国の途に就く前、あの大魔王との決戦が行われた後に遡るのです。









黒雲に覆われていた皇都学園。


修学祭が行われていた学園に、突如として現れた黒雲が覆い被さったのです。

数々のイベントを行って来た学園に、上空を覆いつくした雲を見上げるお客さん達へ。


「「只今本校は非常事態宣言を発表いたします。

  皆さま落ち着いて校舎内に避難してください・・・来り返します・・・」」


急変した空模様によって想像される、驟雨への警戒が発令されたのです。


見上げる人達は、発せられた非常事態宣言をそう思い込んだのです。

まさか黒雲の中では、光と闇が闘っているなんて思いもしなかったでしょうから。



「周君、どうやら・・・僕達はついてる様だよ?」


FCO和泉警視が、青年刑事に呟きます。


「はぁ?!俄雨が降るのに?」


周刑事は傘を持ち合わせていない自分達が、どうしてついてるのだろうと感じて。


「合い愛傘なんて、ごめん被りますよ?」


普段自分に言い寄る和泉さんへ忠告したのですが。


「あれ?バレた?・・・あはは」


笑い声をあげたのでしたが、その瞳は全然笑ってなんていなかったのです。


「きっと・・・あの雲の中では何者かが蠢いている筈だが・・・ね」


文句を垂れる周君に聞こえない位の呟きを漏らすのでした。



黒雲は稲光を放電しつつ、上空を埋め尽くしました。

落雷はありませんが、黒雲の中で何度の真っ赤な発光を放ち、猛烈な地響きを起こすのです。


まるで悪魔と神が闘っているかのように。



「光と闇が争う・・・か?」


モニターを見詰めるマコトお爺ちゃんがサングラスを外すと。


「嘗ての大戦を思い起こす。

 悪魔達のざわめきにも似た・・・悪夢の闘いを」


もはや過去の大戦であるハルマゲドンを連想する、魔鋼技術の第一人者。


「ミユキ・・・君ならどうする?

 ミハルを護ろうとしたように、機械の一部になるというのか?」


世界から魔砲力が消え去った時、一度は研究を辞めると誓ったマコトお爺ちゃん。

ですが、神の啓示により再び魔鋼の開発を再開した経緯があったのです。


審判ジャッジメン)女神(リーン)から告げられたとされる神託に因って。


「マモルの娘が誕生した時、全ての箍が外された。

 産まれた赤子には悪魔と神、その二つの異能が託されていた。

 娘ミハルをこの世界に呼び戻そうとする女神に因ってかは分かりかねるが」


全ての始まりは・・・美晴さんがこの世に生を受けた時に?


いいえ。


全てはハルマゲドンの終焉に。


始まりは終わりと共にやって来ていたのです。


黒雲をモニターで見詰めるマコトお爺ちゃんは悟っていたのです。

運命の御子は、今だ目覚めてはいないのだと。


「だが・・・いつの日にかは目覚めよう。

 あの娘の代わりに・・・審判の女神が残した啓示が真実ならば」


マコトお爺ちゃんが溢した女神からの啓示に記されてあったのは?

まだ・・・開かれる事のないパンドラの箱でしょうか?






黒雲が一瞬動きを停めたのです。

まるでそれは悪魔の断末魔みたいにも思えました。



見上げる人々の前で、蜷局を巻いて蠢いていた黒雲が動きを停めたのです。



そして・・・



運動場の真ん中、地中深くから何かが。




 ド   ド   ドドッ!




地響きを起こし。





  グワッ!




蒼き光が上空へと伸びて往くのでした。


眩いばかりの光の奔流が、地表から黒雲へと突き建ち。



  

  ドリュリュリュッ!




黒雲自体を空の彼方へと持ち上げるのでした。


光線は黒雲を空の彼方へと突き上げ、宇宙そらへと吹き飛ばすのでした。



それは神が悪魔を追放するかのよう。

その御矢みはるは、女神が放ったかのよう。

宇宙そらの彼方、月の女神の元へと放擲したみたいに・・・




青空が戻った皇都学園に、一瞬だけ静寂が訪れたのでした。




「「わぁ~っ!!」」



客達が一斉に手を叩いて歓声をあげました。

これもアトラクションの一部だと勘違いして。


歓声をあげる者達を横目で見ているFCO和泉さんは、クスッと笑いました。


「?!なにが可笑しいんです和泉さん?」


周君は笑う上司に訊いたのですけど。


「ほら・・・あいつ。建造物不法侵入罪で捕まえたら?」


体育館のなかから転げ出て来た文屋を示して。


「アイツが録ったネガを押収したら・・・面白いモノが映ってるかもね?」


「えっ?!あ・・・はい!」


鍵がかけられた体育館から走り出て来た文屋を、逮捕しろと言われてしまった周君。

咄嗟に身体が動いてしまいました。


走り出した後輩刑事に微笑んだ和泉さんは。


「きっと・・・あの娘達が護ってくれたんだろう。ありがとう魔鋼少女」


何もかも分かったかのように、微笑みと共に少女達を讃えたのでした。



そうです。

さすがはFCO和泉さん、的を得ていましたね。


彼女達・・・つまりは魔鋼の少女って処は。





命は繋がり。


命は紅く燃えて。


残された魂は皆・・・





「はぁ・・・疲れ切っちゃった」



神々の帰還を見送った美晴さんは、屑折れるように倒れ込んでいくのでした。



「もう・・・休んだって・・・善いんだよね?」



瞼を閉じよう・・・もう良いだろう。

美晴さんは一時の安息を求めるかのように倒れて行くのでした。


「良くない!」



 ガシッ!



呼び声と共に身体が抱きしめられてしまいました。


「無茶しおってからに・・・この無鉄砲娘め」


ふわりと赤髪が美晴さんに被さります。


「あ・・・マリア・・・ちゃん?」


薄く開けた美晴さんの瞳に、マリアさんの泣き顔が映り込んだのです。


「良くやったノラ・・・美晴ん」


傍からノーラさんの声も。


「ぶっ飛ばしちゃいましたね美晴さん」


笑うローラさんの声も美晴さんを称えて呼んでいたのです。


「みんな・・・」


大魔王と闘った魔鋼少女達。

全てを終え、やっと平和を取り戻せたのは。


「うん・・・やったよね」


皆が一つになれた結果なのだと想う美晴さんでした。


「そやけど・・・オシオキしなきゃアカンやろぉ~なぁ」


「・・・へ?!」


涙を拭いたマリアさんが言うのです。


「そーそ。美晴ンには、オシオキが待ってるノラ」


「だ、よねぇ~」


ノーラ姉弟からも。


「えぇ~ッ?!にゃんでぇ?」


オシオキと聴いて、美晴さんが泡を喰います。


「だってさぁ~、まだ決めポーズしてないやんか」


「ほぇええぇ?!」


立ち上がらされた美晴さんにマリアさんが言うのは?


「勝利のポーズ!まだやんか?」


「ほえぇぇえええっ?!」


ビシッと指されて?


「シャンとしてよね美晴さん!」


ローラさんが肩を組みます。


「真ん中は美晴ンだノラ!」


ノーラさんが・・・美晴さんの脇に頭を突っ込みました。


「にゃぁ?!」


トチ狂う美晴さんにマリアさんが・・・


「ほならいくで!オシオキタァイィムゥ~」


魔鋼の少女達4人は・・・声を揃えて。


「「勝利のポーズ・・・キメ!」」



挿絵(By みてみん)


蒼空に向けてVサインを決めたのでした。

勿論、美晴さんを囲んで・・・仲間の友情を称えて。



4人を称えていたのは他にも居ます。


同じ結界に居た男の子も。


「やっぱり、君は大しただよ。美晴」


ルシファーの束縛から解放されたシキ君。

小脇に抱えたアクァさんに笑いかけながら、白い魔法衣姿の美晴さんを称えていたのです。


「いつの日にか、君と共に・・・ね」


新たなる魔鋼部隊の指揮官を任されるであろう少年が笑いました。

靡く黒髪を眩しそうに見つめながら。




「ほなら・・・魔法衣を解除して・・・と」


マリアさんが既に魔法衣姿から隊員服に戻っていた美晴さんに近寄ると。

魔法衣に忍ばせてあったモノを取り出しました。


「美晴、忘れモンやで」


手にしたモノを美晴さんに見せたのです。


「え?忘れ物・・・あ!」


疲れ切っていた美晴さんの瞼が見開きました。


「それ・・・コハルちゃんの?!」


「大事なもんやろ、美晴にとっては」


現実世界に戻った今、目にする事は出来ない筈だったのです。

ですが、マリアさんの魔法衣に忍ばれていたおかげかどうかは知れませんが。


「コハルちゃんのエンブレム!小春神のネックレス!」


神が宿っていた筈のネックレスが・・・手渡されたのです。


「きっと。コハルさんが何時までも忘れんといてって。

 そう思いを託したんとちゃうかな、美晴の傍に居たいんやと思うたんとちゃうか?」


手渡されたネックレスを抱いた美晴さんが何度も頷きました。


「そうだね!きっとマリアちゃんの言う通りだよ」


別れたコハルさんの想いが詰まったネックレス。

消える筈のネックレスを抱いて、美晴さんは微笑みました。


「女神様が私にプレゼントしてくだされたんだ。

 きっといつの日にかは逢う事が出来るようにって・・・」


美晴さんが言う女神様とは、春神ペルセポネーを指すのでしょうか?

いいえ・・・それはきっと。


「神託っていうのは・・・これだったんだね」


想いは誰に。美晴さんはそう思ったのでしょう。


全てはこれで解決されたと・・・思ったようです。

本当に・・・そうだったのかは3000年女神様に訊いてみなくてはいけませんが。





皇都学園に蔓延った暗雲は掻き消され。

平和な世界を取り戻せたかに思えました・・・が。



「まだ・・・何も終わっちゃいないんやで?」


マリアさんが溢しました。


「そ・・・だねぇ~」


俯く美晴さんが冷や汗を掻いています。


「美晴さん・・・もう日にちが無いよ?」


「分かってますぅ~」


ローラさんが損な子に言いました。


「ノラ~、こりは間違いなく落第なノラ」


「嫌ぁ~ッ!それだけは勘弁ッ!」


独り机に向かって勉学に励む美晴さん。

周りを囲む仲間達の・・・痛い目に屈せず?


「学年末試験を忘れてたのよぉ!」


あ。そないでっか?


相変わらずな損な子は、未だに格闘中のようです。


人生って奴に。



平和だねぇ・・・・




どうしてマリアさんは帰国の途に就いたのか。

そしてミリアさんの憂いとは?


いよいよ物語のラストが近付いて来ます。

次回へ!

なぜ?

どうしてなのかと・・・


マリアの心は親友に呼びかけていたのです。


2人の間に何が起きたか。

2人を引き裂く結果となった出来事を紐解きましょう。


さぁ・・・魔鋼少女よ旅立て。


次回 新たなる旅路 第2話

宿命は果てる事はなかったのか?運命はどこまでも少女を弄ぶのか?!

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