神託の御子と終焉の悪魔 第9話
邪なる者との戦いは終止符を向かえ。
残された御子は別れを告げる・・・
堕神デサイアが、闇の世界で大魔王となる。
大魔王となり罪を償うと言ってのけました。
大魔王となって人の世と共生するのだとも言ってくれました。
だからもう、無益な争いを避けれる筈なのです。
そう・・・何もかもが終わったようでした。
邪悪の終焉は、大魔王となったデサイアに因って齎されるのです。
「それでは美晴。私は闇の底で見守る事にするから」
大魔王の羽衣を纏ったデサイアさんが、憑代であった娘へ別れの挨拶を贈ります。
「うん、また。また・・・逢えるよね?」
「ああ、また。蒼ニャン姿で見に来てやっても良いのだぞ?」
微笑む美晴さんへデサイアさんが蒼ニャンに化けます。
「あはは・・・その毛玉姿は変わらないんだね」
元通りだと美晴さんは笑い掛けます。
いつも陰から護ってくれていた頃と同じだと。
「うニャ?!進化しない奴だと思ってるニャ?」
ニャ語を披露するのは、心優しき娘への心使いでしょうか。
「私を、いつでも呼んでくれて良いからね美晴」
大魔王デサイアは、美晴さんに約束するのです。
「いつだって、いつまでも。
あなた達を見守る事にするから・・・ね」
新たな闇の王は美晴に誓いました。
今迄通りに見守ると・・・闇の中からでも。
「ありがとう・・・デサイアさん。いいえ、アタシの蒼ニャン」
綻びた魔法衣を着たまま、身体の芯まで疲れ果てているというのに。
美晴さんは笑顔で送り出すのです、闇の王になった守護神だったデサイアさんを。
新たに王となったデサイアさんは、こうして闇へと向かったのです。
「美晴・・・結界が消えるわ」
小春神・・・いいえ。
今は春神と名乗る娘が天を見上げて教えました。
「うん、もう終わるんだね」
振り返った先に居るのは、3柱の神々。
「光の御子よ、余からもお礼を申し上げる。
ルシファーとして、この娘の父としても、恩を感じていると」
男神ルシファーが頭を美晴に合わせて、深く下げたのです。
「こらっルシファー!失礼よ美晴ちゃんに。
ちゃんと名を呼んであげなさい、御子なんて呼ばないで・・・ね?!」
天使長ミハエル様が、夫を叱ってから。
「美晴ちゃん、本当に迷惑と苦労を掛けてしまって。
謝るどころじゃないとは思うけど。コハルの母に免じて赦して貰えないかしら?」
春神の母、ミハエル様が許しを願い出てきました。
「そんな!アタシは何も苦労なんて・・・」
神々(こうごう)しい光を纏う二人から交々陳謝されては、美晴さんに言葉は見つかりません。
「美晴ちゃん、お父様とお母様を赦してあげて。
私からもお願いするから・・・」
当のコハルさんからもそう言われて。
「いやぁ~困っちゃうなぁ、アタシ・・・」
両親に逢えたばかりだというコハルさんまで言うのですよ?
「神様に頭を下げて貰えちゃうなんて・・・人間じゃないみたい」
あ。恐縮されていたのですね。
「許してくれるの美晴ちゃん?」
「もっちの、ロン!」
へへへっと鼻を擦って笑う美晴さん。
「ありがとう!大好きだよ美晴!」
精神世界で。
光の御子美晴さんに女神ペルセポネーが跳び付きました。
「うん。アタシも・・・大好きだから」
二人の抱負を二柱の親神が微笑みながら観ていました。
上空はもう人間界と繋がり、蒼き空が見えてきます。
「もう・・・行っちゃうんだね?」
美晴さんが別れを惜しみます。
「うん。天上界に戻らなきゃいけないんだ。
お父様とお母様とご一緒に・・・」
心なしか寂し気な春神に、美晴さんが首を振って笑うのです。
「願いが叶ったじゃない!
お父さんとお母さんと一緒に居られるんじゃない。
コハルちゃんがずっと欲しがってきた幸せなんだよ?
行かなきゃだめなんだからね、絶対に!」
笑いかけながら美晴さんが春神様を押し出すのです二人の親神へと。
「逢いたくなったら、アタシが行くよ。
アタシが逢いに行くから・・・生き抜いた後に」
そうです。
美晴さんとコハルさんの誓い。
生き抜いて生き抜いて・・・最後まで諦めずに。
「美晴・・・うん。それまで待ってるから。
ゆっくり・・・ゆっくりで善いから。逢いに来るの・・・」
ぽろぽろと涙を溢し、コハルさんだった春神が両親の元に退がりました。
「光の御子よ、島田美晴よ。神としてこの子の父として約束しよう。
そなたを天界から見守ると、そなたの生き様を見守ると」
消え始めたルシファーが約束したのです。
「逢いに来る時はね、私が天界にまで導くと約束しますよ美晴ちゃん」
天使長ミハエル様が断じてくだされました。
「美晴ぅ!また・・・またね!」
父ルシファーの羽衣を掴んだ娘が微笑みました。
「きっと・・・きっと!また逢おうね」
消えゆく神々。
天上界に昇って行くコハルへ。
「うん!必ず・・・逢いに行くから!」
美晴さんは手を振り続けるのでした。
「行っちゃったわね」
・・・
・・・・
「どえええええぇぇ~~~ッ?!」
気が付くと横に立っているのは3000年女神様でした。
金色の光を纏う女神が魔鋼少女の横に立っているのですから、驚くまいか。
「し、白ニャンですよね?その白いリボンは!」
「シロ白言うな。光の御子」
未来の女神様が未だに此処に居るとは思いもしませんよ普通。
「闇の姫御子だったペルセポネーも、やっと宿命から逃れられたようね」
「はい、良かったですよね」
心の底から美晴さんは喜ぶのでしたが。
「良くはないわ。特にあなたにとってはね」
「は・・・いぃ?」
ふと美晴さんが女神様を見上げると、その瞳には苦渋の色が滲んで観えた気がしたのです。
「どういう意味ですか?コハルちゃんに何かが?」
「今言った。私はあなたにとって良くない事だってね」
ジッと見詰められると竦んでしまいそうになります。
女神に見詰められると、まるで蛇の前の蛙みたいになってしまいます。
「あ、アタシにとって?それって・・・分かりません」
女神の眼に居竦められて。
美晴さんはどう答えて良いモノか分からなくなります。
「一つ。一つだけ訊きたいの。
あなたの運命を握っているのは・・・誰?」
それはあなたでしょう・・・とは、口が裂けても言えません。
「誰って・・・誰かがアタシを左右するのでしょうか?」
正直に分からないと、訊き返してみたのです。
「ふむ・・・」
じっと目を見詰められて、美晴さんは更に焦ってしまいます。
「なるほど・・・アナタは気が付いても居ないみたいね」
見詰めていた女神様が言ったのです。
「御主人様が託された術にも、秘められた宿命にだって。
まだその時ではないというのね・・・ミハル」
「ほぇ~っ?!また宿命なんですかぁ?」
やっとコハルとの陰我を終えられたと思いきや、更なる宿命を課せられた?
でも、3000年女神様の言わんとしているのは、別にあるように思いますが?
「フフフッ、まだ知らなくても良いみたいよミハル。
まだ目を見開く時ではないのかも知れないの、光の神子は・・・ね」
「また・・・分からなくするんですね?」
深い意味があるのだとは思うのですが、美晴さんには難し過ぎて。
「最後に。
一つだけ神の啓示を授けることにする。
あなたはあなたの躰だけじゃないの。
あなたの躰は美晴だけのモノではない。
嘗てあなたの祖母がそうであったように、未来はあなたの中に眠っているのよ」
「・・・あいどんとのぅ」
・・・・さっぱりな美晴さんでした。
「ま。言いたいのはこれで全てだから。
私もソロそろ、お暇するからね・・・昔のミハル」
美晴さんの瞳を覗き込んだ未来から来た理の女神が、手を挙げました。
すると・・・どうでしょう。
女神の姿が宙に舞い上がります。
舞い上がりながら・・・消えていくのです。
「じゃあね昔のミハル。
あなたの中には未来が秘められてるの、未来に向かえる希望がね!」
「え?!それってつまり?」
最後に訊いておきたかった美晴さんでしたが。
「ああっ?!ミユキお母さんのおはぎを食べ損なったわァッ!」
3000年女神のボケだけが帰って来てしまいました。
・・・損な。
消えた神々。
そして残されたのは?!
未来への希望。
希望の神子・・・
漸く平和に戻りましたが。
残された娘は苦労します?
次回に続きます。
次回 新たなる旅路 第1話
女神の啓示に隠されているのは?
邪なる者は滅ぼされた筈?
なにかが引っかかるのです。
なにかが・・・
さぁ!とうとう魔鋼少女ミハルShining!もラストエピソードに!
次回から最後のエピソードに突入!
残り僅かですが・・・宿命の少女は・・・・
次回 新たなる旅路 第1話
絆は永遠の筈。喩え新たな旅路へと向かっても・・・
あなたは最後に輝きを手に出来るのか?