神託の御子と終焉の悪魔 第7話
力の限り闘った美晴。
やっと倒せたとい思っていたのに・・・
堕神の魔手が迫るのでした・・・
全力を尽くして戦い抜いた美晴さん。
仲間達の援護を受けて、辛うじて邪神王を倒せましたけど。
「もう・・・レッドさえも持てないよ・・・」
魔鋼剣を握ろうにも、手に力が入らないまでに消耗し尽くした身体になっていたのです。
そうなるまで闘い抜いたというのに・・・です。
「でも・・・まだ。まだ戦わなきゃいけないみたい」
結界の上空を見上げる美晴さんが言うのです。
倒れたままの姿勢で呟くのです・・・結界が無くならないのを知ったから。
「誰か!人の子よ!美晴を護って、助けてよ!」
邪神王を倒した時。
小春神は言い知れない恐怖に襲われたのです。
結界を貼った自分の所為かと思ったほどだったのです。
この場が無くならないから・・・結界が破れなかったから。
でも、思い違いなのだと悟りました。
この赤黒い結界は邪なる者の存在が居る証拠なのだと。
しかも巨大さを失わない処をみれば、此処に居る邪なる者は?
「まるで邪神が居るみたい・・・まだ滅んじゃいなかったみたいだわ!」
小春神が言うのも尤もです。
巨大なる空間を維持する結界の主、その力量も分かるというモノです。
「まだそんな奴が此処に潜んでいるのなら。
疲れ果てた美晴じゃ可哀想よ、誰かが代わりに闘ってくれなきゃ・・・」
それならば自分が・・・初め小春神はそう思ったのでしたが。
「女神になってしまったから。闇の中じゃぁ誰かに宿らなきゃ力も出せないの」
邪神王との闘いでは、美晴さんに力を貸すだけに留められたのも、そう言った経緯があったからですね。
「誰か!誰かお願いします!美晴を、光の希望を助けてください!」
必死の祈りは奇跡を呼び覚ませるのでしょうか?
ええ・・・光はどんな闇にだって現れるのですよ。
喩え絶望の淵に立たされたとしても。
「愚かなり・・・堕神よ」
闇・・・真の闇。
そこに居るのは古来から居る邪悪なる総意でした。
「今より発動する・・・やっと新たなる大魔王が誕生したのだからな」
邪悪なる者・・・異形種。
今、堕神デサイアが大魔王と化した瞬間を捉えて動き出すのです。
「そなたに与えた闇。そなたの嘆きにつけ入った我等の望みが叶わんとしているのだ」
1000年女神ミハルの嘆きが産んだ堕神デサイア。
彼女は神々を憎み恨み、そして時を越えて望みを果そうとしていたのです。
ですが本来、人に寄り添うべき女神の心が拒んだ筈だったのです。
闇に堕ちるのを・・・しかし。
「気が付く前に頂こう。
そなたが気付いた時には、全てが終焉へと転げていよう。
この世界が暗黒に染まり、真の闇に閉ざされているだろう。
絶望の暗闇の中に・・・」
異形種の計画は今、発動されたのです。
新たなる大魔王を造り、その異能を以って世界を滅ぼすのだと。
「既に光の子は力を失いつつある・・・時すでに満ちたのだ」
デサイアを獲り込もうとする悪意は、遂に魔手を堕神へと伸ばすのです。
自ら墜ちたと思い違いしているデサイアを虜にせんと。
「馬鹿め・・・と、言ってやろうじゃないの!」
3000年女神は此処に居たり審判の女神に許可を求めました。
「システムの起動許可を願います。
理の女神ミハルの名に於いて、機動戦の許可を願い出ます」
蒼き宝珠へと申請するのは。
「機動鎧の装着を許可してください」
モ・・・モビルアーマーですって?!
「「認可。邪悪なる者を殲滅されたし・・・往け!魔砲の女神ミハル!」」
蒼き宝珠から御主人様のお達しが下されました。
「了解!」
女神ミハル様が御出馬されるようです・・・恐ろしや
「ふふふっ・・・頑張ったわねぇ子猫ちゃん達!」
堕神デサイアが小春神を前に言いました。
「あなたは蒼ニャン・・・じゃない?!その薄汚れた魔法衣は邪なる者?!」
一発でデサイアの正体を看破したコハルさん。
倒れた美晴さんを庇う様に立ち塞がりますが・・・
「あら?どうしたのよ桃ニャン。
私がどうかしたっていうの?その子を頂くと思うのかしら・・・
そう・・・・大当たりよ!」
小春神が美晴さんを庇うのを小癪と思ったのか。
デサイアはいきなり奪おうとしたのです、闇の結界では無力に近い女神に対し。
「やめて!美晴を奪わないで!」
立ち塞がり、自分を盾とする・・・気高き乙女の姿。
「フッ!無駄よ、あなたには何もできやしないわ!」
「出来なくったって、護るんだから!」
人たる美晴の全てを奪い去ろうとするデサイアに、コハルは決死の抵抗で応えようとしますが。
「無駄・・・だって言ってるでしょう!」
魔砲を現わし、手を振り上げるのです。
「そこまでだ!ミハルの偽物!」
そこに割って入ったのは、白き魔法衣を着た少年・・・・
「デサイアとか言ったな、人に寄り添う堕神であったと思ったが。違うようだな」
シキ君の姿を借りた。
「お・・・お父様?!ルシファーお父様?!」
コハルの眼に映るのは、本当の父神であるルシファーの姿。
「そのようねあなた。粛罪してくれなかったようよ」
空から舞い降りて来る天使が応えます。
「お、お母様?!ミハエルお母様っ?」
娘の危急に。
遂に古の二柱が現れました。
突然の救援に驚くより、二柱を観れた感動で。
「お父様お母様!どうして?!」
この場に来てくれたのですかと、訊いてみたいみたいですが。
跳び来ったミハエルさんがコハルとミハルの前に立ちはだかります。
「ごめんねペルセポネ。
ほったらかしにしちゃって・・・辛かったでしょうに」
「ペ?ペル・・・?」
自分の名をそう呼ばれて、動揺してしまうコハルさん。
「あなたの名なのよ、春神。
もうあなたは立派な女神となれたの、小春神じゃなくてね」
「え?!お母様・・・」
天使長ミハエル様が金色の羽根を消しながら、コハルさんに教えたのです。
「そうだよコハル・・・いいや、ペルセポネー。
今よりは春神を指すペルセポネーを名乗ると良い」
ルシファーも勧めて来るのです。本当の名を名乗る時だと。
「人に尽くし、人に寄り添う気高き女神ペルセポネーを名乗りなさい」
ミハエル様は微笑みながらコハルさんを抱きしめてあげたのです。
「良く頑張りましたねペルセポネー、私の愛する娘」
「おかぁ・・・様ぁ・・・」
一頻り抱かれる母の温もりに、コハルさんの涙が溢れます。
「ちぃいいいぃッ?!どうしてお前達が結界に来たのだ!」
計画を邪魔されたデサイアが吠えまくります。
「邪魔などさせんぞぉッ!」
手を下そうとするデサイアに、ルシファー様の手が伸びて。
ガシッ!
デサイアよりも数倍も力強くて。
「なっ?!なんだと?」
闇の結界の中だというのに。神だというのに堕神よりも強い?!
魔砲を握りつぶされたデサイアが驚きの眼でルシファーを観ました。
「やめておけ。そなたでは人に成れた神である余には歯がたたぬぞ」
?!そうでした!ルシファー様もミハエル様も。
昔のミハルさんに因って人へと成れたのです・・・それが?
「神では知れぬ。ましてや悪魔になど思いも知れないであろう。
人には神よりも強き一面があるという事に・・・だ」
な?!なんですかそれは?
「嘗てこの世界には理を奉ずる女神が居た。
理を司り、愛を信じる気高き乙女が居たのだ。
人から神へと成り、世界を救った。我等とは比べる術もない辛苦を乗り越えてな」
ルシファー様が言うのは女神ミハル様の事ですね。
「そうよ!その子が与えてくれた、人の力を私達にも。
人には限りがある命を燃やす能力がある、精神世界の産物であるあなたなんかには無いモノがね」
ミハエル様がコハル・・・もとい。
ペルセポネー様を抱きしめて言います。
「この子にも経験して貰いたかった。
人の温もり・・・絆という力を。
どんな物よりも掛け買いの無い大切な絆というモノを」
絆が力?
人の絆が力だと・・・言うのですね。
「人は繋がり合い愛を紡ぐ。
絆はやがて友を呼び、友は愛を育む・・・それが真理。
それこそが、人の強さだと教えて頂いたのよ本当の真実の女神に!」
・・・女神は元々人であり、愛を希求する乙女だったから・・・
天使長ミハエル様が偽の女神へと突き付けたモノ。
それは・・・本当の<理>へと呼びかけたのです。
デサイアにも残されている筈の・・・希望へと。
「馬鹿な・・・神が人に教えられるなど・・・有り得ないわ」
デサイアが頭を振って拒絶しようとします。
「ならば・・・人たる者に訊いてみるが良い。
愛はなぜ無敵なのだと・・・理は人だけのモノなのかと」
人に寄り添えば分かる。
人を観れば理解できる。
ルシファー様が仰られたのは、世界の理でした。
この世で最も気高き・・・真理だったのです。
「う・・・嘘だ・・・認めないぞ・・・人が神よりも優れていたなどと」
「違うよ・・・蒼ニャン。
あなただって愛を奏でられるじゃない。ミユキお祖母ちゃんに甘えられたでしょ?」
拒絶し続ける堕神に、起き上がりながら美晴さんが教えたのです。
愛はデサイアだって持っているのだからと。
「マモル君にだって・・・アタシにだって。
蒼ニャンは優しくしてくれた。いつも陰から力を貸してくれた。
いつも心の底では見守ってくれていたでしょ?」
「違うッ!それはお前達の異能をあげる為だけだったのだ」
拒絶し続けるデサイアに、美晴さんは手を挿し伸ばして。
「違わないよ蒼ニャン。
あなたが邪な心で接していたとしても、アタシは信じてるから。
信じているからこそ、助けたいんだよ?
光を宿せると信じてるからこそ・・・助けてあげたいんだ!」
デサイアを赦すと言ったのです。
「・・・愚かだ」
しかし、デサイアさんから返されたのは罵る声。
「愚か者だ・・・恨みを募らせた者を信じるなど・・・愚かだとは思わないのか?」
ですが!
美晴さんは!
「愚か?それってアタシの事だよね?
だったらアタシは愚か者で良いよ。愚か者でも馬鹿だって良いよ。
信じるのをやめるのよりずっとましだもん!
だからね蒼ニャン、アタシに信じさせてよ希望も纏えれるって!」
デサイアさんに頼んだのです。
粛罪を受け入れて、希望を燈そうと。
「人の子が・・・神に教えを与えるか・・・」
デサイアさんの魔法衣が少しだけ気高さを取り戻しました。
「素晴らしいわ・・・あの娘」
出鼻をくじかれた女神様も感動します。
「「ええ、どこかの白ニャンとは大違いね」」
「御主人様・・・嫌味ですね」
宝珠は褒め称え、女神は微笑みました。
「「ならば・・・残るは唯一つのみ!」」
「御意です!」
3000年女神の魔法衣を着たミハルさんが応えました。
「出役!機動女神ミハル・・・推してまいりますッ!」
遂に!遂に異形種との決戦にでるのですね。
「是非も無し!」
・・・なんだか、怖ろしいんですが?
美晴さん達に因って呪縛から解けるデサイアさん。
邪悪なる者イシュタルの手が伸びようとしていますが・・・・
機動女神が遂に牙を剥く?
次回、圧倒する力をご堪能して?
おおぅっ?!
3000年女神様?!
是非も無しとはこれ如何に?
嫌な予感しかありませんが・・・
次回が本作の最大見所?
いいえ~あまりの無敵さに呆れてしまう?
挿絵とGIFがお待ちしておりますよ?!
次回 神託の御子と終焉の悪魔 第8話
まさに無敵ぃいいぃ~!恐るべし科学の子!伊達に3000年彷徨ってきませんでしたね?ね?