神託の御子と終焉の悪魔 第6話
今、光の御子と小春神が一つになって。
邪神王に放つのは・・・最終奥義!!
巨大な金色の魔砲の光の弾が邪神王目掛けて放たれたのです。
光の御子美晴の・・・最大にして最強の魔砲弾が邪悪なる王目掛けて。
邪なる眼を見開いた邪神王は、自らの存在を脅かす弾に恐怖さえも感じたのです。
「馬鹿な・・・この余が?!
完全なる王の・・・暗黒王の余が・・・怯えるだと?!」
死をも超越した存在。
闇に蠢く大王である自分が・・・何故?
怯えねばならぬのかと・・・恐怖とは無縁の存在である邪神王が・・・と。
邪神王は、今。
はっきりと悟ったのです。
自分が完全なる存在などではないという事に。
「糞ぉッ!」
否定する事など出来ない。
自分の存在を脅かす<輝>へ、がむしゃらに魔砲で応じるしかなかったのです。
「人間の分際で!この王たる余に勝てると思うなァッ!」
紅き魔力弾を弾き出し、光の弾にぶつけるのです。
力には力で応じ、自らの力を誇示しようとして。
魔鋼剣を振り抜き、光の弾を打ち出した美晴でしたが。
「コハルちゃん!この手を離さないでね」
右手に小春神が手を重ねているのを、感じていました。
「最期の決着をつけるから・・・みんなもアタシに力を貸してね」
仲間達が寄り添ってくれていると、感謝しながら。
「うん、一緒に往こう。美晴・・・この一撃で終わらせようよ!」
人である美晴に寄り添うコハル達は、聖なる者も闇の者もなく。
「みんなで邪神王を打ち負かすんだ!未来をこの手に掴むんだ!」
美晴と共に駆け出すのです。
邪神王へと・・・最後の一撃を加えんとして。
ド・・・
金色の光と紅き弾がぶつかり弾け。
邪神王の影を造りました。
存在を表す影が出来たのです。
それの意味は・・・
「なっ?!本性が浮き出しにされただとぉッ?」
人ではない者・・・悪魔。
悪魔以上に邪悪なる邪神を秘めた存在だった邪神王には、物理攻撃が効く筈もなかった。
手傷を負わせられても本性が無事なら、修復も可能でした。
ですが、光の弾と紅き弾がぶつかり弾けた衝撃で、邪神王は本性を曝け出されてしまったのです。
それは、手にしている魔王剣。
魔力を放つ王の剣に潜んでいたのです。
肉体部分を斬られても、本性である剣が無傷なら。
何度でも修復して闇を放てるように、邪な魂が宿ってしまったのです。
「おのれぇッ!小娘共がぁッ!」
爆光の中、邪神王が叫びました。
呪いを含んだ怨唆を吐き出して、受けた恐怖を薙ぎ払おうというのでしょうか?
自分よりも強力な魔砲弾を放った人の子に対し、怒りよりも恐怖が勝った苛立ちを誤魔化す為でしょうか。
でしたが、邪神王は次の瞬間真の恐怖を、人の子の姿に観たのです。
「邪神王!覚悟ッ!」
光が揺蕩う中、一人の少女が飛び込んで来たのです。
金色を纏い。
金色に輝く剣を振りかざして。
「バ?!」
目を見開き恐怖に狼狽えました。
「カ?!」
最早剣で応じるよりは方法が無い・・・
しかし、手にした魔王剣には自らの本性が隠されているのです。
「なぁッ?!」
剣を振りかざし飛び込んで来る美晴さんに、邪神王は真の恐怖を観たのです。
斬られてしまう恐ろしさと、自らの手では如何ともし難い現実を突きつけられて。
「うわああああああぁッ!」
雄叫びと共に人の子が・・・剣を振り下ろして来る。
絶対者である自分に歯向かう人の怖さ・・・いいえ、消滅の恐怖に負けてしまったのです。
手にしていた魔王剣を、咄嗟に魔鋼剣へと応じてしまいました。
ー 恐怖・・・恐怖だ。余は完全ではなかった。邪悪は完全な力ではない・・・
恐怖に歪んだ貌で、邪神王は金色を纏う人の娘を観たのです。
ガッ・・・キンッ!!
二振りの剣が交え・・・最期が訪れます。
「バ・・・カ・・・なぁッ?!」
魔王剣が真っ二つにへし折られ、肉体をも切り裂き。
「がはぁっ!」
本性諸共滅びを与えられてしまいました。
金色の光を纏う蒼髪の少女に。
「こんなことが・・・有り得ぬ。断じて有り得ぬぅうううぅ~ッ!」
断末魔の叫び。
呪いを伝播させんとした邪神王が、闇の異能を求めて力を与えた堕神に呼びかけようとしたのです。
「「愚かなり大魔王よ。私はお前など欲していないわ」」
「?!」
堕神からの答えは、拒絶。
「「利用価値のなくなったお前なんかに用はない。
さっさと呪え、滅び去る前に倒した相手を呪うがいいのよ」」
デサイアからの通告。
端から利用するだけの存在でしかないと言い渡された大魔王だった魂に、新たなる呪いを紡ぎだせと言い渡したのです。
「馬鹿な・・・貴様ぁッ?!」
闇の異能を与え、憑代とした堕神に怒りを向けるのでしたが。
「「ほらほら、もう滅びちゃうんじゃないの?
さっさと言う通りにしなさいよ出来損ないの大魔王」」
居れた魔王剣に宿っていたのは、大魔王だけになっていたのです。
最期の瞬間にデサイアは刀身から抜け出し、自らにダメージが及ばなくしていたのです。
「貴様ぁッ!初めからこうなるように仕組んだのか?」
「「ふんっ!私が欲しいのはお前を倒した奴。
魔鋼の少女達を傀儡にする為の道具にしか過ぎないお前なんて用はないわ」」
堕神デサイアはきっぱりと見捨てたのです。
「「世界に大魔王が必要なのは、理なの。
神々を脅かす大魔王が居なければ、人の世界も安定しない。
ただし、邪悪なる者とは限らないけどね・・・あなたの様に愚かな大魔王は必要ないのよ」」
「は・・・謀ったなデサイアぁッ!」
消滅する瞬間、大魔王は後継者を名指ししたのです。
本来ならば美晴を指名する処でしたのに、恨みを滅ぼした直接の相手から変えてしまうのです。
堕神でありながら大魔王でもあった、ルシファーの様に。
「嘗て堕ち神であったルシファー。
彼は人の為に大魔王を滅ぼして呪いを受けたのよ。
人を守らんとして、敢えて呪いを受けてしまった・・・気高き心根で」
一部始終を観ている未来から来た女神が呟くのです。
「あなたの様に邪な心で受けたのではない。
ルシファーは神として人に寄り添わんとした・・・だから戻れたのよ神へ」
蒼髪を靡かせる女神は、過去の女神へ理を突きつけます。
「堕神デサイア。
あなたは過ちを繰り返す災いとなる。
異形種に操られたとはいえ、その罪は果てしなく重いわよ」
邪神王との決着を観た美晴へと想いを馳せて、こうも言うのです。
「だけどデサイア。あの娘はあなたを救ってと言ったの。
蒼き清浄なる魂へと戻るべきなのではなくて?」
過去の非業を垣間見て来たデサイアへ、最後のチャンスを与えようとするのです。
「全ては審判の女神様に委ねます。
審判は如何に?理の女神に下されるのは?」
3000年女神が槍の穂先に付いた蒼き宝珠へ、恭しく詔を求めたのです。
「「理を求めるのか、理を奉じるのか。
貴女はどちらを選びたいのかしら?」」
蒼き宝珠が瞬きながら返答を求めて来ました。
「あら?リーンでも決めかねるの?
そんなの決まってるよ、私は・・・理の女神だよ?」
「「ならば・・・見せてあげなさい。貴女の力というものを。
真・理の女神である機動女神ミハルの戦闘能力を、あの娘達へと!」」
審判は下されたようです。
未来の女神達に因って。
「承りぃ~!」
3000年女神、理の女神様の実力の程とは?
これはもう・・・新たなる世界でしょうかね??(恐怖しかありません)
邪神王が滅びの時を迎えんとしていました。
聖なる輝を纏ったままの美晴さんと対峙したままで・・・
「ぐ・・・ふふ。
余を滅ぼしたと思って喜ぶのは早計だぞ。
邪悪は滅びはせぬと心しておけ。
余が滅んでも、新たな巨悪は現れる。
新たなる巨悪に因って人類は恐怖に震えるのだ・・・」
堕神デサイアに呪いを掛けた邪神王は、滅び去る前に言い残すのです。
邪なる者の誕生を。新たなる闇の存在と、呪いの在処を。
「余を滅ぼした人の子よ。新たなる闇に因って苦しめられるが良い」
大魔王の存在を示し、新たなる戦いの予兆を告げるのでしたが。
「言いたいのはそんな事なの?滅び去る闇よ」
美晴さんがきっぱりと答えるのです。
「闇が潰えないというのなら。
アタシだって負けないんだから、何度だって邪悪を討ってみせるだけだもん」
「な・・・に?!」
邪神王に言い切るのは?
「光と闇があるように。
邪悪があるのなら光が滅びることはないッ!
アタシが居なくなったとしたって、光を纏う子が現れ続ける。
人が居る限り必ず邪悪を滅ぼす希望が現れるのよ邪神王!」
「ぐ・・・ぐっはぁッ?!」
美晴さんの言葉が邪神王へのトドメとなりました。
邪悪なる予言に対し、未来を求め続ける子が放ったのは。
「それが理。
光を纏える者が潰える例なんてないのよ!」
「ず・・・ぶ・・・ぶ・・・・・・・・・・」
言い返す事も出来なくなった邪神王の肉体が滅び去ります。
掻き消えるように、消し炭になるかのように。
真っ黒くなり、やがて消えていきました。
「勝った・・・ね、コハルちゃん。
守れたね・・・みんな・・・」
邪神王を倒した!
「ありがとう・・・友・・・あり・・・が・・・とう」
全力を使い果たした・・・いいえ。自分の限界を超越させてまで闘い抜きました。
「少しだけ・・・眠らせて。
輝の中で・・・安らぎを・・・ください」
もう命の灯迄も、使い果たしたかのように美晴さんは願うのです。
「これで・・・約束を果せたかな?アタシ・・・」
微笑みながら逝こうと思った美晴さんでした。
邪神王から受けた、数回にも及ぶダメージが蓄積していたのです。
肉体の限界を超えた魔砲力の放出も、受けたダメージに匹敵していたのです。
命まで削って護れたから・・・もう休みたいと願ったのでしょう。
駄目だよ・・・美晴
まだ諦めるのは早過ぎるからね・・・・
どこかから、麗しい声が聞こえた気がしました。
まだやり残したことがあるんじゃないの?
聞こえて来るのは小春神の声ではなかったようです。
あなたには光の御子が託されてる。
女神の神託を受けた務めが残されているのよ?
声は大事にしてきた蒼き宝珠から聞こえて来るのです。
ミハル・・・私に逢う約束は?まだ果たしてくれていないじゃないの?
その声は・・・幼き時に聴いたのです。
彼の地で待つと言っていた・・・
「月の女神様・・・ルナリィ―ンお姉ちゃん?」
フェアリア皇女リーンの魂を宿した姫。
果していなかった約束を呼び戻してくれたのは。
「アタシ・・・まだ休んじゃ駄目なのですね。
まだ黄泉の国へ旅立ったら駄目なんですよね・・・・」
死ぬほどの辛さが来ようとも、諦めては駄目だと・・・
「そうだ・・・アタシはまだ死ねないんだ。
休んじゃ駄目、諦めちゃったら駄目なんですよね・・・女神様」
ボロボロにされた躰で。
光を纏える娘が思い留まったのです。
「あはは・・・でも。もう・・・身体が動かないや」
体力も気力さえも、最早底を尽いていたのです。
そうまでして倒した邪神王だったのです。
唯、今は休ませて欲しいと願う美晴さんでした。
「少しで良いから・・・このまま」
寝ころんでしまう美晴さんが結界を見上げました。
?!邪神王を倒したのに結界がある?!
・・・と、いうことはつまり?
美晴さんは目を閉じることもせずに見上げていました。
目の前に迫った邪悪に気が付いていても、どうする事も出来ず。
唯、最後まで諦めない心だけを矜持して。
遂にラスボスを倒せたようですが?
更に事態は悪化を辿るのでしょうか?
なぜなら・・・・
次回に続くのです・・・
決着ナウ!
滅び去る闇は、新たな邪悪を呼ぶ?!
今、彼女の中には光は無いのでしょうか?
力の限り闘った美晴さん。
もう闘う異能は底を尽いていたのですが・・・
次回 神託の御子と終焉の悪魔 第7話
美晴の心は何処までも光を纏っているのでした・・・