神託の御子と終焉の悪魔 第3話
遂に決戦は全力戦へ!
光を纏う者も・・・全ての仲間を巻き込んで。
「無茶すんなッ!美晴ぅッ」
単身で斬り込む美晴さんに叫ぶマリアさんが観たのは・・・
「いくら魔鋼剣だって近寄れなきゃ意味ないんやで!」
突っ込む美晴さんの援護をしようにも。
「大魔王と重なってしまう、撃てないんや!」
射線が美晴さんの背後になってしまい、撃つと美晴に当たる懸念がありました。
「大丈夫!マリアちゃんはウィークポイントだけを狙って!」
一瞬だけ美晴さんが応えます。
振り返ったその顔には、微笑みさえも見て取れました。
「み・・・美晴ぅ?」
金色に輝く剣を手にした・・・魔鋼の少女。
雄々しくも大魔王に斬り込む美晴さんの顔に浮かんだ微笑みの意味するのは?
「やめろッ!死ぬ気か美晴ぅッ?!」
マリアさんは美晴さんが特攻し、刺違えるのかと思ったのです。
「違う・・・違うよ」
そう答えたのは。
「違うよ、美晴ちゃんは死なせたりしないから」
今迄寝たように気絶していたノーラの声・・・だと思ったのですが。
「私を救って闘ってくれたみんなを。死なせたりするもんですか!」
カッと眼を開いたノーラの声は、全くの別人が放つ雄叫び。
バウッ!
ローラの手を振り解き、立ち上がるノーラを憑代にした娘。
それは・・・
「小春神の名誉にかけてなんて言わない。
私は大切な人を護りたいだけなんだから!コハルは絶対に諦めないんだから!」
女神から贈られた石に宿ったコハルでしたが、どうやらノーラを憑代としていた?
「石の中だったら干渉できない。
いくら逃げ出せても傍観するだけなんて嫌だったの!
美晴と一緒に断ち切りたかったのよ、闇の異能なんて」
ノーラさんに宿り直した小春神が、自らの願いを晒すのです。
「悪意の塊となる前に救ってくれた!
みんなが私を助けようと力を尽してくれているから。
いいえ!人の世界を闇から救おうと闘ってくれてるから!
私だって一緒に戦いたいのよ美晴ぅ!」
ぱああぁっ!
ノーラの躰の中から金色の光と、蒼き聖なる輝が放たれたのです。
「みんな!私と共に闘いましょう」
小春神は闇の中で叫び呼ぶのです。
「人の世を護る礎に!未来の為に!」
大魔王の結界。
それは嘗てのコハルが維持して来た世界に通じていました。
闇の属性を持つ臣下の者達に、コハルの声が響き渡りました。
おおおおおおおぉんッ!
大魔王の姫御子ではなくなったコハルに、臣下の者達は従うのでしょうか?
うおおおおおんっ!おお~んッ!
臣下の者達が一斉に集い始めたのです。
その数・・・数千万。
今迄これ程の魔族たる者達が集った例はありません。
その中には魔獣の姿も見れました。
数万もの軍勢を率いた聖なる者達の姿さえも観れたのです。
「姫様!姫君!どうか私めも御供仕りとうございます」
白銀の甲冑に身を包んだ・・・エイプラハム。
「御姫君よ、我も我が軍勢も。伴に参りとうございます」
黒き魔獣剣士グランが傍に控えるのです。
「我が願いを!姫様を誑かした罪を償いとうございますれば!」
コハルが大魔王に堕ちるきっかけを作った狒狒爺やが、首を深く垂れて願います。
「いいの・・・もう良いのよ爺。あなたの心は分かったから」
罪を償おうとする爺やに、コハルは赦しを与えるのです。
「姫様!彼奴の策謀にてお力になれなかった我を御許しくださいませ」
身を挺してでも守ろうと願っていたグランには、堕神デサイアに囚われていた事でさえも罪だと思えたようです。
「いいえ、魔獣剣士グラン。
あなたによってこれだけの仲間が集えたのですよ、感謝します」
一身に罪を背負おうとしたグランに、小春神は感謝を述べたのです。
しかも・・・臣下の者達を仲間と呼んで。
うおおおおおぉ~んッ!
感動の雄叫びが集った者達から讃え揚げられました。
「皆、今から闘うのは父皇ルシファーの意を組まない愚か者への天誅です。
私達は挙って悪を憎む闇として、新たな大魔王を討つのです!」
うおおおおおぉ~ん!
数千万もの軍勢が、小春神を奉じて決起したのです。
「新たなる大魔王に組みする者共は、全て滅ぼして!
悪意に加担する者共全て、人に仇為す者として討ち平らげて!」
御神を奉じる闇の軍勢に、聖なる輝が燈りました。
これが聖なる軍勢であると。闇に属そうが、光を纏えるのだと知れたのです。
「聖なる輝が・・・私達を祝福してくれてる?!」
全能の神が贈る賜物・・・その光は教えているのでした。
「私達にも纏えるんだ・・・聖なる輝きを。
光と闇・・・みんなが授かれるんだ・・・光と闇を受け継ぐ者になれるんだ」
今の今迄。
大魔王の姫御子として、運命に翻弄され続けた小春神も。
今、真実を観たのです。
今やっと、目を見開けたのです。
自らの運命を切り開き、自ら宿命を打ち破れたのです。
「ありがとう・・・みんな。
ありがとう、人の子よ。お礼を差し上げます美晴」
コハルちゃんは、自らの宿命に打ち勝ちました。
後は・・・美晴と共に闘うのみです。
「参りましょう!私達の仲間の元へ。御子の元へと!」
大軍の先鋒に立ち、向かうは・・・決戦の場。
次元を超えた軍勢が集うのは大魔王の結界。
いいえ・・・美晴の元へです。
一瞬、時間が停まったようでした。
ノーラが突然叫んだかと思うと・・・
「ふにゃ?すやぁ・・・・」
また気を失ってしまいました。・・・って、寝てるだけじゃ?
ですけど、そんなノーラさんを気にしている時ではありません。
目の前では大魔王に斬り込む美晴さんが闘っていたからです。
「マリアちゃんッ!後は頼んだよ!」
大魔王に近接戦を挑もうとする美晴さんの願い。
「アホォ!後ろなんかウチに任せておきぃや!」
冗談で返すマリアさんですが、目は笑っていません。
このままでは美晴さんが大魔王と刺違えてしまうのではと、心ここに在らずだったのです。
「何度も同じ手が通じると思うのか!」
大魔王は嘲笑いながら魔王剣を掴み直します。
「剣戟でもする気か、人の子よ?愚かなり!」
そして言うが早いか。
「メガ・バースト!」
先程より一段上の爆裂弾を放ったのです。
「うっ?!」
近距離から放たれた魔砲に、美晴さんは対処できるのでしょうか?
「こなっ、糞ッ!」
もう避ける暇もないと・・・剣を爆裂弾に掲げたのです。
ズドムッ!
爆光が奔りました。
「ふんっ!たわいもない」
勝ち誇った大魔王が嘲った時。
「どぉりゃぁあああ~ッ!」
輝の中から美晴さんが突き込んで来たのです。
「?!馬鹿なぁッ?」
慌てる・・・ことも出来ない大魔王へと。
「斬ッ!」
一太刀を浴びせて来ました。
ザシュ!
魔鋼の剣により、大魔王の羽衣が裂けたのです。
「今だよマリアちゃんッ!」
振り返るなんて出来ません。
斬ったとはいえ手傷を負わせた程度だったのですから。
「分こぉとるわぁ~いッ!」
魔鋼弾のポイントを黒雲中心核へ目掛けて・・・マリアさんが撃つ!
「ウチの全力全開!
これが魔鋼銃の最大火力・・・
届け!魔鋼の銀弾!」
雄叫びと共にトリガーを引き絞るマリアさん。
グオオッム!
唯の一発が黒雲目掛けて放たれたのです。
蒼き光を放つ銀の弾が・・・
ズドッ!
渦を巻いているど真ん中に突き立った!
途端に黒雲が歪み、膨らんで・・・・それが起きます。
ドド グワアアァ~ンッ!
モコモコと膨らんだ雲が弾け去ったのです。
「よっしゃぁ~ッ!」
マリアさんとローラ君がもろ手を挙げて喜びました。
喜んだのでしたが・・・目の前では。
「うきゃああぁっ?!」
弾き飛ばされて転げる美晴さんの姿が。
「うっ痛っ!」
背中を強打してしまった美晴さんの悲痛な声が聞こえます。
「お前等ぁ~ッ!許し難いぞぉッ!」
闇の異能を集めていた大魔王の目論見を潰えさせた美晴達に、怒りを燃え立たせて。
「うぬらには恐怖など必要ない!瞬殺してくれるわ!」
喚きまくる大魔王。
しかし、闇の力は集えなくなった筈ですが?
「「良いわねぇ・・・実に善い。あなたにはもうちょっと頑張って貰うとしましょう」」
どこかから声が。
そして。
「「ちょっとだけ大魔王に味方してあげるわ。だから・・・チェンジしなさいよ?」」
大いなる闇が大魔王に降り注ぐのでした。
神ならざる者の異能が。呪いの異能が与えられてしまうのです。
「ぐっはぁ~ッ!」
確かに切り裂いた筈でした。
黒雲からの補給を断った筈だったのに・・・・
「なんやとぉ~?!」
「なぜ?どうして?」
マリアもローラも。そして美晴も。
「なぜ?変身出来るの?」
目の前で大魔王の姿が変えられていくのを見詰めるより他なかったのです。
上空から降って来た黒き何かにより、大魔王の姿が替えられていきました。
コハルであった名残を一切消し、堕神デサイアが宿ったかのように。
黒き魔法衣。黒髪・・・そして燃えるような邪悪なる瞳へと。
「余に歯向かう愚か者。
この姿を観てしまったからには覚悟しろよ・・・魂までも喰らってやるからな」
大魔王が言う呪い。それは無に帰すことを意味していました。
「そして余の礎となり、世界の終焉を齎すのだ」
大魔王が望むは・・・混沌たる無の世界。
凶悪なる悪魔は遂に現実のモノへと為り。
終焉の悪魔が・・・遂に姿をみせたのです。
次回!終焉の悪魔が挑みかかります。
美晴達は戦い抜けるのでしょうか?
とうとうコハルちゃんまでも駆出すことに?
小春神も仲間たちを集うのか?
全面戦闘の気配が濃厚ですね。
それにしても流石大魔王!
今度は一筋縄では倒せなさそうです。
次回 神託の御子と終焉の悪魔 第4話
闇は力を得る・・・意外な者によって。その時美晴達は抗えるのか?