もう一つの未来<<きぼう>> 第4話
美晴が大魔王に貶められようとしていたとき。
彼方の空から現れたのは?
女神でした・・・が?!
大魔王の呪いを受けてしまった美晴。
魂の消滅を願う程迄に追い詰められてしまった彼女へ、金色の礫が舞い落ちて来ました。
そう・・・聖なる輝が舞い落ちて来たのです。
救い・・・救罪の時がやって来る?
が。
その前に、少々時間を戻してみる事にしましょう。
美晴をこんなにも待たせたのは、誰だったのかお判りでしょうけど。
黒雲が渦を巻いていました。
その中にいるのは・・・
「大魔王級みたいね。でも今の私になら簡単に破れるから!」
魔砲を放つ女神ミハル。
「バスターダークネス!シュゥートォッ!」
バシュンッ!
蒼き光の魔砲が、女神の杖から発射されました。
女神ミハルが言い切ったように、蒼き弾は闇の結界に穴を穿ったのです。
「そんじゃぁ~天罰タイムといきましょうか!」
二ンマリと嗤う女神が結界に突っ込んで行きます。
金色に染まる羽根を羽ばたかせる円環を足下に現わして。
?二ンマリと嗤う?
女神がニンマリと<嗤う>?
もしや?!またデサイアが現れたのでしょうか?
「ミハエルもどうやら粛罪を終えれたようだな」
金色の光を目にした堕神が、独り言を漏らしました。
「嘗ての罪も、どうやら魂の復活によって拭えたか」
見詰めていた光が結界の中へと突っ込んで行ったのです。
「人の幸せを齎してくれたミハルへの恩に報わねばならぬ。
自らを犠牲にした気高さ・・・ミハルとはそんな娘だったからな」
あのぉルシファーさん?そんなは<損な>じゃないの?
「確かにミハルは損を惹き易い娘だ。
だが、それもまた・・・良いモノだ。
余とミハエルの娘をも、護らんと現れたか・・・ミハル?」
美晴さんとコハルさんでしょう?
大魔王と化した娘コハルを護るのは、父であるルシファーさんの役目じゃないのですか?
「ミハルよ。
そなたが完全なる復活を遂げるには、二人の娘が必要だと教えた。
女神ミハルの帰還には肉体と魂が必要だと・・・教えたではないか」
誰が?ですかルシファーさん?
「まだ人間であった余とミハエルを元に戻るように頼んで来た・・・審判の女神が。
彼女の頼みは我等と同じ。フェアリアの姫に宿る女神リーンの頼みを聴き遂げただけの事」
?!ルナリィ―ン姫が!あの審判の女神が?!
なるほど・・・さすがは女神ミハルの御主人様ですな。
でも?どうして?
「全ては次なる闘いに備えんとした女神の計らいに因る。
次の大戦は間も無くやって来よう・・・本当の世界大戦というものがな」
地球大戦ですか?それは一体誰とどこでどうやって?
「闇や光と云った種別ではない・・・本物の敵がやってくるだろう」
・・・なんだか遠大な話になりそうですね。
そこで強力な助っ人を呼び戻したいと?
「ミハルは必ず戻ると言った。その手助けをしてやるだけのことだ」
そうも・・・言えますね。
「その為に、余の娘を闇に置いた。
もう一つのホムンクルスは、光を纏わせた・・・美晴と名付けて」
・・・ホムンクルスねぇ?
確かにミハルの遺伝子を組み込んだクローン呼ばわりされていましたけど。
唯それだけの為に?美晴が誕生したというのですか?
女神を復活させる為に、美晴が生み出されたというのですか?
そうだとしたら・・・美晴さんが不憫です。
「人間界に女神を呼び込むには、現存する人であらねばならぬ。
肉体が失われた女神ミハルには、どうしても必要なのだ」
ですからって・・・酷すぎます。
ミユキさんが拒んだのも納得できますし、それでは今生きている美晴さんの魂はどうなるのです?!
「なにか思い違いをしてはおるようだな・・・ミハルはミハルだぞ?」
・・・?
「我が娘コハルにしてもだ。帰還には必要だが、無くすとは云ってはおらぬぞ」
・・・???
「あの娘は・・・必ず成し遂げるだろう。
輝の御子と闇の姫御子。二人を活かす方策を・・・な」
・・・?!それじゃぁ?
「審判の女神が言った通りならば・・・間も無く運命が紡がれるだろう」
?・・・良く分かりませんが?
審判の女神様が取計われるということでしょうか?
「既に賽は投げられたのだ!
悪しき女神か・・・聖なる女神として戻るかは・・・観てみないと分らぬ」
・・・ルシファーさんでも分かってないじゃないですか?
・・・えっ?!今ナント?
堕神ルシファーが光の粒を観て考えていました。
「邪となるか・・・輝を纏うか・・・ミハエルはどう思う?」
天界の天使長ミハエルを妃とした堕神ルシファーが呟きました。
「そなたが消した魂も粛罪により復活したのであろう?
ならば・・・彼女に見せてやれば良いモノを・・・悪戯っ娘め」
ルシファーは意味有り気に笑いました。
「さすれば・・・無駄な争いも回避出来ようモノを。
あの娘に巣食う闇がナリを潜めるかも知れんのに」
左脇に持っている娘が、先程から身動きを停めているのに気付きました。
「気を確かにと言っておいたが・・・無理だったか」
大魔王の結界に入る衝撃は、生身の人間には耐えられぬ程の物だったようです。
「3人娘は魔法衣を着れる程の魔鋼娘だったからな。
この娘には少々難しい話だったか・・・しょうがないな」
ルシファーはシキ君と同程度の魔力を有していたマリアさん達3人を結界に放り込んでいたみたいです。
そうする事により時間を稼がせて。
「ミハエルがあの娘を呼び出すのを待った・・・そしてそれは成った。
今、結界の中には宿命を迎えた娘達が集う・・・運命が紡がれんとしている」
妃であるミハエルさんに託していたのですね?
堕神デサイアと化していたミハルさんを呼ぶ為に。
「さぁ!いよいよ・・・審判の時が来る。
嘗てのミハルが現れるのか・・・それとも邪なる女神のままなのか?
決着の時が来たぞ!審判の女神リーンよ!」
全ては審判の女神に因って。
始まりの時からずっと・・・審判の女神はこの時を待っていたのか?
どうして・・・知っていたのでしょう?
愛する娘が帰って来るのを待った・・・女神だからと謂うからでしょうか?
金色の髪・・・麗しいマリンブルーの瞳を讃えし女神リーン。
女神ミハルと交わした約束を抱く・・・真の女神。
彼女はどうして女神が闇に染まっていると看破したのでしょう?
その訳は・・・間も無く分かるような気がします。たぶん・・・気の迷いじゃなくて。
結界の中には、薄く煙が棚引いていました。
邪なる何かが爆砕されたようです。
煙の下。
ずっと底面に近い処に浮く者が居ました。
更に、そのものより下にも。
紅き魔法衣を着た娘と、蒼き魔法衣を着て対峙している二人の姿が。
「あの二人だよね!停めなくっちゃ!」
女神ミハルは勢いよく飛び込んだ先に居る二人に向かおうとしたのです。
です・・・が。
「えっ?!あれ?何故・・・身体が・・・自由を失われる?」
女神にもどうなったのか分かりかねました。
下方に居る大魔王はこちらに気付いていませんでしたし、他に術を賭けて来るような者も見当たりませんでしたから。
「くっ・・・?くっ?くっくっくっ!」
最初は女神ミハルが身体の自由を奪い返そうとした時の声。
後は・・・嘲る声。
「あ~っはっはっはっ!
まんまと騙されたなミハル、それに頓馬な天使ミハエルよ!」
身体を乗っ取っているのは堕神と化したミハル。
いいえ、そもそも居る筈もないデサイアさんだったのです。
「私はこの時を待っていたのよ!
運命に導かれた娘達が闘い・・・大魔王になる。
どちらが勝とうが負けようが、関係なく大魔王になるの。
その娘を私の味方につけて・・・神に復讐してやるのよ!」
現れたデサイアは嘗てミハルに宿っていた時よりも邪になっていました。
復讐心の権化と成り果て、闇の者の上に君臨しようとしていたのです。
「「ちょっと!デサイアさんッ!悪ふざけも大概にしてよね」」
精神世界に封じられた女神ミハルが地団太踏んで言い募りますが。
「お前は爪でも噛んで悔しがっていればいいんだ。
お前が助けられなかった大切な魂に誓ったんだろう?
必ず仕返ししてやるからと。復讐してやると・・・女神なのに。
堕ちてしまったから私が産まれたんだからな・・・デサイアとして」
そこに居たのは、再び薄汚れたマントを羽織る女神・・・デサイアだったのです。
「「ち・・・違う・・・そうじゃない!
あの時は絶望感に圧し潰されちゃっていただけだから!
挫けてしまった心で、何もかもが虚しくなっていただけよ!
・・・って、あれ?デサイアさん?
話が良く呑み込めないんだけど・・・私。
貴女が言うミハルは、ミハエルさんに逢ったの?
え?ええっ?!ミハエルさんと?どこで?どうやって?」」
「・・・しらばっくれる気か?大した惚け方だな」
確かに・・・惚けっぷりが格段に上昇してますねぇ。
「「えっ?!ええっ?しらばっくれるも何も。
私はずっとあなたの中で眠っていたんじゃ?」」
?
あれ?なにか話が観えませんが?
「「確かに闇落ちしていたのを誰かに呼び起こされたけど?
それが誰だったのか分からないし・・・デサイアさんに封じられたままでしょ?」」
「はぁ?なにを言ってるんだ。さっきまで二人を救うってホザイておきながら」
二人の会話を聞いていたら、余計に混乱しちゃいますよ。
「まぁ・・・良いだろう。
お前はそこで大魔王が産まれるのを指を咥えて観てるが良いのだ」
収拾が着かないと感じたのか、デサイアさんが行動に出たようです。
と、何もしないみたいですけどね。成り行き任せですか?
「ほら、観てるが良い。
二人が剣を交わすぞ・・・勝負は一瞬で着く!」
「「ああ?!二人の私が・・・斬りあっている」」
どうやら堕神デサイアは美晴達を傍観していたようです。
結果がどちらに軍配が上がろうと、獲り込む気だったみたいです。
そして・・・大魔王だった娘が消滅してしまいました。
「「なんて酷い!どうして手を出さなかったのよ!
あなたは私なんかじゃない・・・女神じゃないわ!悪魔よ!」」
ミハルは口惜しがるのですが、どうしようもありません。
「ふふふっ!善いわ。あの娘が・・・美晴が私の手先になってくれる。
予め手懐けてきた娘だから・・・貶めやすそうね」
ニンマリと嗤う・・・デサイア。
これまで騙して来た甲斐があったと嗤うのか?
「「そっか・・・その為に?
貴女は美晴ちゃんに近付いたというのね・・・悪い女ね」」
急に女神ミハルの口調が変わりました?なぜ?
「「そんな考えを持っていたのね・・・ホント・・・邪なんだね?」」
「ふんっ!なんとでもほざくが良い。
お前はそこで世界の神が滅び去るのを指を咥えて観てるが良いんだ!」
デサイアは内なる所に封じた女神を嘲笑いました。
「「笑える程・・・善い話じゃないわ。
これが私の闇だったかと思うと・・・赦せなくなるじゃないの」」
「?!なにを余裕こいてる?お前に何が出来るというんだ?
・・・・だった?・・・・だとぉ?」」
嘲るデサイアが、何かに気付きました。
内なる所で何かが変わったのを。
「!!まさか・・・お前は?!」
気が付いたのと同時に驚愕したのです。
「言っていた・・・さっき。
私が知らない・・・2000年を彷徨ったのだと・・・・」
「「あらぁ~?やっと気が付いたの・・・お惚けさん!」」
形勢逆転でしょうか?
内なる所に封じられている女神ミハルさんの声に余裕が感じられます。
それに対して・・・デサイアさんは?
「馬鹿な・・・そんなことがある筈が?」
「「あるんだよねぇ~!時の魔法って・・・知ってるでしょ!」」
なっ?!なんと云いましたミハルさん?
「「前の1000年期じゃぁ~ね。
リーンにも迷惑をかけちゃったし、やり直す事にしたんだよね~」」
「にゃっ?にゃんとっ!!」
思わず蒼ニャンだったデサイアの正体がバレました。
「「あ。そうそう。言い忘れてたけど。
あなたの記憶にはないだろうけどね、何度かあなた自身を乗っ取っていた事もあるんだよね~」」
「ニャァっ?!にゃんだとぉっ?!」
完全に・・・デサイアさんの敗北ですかね?
「「悪いことはしちゃ駄目だよ?理の女神を名乗るのなら。
堕神なら堕神らしくデサイアを名乗らないと・・・迷惑だよ?」」
それは誰に?
「「神々に復讐しようとするのなら、まず最初に私と闘わないと?
こう見えても理の女神ミハル、逃げも隠れも・・・しませんからW」」
笑いを堪えて?デサイアさんに勝負を挑みます。
「ニャァーッ?!お前は何処から来たんだ?
どうやって私の戒めを解いたというんだ?」
動揺するデサイアさんは・・・忘れ去っています。
アクァさんの存在も魔女のロゼさんが蘇ったのも。
「「私だったのなら・・・思い出したらどう?
フェアリアでルビナス君達に掛けた魔法の事を。
なぜ、この時代まで封じていたのか・・・忘れたのかしら?」」
「な?!あれは確か・・・二人の愛を遂げさせる為?」
「「ブッブゥー、ざぁ~んねんでしたぁ!
私が当時の私を乗っ取っていたからよ!そんなことも忘れていたのね、お馬鹿さん!」」
なんですってぇ~っ?!驚きの発言です!
伏線が遠大に過ぎますよ!!
「馬・・・鹿・・・な?こんな話ってあるか?
このデサイアがミハルの手で踊らされていたなんて?」
「「手駒にされる気分は如何かしらデサイアさん?
いいえ・・・後にはリーンにまで手を出した卑劣な女!赦すまじッ!」」
あらまぁ・・・マジ切れしてるじゃないですか女神ミハルさん?
「「もしもリーンに手を出さなかったら赦してもあげたでしょうけど。
私を名乗って近寄り、私の躰を使って迫るなんて・・・言語道断よ!
その行為は1000年経っても赦されないからね!」」
「はぁ?意味が解りませんが?」
それはそうでしょう。
此処に居る女神ミハルは未来から来たというのですからね。
まだしても居ない事を怒られたって解かる筈がないのです。
「「このまま見過ごしておいたら・・・私が御主人様にオシオキされちゃうんだよ!
リーンにペット状態のままで飼われちゃう・・・それも良いけど。
・・・いいや!絶対良くないしぃ~!」」
・・・なんじゃそれ?
犯行未遂のデサイアさんも開いた口が塞がりません。
「「おっほん!そこで・・・です。
デサイアさんは戒心しますか?今なら未遂ということで殲滅だけは見逃してあげますよ?」」
どうやら・・・女神ミハルは1000年かけて舞い戻ったらしいです。
いいえ。
プラス1000年。併せて2000年という遠大なる旅路の果てにやって来た?
「と・・・待てよ?
未来から来たというのなら・・・この世界は無事に済んでいるのか?
未来にも魔法が存在し、世界は救われたというのか?」
おお?!気が付きませんでした。
そう言う事になるのですね?しかも・・・まだミハルが女神をやってるという?
「「はんっ!やっぱり貴女も相当なお惚けさんね!
貴女が改心して悪さをしなくなったら・・・歴史が変えられちゃうじゃない。
そうなったら、未来がどうなるかなんて私にだって分かる筈がないじゃないの!」」
「・・・あ、そう」
お間抜けな者同士が、アホな会話を交わしています。
「だったら・・・私はこのまま悪事に身を染めるのが筋か?」
「「じゃぁ~殲滅しちゃうよ?」」
女神が溢した未来・・・世界が救われたという明るい未来。
そこにはデサイアの望みもあったのです。
「私が本当に願ったのは・・・人の世界が残される事。
神々に粛清される事の無い・・・存続された未来」
現れたミハルに因って希望が告げられた・・・そう感じたデサイアの執る道は。
「ならば・・・問いたい。
闇の者も残されるのか?悪魔はその時代も居るのか?」
それは人間が居る証でもあったのです。
人に害する者が居るということは・・・人類も居るという事に他ならなかったからです。
「「残念ながら・・・悪魔も魔王も。
それに邪念を持つ人も・・・居続けることになったわ。
繰り返される歴史のように・・・少女だった私が観て来た時代のように」」
「そうか・・・ならば。
ならば・・・滅び去らねばならんようだな・・・」
滅び去る?誰が?
「堕ち神となりしデサイア。
私は殲滅を名乗る女神デサイア!
今、滅びを振り撒こう・・・まやかしの娘達に!」
えっ?!まさか・・・美晴達を?なぜ?どうして?
「娘達を消滅させれば、女神ミハルも蘇れまい!」
あ・・・?!
「大魔王にするまでもない!最初に消すのはミハル・・・女神のミハルだという事だ!」
あ~あ、邪心を捨て去れなかったのですか?デサイアさん。
「「デサイアさん・・・滅ばして欲しいんだね?
自ら滅ぶのは女神には出来なから・・・そうなんだよね?」」
悲し気に呟いた女神ミハル。
「「ここは・・・大魔王の精神世界だよね?
だったら・・・分離したっていいんだよね?
余分に1000年間も過ごしてきたわけじゃない事を教えてあげるわ」」
薄汚れたマントを羽織るデサイアから。
金色の光が噴き出したのです。
「「美晴・・・もう一人の私。
コハル・・・もう一人の女神。
あなた達を救う為にリーンが願ってくれたんだよ?
きっと二人が揃って居たのなら、未来は変わった筈だから・・・だから」」
「うがっ?!」
デサイアさんが身悶えました。
内なる世界から光を吹き出されて・・・聖なる輝を。
「「輝け!チェンジィーィッ!」」
吠える女神ミハル。
現れ出るのは新しいエンブレムを胸元に配した女神の姿。
金色の魔法装甲を纏う・・・魔法衣を着た・・・女神だったのです。
遂に頂上決戦と相成るのか?
デサイアVSミハル?!
ちぃーと、チート過ぎませんかねぇ?
遂に。
遂に本当のミハルが現れました。
新たな魔法衣を纏い、白いリボンを結った・・・・
フェアリア以来、初登場?
このミハル・・・ナニカ違う気が?
そういえば2000女神とかいってましたねぇ~?
昔のイメージを踏襲してます(イメージです。垂れ眼・・・ですが、なにか)
次回 もう一つの未来<<きぼう>> 第5話
君はもう一人の自分に出逢う・・・遥か遠い未来から来た・・・女神に!