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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
197/219

もう一つの未来<<きぼう>> 第2話

挿絵(By みてみん)


大魔王コハルが現れた!!

蒼き礫が・・・結界の中で爆焔を振り撒いたのです。


猛烈なる煙が舞い上がり、狙った的を覆ったのです。



「あ・・・あ・・・あ・・・」


挿絵(By みてみん)


美晴は呆然と見詰めるより他なかったのです。


爆焔の中に居る筈の3人を想い乍ら。




煙が晴れて行く・・・一陣の旋風を巻き起こして。

煙と炎が、美晴の脇を擦りぬけて行きました。



「み・・・みんな?!」


掠れる声で友を呼んだ時。


美晴の瞳に映ったのは巨大な爆発によって出来たクレーターだったのです。

そこにはノーラもローラも、そしてマリアの姿さえもが掻き消えてしまいました。

まるでそこに居なかったみたいに。


「う・・・そ・・・よね?」


穴には人が居た痕跡すら残されていません。

3人娘が爆発に巻き込まれた・・・爆発で蒸発してしまったのでしょうか。


跡形もない・・・とは、このような状況なのでしょうか?


「嫌・・・嫌だよみんな。

 どこに行っちゃったの?どうして逃げてくれなかったの?」


呆然とクレーターに向かって呟く美晴。

突然起きた災禍を信じる事が出来ず・・・


強大なる魔砲を放った者に背を向けたまま呟いたのでした。



「くっくっくっ!所詮は人間如きに歯向かえる筈もないって事よ」


嘲るのは大魔王。


「お前も魔法使いでしかない人間だろう?

 輝を纏い、私の前に現れた事を後悔するが良い」


コハルの面影を残した大魔王が、魔王剣に魔力を籠め始めるのです。


「友だと云うのならば・・・直ぐに後を追うがよい」


血塗られた悪意の言霊と共に。


大魔王の嘲りが耳に入った美晴は、思わず振り返って見上げました。

そこに居るのは産まれた時から宿っていたコハルではない悪意の塊が浮かんでいたのです。


悪魔・・・総じていえば、人に仇名す者。

悪意の塊である悪魔と化した、赤黒き者が居たのです。


「どうして?どうしてなのっ?!」


美晴は大魔王に訊いたのです。


いいえ。

大魔王と化す前のコハルに?


いいえ。

訊いたのは確かに大魔王に対して。


いいえ。

大魔王には向かっていましたが、訊いた相手と云うのは・・・


「どうして・・・コハルちゃんが頼んだのに。

 必死に助けを求めていたのに・・・救えなかったの?」


自分が決断しなかったばかりに、大切な友達を巻き込んでしまった後悔。

最期の瞬間まで自分達に襲い掛かるのを停めようとしていたコハルに報えなかった後悔。


「どうしてなの・・・アタシ。

 どこまで甘ちゃんなの?なぜ他人ひとに頼ろうとしてたのよ?」


誰かが事態を変えてくれるのではないかと縋っていた美晴。


だが、目の前で起きたのは凄惨なる現実。



大魔王を見上げる美晴の瞳が澱んでしまいます。

後悔と憎しみで澱み、蒼き色が失せて行きました。



見上げていた美晴が俯きます。

俯いたまま奥歯を噛みしめて震えたのです。


「・・・こんなの。

 こんな虚構の世界で、死んじゃったら駄目なのにね。

 こんな所で死んじゃったら、天国にも行けないよね?」


不意に漏れ出た美晴の声に、大魔王が魔法を停めて眉をあげます。


「訊いても良い?あなたを倒したらみんな戻って来れる?

 あなたを消し飛ばしちゃったら・・・みんなを還してよ!」


俯いたまま、震える声で美晴が言いました。

ゆっくりと顔を挙げる美晴の右手には、赤鞘が強く握り締められていたのです。


「光を纏う者?闇に属した者?そんなの関係ない。

 大魔王?神?アタシの大切な友達を奪った奴なら、どっちだろうと関係ない!

 コハルちゃんの姿をも奪った奴・・・憎い・・・憎いよ!」



挿絵(By みてみん)



増幅する闇の感情。

増大する魔砲の異能。


それは輝と闇を抱く者、美晴が抱く負の感情を表していたのです。




  シュオオオオオォッ!



大魔王の結界の中だと謂うのに、美晴の足元から闇が噴き出したのです。



「あなたが新たな大魔王を名乗るなら。

 お前がみんなを奪ったというのなら!

 アタシがお前を倒して大魔王になってやる!

 大魔王になってみんなを獲り返してやるんだ!」


闇の心に染まった美晴。

失意と絶望に染まり、憎しみを増幅させて大魔王コハルに叫んだのです。




 ビュオオオオオオォッ!




美晴から黒き魔力が噴き出したのです。

その顔には憎しみと怒りで染まった黒い瞳が燃えているのでした。



「なっ?!なんだと?貴様っ、貴様は?」


大魔王が気が付いた時には、美晴だった光を纏う者は居ませんでした。

そこに居るのは自分と同じ悪意の塊になった少女しか居なかったのです。


「ばっ?!馬鹿な?光を纏った貴様が?この私と同じ力を持つというのか?」


赤鞘を腰だめに構えた黒き瞳の美晴を観て、大魔王が狼狽えたのです。


「何故だ?!その異能は何処から現れたのだ?

 魔王級の異能を、人間如きが何故手に出来たのだ?!」


動揺と焦り。

大魔王コハルは美晴の変化に戸惑い、どう対処して善いのか計りかねてしまったのです。


相手は魔王級の魔法力を有してしまった。

ならば通常の魔砲攻撃では撃退は期待しかねる。


ならば・・・大魔王が誇る魔王剣で。


大魔王はコハルであった時の記憶を持ち合わせていなかったようです。


美晴が剣舞を習得しているのも、いくら魔王剣であろうと敵に当たらねば何の価値もないを忘失していたのでした。



「小癪な小娘がぁっ!」


大魔王は魔王剣を振りかざして闇の魔力を集い始めます。


挿絵(By みてみん)


ですが、此処で大魔王は大変な過誤を犯してしまいました。

一撃で斬り伏せるつもりだったのでしょうが、相手は剣に心得のある美晴なのです。


一撃を受け流す事も、空振りに避ける事だって出来るでしょう。



「大魔王!覚悟しなさい!」


飛ぶような速さで間合いを詰める美晴。

大魔王が犯した失策に、勝機を確信したのか?


「お前を倒してコハルちゃんを助けるんだ!

 本当のコハルちゃんに戻してみせるんだから!」


闇の染まりし心でも。

美晴はまだ諦めていなかったのです。


「諦めないって言ったんだもん!コハルちゃんにも。

 絶対に取り戻してみせるっ、マリアちゃんやローラちゃん、ノーラちゃんだって!」


黒き心に支配されても、美晴は友を取り返すだけを目指しているのです。


憎しみと怒りに身を染めて。


黒く澱んでしまった瞳になっても。



唯、それだけで人は変わってしまうのだと気付かずに。










皇都学園上空に渦巻く黒雲。


まるで幻魔が現れ出るかのような漆黒の雲。


そこには希望の光など在りはしない筈でした。




ある筈がなかったのです・・・が。




「「あれ?!あれはなんだろう?」」


アクァさんが目ざとく見つけました。

いいや、アクァさんに宿っている魔女のロゼさんが見つけたのです。


「うん?何か観えたのロゼさん」


アクァさんには、その光が瞬くのにも気付かないようですが。


「ああ、なにか観えるのかい?」


サングラスをかけ直していたシキ君も魔女に、アクァさんに宿るロゼさんに訊いたのです。


訊いたのです・・・けど。


「「そなた等には観えぬのか?」」


訊いた本人から、全く別なる声が漏れ出たのでした。


「へっ?どうしたんだお前。急に声色が変わったぜ?」


アクァさんが怪訝な顔でシキ君を覗き込みます。


「?!」


と。


その眼に映ったのは今迄温和な顔立ちだった少年が変貌した貌。


「なっ?!どうしちまったんだよ?」


驚いたアクァさんが竦みあがる程、シキ君は表情を変えていたのです。


「「どうやら・・・ミハエルが間に合ったようだな」」


「ミ?ミハエルって?誰の事で何がどうなってんだよ?」


振り向きもしないシキ君に、アクァさんは空を見上げて訊いたのでしたが。


「「そなたの秘めた異能を貸して貰いたい。

  あの中で待っている娘の為に使わせて貰いたいのだ」」


「はぁ?!あたしの時の魔法をか?」


訳が分らず、アクァさんはシキ君に訊き返そうとしたのですが。


「「もはや一刻の猶予もないのだ!そなたをこれから結界に連れ込む。

  3人の娘達に先行して貰っているが、予断は許さんようだ」」


「・・・って?3人って誰で?お前は何者なんだよ?」


頭をフリフリ、混乱したアクァさんが魔女ロゼの代弁をして聞いたのですが。


「「憑代が言っただろう。

  この少年に宿る者で、危急を告げる異界に向かわねばならん者だ」」


不意にシキ君がアクァさんに向き直りました。


「ほぇっ?!」


向き直ったと思ったら。


「ぎゃぁっ?!なにすんだよ痴漢!」


アクァさんを軽々と右腕に抱きかかえます。


「「フェアリアの魔女よ。闇の結界に入るぞ・・・覚悟は良いな?」」


「ひいいいいいいぇえええええええ~っ?!」


アクァさんの叫びだったのか、魔女のロゼさんが泣き喚いたのかは定かではありません。


「「気を確かに持っておれ、行くぞ!」」


問答無用な一言を発したかと思ったら・・・



 バシュンッ!



シキ君を憑代にする何者かが跳躍したのです。


いいや、跳躍なんてものではありません。



跳んだ・・・飛び立ったのです。



黒雲目掛けて。


大魔王が居る闇の結界に向かって。



「「ぎょひえええええええ~~~~っ?!」」


アクァさんに宿る魔女が悲鳴をあげます。


「うっひゃあぁぁぁ~~~~っ?!」


小脇に抱きかかえられたアクァさんも。


それは魔法と言うにはあまりに突飛すぎる技。


技?



じゃ~ありません。


「ひぃっ?!足元から羽根が生えてる!」


それはあまり的確な表現じゃありませんよアクァさん。


「「これは?!もしや天使の羽根?」」


それも。誤りだと思いますよ。天使なら背中に生やすでしょう?


シキ君に宿る者。跳び征く足先にあったのは?


「確かに天使なのかな?抱きかかえる手が・・・温もりで溢れている気がする」


抱かれたアクァさんがシキ君の瞳をサングラス越しに見詰めて。


「?!その眼は?さっきまで紅かったのに?」


温もりを感じる手。

蒼き瞳。


「「さっき余の名を訊いたのに答えて居らなかったな。

  そなたの感じた通り、余は人ではない者。だが、人を貶める者ではない。

  逆に人に寄り添うのを誇りと思う者。

  余の名は・・・ルシファー。

  人は余を堕神とも呼ぶがな・・・」」


シキ君を憑代に選んだのは・・・コハルの父でもある堕神おちがみルシファーだったのです。


「かっ?!神様ですってぇ~っ?」


挿絵(By みてみん)


アクァさんの声が天空に木魂したのは・・・此処だけの話。






さぁ!遂にオールキャストが揃いましたね。

神滅大格闘となるか?はたまたミハルがやっちゃうのか?


魔鋼少女は、いよいよ最終決闘クライマックスに突入したようです!

  

遂に美晴までが闇に染まる?!


決着の後に居続けられるのは?

そして美晴は闇に打ち勝つ事が出来るのでしょうか?


集うキャスト。

遂に姿をみせた堕神ルシファー?!

アクァさんを使うとはどういうタイミングで?


そして!

肝心要の理の女神は何処に居る?!


次回 もう一つの未来<<きぼう>> 第3話


決着が呼ぶのは?闇かそれとも光なのか?美晴は?コハルはどうなるのでしょう?

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