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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
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夢の欠片と希望への想い 第7話

悲痛な戦いの幕が開かれました。


2人の少女が辿るのは・・・滅びの道か?


・・・それとも?!

夢でした。

闇の姫御子だった私が、輝を纏えるなんて。


だから・・・本当に夢が叶ったんだと思ったんです。


人々の前に姿を見せれて、愛しい人に再会出来たのも。


そこには明るい希望だけがあるんだと・・・思っていたのです。



でも・・・やっぱり。



私は大魔王の姫御子でしかなかったんだと気が付かされたんです。


喩え女神の異能に目覚めたとしたって。



本当の自分は輝の中になんて居てはならないのだと・・・






哀しみ・・・苦しさ。



苛立ち・・・怒り。




私には、負の感情しか似合わないんだって・・・・大魔王だから。


ルシファーお父様が堕神に戻られるなら・・・



私は・・・コハルは・・・後を引き継がなきゃいけないんだから・・・・



そうしなきゃ・・・闇の世界は秩序を失うから・・・・だから。



だから?


だから・・・何?


私は・・・コハルは・・・どうしたいの?


本当は・・・人間ともに寄り添いたい。


誰も闇に染めたくはない・・・のに。



誰にも手を下したくないのに・・・なぜ?



でも・・・私は新たな大魔王として存在しなきゃならないの。


闇を振り撒く。闇を広める。闇を・・・



闇を・・・嫌。

嫌だ・・・こんなの・・・願っちゃいないんだから。


大魔王になんてなりたくない。

誰にも悪意を向けたくない・・・の・・・



だから・・・誰か。


だから・・・私を。



・・・消滅させて・・・



美晴・・・美晴だけが・・・私を救ってくれる?


助けて・・・助けてよ美晴・・・お願いだから・・・倒して?!




この新たな大魔王を滅ぼして!








赤黒い瞳の奥。


微かに残された希望が、助けを叫んでいました。



ですが、そこに映されている少女の姿は無残にも傷を負っていたのです。



「はぁ・・・はぁはぁっ」


荒い息をしているのが生きている証。

まだ闘う気力を失っていない姿だったのです。


「コハルちゃん・・・正気に戻ってよ?!」


新たな大魔王と化したコハルの超重力魔砲<グラビトン>をもろに受けた美晴。

一撃で大きなダメージを受けてしまうほどの威力。


もし、持てる最強の魔法衣ではなかったら・・・


「うっ・・・・くっ」


立ち上がる力も、対抗する魔力も。

たったの一回受けた攻撃で、喪失しそうになっていたのでした。


ましてや攻撃するのではなく、防御一点張りの構えの美晴でしたが・・・


「何かに憑りつかれちゃったの?どうしてアタシの声が届かないの?」


必死に堪えるにも限界があるのです。


防御する魔法力にも限度がありますし、強力な魔砲を何度も受けては。


「何とかしてコハルちゃんに気が付かせないと。アタシが助けに来てる事を」


美晴は焦りの中で考えます。

どうすればコハルを目覚めさせることが出来るかと。


「むぅ・・・しぶとい奴ね」


ですが、コハルは美晴を攻撃し続けるのです。

そうする事で怒りが和らぐとでもいうのでしょうか?


「なら・・・こいつを喰らいなさい!」


佇むコハルが紋章を打ち消しました。


現れたのは魔王剣。


「光の者よ。大魔王に抗ったことを後悔するが良い!」



 ニヤリ・・・



邪な目が美晴を見下します。


赤黒き瞳を、戦闘能力を喪失し始めている美晴に向けて。



挿絵(By みてみん)



「光を闇に染められる・・・悔しいか?

 ひかりを失うのはどんな気分だ?

 そこには希望などあるまい?」


嘲ていた大魔王コハルが、そう嘯いたときでした。



 ビクンッ!



一方的に攻撃していたコハルの躰が硬直したのです。


「コハル・・・ちゃん?!」


身体中に疵を負わされた美晴が、苦痛よりも悲しみで歪んだ目をコハルへ向けます。


「希望・・・・だと?!

 大魔王に希望など・・・ある筈がない!」


急に硬直したコハルが、焦りの表情で悶え始めたのです。


「そんな馬鹿げたこと・・・この私が?

 夢や希望の欠片も持つ筈が無いというのに?!」


焦り・・・混乱・・・そして。


「私は大魔王なのだぞ?!闇の王が望みなど抱く訳がなかろうが!」


少女コハルは大魔王に成りきってはいませんでした。


なぜなら。


「コハルちゃん!アタシの声が聞こえるのなら・・・観て!」


届く筈のない輝の御子の声に振り向いたからです。


赤黒き瞳を向けて来たからでした。


「コハルちゃん!ミユキお祖母ちゃんも心配するよ?

 またお祖母ちゃんの元に帰ろう?おはぎを食べようよ、ねぇ?」


力尽き、立っていられない程の手傷を受けても尚。


「コハルちゃんは大魔王なんかじゃないよ?

 だって、みんなが待っているもの。アタシも、マモル君も・・・みんな」


震える手で差し出されたのは・・・


「そ・・・それは?!」


コハルに差し出された美晴の手にあったのは。


「覚えてる?アタシがコハルだった証。

 コハルが美晴でもあった証・・・リーンお姉ちゃんから貰った石だよ?」


蒼き魔法玉。

フェアリアで王女ルナリィーンから授かった女神の石。


それはコハルが女神と接触していた証でもあったのです。

女神から贈り物をされる大魔王など居るでしょうか。


「あ・・・・あ・・・・私。私は?!」


混乱が一頻りコハルを苛んだのです。


苦しみ藻掻く、大魔王コハル。


紫の髪を振り乱し、荒い息を吐く姿は大魔王などではなかったのです。




「だとしたら・・・どうだというの?」


不意にコハルが呟きました。


「私の存在が大魔王ではないとしたら。

 この闇は?この結界はどう証明するというの?」


ゆらりと起き上がり、赤黒い瞳をミハルへと向けて来たのです。


「コ・・・ハルちゃん?」


説得が通じなかったのでしょうか?

もう少しで我を取り戻すかに思えたのに・・・


ですが、美晴の眼には先程までとは別の大魔王が写っていました。


「美晴・・・あなたとは決着を着けねばいけなかったのよ?」


赤黒い瞳はそのままでしたが。


「コハルちゃん?泣いているんだね?」


頬に流れ落ちる涙に気が付かされたのです。

コハルは・・・気が付いたのだと。


我に返っても尚、大魔王を演じているのだと。


「昔・・・言ってたよね?

 アタシと闘わねばいけないんだって・・・つまり、今がそうなの?」


輝と闇を抱く者・・・島田美晴。


嘗て闇に在ったコハルが、いずれは雌雄を決しなければと言っていたのを思い起こし。


嘗て輝の中で生きる美晴を羨ましがったコハルが居たのも真実。


ですが、女神に目覚めて光を手にした筈のコハルが、闘う必要があったのでしょうか?


少し前にコハルも自覚した筈でした。


もう、美晴と闘わずに済むと。



なのに何故?



涙が頬を零れ落ちて行きます。



「それが・・・運命だから。

 二人が産まれた時に、決められた宿命だからよ」


コハルが呟きました。


「闘って・・・どちらかが残る。

 光と闇・・・どちらかが勝たねばいけないからよ」


嘆きの涙が一層多く墜ちて行きました。


「闘う?どうしてアタシ達が闘わなきゃいけないの?」


コハルに向けて訊く美晴。


「光と闇が共に在るべきじゃないからよ」


「そうかな?光があるから影が出来るみたいに。

 ふたつの心が一つに成れるんじゃないの?共に歩めるんじゃないの?」


応える二人。

光と影の存在だった二人。


「光が陰を作る。影はそのものを模る。

 二人が居なかったら、何も存在出来ないじゃない?」


「えっ?!美晴?」


フラフラの美晴が立ち上がり、コハルに手を挿し伸ばします。


「だから・・・手を繋ごう?

 アタシ達は友達でしょ?大切な仲間じゃない?

 怒ったり喧嘩したりしたって、友達なら仲直りできるよ?」


「美晴?!」


ボロボロの美晴が、コハルを求めました。

人の子美晴が大魔王に手を差し伸べたのです。


「辛いなら、アタシも一緒に抗うよ。

 宿命だというのなら、一緒に立ち向かうから。

 だって・・・アタシ達はいつも一緒に居られるじゃない?」


そう・・・大魔王なんかじゃないコハルだったら。


「だから・・・コハルちゃん。

 諦めちゃ駄目だよ。二人で立ち向かおうよ?」


美晴の手がコハルの手を握り締めました。


「温かい・・・な。ミハルの手は」


人の温もりというものか。

それが今を生きる人の希望だと・・・教わったのです。


「諦めない・・・諦めちゃ駄目なんだよね?」


コハルからも答えが。


ですが・・・大魔王を名乗った罪は消えませんでした。


「だから・・・美晴にお願いがあるの。

 もう直ぐまた・・・身体が闇に堕ちる。

 この身体に秘められてしまった大魔王の力によって。

 そうなる前に・・・滅ぼして欲しいの」


強大なる大魔王の異能。

それが再びコハルを支配してしまうのだと・・・言ったのです。


「そんな・・・嫌だよコハルちゃん。

 一緒に抗おうって言ったじゃないの」


「ごめん美晴。どうしようもないんだよ・・・私にも」


これが宿命の為せる業とでもいうのでしょうか?


「私の意識が残っている間に・・・滅ぼして?」


「そっ、そんなこと!出来る訳がないよ!」


首を振り振り。

美晴は後退るのです・・・コハルから。


手を離してしまった美晴の前で、コハルが苦しみ悶え始めます。


「お、お願いっ!早くっ。早く打ち倒して・・・お願いよ」


必死に闇と闘っている表情が、コハルの苦しみを表していました。


「う・・・ううっ?!コハルちゃん・・・」


苦悶するコハルを前に。


「嫌・・・嫌だよ・・・アタシには出来ないから!」


手をデバイス剣に伸ばしても固まる美晴。


非情な瞬間がどちらに堕ちるというのでしょう?

このままコハルが大魔王化したら、今度こそ美晴が殺されてしまいかねません。


でも、美晴にはコハルを打ち倒すだけの心がなかったのです。


「おねがぁ~いっ!美晴を討つのは嫌だからぁ!

 今直ぐ滅ぼしてよぉっ!それが今の願いなんだからぁ!」



挿絵(By みてみん)



苦悶するコハル。

手を出しかねる美晴。


もう直ぐ待っているのは・・・・悲劇でしょうか。




「そんなに滅びたいんかアンタは?」


二人の背後から。


「そんなに苦しんだら。もう罪は消えたんじゃないのか・・・ノラ?」


人影が3つ。


「ノーラ姉さんの言う通りだよね、今回だけは」


それぞれの持つ属性を有した魔法衣を纏い。


「そやったら・・・大魔王とやらだけをぶっ飛ばしたったらええんやな!」


ピンク髪を靡かせたマリアさんが気安く言って除けたのです。


手にした魔鋼の銃を振りかざして・・・




挿絵(By みてみん)



騎兵隊の登場か?!

それとも勇者様ご一行の到着か。


希望の欠片はこんなにも近くに居たのでした。



次回はいよいよ決着でしょうか?

希望・・・


それは光の中に在りました。


夢・・・それは儚く消え去るものなのでしょうか?


2人の少女を見守る者が居ました。


彼女は心から心配し、そして企んだ者の前に姿をみせるのです。


そう・・・彼女が一番望んだのは?


次回 夢の欠片と希望への想い 第8話


挿絵(By みてみん)



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