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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
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夢の欠片と希望への想い 第6話

美晴は駆けていきました。


不吉な予感に抗うように。


助けを求める声に気が付いて・・・

皇都学園に群雲が覆い被さって来たのです。


まるで世界に闇を齎さんとしているみたいに・・・・



美晴は駆けて駈けて。


紅鞘の剣を左手に、右手の魔法石に頼んだのでした。


「伯母ちゃん!あの子を護ってよ!」


美晴が頼みとするのは理の女神でした。

右手に填めた魔法石を憑代にしている女神に頼むのです。


「アタシを結界の中に入れて!きっとコハルちゃんが闘っている筈なの!」


黒雲を見上げて駈け続ける美晴。


「コハルちゃんがピンチなんだよきっと!

 アタシには聞こえたんだ、コハルちゃんの心が泣いているのを!」


幼き頃、コハルは美晴に同化していたのです。

いえ、憑代というよりは、同じ時を生きた姉妹とも言えたのです。


「気が付いてしまったの!

 アタシには聞こえてしまったんだ!

 コハルちゃんが泣く声が!コハルちゃんが苦しんでいるのにほっておけないよ!」


ブレスレットに填められた蒼き宝珠。

その中には女神が居る筈だと美晴は呼び続けるのです。


「ねぇ伯母ちゃん!聴いてるんでしょう?

 結界を開いて!アタシをコハルちゃんの元まで連れてってよ!」


駆ける美晴。

必死に呼びかける蒼き石へ。


そして・・・応えられたのは。




美晴が駆ける先に澱んだ陰が現れたのです。


「そこなんだね?!」


蒼ニャンの声は聞こえませんでしたが、そこが闇のゲートだと気が付いたのです。


てっきり、美晴は蒼ニャンが開けてくれたものとばかり思い込んだのですが・・・


「「美晴っ!待つんや」」


首元の通信機からマリアの叫びが聞こえてきました。


「「その中に入ったらアカン!」」


呼び止めようとしています。


「「ローラが気が付いたんや。その中に居るんは並みの悪魔やないみたいなんや!」」


そうでしょうね、コハルならば。

大魔王と化したコハルが居るのなら。


ですが、美晴にはコハルの現状が判る筈もありません。

唯、コハルを助けたいと一心に思っていただけですから。


「ごめんねマリアちゃん。アタシは大切な子を助けたいの」


純真な美晴は、マリアの制止を振り切りました。


そうです。

影の中に飛び込んで行ってしまうのでした。


「「待つんやミハル!行ったらアカン!」」


最期に聞こえたマリアの声は、友を奪われそうになった少女の叫びだったのです。






澱んだ空間。

そこは何度か来た事のある闇の中とは、別の次元でした。



結界の頂部は霞んで観えず、巨大な空間だと知れました。

また、魔王級の結界に浮かんでいる岩山も、数知れない程浮かんでいます。


「ここは?こんな巨大な結界が造れるなんて・・・」


勢いで飛び込んだものの。


コハルの姿は見えません。誰かが潜んでいるようにも思えません。


ですが、何故だか。


「恐怖?それとも怒り?

 どっちにしたって、闇の異能が溢れている」


敏感に感じ取るのは、美晴が剣舞を習得しているからでしょうか?


この空間の中に、探し人が居る筈だと思っている美晴の打つべき手は?


「コハルちゃ~ん!美晴だよぉ~!」


・・・大声で呼ぶんかぁ~い?!


それが美晴が導き出した手ですか?


「こんな所で何をしてるの?闇の結界の中だよ?」


そう言っている美晴でしたが、紅鞘の剣を持つ手に力を込めています。

つまり、邪なる者が潜んでいるなら誘き出そうと?



 ズ  ズズズ ズズズズズゥ・・・・



何者かが。

何かを引き摺っているようです。


しかも、美晴へ向かって来ているようです。


咄嗟に美晴は魔砲の異能を蒼き石に注ぎ込みました。


何故か?


それは・・・・



「タダならぬ者の気配。しかも姿を曝け出さない?!」


もう、魔鋼服で居られる状況ではないと判断した美晴。


「コッチも全力を出さないと・・・コハルちゃんに逢わせて貰えないってことね」


魔砲少女美晴が、蒼き宝珠にトランスフォーメーションを命じます。


「シャイン・トゥ・エクセリオ!全力装備!」


美晴はいきなり全力戦用のエクセリオ・モードを選択しました。

それというのも、相手の異能が底知れなかったからでした。


「こんなパワーを振り撒くなんて。相当ヤバイ奴なんだ?」


冷や汗を掻く位の魔力を感じ、美晴は闘いよりもコハルを案じるのです。


「なんとかして、こいつを祓い・・・コハルちゃんを救出しなきゃ」



 ズズズ・・・ズルリ・・・ズルリ・・・



徐々に音は近付けども・・・姿は見えません。



ですが。



「はっ?!影?」


近寄る者の影だけが、結界の地表を這いずって来たのです。


咄嗟に上空を見上げる美晴。


「・・・嘘」



そして、気付かされたのです。

音の正体に。



そこに浮かんでいたのは・・・



「コハルちゃん!探していたんだよ」


半眼のコハルが佇んでいるのでした。






赤黒き闇の結界。

その中で巡り合えた美晴とコハル。


いいえ。


巡り遭ってしまったと、言うべきでしょうか。



美晴の直ぐ傍まで近寄って来たコハル。

空中浮揚したままで、まるで夢遊病に罹ったみたいに半眼で。


半眼・・・で?!


歪んだ口元を、更に歪めたのです。



 ニィッ



口元から音がこぼれたみたい・・・に。

歪んだ唇から牙が垣間見えたのでした。



「コハルちゃん?!心配してたんだよ?一体此処で何が起きたの?」


見上げて呼びかける美晴が訊いたのですが、コハルは変な笑みを溢しているだけ。


だと・・・まだ良かったのですけど。



 シャランッ!



胸元のブローチから剣を抜き出したのです。


その剣は・・・魔戒剣?!

いいえ!大魔王の持つ魔王剣!!


闇の紋章が刻まれた魔王剣を、コハルは抜き放ったのです。



途端に結界がざわめき立ちます。



ざわざわざわざわ ざわっ



地表に魔王の放つ闇が、そこ彼処に火を燈し出しました。

蒼黒い炎を揺らし、大魔王の怒りを象徴していました。


「コハルちゃんっ?!何を・・・」


見詰めた美晴が、漸く尋常ではないと悟ります。

赤黒き瞳に気が付いて。


そこに居るのは普段温厚なコハルなんかではないと。


「怒り・・・憤懣・・・赦せない・・・何もかも」


ぶつぶつとコハルの口から漏れ出たのは?


「コハルちゃん?!」


美晴の眼に、コハルの姿をした悪意の塊が写り込んだのです。


「私から爺やを奪った者を。私を貶めた者を・・・輝を纏う者共を。

 八つ裂きにしても許すべからず・・・闇を振り撒いて滅びを齎さん!」


大魔王となってしまったコハルには、美晴の声は届こう筈が無かったのです。


せめて、美晴が闇の事を知っていたのなら打つ手はあったのですが。


「コハルちゃん!アタシだよ美晴だよ?」


呼べど叫べど。

輝の魔法衣を着た者の声は、大魔王には届かなかったのです。


そう・・・美晴が闇の異能を使えば、届いたのかもしれませんが。


「そなた・・・輝の者だな?ならば・・・私にとっては邪魔なる者!」


魔王剣を翳したコハルが呟きます。


そして剣を掻き消したかと思えば・・・



「グラビトン!!」


いきなり。


美晴へ向けて魔王級の術を放って来たのでした!



挿絵(By みてみん)





不幸。

それは突然に。


コハルとミハル。


今、輝と闇が相交わり。

今、雌雄を決さんと。



少女達は、意図しない戦いに巻き込まれてしまうのでした。




上空に佇む新大魔王から繰り出された魔砲。


蒼黒い魔法陣が描かれ、そこより降りかかって来る闇の波動。


見上げる美晴は絶望に目を見開いたのでした。



このままでは?

主人公最大の危機に発展してしまう?


次回・・・輝と闇の御子達が・・・闘う?!

助ける筈だったのです。

闇に囚われている声の元に来たのでしたが。


現れたコハルから還って来たのは・・・


とうとうこの時が来てしまったのです。

昔、コハルが言っていたことが現実になったようです。


それは本来、光と闇の異能がぶつかる宿命の戦いでした。

ですが、こんな不幸な闘いになるなんて?!


次回 夢の欠片と希望への想い 第7話

君は圧倒的な魔力の前に為す術もないのか?!闇の前に抗えないというのか?!

光の御子VS闇の魔王 今宿命の時が来た!

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