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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
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夢の欠片と希望への想い 第5話

コハルの爺やが。


巨靭兵に敗れたのです・・・


それは、悲劇のほんの一片でしかなかったのに気がつきませんでした。

3馬鹿魔王達を飲み込み、魔力を拡充した<巨靭兵>が放った破壊波。


魔法障壁を展開して主人を護った爺。


何もすることも、何も手を下す事も出来ずにいたコハル。



一瞬の内に取り返しの出来ない犠牲が支払わされてしまった。



そう。



罪なき、穢れ無き姫御子の心に楔を打ち込んだのでした・・・





「爺ぃっ?!嫌ああああぁっ!」


破壊波は、エイプラハムを掻き消してしまいました。


精神世界で姿を消された者は、無に等しい存在となるのです。


存在を消された者は、証を記憶している者が居なくなれば<真の無>になってしまうのです。


もしも・・・コハル達が爺の事を忘れてしまえば。


「返して!返してよぉっ!爺を、私のお爺ちゃんを!」


泣くコハルが叫んだのは、エイプラハムがまだ復活出来るかも知れなかったからでした。


精神世界である結界の中、姿を消し去られたとしても・・・


「返してくれないのなら・・・赦さない。

 この大魔王の姫御子コハルが・・・絶対に赦したりしない!」


消し去った相手が存在を認めるなら、姿を消されても戻る事が出来るからでした。

精神世界に存在する事が出来たからでした。


ですが・・・


巨靭兵は、次なる破壊波動を準備し始めるのです。

つまり、もうエイプラハムを取り戻す事は出来ない・・・・闘うしかないと思えます。


「お前・・・私の言った言葉が分からないの?

 大魔王の姫御子が命じた事に従わないの?

 この闇の世界で・・・コハルの言う事を聴けないっていうんだね?」


泣き止んだコハルがふらりと立ち上がります。

乱れた髪に顔を半ば隠して。前髪に隠れされた瞳に、妖しい光が燈りました。


「じゃぁ・・・もう。

 お前の存在を許したりしない。お前が楯突くのならば、容赦なんて与えない」


コハルの口から、禍々しい言霊が零れました。


「最期に・・・言い残す事はないか?ないよね?

 一言だって溢さずに・・・お前を葬り去ってやる!」


左の人差し指を立て示し、コハルが本性を現したのです。

赤黒き瞳・・・闇の王が持つ剣を手にして。


挿絵(By みてみん)


大魔王の姫御子コハルが、怒りの表情で邪操機兵を睨んだのでした。


「今直ぐ爺を復活させるのなら、考慮してやらない事も無い。

 だが、断るのなら・・・私の怒りを受けて滅び去るが良い!」


睨んでいたコハルの瞳が、青黒さを滲ませます。


もしも巨靭兵が、戒心して爺やを復活させたのなら。


「女神を併せ持つコハルの慈悲で・・・殲滅だけは赦してやる」


剣を腰だめに構え、コハルが最後通牒を突きつけたのです。


「今直ぐ・・・返せ」


構えるコハルの強大なる魔力が剣に注がれ、蒼き光を放ち始めました。


挿絵(By みてみん)


「返さぬのなら・・・お前も無に帰してしまうが良い!」


コハルの瞳から徐々に蒼さが失われて行きます。

それはもう、小春神ではない証であり、闇の大魔王でしかなかったのです。


コハルが魔力を貯めるのと同じく、巨靭兵も顎を開け放って第2弾を放とうとしていました。


どちらが先に?





「ぎゃああああぁっ?!さっきの一撃でパワーを使い切っちゃったよ!」


巨靭兵の中で、ランドがぜぇぜぇ息を切らしてペダルを漕いでいました。


「そんなことぁ~わぁ~ってる!」


同じようにペダルを漕いでるリュックさん。


「泣き言はおよし!二人共一蓮托生だって言ってただろーーがぁ!」


姐御ポーチが必死にペダルを漕いでいますが?


「でもぉ~なんでぇ~魔王3人が魔力注入ペダルを漕がなきゃいけないんだよぉ?」


ゼハゼハ言いながら3馬鹿魔王が漕いでいるのは?


巨大な邪操機兵、巨靭兵に魔力を貯める為のペダル?!

まるで3人乗りの自転車をこいでいるような姿なんですけど?


あ・・・もしかして。

これは・・・フラグですか?


既に負けが確定してしまったという?


「だぁってぇ!一撃で二人共吹き飛ばす筈だったんだからぁ!」


ランド君・・・残念。


「二発目なんて考えても居なかったw」


( ´∀` )・・・・


「あんのぉ糞爺くそじじいめ。姫御子を護って消えやがってぇ!」


アレ?3馬鹿魔王達が消し飛ばしたんじゃ?


「奴にまんまと一杯食わされたんだ!破壊波動を己の姿と引き換えに掻き消しやがるなんて」


・・・と?いう事は??


「あの爺っ!今頃どこかで高みの見物としゃれ込んでやがるんだぜ!」


・・・あらまぁ。じゃあ、コハルちゃんにそう言えば良いじゃないですか?


「どういう訳か分からないけどさぁ、外界に話すスピーカーが付いてないんだよねぇ」


「この邪操機兵ってば、不完全な仕上がりだよねぇ。不良品だよ!」


「って、言ったって。後の祭りだぞぉ!」


・・・おいたわしや、3馬鹿魔王さん達。




で?




この後って?お決まりのパターン?



「おたすけぇ~~~ぇ!」


3馬鹿魔王の叫びが、巨靭兵の内部に木魂したとかしないとか。




「「御許しを・・・姫様。これも理の女神様の言い付けなのですじゃ」」


ちゃっかり・・・存在していますが。


「「このエイプラハムに、女神様の御命令を拒否など出来ぬ相談なのですじゃ」」


光の揺蕩う中で、狒狒の魔獣だったエイプラハムが謝罪しています。


「「こうすることで、私メも光を纏えるようになれると。

  女神様から言い渡されたのですじゃ・・・御許しくださいませ」」


なんと・・・蒼ニャンの策略でしたか?!

一体何を企てて、このような真似を?


「「ですから、付き添う時に申し上げたでしょう?

  この件は女神様のご承認を受けているのですと・・・申し上げたでしょう」」


輝の中で魔獣は聖獣となれたのです。

そうする事により、爺は・・・


「「姫君の傍に。喩え闇でも輝の中でも、お傍に居られるのですから」」


なんと?!

蒼ニャンはエイプラハムを唆し、交換条件を提示していたというのです。

そして今、まんまとコハルを戦いの場に引き摺り込んだ。


「「お優しいコハル様が、闘わず赦してお終いになるのを回避する為。

  姫様の実力を計るためとはいえ・・・騙してしまった爺をお許し下され」」


罪の意識で、爺は謝罪を続けていたようです。


「「あのような中途半端な巨靭兵など。

  姫様なれば一撃で葬り去れましょうに。爺やは信じております故」」


輝の中に映し出されている闇の結界。

今、爺やが居るのは神々が居る天上界に準じた場所。


「良くやってくれた狒狒。その恩賞を受けるが良いわ」


輝の中、蒼ニャンの声が爺やに届きました。

既に魔獣から聖獣となった爺やに、一振りの杖が与えられます。


「これは守りし者が携えられる杖。これからも人の世の為に尽くすが良い」


何時になく重々しい蒼ニャンの言葉。


「間も無く決着がつくわ輝と闇の。その勝者に付き従いなさい」


蒼ニャン?コハルが負けるとでも?

まさか3馬鹿魔王が勝つなんて思っちゃいないでしょう?


「「理の女神様、姫様以外に付き従えと仰るのですか?」」


途端に爺やが訊き募ります。


「「私メが望んでいるのは、姫様の傍に居続けることのみ。

  そうでなければこのような謀に従う事など、在りはしませぬぞ!」」


そうでしょう。

狒狒爺やは純粋にそう願ったのでしょうから。


「言った筈。私は狒狒の異能を買ったのみ。

 その異能を勝者に対し捧げるようにと・・・言いましたよね?」


ばっさりと蒼ニャンが言い切ります。


「そなたの望みなど、私は汲んではいない。

 私が必要なのは、本当の敵と戦える力のみ。そこに情状を酌量する気なんてないわ」


?!蒼ニャン。何を言ってるの?


「そなたが欲した光の姿。

 私は、闇と光の双方の異能を持てる者を増やしただけ。

 唯、どちらが勝とうが、それに従う者をあらかじめ用意したのみ」


冷たい・・・冷たい言葉ですよ蒼ニャン?

それが慈悲深い蒼ニャンの言葉とも思えません。


「闘いは常に非情。

 その闘いの女神である私には、希望や願いなど求められない。

 人類存続の為なら、遠い縁をも・・・滅ぼすでしょう」


蒼ニャン?!本当に蒼ニャンなのですか?!


「狒狒の魔獣だった者よ、人のことわりに尽くすが良い。

 人の世に歯向かう者を殲滅せよ、この闘いに勝利した者に尽くせ。

 間も無く・・・その時が訪れるだろう」


・・・蒼ニャンを模った別人ですね。あなたは何者?!


「私は人に寄り添い1000年を旅して来た女神ミハル。

 人は私の望みを裏切り続けた、どんなに手を挿し伸ばしても。

 どれほど戦の愚かさを説いても・・・神を愚弄し続けてきた・・・・」


まさか?!本当に・・・オリジンミハルだというのですか?


「だが、その人類を守らねばならない。

 未来に希望という者が居るのなら・・・私は敵を殲滅せねばならない」


・・・

・・・・・

・・・・・・・・



嘗て。


女神の中に居ました。


ミハルに憑りついた<デサイア>という名の女神が。


彼女は確かに<殲滅の女神デサイア>を名乗っていましたが・・・・



その彼女が、なぜ今になって?!



「聖獣エイプラハム。そなたには主である者を守り抜く使命を授けます」


蒼ニャンの言葉が聖獣となった爺やに堕ちました。



それは・・・確かに女神の宣旨。

まごう事ない女神の証だとも言えたのでした。










「終わりよ!巨靭兵!」


大魔王の剣が振り建てられて。


「消え去るが良い!魂も何も残さずに!」


巨靭兵のアギトから破壊波動が打ち出される瞬間でした。



 キュゥイイイィン!



魔王剣が蒼き光を放ったのです。


「大魔王が命ずる!我が名コハルを以って、打ち倒せ!」



 ズアアアアァッ!



強大なる魔力により、結界が歪んでしまいました。

結界の中で・・・独り。


大魔王の姫御子だったコハルが、今放つのは?!



「デビルス・ブラスター・・・シュゥートォ!」


魔戒剣であるルシファーの剣から。

まるで正反対の魔力が打ち出されてしまったのです。


そう・・・大魔王本来の闇の波動が。


闇に染まったコハルの怒りを象徴するように。




 ズッドオオオオオオオオオオオオオオオ・・・




闇の結界に浮かんだ岩が消し飛び、巨靭兵が切り裂かれて。



挿絵(By みてみん)



「ジ・エンド!消滅してしまえ!」


紅き瞳に堕ちてしまったコハルが叫びました。


黒い影だった巨靭兵が、姿を消していきます。

終焉を迎えるのは、やはり巨靭兵。


いくら強大な邪操機兵といえど、大魔王に敵う筈もなかったのです。


「「ぉ・ぇ・・・ぉ~」」


殲滅を受け入れた巨靭兵から、何か聞こえた気もしたのですが。

気の所為だったでしょうか?


ああ。

当然ですけど、あの3馬鹿魔王達も一緒に拭き消され・・・あ。


きっと負け惜しみを言って、どこかに行ったんでしょうねぇ。←生き残ってるのか?




こうして。


襲いかかった巨靭兵は駆除されたのです。


コハルにより、闇の結界は破られ・・・・てない?!



どうしたというのでしょう?


襲いきた闇の者以外にも居残っているのでしょうか?



「まだ・・・よ。まだ・・・

 私の怒りは納まりはしない。大切なモノを奪われた怒りは!」



紅き瞳になってしまったコハル。


放ってしまった大魔王の異能に依り、染められてしまっていたのです。



そう。


彼女自体が大魔王と化していたのです。




それが<イシュタルの民>の狙いであったのかどうか。


小春神はそこには居なかったのです。


そこに居るのは<新たなる大魔王>となったコハルしか居なかったのでした。



光と闇を放つ者は、闇に堕ちてしまったようです。





それがどうして?


蒼ニャンの企みだったのでしょう?


答えは次回に引き継がれます。



怒り

そして復讐心。


今、彼女は闇の王と化してしまったのです。

女神だった事も、人々と親交を深めたのも。


そして愛する人々の願いさえも・・・


新たなる大魔王はこうして生まれてしまったのでした。

イシュタルの民が画策するよりも早くに。


次回 夢の欠片と希望への想い 第6話

救出に向かったミハルの眼に映ったのは希望ではなく・・・絶望?!

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