夢の欠片と希望への想い 第2話
さぁ!戦闘だぞ!
って?!
なんですか、その装備は?!
警報が鳴り響く皇都学園。
迎撃態勢に移行した皇都魔鋼戦闘団(IMS)。
襲い来るであろう邪操機兵に対するのは・・・
「「警告!運動場には立ち入らないでください。繰り返します・・・」」
アナウンスがスピーカーから流れ、立ち入りが禁止された運動場に地下からフェンスが現れ出たのです。
つまり、ここが?!
「「各員に告げる。ハンマーの装備を点検したまえ」」
マモル司令が直接呼びかけて来たのです。
「「間も無く、敵邪操機兵が出現する。発進準備にかかれ」」
格納庫に収められていた零号機以下、4人のパイロットが操る輝騎が魔鋼機械を始動させました。
「こちら零号機、美晴!準備よしっ!」
正面モニターに向けて美晴が応えます。
普段ならモニターに映っている零号機専用の装備、斬敵剣の表示がありません。
代わりに写っていたのは。
「しっかしぃ~、こんなので邪操機兵がやっつけられるのかなぁ?」
長い柄のついたハンマーみたいな物が。
「「美晴ぅ~、文句は言わない約束やろぉ~」」
隣のハンガーに収まっている二号機パイロット、マリアが聞き耳を立てたのか。
「「ウチもこんなんで闘うなんて思ってなかったわ」」
中距離狙撃専用機であるマリアの二号機にも、同様に装備されていたのです。
「「ホンマに・・・モグラ叩きさせられるんちゃうか?」」
モニターに映るマリアは、辟易とした表情で話して来るのです。
「命令だもん、しょうがないよ。
アタシが心配してるのはね、こんな武器で邪操機兵が倒せるのかなんだよ?」
二人が話していると、横合いからノーラが割って入ります。
「「にゃははっ!問題無し子ノラっ!
要は邪操機兵を現世に出さなきゃ良いノラ!」」
そして、ノーラの弟(姿は女の子)のローラまでが。
「「そうそう!ピコッと叩き伏せれば良いんじゃないの?」」
お気楽に話して来たのです。
「二人共ぉ~、そんな簡単に片が着くとは思えないよ」
美晴は古参の魔鋼騎パイロットらしく心配したのですが。
「「せやな!出て来られんようにしたらこっちの勝ちやしな!」」
キャップであるマリア二等官補(中尉に相当)が、姉弟に同意します。
「がくっ!マリアちゃんまでもぉ~~」
同じ小学部からのパイロット仲間であるマリアが、姉弟に同意しちゃいましたから。
「「そぅ難しく考える必要は無いんちゃうか美晴?
マモル司令には司令なりの考えがあるんやと思うで」」
「どんな?」
即座に美晴が訊き返しました。
「「・・・・せやから・・・な。
ウチに訊かんといてや、判る筈ないやん!」」
マリアが口を尖らせて言い返しました。
二人の会話にローラ君がボソっと呟きました。
「「もしかしたらマモル司令は・・・誤魔化そうとしてるんじゃぁ?」」
「マモル君が?何を誤魔化すというの?」
実父である司令が何を誤魔化そうとするのか?
美晴は嘘を吐けない性格のマモルを知り過ぎて居ましたから、ローラに突っかかりました。
「「うん!僕も、まさかとは思うけど。
司令はまだ見物客に魔鋼の闘いを知らせたくないんじゃないかな?」」
「はいぃ~~ぃっ?!いくら何でも無理でしょ?」
これから戦闘になるのに、どうやったら闘いじゃないと見せれるのか?
「「う~んっ?!美晴の言う事が当たり前だと思うんやがな。
このピコピコハンマーを観てたら、ローラの言う事にも一理ありそうや」」
はぁ?!マリアさんまで?
「「マリアも気が付いたかい?
出て来る瞬間を捉えて叩くのは分かるけど。
相手は邪操機兵なんだよ?こんなハンマーで叩いても倒せないよね?」」
「そ、それはそうだけど。
それとマモル君が誤魔化そうとしてるってのと、どう関係があるの?」
独りちんぷんかんぷんな美晴が答えをせがみます。
「「鈍いなぁ美晴ぅ~。
マモルお父さんが誤魔化す相手は、見物客ってことや。
つまりまだ魔法や魔鋼騎が消えた世界だと思っている普通の人を、なんやで?」」
いくらニブチンな美晴でも、気が付くでしょう。
「だぁ~かぁ~らぁ~!ハンマー装備がどう関係があるの!」
・・・鈍かったようです。
「「・・・お祭りの最中なんやで。
そこにロボットが現れて地中から現れるロボットを叩く。
まさに・・・モグラ叩きアトラクションやないか!」」
・・・それは。私も気が付きませんでした。
「「そーそー!ど派手な演出!ど派手なアクション!
銃弾が飛び交わない、ロボットを使った模擬モグラ叩きゲームとして。
巧くアタシ達が邪操機兵を叩きのめしたら、単なるアトラクションにしちゃう気なノラ!」」
おおぅ?!ノーラにも分ったんですか?!
「「ノーラにも・・・は、余計なノラ」」
・・・・・・。
「そっかぁ~!そう言う事なんだね。
だったら、一匹として飛び出されないようにしなきゃぁ!」
漸く解った美晴が、力瘤を作って力説します。
「「そー!そー!間違ってもゲームオーヴぁにならないように!」」
「「姉さんが、ドジを踏まない限り大丈夫」」
「「ローラ!君に言われたくないぞ!ノラっ!」」
姉弟が場を和ませてくれました。
「でもぉ・・・もし。もしもだよ?
飛び出されちゃったらどうするのかなぁ?」
心配性の美晴が、失敗した時の事を考えたのですが。
「「美晴・・・その時はね、奥の手を使うんだよ」」
「わぁっ?!マモル君、聞いてたの?」
あの、美晴さん?元から回線を開きっぱなしでしたでしょ?
「「マモル司令。奥の手って?」」
マリアがどうするのかを問うたのですが。
「「秘密」」
あっさり拒否られました。
「「そんな心配するより、全力で叩いておいで。
君達ならオールクリア出来る筈だよ、僕は疑いなくそう思っているから」」
マモル司令は笑いかけて来ました。
戦闘の前だというのに、司令は笑うのです。
美晴はそれが父であるマモルの余裕だと感じました。
「「さぁ!皇都魔鋼戦闘団出撃!現れ出る邪操機兵を叩くんだ」」
マモル司令の命令で、4人はコックピットで身構えました。
「「了解!」」
格納庫に出撃ブザーが鳴り響きます。
普段なら目的地に向けて出動する処ですが、今回は頭上の運動場まで登るだけ。
格納庫から地上に向けて射出される時間は、ほんの数秒。
カタパルトに4機の輝騎が載せられ・・・
「「全機、発進!」」
4機同時に打ち出されました。
ドシュ!!
瞬きする間に、地上へと登り詰めて。
「「美晴っノーラローラ!4機でフォーメーションを組むで!」」
キャップのマリアが命じました。
「「各個に撃破を目指す!でも、連携を執るんやで!」」
「「了解!」」
4人が運動場に展開しました。
うわぁあああああああぁ~~~~!
大歓声?!
「「皆さま!ご覧ください。これが皇都学園科学部の為せる技です」」
あれ?!
「「皆さまには安全な場所からの観劇にて、お楽しみ頂きたいと思います」」
・・・やっぱり?!マリアさんの想っていた通りでしたか!
スピーカーから、これがアトラクションなのだと告げる声が流れ出ました。
「マモル君・・・謀ったな!」
マリアから聞いていた通りだと、美晴は口を尖らせますが。
「だったら!パーフェクトするしかないジャン!」
モニターに映る父マモルに、ウィンクしたのです。
4機が散らばった時。
うにゅる・・・うにゅる・・・
地上に空間転移の穴が開き始めました。
その穴から這い上がって来るのは?
「「全機!作戦<モグラ叩き大作戦>スタート!」」
マモル司令が発令します。
「「了解っ!一機も逃すんやないで!」」
マリアが3人を促しました。
各機はそれぞれの目標に向けて飛びかかります。
勿論究極の武装、ピコピコハンマーを携えて。
「「おどりゃぁ~っ!ノラ」」
3番機のノーラが吠え、ハンマーを邪操機兵目掛けて振り下ろしました。
ピコッ!
と。音がしたと思えば?!
「「やったノラ!」」
いつの間にか、大型スクリーンが掲げられていて?
「「おおぅっ?!得点をゲットしたノラ?!」」
ポイントを表示していくのでした。
アトラクションだと思わせる為に、手の込んだことを!
「「もしかして?ボスキャラとかもいるのかノラ?」」
モグラ叩きにボスキャラとは・・・これ如何に?
4人はそれぞれ受け持ちの区画で叩きまくります。
「「ほ~れほれ!そこや!」」
俊敏な動きをみせるマリアの二号機。
既に300ポイントをゲットして、撃叩き数1位を突っ走ってます。
「「にゃんとぉっ!アタシも負けちゃぁいないんだから!」」
美晴も負けじと叩きまくります。
運動場で繰り広げられる闘い・・・の、筈が?
「「これはもう、完全にブちぎれたノラ!」」
スカされたノーラが意固地になって叩きまくります。
完全に・・・ゲームですね、もぅ・・・
だんだんと手慣れて来た4人によって、邪操機兵もネタ切れ間近。
「「おらおらおら!かま~んっ!」」
ノーラが調子にのって手招きしてます。
ですが、もぅネタが尽きたのか邪操機兵が出なくなりました。
「「終わりちゃぅんか?」」
マリアも完遂したと思った時です。
魔法力を感知できるローラ君がひっ迫した声で言ったのです。
「「ボスキャラがどうとか言ってたよね?
どうやらそいつのお出ましみたいだよ!」」
運動場のど真ん中に、巨大な穴が開きました。
そこから出て来ようとしているのは、今迄で一番巨大な邪操機兵!
「「あの大きさから考えたら。このハンマーじゃあ無理だノラ?!」」
4人のハンマーでは叩いても出て来るのを阻止出来なそうに思えました。
「だったら!みんなで一緒に叩いちゃおうよ!」
美晴がモニターに映った友達へ誘いかけたのです。
「「おぅ!そやなっ!」」
「「良いですねぇ!」」
「「ニシシっ!4機纏めてフルハンマー!」」
即座に同意を得られたのです。
魔鋼少女達は、団結力も半端なかったようです。
「「そんじゃぁ~!いくでぇ!」」
「「ばっちこい!×3」」
4機が、4方向から。
「「せぇ~ぇ~~~~のぉっ!」」
巨大邪操機兵目掛けてジャンプしました。
「「ぶちかませぇっ!」」
振りかざしたピコピコハンマー!
4本のハンマーが一時に叩きつけられます。
「「これでぇ!ジ・エンドぉっ!」」
ものの見事に頭頂部に着弾!いや、命中!!
め・・・キョ!
流石の巨大邪操機兵も堪らず、闇へと逆戻り。
地上には邪操機兵の残骸も、闘った形跡すら残されませんでした。
あるのは。
<<<パーフェクト!ゲームコンプリート>>>
大型ビジョンに映されたゲーム終了の案内だけ。
うわああぁあああっ!
観客からのやんやの喝采を受け流し、美晴達IMSは消えるように運動場を後にしたのです。
コックピットの中では、美晴達も満足そうに笑っていました。
そう!殆どの観衆は見事に誤魔化されたのでした・・・が?!
「FCO!あんな機械兵が居たなんて。国家情報部は何を考えているんですか?」
若い刑事が和泉警視に訴えます。
「写真は撮ったのかい周君?」
「勿論!この小型カメラに収めてありますよ!」
二人の刑事達には収穫になったみたいですね。
「それじゃぁ、もうこの学校に居る必要はありませんね?」
周刑事が後も観ずに帰ろうとすると。
「いやいや、周君。
折角きたんだから、もう少し学園祭りを楽しんでから帰ろうよ?」
和泉警視は物足りなげに駄々をこねるのでした。
「・・・和泉さんも好きですねぇ?」
呆れたのか、諦めたのか。
周刑事はFCO和泉さんに付き合う事にしたのでした。
「まだ・・・本当の収穫はこれからだよ?」
ニヤリと嗤うFCO和泉さん。
どういう意味なのか?それはまたこの後のお話しで・・・
お見事!
現れ出た敵を壊滅させたぞ!
ですが。
なにやらまだまだ、きな臭い感じがしてますが?
そして。
小春神にもナニカが?
次回 夢の欠片と希望への想い 第3話
御馬鹿な魔王3人衆ですが、禍を齎すようですね?ね?!