拒む者 第5話
修学祭が始まりました。
美晴達はそれなりに楽しんでいる・・・のでしょうか??
小春日和の皇都で・・・
今日は一年で一番賑わいを見せる日でもあったのでした。
そう・・・
皇都学園修学祭
大きな看板が目立つ校門へ、大勢の人が詰めかけて来たのです。
「ああああああ!どうしてこうなったノラ?!」
蒼空を仰いで、ノーラのボヤキが炸裂しました。
「朝からカフェーに来るなんて、どんだけヒマ人なんだノラっ?!」
満員のオープンカフェ―。
座席をキープするのに並ばねばならない程の盛況。
それは良いことではないのですか?
「このまんまじゃぁ、お昼を待たずに資材が底をつくノラ!」
なんと?!
「誰がこんなに来ると予想できようか?!これは逆の意味での破産だノラ!」
「ノーラ姉さん、それは言わない約束だろ?」
ローラがてんてこ舞いのキッチンで、姉に対して悪態を吐くのです。
「姉さんのメイドコスが、うけた様だね~」
クラスメイトが扮するメイドコスチュームが目を惹いたのは、先ず間違いないでしょう。
「それはそうなノラ!アタシ自慢のメイドコスだもん」
ケモ耳に尻尾が付いたメイドコス。
薄い黄色のエプロンと、スリットが効いたタイトスカート。
まだ気温が低いのに半袖、短いスカートに素足・・・
「ウケが良いのは狙い通りなノラ・・・が。
なぜにこうもマリアが天使になったノラか?」
忙しく注文を聴くクラスメートの中で、一際存在感を出すのは。
「マリアってば、ホント・・・マジ天使だよねぇ」
ケモ耳尻尾ありのメイドコスが、こうもマリアの為にあるとは。
「うむ。アタシの狙い通り、マリアのナイスバディ―にぴったりなノラ」
フェアリア人のマリアは、日の本の中学生より<ボンキュッボン>だったのです。
つまり・・・
「まるで誂えたように天使メイドだよねぇ、ノーラ姉さん?」
「・・・マジ///////////」
姉弟は顔を赤く染めてマリアの勇姿(?)を眺めていましたとさ。
「はぁ~い!ブラックとレモンパイですぅ~お待たせしましたぁ~」
蝶のように軽やかに舞い、蜂のように注文品を据える。
しかも、笑顔を絶やさない・・・
「君ィ、凄く可愛いねぇ。留学生?」
紅い髪を靡かせるマリアに、他校から来た男子学生が訊きました。
「いいえぇ~、こう見えてもウチ、帰化しているんやで?」
そうでした、言い忘れてましたがマリアさんは日の本国籍を所得したのです。
勿論、魔鋼の技を見込まれて・・・ですが。
「ウチって・・・関西弁丸出しだなぁ?」
驚いている男子生徒を措いて、マリアさんは戸惑っている店員のサポートに向かいました。
「何しとるんや美晴?」
顔を赤くしている美晴に、呼びかけたのですが。
「ひゅ~っ!この子は一段とナイスバディ―だぜぇ!」
駆け寄ったマリアに、美晴が担当していた男性客が茶化します。
色目を使う男性客二人に、美晴がどぎまぎしているのを見て取ったマリアさんは。
「あらぁ~、お褒め戴き恐縮ですわぁ!」
ズイっと客と美晴の間に割って入ります。
「せやけどなぁ~、ウチ等はウリしてんのやあらへんのや。
イカガワシイ目で観てるんやったら、承知しまへんよって?」
今迄微笑んでいた顔を強張らせて、男性客に一喝を入れるのでした。
「うわっ?!コワ」
赤髪で蒼い瞳のマリアに睨まれた男性客達は、蛇に睨まれたカエルのように硬直したのです。
まさかマリアさんが魔鋼の少女だなんて思いもしませんでしょう。
魔法力をコッソリ放ち、威圧するマリアさん。
厭らしい目で観ていた男性客達は、知らずに黙らされているのでした。
「マリアちゃん、いけないよ。先生達にバレたら怒られちゃうよ?」
魔法力を使ったマリアへ、美晴が停めに入ったのですが。
「ええやんか、こないな奴等にウチ等をとやかく言われとうないやん?」
「アタシは善いんだよ?どうせマリアちゃんみたいに褒められたもんじゃないんだから」
??どういうこと?
マリアさんも美晴の言葉に怪訝な顔になります。
「メイド服を着たって、ケモ耳や尻尾を着けたって・・・マリアちゃんには勝てないよ」
「はぁ?!」
益々マリアさんが怪訝な顔になります。
「だって。元は同じフェアリア人なのに、どうしてこうも違うのかなぁ?」
美晴さんは胸に手を充てて愚痴るのでした。
「アタシだって半分はフェアリア人なんだよ?ルマままだってそれなりに大きいのに・・・」
ペッタンぺったんと、自分の胸を叩いて愚痴るのです・・・(おいっ?!)
・・・・・・・
・・・・
・・
ボカッ?!
マリアさんの拳骨が美晴にヒット!
「アホかぁ!美晴は!」
プルプル震えるマリアさんが、美晴を一喝しました。
「痛たたぁっ!だって、だって!アタシも大きくなりたいよぉ!」(なにがですか美晴さん?)
「今はそんなんどうだってええやろーに!」(全くですマリアさん!)
ぎゃいぎゃい喚き合う二人に、お客さん達の白い眼が刺さります。
「良くないもん!アタシも褒められたいんだよぉ。
容姿が幼いなんて、誉め言葉じゃないもん!」
・・・あ、そう?
「可愛いねぇ君、小学部?・・・なんて言われたら萎えちゃうよ!」
・・・萎えるんですか?
「ほほぉ?美晴は小学生と間違われたんや?」
「そう!リボンが可愛いねぇって言われたんだけど、その後に・・・」
・・・まぁ!良いじゃないですか!
「で?恥ずかしいから困っていたんだ?」
「そう!ここは中等部の科学部なんですって答えたんだよ?」
しっかり、言い返してるじゃあーりませんか?
「でも、信じて貰えなくて。マリアちゃんと比較されちゃうから・・・」
そう美晴が、マリアの容姿をチラチラ観て言い募るのです。
ポン
マリアさんが美晴に手を載せました。
「可愛いは・・・正義やで?」
「にゃ?!ニャに言うのよマリアちゃん?」
可愛いと言われた美晴さんでしたが、どうやら意味を取り違えたようです。
マリアさんが言うのは、幼くたって可愛ければ良いのだと言う意味。
方や美晴はマリアさんのバディーとの比較で、ちんまりしていても可愛ければ正義なのだと踏んだようです。
「そうだよね、可愛ければ正義だよねぇ~」
「・・・まぁ。そうなるな」
機嫌を直した美晴を見て、マリアさんは心でため息を吐くのでした。
「大きくなくったって・・・可愛ければ正義!」
「・・・美晴。もうその辺でええやろ?」
美晴が胸を張って(ないけど)言うのを、マリアさんが停めました。
当番制の店員が、交代時間になりました。
「ほならウチはクラブの方に顔を出して来るわ」
制服に着替えたマリアさんが、同じく着替えた美晴に言いました。
「うん!アタシも剣舞道場に行くね?」
クラブの主将をやっている二人は、そこで別れたのです。
マリアは陸上部の催事へ。美晴は体育館へと。
「そうだ!もしかしたらミユキお祖母ちゃんが来てるかもしれない」
昨日、良かったら見に来てと話しておいたのを思い出した美晴が、急いで体育館へと向かうのでした。
「それに、アクァさんも来てくれる筈だから」
案内を任されていたのを思い出し、人影の中から彼女を求めてみたのです。
「アクァさんの事だから、ひょっこり現れるんじゃないかなぁ?」
自分が探すより、アクァさんの方が見つけてくれるのでは。
そう考えた美晴は、取り敢えず体育館へと急ぐのでした。
美晴が走り去った後・・・
「どうやら怪しまれずに潜入できたな?」
スクープ狙いの聞屋が、そこに現れたのです。
「この機会を生かさないとな。怪しい学部がどこかにある筈なんだ」
聞屋がきょろきょろと辺りを伺う素振りを、二人の刑事が伺っているとも知らず。
「校舎に入れる場所を探し出そう」
手にした小型カメラを隠そうともせず、人混みに紛れて行ったのでした。
「どうやら嗅ぎ付けたのは僕達だけではないようだね、周君」
「でしょうね、FCOさん」
二人の敏腕刑事が大勢の人混みの中、とある人物を求めていたのです。
「皇都学園に、もしも彼が現れたのなら。
もしも政府秘匿機関に所属する島田教授が居たとするなら。
ここに何かが隠されているのは間違いない・・・だろうね?」
島田教授とFCO和泉警視が言いましたが?
それは島田誠で、合ってますか?
「ですが、和泉警視。
調べたところによると、この学園には孫が在学中だと聞き及んでいますが?」
「それを口実に現れたとしてもだよ。
孫に逢う為だけに留まるのかを見届けなきゃいけないんだよ?」
?!さすが・・・FCOと呼ばれるだけはありますね。
「もしも、島田教授が現れたとしてだよ?
孫に逢うだけに留まらなかったらどうする?学園内に姿を消したのなら?
どこかで見失うとしたら・・・何かがあると思えるんじゃないのかい?」
「ですね。もしも校舎内に入ったきり出て来なければ・・・」
二人の刑事はポケットから一枚の写真を取り出して確認しました。
「この娘をマークしておけばいいんですよねFCO?」
「そう。この島田教授の孫娘、美晴ちゃんを見張っていたらいいんだよ」
写真を胸ポケットに仕舞った周刑事が、走っていく美晴を目で追いました。
「そう!この学園だけの話じゃない。
これは我が日の本政府が秘密にしている謎を暴くチャンスなんだよ」
二人の刑事は聞屋と同じように、人混みの中に紛れて行くのでした。
学園内に何かが起きようとしているようです。
人々が意図しているのとは反対に彼等も動き始めていたのです。
その彼等とは?
魔王の結界が忍び込んでいました。
皇都学園の傍まで・・・・
動き始めた策動。
学園に何があるのかを求める人たちの思惑。
そしてやって来るのは人ばかりじゃなかったようです・・・
次回 拒む者 第6話
怪しい者達も現れ、修学祭はどうなるのでしょう?みんながみんな、楽しめるわけじゃないみたい?