変える未来 第9話
帰って来たコハルの姿に・・・
蒼ニャンは御主人様を想うのでした?!
闇の異能がアクァに注がれたのです。
その力は大魔王の姫御子が、人の魂へ宿らせる為のもの。
コハルが持参して来た魔女ロゼの魂をアクァに戻す。
幼き折に失ったとされる約束を、コハルが叶えてみせんとして。
魔王級の魔力が魔女の魂をアクァの肉体に宿らせました。
ここまでは姫御子の力で執り行えた魔王級の魔力の為せる技。
嘗てのコハルでも出来る技。
でも・・・
「ま・・・さ・・・か・・・」
金色の輝が<姫御子>から溢れ出していたのです。
「あなた・・・本当に?!」
蒼ニャンの眼が大きく見開きます。
「真実の力に目覚めたというの?」
黒ニャンの姿が金色の輝の中で桃色に変わったのです。
黒さが掠れ、白桃の様に薄いピンク色に替えられたのです。
「小春神に目覚めたというの?」
ミハルやマモル達には見えない筈の中に身を隠した、蒼ニャンと黒ニャンだった二柱。
今迄とは全く違う異能を見せるのは、桃色のニャンコダマ。
若葉の様に黄緑色の瞳を向ける桃色ニャンコダマが、微笑んで応えました。
「目覚めたのではありません。秘められた異能に気付いただけですから」
「それって、目覚めたんでしょうに!」
言い返した蒼ニャンに、桃色ニャンコダマがクスッと笑いました。
「はい、理の女神ミハル様。あのお方に教えて頂けたからですよ」
「ふむ?あのお方とは?」
蒼ニャンが誰を指すのかと訊くと。
「意外ですねミハル様から訊かれるなんて。
てっきりあのお方と邂逅するように執り図られたと思ってました」
微笑むコハルからの答えに、蒼ニャンが誰を指しているのかを感じ取ります。
「リーン・・・御主人様に逢えたのね?」
蒼ニャンが訊き直すと、コハルが頷きました。
「ルナリィーン姫に宿られた審判の女神様が、美晴にお会いになられた後。
大魔王の姫御子の私を諭してくだされました。
秘めた本当の姿というものを、私の中から引き出して下されたのです」
「ああ・・・やはり。リーンにはお見通しだったのね」
1000年女神は、人類を見定める女神の存在にコハルを託したのが間違いではなかったと思いました。
「ありがとう・・・リーン」
想いを成就させてくれたのは、やはり審判の女神だと感謝の呟きを溢すのでした。
「審判の女神様に教えて頂いたのは、女神の力だけではありません。
大天使であり殲滅の女神でもあった、ミハエルお母様がどうされているのかもです。
此処に戻る少し前、ルシファーお父様にも伝えておきました。
もう、お母様を連れ戻そうとしなくて良いのだって」
「ちょっと?!どう言う事よそれは?」
ミハエルの件は蒼ニャンにも初耳だったようで、コハルに訊き返します。
「お母様は粛罪を遂げる為に、闇に出向いたんだそうです。
殲滅の女神だった折に犯した罪を祓おうとされている・・・と、教えて頂きました」
「ニャンですって?!ミハエルさんは、望んで闇に向かったというの?」
審判の女神から教わった母の在処を知らされた蒼ニャンは、自らの犯した罪を償おうとするミハエルに感じ入ったようです。
「人に成った折に、罪など消滅した筈なのに・・・・ミハエルさんこそ女神だわ」
方や1000年をかけて戻った蒼ニャンは、自らの罪を想って頭を下げるのでした。
「私なんて、どれ程見殺しにしてきたのかも分からないというのに。罪なき者達を・・・」
気高きミハエルを想い、理の女神は身に置き換えて考えてしまう。
「ミハエルお母様は必ずや人の世界まで戻って来られると知りました。
審判を司られる女神様が、諭して下されましたから」
真実を見通せる女神の言葉を、桃色ニャンコダマが疑いもなく信じている様子を観て。
「あなたを過去に戻せたのが、本当の奇跡だったのね」
アクァとの邂逅。
自らが放った転移の魔法が、今にして思えば奇跡の始まりだったと。
「ルビナス君、ロゼッタさん・・・ノエルちゃん。
あなた達に感謝するわ、あなた達には二度も救って頂いたから」
女神はルビナスの娘アクァに目を向けると。
「魔女ロゼさん、あなたにもね」
魂を宿り直された魔女の魂に礼を述べるのでした。
「それでは・・・魔女さんを起こしますね?」
桃色ニャンコダマが、蒼ニャンを制しますが。
「待ちなさい小春神。目覚めの呪法は彼女自身に任せたらどうかしら?」
時の魔法を司れるアクァに任せようと言い返すのでした。
「それはどうしてなのです?」
目覚めの輝を与えようとしていた小春神が、輝を停めて訊ねると。
「この娘自身の手で。
ルビナス君の娘の異能で目覚めさせるのよ。
そうすれば魔女さんも気付くでしょうからね、宿っているのと護るべき人の事が」
訳を教える蒼ニャンに、小春神は頷きました。
「そうすることで魔女ロゼも覚醒出来るでしょう。
自らが約束を果たさねばならないと、過去の自分を取り戻せるでしょうからね」
「そうですね、良く分かりました!」
アクァの体内には、魔女である古の魂が宿りました。
約束通り、元の鞘に戻って来たのです。
それで今は十分だと知れたのです、理の女神が言ったようになるのならば。
「アクァちゃんも一端の魔法使いだとみえるから。
いつの日にか魔女さんも、自らの力で目覚めを迎えるでしょう」
蒼ニャンは桃色ニャンコダマに告げてから。
「お役目大義でしたね、小春神ちゃん。ありがとう」
謝辞を述べて、コハルを驚かせました。
「ニャンと?!ミハル様からお礼を贈られるなんて・・・・」
桃色ニャンコダマが、薄ピンクの頬を真っ赤に染めます。
「当然よ?私の分まで役目を終えたのだから。
しかもミハエルさんの情報まで手にして帰るなんて・・・お見事だったわ」
蒼ニャンは本気で褒めたのです。
本気で謝意を告げ、本当に喜んでいたのです・・・けど。
「そんニャァ・・・照れるニャ」
ニャ語な小春神が照れ捲り・・・
「蒼ニャンから褒め称えられると、謝るタイミングが取れないニャ」
いらぬ言葉を吐いてしまいました。
「ウニャっ?!いやこれは別に・・・・」
慌てて言い繕うとしたのが最悪です。
「・・・コハル?!何をしたと言うのか・・・言いなさい?」
じろりと怖い目で蒼ニャンから睨まれた桃色ニャンコダマが燻ぶって灰色になってしまいます。
「ますます怪しいわね。何をやったの?何か災いを呼んだの?」
「悲ニャァッ?!わ、私は何も蒼ニャンがニャンコになってるなんて言いませんから」
・・・言ってしまいましたね・・・
「・・・ほぅ?それでなに?リーンの前でペットな私を揶揄したの?」
「いっ、言ってませんよ。
私は唯、蒼ニャンが過去のリーン様へ遣わしてくれたのかもって・・・」
・・・自爆ですよ桃ニャン。
「・・・ふっ。それなら・・・仕方がないわねぇ」
「ほっ・・・信じてくださいますか?私だって審判の女神様からセクハラ受けてしまったんですからね」
・・・あ?!その件を言っては駄目ですよ!
蒼ニャンが<仕方がない>と言いながら魔法を唱えだしたのも気が付かず・・・
「御戯れに私を抱きしめたのですからね、蒼ニャンの身代わりにされたんですからね!」
「・・・ふっ!それでなに?コハルは御主人様の御寵愛を受けたと?」
既に死亡フラグが建ちましたよ?桃ニャン・・・・
蒼ニャンの紅いリボンが外れます・・・それは怒りモードになった証。
「御寵愛だなんて・・・リーン様が唯一想われているのは蒼ニャンだけでしょう?」
「むっ?!むぅぅ・・・」
・・・おお?!ナイス言い訳。蒼ニャンの怒りが少し弱まりました。
「審判を司られる女神様が、一番欲されているのはミハルだと仰られたのです。
私はミハエルお母様の娘、ミハル様とは比べものなんかにはなりませんから」
「ふむ・・・リーンがそう言ったのね?」
・・・なんだかもう・・・どっちもどっちですね。
「ですから、御寵愛を一身に受けられているミハル様に楯突くのは無理ですから」
「それはそうよ!リーンは私の御主人様なんだからね」
紅いリボンが結わえ直されました・・・つまり、桃ニャンはぶっ飛ばされずに済んだようです。
言い包められたのか蒼ニャン?!
「と、いうことで。ニャンコダマへと導いた、私の一言は無罪ですね」
「・・・天罰!」
チュド―ん!
女神が魔法を解放したようです。
・・・ぶっ飛んだ桃ニャン・・・因果応報。
「「と・・・いうことだそうよマモル」」
蒼ニャンが、弟の前に現れて神のお告げを言いました。
「そうなんだねミハル姉。アクァさんに戻されたんだね?」
魔女の魂が戻されたと聞いたマモル達。
「本当ですよね?神様がそう仰られたんですね?」
蒼ニャン達、見えない者の声が聞こえないアクァが喜びの声を上げます。
「良かったねアクァちゃん。魔女さんが帰って来てくれて」
美晴も蒼ニャンから知らされた帰還を喜びました。
「ああ!これと云うのも美晴のおかげだよ感謝する!」
帰還を喜んでいるアクァと美晴の前で、マモルとミユキも喜んでいました。
「お帰り、コハル」
マモルがそっと蒼ニャンの傍に居る、金色の輝を纏う少女に言いました。
「良く頑張ったわね、立派になって・・・」
涙ぐむのはミユキお祖母ちゃん。
「「そうね・・・確かに立派になったわ・・・体つきも」」
いらぬ事を言う蒼ニャンを、ミユキお祖母ちゃんが放り投げました(気にしないで)。
微笑む小春神の姿を観れるシマダ母息子。
手繰り寄せれた本当の姿を見せるのは、義理娘だった女神。
「ただいま。ミユキお祖母ちゃん。変えれたよ・・・マモル君」
小春神は帰ったと言わず、自分を変えれたと言います。
「今迄ありがとうございました。やっと本当の自分に気がつけたから」
感謝は過去も今も変わらないと・・・
「だから・・・これからも傍においてね?」
変えられたのは姿だけ。心は昔も今も変わらないのだとコハルは知らせたのです。
胸に手を添えて、自分が何時までも家族として居続けたいと願ったのでした。
「ええ。ええ!勿論よコハルちゃん。私のかわいい孫なのですから」
「そうだよコハル。いつまでも傍に居て欲しいのは僕達のほうだからね」
二人が手を差し出すと、コハルは二人に跳び付きました。
嬉しさと感謝の涙を溢れさせて。
二人と抱負し合う小春神を観て、蒼ニャンは改めてリーンの偉大さを感じていたのです。
「仕組んだのは私だけど。
コハルを早春の神に目覚めさせてくれたのはリーンだもの。
やっぱり、私の御主人様はどんな神よりも慈悲深いんだよね」
まだ逢えぬ愛しき女神に想いを募らせて、理の女神は微笑んだのでした。
「でも・・・ニャンコダマにするなんて・・・リーンも酷い」
・・・いや、なに。
笑っていれたら良いんじゃない?
こうして、小春神は新たな姿をみせたのです。
大魔王の姫御子、早春の女神。
二つの力を身に纏い、育ててくれた人々に傍に居たいと願ったのです。
こうしてコハルはもう、美晴と争わずに済んだのでした。
輝と闇の力を放てる者として、人の子を護ると告げたのです。
ルシファーやオリジナルミハルと同じく、人類の守護者となったのでした。
さぁ、主人公美晴の学園生活に話を戻す事にしましょう。
学園編もいよいよ佳境に向かいます。
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